ホラーコーディネーター

赤井景

エピソード9 久里嶋英明篇③(脚本)

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赤井景

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〇駅のコインロッカー
久里嶋英明「ち。相変わらず薄気味悪い場所だぜ」
  コインロッカーにたどりついた。
  いつも通り、周囲に人影はない。
  節電とやらの影響で、このコインロッカーはいつも薄暗い。しかも、二十二時を回ったあたりから、この駅の利用客は一気に減る。
  今は零時。この時間ともなるとこのコインロッカーに近寄ろうとする人間は皆無だ。
  だからこそ、取引に都合がいいのだが。
電話の声「とうんにゃ、んがー、れー、こー、ちゃう、とうんにゃ、にぃ」
  携帯電話にその連絡が入ったのは、一時間ほど前のことだった。
  普通の人間が聞いても意味不明な言葉の羅列。
  それはミャンマー語の数字を意味している。
  今回は「0549602」。
  数字7桁のうち、前3桁はロッカーの番号、後ろ4桁はそのロッカーを開けるための暗証番号だ。
  パネルを操作し、指定されたとおりの数字を入力する。
  ガチャン、と問題なくロックは外れた。
久里嶋英明「あとはこいつを回収して──」
  ガタン。
  荷物を取り出そうと54番のロッカーに近づいたそのとき、背後から音がした。
  おもわず振り向く。
  すぐ後ろにあるロッカーを、なにかが叩いた音がした。
  ロッカーの扉は閉じたまま。
  ということは、内側から何かが叩いたのだろうか?
  例えば、閉じ込められた何かが、外へ出ようとしているとか・・・。
久里嶋英明「おいおい。誰かがペットでも入れてるんじゃないだろうな」
  ガタン。
  また別のところから音が聞こえた。
  やはり、ロッカーの扉を内側から叩く音。
  いったいなんだっていうんだ?
  と──そこに、カーンカーンカーンと踏切の音が聞こえてきた。
  遠く、駅のアナウンスの声も。
アナウンス「22時40分発、終点△△駅行きの列車が参ります。黄色い線の内側に下がってお待ちください」
  おかしい。
  今はとっくに零時を回っている。
  しかも、22時40分発だと。
  その電車は、たしかあの女を──
  キキィィィィィィィィィィィ
  すぐ後ろで金属の軋む激しい音がした。
  続いて、いたるところから、ロッカーの扉を叩く音が聞こえてくる。
  ガタ。ガタガタッ。
  ガタガタガタガタッ。
  どんどんと激しさが増してゆく。
  バタンッ!
久里嶋英明「ひっ」
  ついに、コインロッカーの扉が内側から勝手に開いた。中から、生っ白いなにかが転がり出る。
  同時に、赤い染みが床に広がっていく。

〇血しぶき
  足。そして血。
  血だまりの中に、引きちぎれた足が転がっていた。

〇駅のコインロッカー
久里嶋英明「おいおい、ウソだろ・・・」
  まさか、あいつの足だとでもいうのか?
  だがそんなバカな。
  バタンッ!
  また背後で、扉の開く音がした。
  最下段のロッカー。
  そこから突き出た腕が、俺の足首をがっしり掴んでいた。
久里嶋英明「は、離せ!」

〇黒
  足を振り、無理やり掴んだ手から逃れる。そのまま、外へと駆け出た。
  くそっ、あの女だ。
  きっとあの女が、俺を引きずり込みにきやがったんだ!

〇広い改札
若造「うわっ、なんなんすか!」
  コインロッカーコーナーから駆け出たところで、若造にぶつかってしまった。
若造「ちょっと、大丈夫ですか? 顔色、ヤバイことになってますよ」
久里嶋英明「うるせぇ、放っとけ!」
若造「はぁ・・・まあいいッスけど」
  そう言うと、若造はコインロッカーの方へと歩き始める。
久里嶋英明「お、おい待て! お前、コインロッカーに行くつもりなのか?」
若造「はあ、そっすけど」
久里嶋英明「やめておけ、今は近づくな」
若造「なんであんたに指図されなきゃいけないんすか」
久里嶋英明「いいからやめろ! あそこにはバケモノがいるんだ!」
若造「バケモノぉ?」
若造「くっ、くはははははは。 おっさん、酔っぱらいすぎでしょ」
  せっかくの忠告を笑い飛ばし、若造は再びコインロッカーへと足を向ける。
  勝手にしろ、とも考えたが、すぐに思い直す。あそこには取引の「ブツ」が置きっぱなしだ。それを見られるのはまずい。
  仕方なく、若造に駆け寄る。
  コインロッカーコーナーに入ろうとするところで、どうにかその肩を掴んだ。

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コメント

  • イイ感じでホラーしてますね

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