第玖拾玖話 悩み相談 破(脚本)
〇応接スペース
野上「話を聞く限り、貴方はその幼馴染の少年との間に距離を感じてしまっているようですね」
穂村瑠美「・・・はい」
野上の要約した内容に、瑠美は素直に頷いた。
穂村瑠美「彼、今までとは明らかに変わってきているんです」
野上「そのようですね」
瑠美の相談内容。
それは、彼女の幼馴染でもある少年についてだった。
野上(光龍使いの姫野晃大、か)
瑠美は野上に相手の名前を明かしてはいない。
しかし、野上は既に知っていた。
彼に接触を図った魔族〜現在は助手役を務めている男に、龍使いの情報は聞いている。
瑠美が話す人物とは、光龍使いの姫野晃大で間違いない。
瑠美自身は内容をぼかして話してはいるが、該当者は唯一人。
最近、大きな変化があった。
高校の入学式直前にあったイベント。
そのイベントがきっかけで、瑠美の所属するグループに晃大も加わった。
その中で晃大も仲間と仲良くなっている。
だが、その姿が何処となく危なっかしい。
このままだと、どこかで手痛いしくじりを犯しそうな気がする。
野上「その彼をフォロー出来る所に自分が居ない、と感じているのではないですか?」
穂村瑠美「!!」
瑠美はハッとした。
野上「あなたの仰り様だと、こう聞こえるのです」
今までは、自分の手の届く所に彼がいた。
だから、何があっても大丈夫だという自信があった。
野上「しかし、」
一息置いて野上はじっと瑠美の瞳を見つめ、
野上「今の彼は、自分の手の届く所にいない」
もし仮に何かが起きても、自分では彼をフォロー出来ない。
野上「そんな距離感や、違いが生まれてしまっていると、そう感じていませんか?」
穂村瑠美「・・・そうかも、しれません」
〇応接スペース
穂村瑠美(この人、鋭いなぁ)
さすがは本職、という事だろうか。
目の付け所も、指摘する内容も、実に瑠美の痛い所を突いてくる。
あまり見たくなかった嫌な所を、うまい具合に指摘されている。
穂村瑠美(やっぱり、そうだよね)
今までは、単なる幼馴染だった。
このまま、ごく普通の関係が続くと思っていたのだ。
あの日、晃大が覚醒するまでは。
穂村瑠美(私たち、もう、)
普通の関係ではなくなってしまっている。
単なる幼馴染ではない。
超常の存在である『龍』をその身に宿し、『魔族』と命懸けで戦う。
既に『普通の人生』からは外れてしまっているのだ。
〇応接スペース
穂村瑠美「覚悟を決めなきゃいけないんでしょうか」
野上「・・・そうですね」
少し間を置いて、野上は答えた。
野上「今までと同じではいられないのだから、必要でしょうね」
野上「覚悟、とか意識改革、というと少し大げさかもしれませんが」
野上は軽く微笑み、
野上「人からどう見えても、本人が渦中にある間は何事も一大事」
野上「まずは、不安の要因の洗い出しからしてみましょう」
〇学校の裏門
姫野晃大「なあカズ」
橘一哉「ほい?」
姫野晃大「っ・・・」
気の抜けた返事に、晃大は一瞬膝の力が抜けそうになった。
が、そうするわけにもいかず気を立て直す。
姫野晃大「魔族って、同じ様な見た目の奴らばかりなのか?」
橘一哉「ん〜・・・」
そう聞かれて一哉も改めて周囲を見渡す。
そこには、
魔族の男たちが二人を取り囲んでいた。
〇学校の裏門
橘一哉「そう見えてるなら、コウちゃんの目はまだ節穴だねえ」
やれやれ、といった感じで肩を竦めてため息をつく一哉。
姫野晃大「節穴ぁ!?」
どことなく芝居がかった一哉の反応に、晃大も思わず反応がオーバーになる。
橘一哉「つうか、光龍の力を扱いきれてないね」
姫野晃大「くっ・・・」
光龍の力に慣れてきたと思っていただけに、何となく悔しさが勝る。
しかし、
橘一哉「でもまぁ、疑問に思えたのは上出来かな」
まるでダメ、という訳ではないらしい。
姫野晃大「そうか?」
少し褒められて気分を良くする晃大に、
橘一哉「うん、上出来上出来」
一哉も笑顔で頷く。
が、
橘一哉「だってこいつら、」
続けて出てきた一哉の言葉は、
橘一哉「擬態してるからね」
姫野晃大「擬態!?」
思わず晃大の声が裏返る。
擬態。
別のものを模した姿で、天敵を欺き我が身を守る、生物界の用語である。
橘一哉「そう、擬態」
橘一哉「・・・だよね、皆さん?」
そう言って一哉は魔族たちを見渡す。
魔族「いかにも」
魔族の一人が口を開いた。
恐らく、彼がこの集団のリーダーだろう。
魔族「この世界は、余りにも汚すぎるのでな」
魔族「姿を変えなければ、やってはおられんのだよ」
橘一哉「・・・そんなにヤワじゃないでしょ、あんた達はさ」
姫野晃大「そうだそうだ!」
一哉の言葉に晃大も頷く。
姫野晃大「お前らは充分強いじゃないか!」
あの日、龍の力と武器がなければ、晃大はあっさり殺されていただろう。
その後の魔族との戦いでも、楽に勝てた事など一度もない。
姫野晃大「あれで弱体化してるとでも言うのかよ!」
魔族「如何にも」
姫野晃大「へ?」
晃大の口から気の抜けた声が出る。
魔族「だからこそ、こうして数で攻めているのだがね」
姫野晃大「・・・じ、冗談はよせやい」
橘一哉「嘘は言ってないと思うけど?」
姫野晃大「カズ、おまえはどっちの味方だよ」
橘一哉「コウちゃんに決まってるじゃん」
俺は黒龍使いだよ?ととぼけた顔で返す一哉。
魔族「では、敵味方がはっきり分かれた所で、」
魔族「死ね、龍使い!!」


