龍使い〜無間流退魔録外伝〜

枕流

第玖拾漆話 虎穴(脚本)

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〇寂れた雑居ビル
穂村瑠美「・・・」
  とある雑居ビルの前に、穂村瑠美は来ていた。
  見上げるその目に映るのは、
  よろず相談 野上
  窓に貼られたその文字列は、先日頼子が話していた怪しげな辻占い師の構える事務所。
穂村瑠美「・・・よし」
  意を決し、瑠美はビルの脇の階段へと足を踏み入れた。

〇雑居ビルの入口
  ビルの谷間の階段を登っていく瑠美。
  隣の建物が直ぐ側に迫り、方角の関係もあって薄暗い。
  訪れる人も少ないのか、周りは静かだ。

〇マンションの共用廊下
穂村瑠美「・・・ここね」
  ある階の扉の前で、瑠美は足を止めた。
  扉の脇には質素な看板が掛けられている。
  その看板には、先ほどと同じ。
穂村瑠美「『よろず悩み相談』か・・・」

〇教室
穂村瑠美「ねえ、梶間さん」
梶間頼子「ん?」
穂村瑠美「怪しい占い師に声かけられたって本当?」
梶間頼子「うん、そう」
  瑠美の問いに頼子は頷く。
  別段隠すほどのことでもない。
  他愛ない世間話程度の話題だ。
梶間頼子「如何にもな感じの怪しい見た目だったよ」
  その時の様子を頼子は詳しく語り、
梶間頼子「こんな名刺まで渡されてさ、」
  先程玲奈にも見せた名刺を瑠美にも見せる。
穂村瑠美「へぇ〜・・・」
  瑠美はその名刺を手に取り、裏も表もじっくりと眺める。
  シンプルで無難なデザインの名刺だ。
穂村瑠美(ん〜・・・)
  赤龍の力を借りて『読んで』みる。
  炎とは燃焼、エネルギーの発生している状態である。
  もしこの名刺に何らかの呪術的・魔術的仕掛けがあれば、それが瑠美には『視える』。
  込められた力が、流れる炎というイメージで感じ取ることが出来るはずだ。
  その結果は、
穂村瑠美(安全、みたいね・・・)
  シロである。
  特段の仕込みは無い。
  単なる名刺だ。
穂村瑠美「ありがと」
  チェックを終えた瑠美は、名刺を頼子に返した。
穂村瑠美「梶間さんも変なのに引っ掛かっちゃったね」
梶間頼子「だよねぇ」
  二人は笑い合った。

〇マンションの共用廊下
穂村瑠美「・・・」
  その時は何もない風を装った。
  だが、瑠美はこうして名刺に記載された場所に足を運んでいる。
  瑠美も年頃の女子である。
  占いというものに興味はある。
  が、本格的な興味ではなかった。
  テレビの占いコーナーを少し気にする程度の軽いものだったはず。
  なのに、今はこうして占いを生業とする者の所に足を運んでいる。
  それは彼女にも思うところがあったからに他ならないが、
穂村瑠美「うぅ・・・」
  普段しないことをする、一線を越えるというのは、意外と勇気がいるものだ。
  その一歩が踏み出せずに瑠美は躊躇っていた。
  と、その時。

〇マンションの共用廊下
  ガチャリ。
穂村瑠美「!!」
  眼の前の扉が開き、
男性「!?」
  出てきた男性と鉢合わせした。
男性「あ、」
穂村瑠美「えと、」
  一瞬立ち止まる二人。
男性「失礼」
穂村瑠美「いえ、こちらこそ」
  咄嗟に謝罪の言葉を口にすると軽く会釈をし、男性は階段を降りていった。
穂村瑠美「・・・あんな人も、来るんだ・・・」
  きちんとした身なりの男性だった。
  真っ当に生きていそうな雰囲気だが、そんな人でもこんな場所に来ることがあるのか。
  そう思ったら、緊張感が解れて躊躇も薄れた気がする。
穂村瑠美(よし、行こう)
穂村瑠美「ごめんくださ〜い・・・」
  瑠美は足を踏み入れた。

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