龍使い〜無間流退魔録外伝〜

枕流

第玖拾伍話 占い師(脚本)

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〇繁華な通り
野上「こいつは、面白い卦が出ましたねぇ・・・」
  筮竹をジャラジャラと鳴らして出た卦に、男は呟いた。
  着流しに袖無しの羽織、御高祖頭巾に丸眼鏡。
  道路端に誂えた見台に坐る若い風貌の男。
  ステレオタイプで分かりやすい易者の風体だが、それが却って胡散臭くもある。
  なのに怪しさを感じないのは、あまりにも板に付いているからだろうか。
  ただ座っているだけなのに、違和感を全く感じさせない。
野上「ほお、へえ・・・」
  男は目を細める。
野上「こいつは、面白くなりそうだ」

〇繁華な通り
梶間頼子「やっぱり、四神って強いんだなぁ・・・」
  街中を歩きながら、頼子はため息を漏らした。
  饕餮の三郎。
  彼との戦いの顛末を聞いた頼子は、ただ驚くしかなかった。
  龍使いが連携しても劣勢だった三郎を打ち倒し、退散させたのだから。
梶間頼子「でも、」
  三郎撃退の決め手となったのは、
梶間頼子「方陣、かぁ・・・」
  連携ではなく、力を合わせて放った、方陣なる技。
梶間頼子「龍には、そういうのは無いのかな・・・?」
  龍にも各々属性がある。
  それを組み合わせた技があっても良さそうなものだが、
紫龍「あるぞ」
梶間頼子「あるの!?」
  紫龍の答えに頼子は思わず驚いた。
紫龍「だが、威力は強く範囲も広い」
紫龍「用いる場面はかなり限定されるだろうな」
梶間頼子「そんなに強いの?」
紫龍「うむ」
  紫龍の力の中でも必殺の奥義と呼んで良い雷の呪文。
  それですら、結界内を雷鳴と閃光が覆い尽くす。
  であれば、八龍が力を合わせて放つ方陣?はもっと凄まじいものだろう。
梶間頼子「それ、使い所あるの?」
  龍の力。
  大きすぎるが故に扱いは難しい。
  最初に聞いた話を改めて思い出した頼子だった。

〇繁華な通り
野上「うーむ、」
  目の前を行き交う人々を見ながら、男は唸った。
野上「河岸を変えるか、はたまた切り上げるか・・・」
  帰るには早いような気がするが、しかし場所を変えても客が捕まるか否か。
  それこそやってみなければ分からないが、何となく駄目そうな気がする。
野上「あと少し、もう少しここで様子見してみるか」
  ギャンブルで泥沼にはまる時の典型的にも似た台詞を呟いて居住まいを正すと、
野上「お・・・?」
  丁度、見つかった。

〇繁華な通り
  紫龍。
  雷の力を操る龍。
  その力は強大だ。
  だが、力加減を誤ると自分や味方にまで被害が及ぶ。
梶間頼子「修行でもしようかな・・・」
  饕餮は四凶の一人。
  ということは、あのような強さの持ち主が後三人はいるということだ。
  それに、四凶に匹敵する強さの魔族が今後出てこないとも限らない。
  このままでは、やがて行き詰まるのではないか。
  紫龍の力を、もっと上手く扱えるようになる必要があるのではないか。
  そんな事を考えていると、
「ちょいと、そこ行くお嬢さん」
  声を掛けられた。

〇繁華な通り
野上(こいつはイケそうだ)
  もう少し粘ってみた甲斐があるというもの。
  タイミング良く、人がやってきた。
  悩みが顔に出ており、周囲に対する警戒が薄れている。
  絶好の機会だ。
野上「ちょいとそこ行くお嬢さん」
  よく通る声で、男は呼びかけてみた。
梶間頼子「はい!?」
野上(よし、)
  狙い通り。
  少女は些か驚いた様子で立ち止まり、振り向いた。
野上「お嬢さん、何か悩みを抱えておいでだね?」
梶間頼子「あ、はい、まあ」
  男の問いに少女は頷く。
  驚きと警戒が混じっているが、それは当然だろう。
野上「もし良ければ、占ってあげるよ」
  話しながら全感覚を総動員して、目の前の少女を『読み取る』。
  そうして受け取った情報を意識しながら、筮竹を動かす。
野上「ふむ」
  男は少女を見上げ、
野上「身の振り方について、悩んでなさるね?」
梶間頼子「ええ、まあ」
  少女は曖昧に返事を返す。
野上「やりたいこと、やってみようと思った事があるのなら、行動に移すのをお勧めするよ」
野上「後悔するにしても、やらずに悔やむよりもやって悔やんだほうが良い」
野上「教訓が得られるからね」
梶間頼子「・・・そうですか」
  少女の返事の声は冷たい。
  当然だろう。
  見ず知らずの人物に説教じみたことを言われて、気分が良い筈がない。
  だが。
野上「易者のなりをしているが、これでも一応カウンセラーでね」
  男は立ち上がると袂から名刺を取り出し、少女に渡した。
野上「今は大雑把な事しか言えなかったが、詳しく話がしたくなったらここに来て下さいな」
  名刺には、こう書かれていた。
  よろず悩み相談 野上

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