47 『球』に思うこと(脚本)
〇魔界
シエーリタと名乗った女性。
ハラン「事情がおありのようだが・・・」
ハラン「まずは移動しよう」
ハラン「モンスターが集まってきている」
ハラン「さあ、こちらへ」
ハパルム「走れますか?」
シエーリタ「え、ええ」
〇闇の要塞
手近な建物に身を寄せたハランとハパルム。そしてシエーリタ。
シエーリタ「はあ、はあ」
息が上がってしまったシエーリタ。
シエーリタを建物の一室で休ませて、
そっとハランに近寄るハパルム。
ハパルム「ハランさん・・・あの」
ハラン「どうした?」
ハパルム「私・・・怖いです」
ハラン「怖い?」
ハラン「先ほどの、強盗か?」
シエーリタを囮に、ハラン達に襲いかかろうとしていた強盗。
ハパルムは言葉を探すように視線を泳がせた。
ハパルム「それだけじゃなくて。 ええと・・・もっと根っこのところで・・・」
しどろもどろになったハパルムに、相槌を打つハラン。
ハパルム「私の故郷を奪った人もそうでした。 他人を傷つける人でした」
ハパルムは兄を思い浮かべた。
奪われて、追われて、最期はモンスターとなり果ててしまった兄を。
そして、兄をモンスターにさせた、男とその家族達を。
ハパルム「でも、その人たちも、別の人に傷つけられて、追われて奪われていた」
ハパルム「だから・・・えっと・・・」
ハランは穏やかに微笑んで、続きを促した。
ハパルム「私は怖いです。 人同士で奪って、奪われて、繰り返して・・・」
ハパルム「際限が・・・なくて。怖いんです」
ハパルムはうつむいた。
ハパルム「どうして、人の隣で・・・人が暮らせないんでしょう?」
ハランは空を見上げた。
『球』の空だ。
湾曲した空は、遠く揺らめいていた。
ハラン「そうだな」
ハラン「今『球』は人が過密化しているし、治安も悪化の一途だ」
ハラン「この世界そのものも壊れそうだし」
ハラン「そもそも、私たちが『球』を壊そうとしているしな」
ハランはハパルムを見つめた。
ハラン「怖いか?滅び行く世界が」
ハパルム「も、もちろんですよ!怖いです!」
でも、とハランは続けた。
横顔は、静かな微笑だった。
ハラン「私が怖いと思うのはね」
ハラン「『球』の中の人々は、これらの状況を」
ハラン「「全く知らない」んだよ」
ハパルム「全く・・・知らない・・・」
ハラン「私は、それが怖いよ」
ハパルムが首をかしげた。
ハパルム「知らないって、怖いんですか?」
おや、とハランは興味深げにハパルムを見つめた。
ハパルム「知らないことって、怖いことなんですか?」
ハラン「そうだよ」
ハラン「『都合のいい解釈』に踊らされるからね」
ハラン「人はそれを『統治』ともいうが」
シエーリタ「あの・・・」
シエーリタ「私は休まずとも大丈夫です」
シエーリタ「それより、リベンカに急がねば」
ハランが穏やかにシエーリタをとどめた。
ハラン「私たちが休みたいのです、シエーリタ殿」
ハラン「休む間に話をしましょう」
ハラン「聞かせてください」
ハラン「あなたの王国の状況や、あなた自身のことを」
シエーリタ「そう・・・そうですね」


