46 強襲(脚本)
〇魔界
助けを求め、うずくまる女性。
ハパルム「た、大変!」
ハラン「待った」
ハランが、駆け出そうとする肩を掴んだ。
ハラン「駄目だ」
ハパルム「えっ?でも人が・・・」
首を振るハランと──
助けを求める声。
うろたえたハパルムの肩を優しく叩くと、ハランは言った。
ハラン「よくニオイを嗅(か)いでごらん」
ハパルム「ニオイ?」
意味を図りかねて、ハパルムの尻尾が下がった。
ハラン「音でもいい。何か聞こえないか?」
ハパルム「ええと──」
ハパルムは目を閉じてスンとニオイを嗅いだ。
同時に、三角の耳が周囲を探った。
ハパルム「足音がする」
ハパルム「ニオイも・・・たくさん?」
ハパルム「ど、どうして?」
ハパルム「あの人、1人じゃない。 周りに誰かが隠れてる!」
そこまで言って、青い瞳が見開かれた。
見知らぬ女性。都合よく、こんな荒野に。
その周りに、知らない気配と、知らないニオイが、たくさん。
そして、金属が擦れる音。
ハパルム「──囮(おとり)?」
ハパルム「あの人が、囮(おとり)・・・なら?」
ハパルム「私たちは、狙われている・・・?」
ハラン「そうだよ」
地形の影へ小さく視線を寄越して、ハランは頷(うなづ)いた。
ハラン「よく気付いたな、ハパルム」
ハパルムはハンマーに手を伸ばそうと、腕を上げかけた。
ハラン「ダメだ、動くな」
ハラン「武器は取るな」
大人しく従ったハパルム。
しかし、腕は浮いたまま、迷っていた。
ハラン「気付かないフリをして。 下手に刺激してはダメだ」
ハパルム「え、でも、じゃあどうすれば?」
ハラン「声をかけてくれ、彼女に」
ハラン「その隙に、片付けるから」
ハパルム「は、はい!」
ハパルム「──あの!」
ハパルム「だぇ、あっ──だっ、大丈夫ですかっ?」
女性が顔を上げるのと同時に、刃が閃いた。
〇黒背景
〇魔界
ハラン「うん、よし」
流れるように剣──剣は鞘にしまったまま──で隠れた者をノシたハラン。
ハパルム「は、ハランさん」
ハラン「うん?」
ハパルム「どうして──」
ハパルム「どうして「その人」まで取り押さえるんですか!?」
情け容赦なく、取り押さえられた女性。
ハラン「仲間か人質か分からないからな」
ハパルム「ほ、ほら、抵抗してないですし・・・」
ハラン「グルだったが、仲間を売った・・・かもしれない」
ハラン「無くは、無い」
取り押さえられた女性は、必死に顔を上げた。
シエーリタ「お助けください・・・ わ、私も連れてこられたのです!」
ハランが、押さえた腕の下に問いかけた。
ハラン「どこの誰だ」
シエーリタ「リベンカ国のシエーリタ」
シエーリタ「シエーリタと申します。ハラン「将軍」」
「将軍」と呼ばれて、ハランは目をみはった。
ハラン「・・・ご存知か」
ハラン「将軍だった私を」
シエーリタ「よく存じております、ハラン将軍」
シエーリタ「どうか・・・どうか、お力をお貸しください」
シエーリタ「我がリベンカ王国のために」


