〇アクアリウム
　　ミナトに会う、数日前。
「海の上に行くの？」
「危険すぎるよ！」
ミナ「大丈夫よ、ナオ、クミ！」
ミナ「人間たちには見つからないようにはするからね」
「ならいいけど」
「人間に見つからないように早く帰ってきてね」
ミナ「分かったわ」
「気をつけるのよ」
ミナ「ありがとうリラ」
　　こうしてミナは、人間の世界を覗きに行くために、海の上の世界に行きました。

〇海
　　海上
ミナ「ふう・・・」
ミナ「海上だわ」
　　ミナは海の上に上がりました、すると・・・
ミナ「あれは？」

〇クルーザーのデッキ
　　クルーズ船内
　　そこにはクルーザーがあり、そこにミナトが乗っていました。
ミナト「・・・」

〇海
　　海上
ミナ「あら・・・でっかい船ね」
ミナ「やっぱり人間の世界は楽しいわね」
ミナ「あれ？」

〇海
ミナ「嵐だわ、早く海の底に戻らないと・・・」

〇水中
　　海中
　　ミナが海の底に戻っていく最中・・・
ミナ「あれは！」
ミナト「・・・」
ミナ「大変！彼を陸の世界へ連れて行かないと！」
　　ミナはミナトを抱き寄せました。
　　そして、海面に向かって泳ぎました。

〇海
　　海上
ミナ「あそこの島へ連れて行くしかない！」
ミナ「嵐が少し収まっている間に、早く行かないと！」
　　ミナはミナトを連れて、島まで泳ぎ続けました。

〇海辺
　　無人島
ミナ「やっと着いた・・・疲れたわ・・・」
ミナト「・・・」
ミナ「・・・」
　　ミナはミナトの呼吸と心臓の音を聞きました。
ミナ「息をしてないわ！」
ミナ「待っててね！今から薬を取りに行くから！」
　　ミナはミナトを救うために海の底に行きとある場所に行きました。
ミナト「・・・」

〇洞窟の深部
　　魔女の深海の洞窟
ミナ「ララ！」
ララ「あら、どうしたの？」
ミナ「お願い、人間を人魚化する薬が欲しいの！」
ララ「あんた、正気か？」
ミナ「人間が死にかけてるのよ、呼吸もしていなくて・・・」
ミナ「でも、あなたは唯一その人魚化の薬を調合できる人魚でしょ」
ララ「まあ、できなくはないけど・・・」
ララ「ただし、成功するとは限らないよ・・・」
ミナ「え？」
ララ「薬の副作用によって、場合によっては人魚ではなく、怪物になる可能性があるよ」
ララ「いわばその薬は実験段階なんだ・・・」
ミナ「そんな・・・」
ララ「それでもあの人間を救うために、人魚化の薬は必要か？」
ミナ「はい、お願いします・・・」
ララ「良かろう」
ミナ「ありがとうございます」
ララ「ただし、仮に人魚の姿に成功して変わったとしても・・・」
ララ「二度と人間には戻れないよ・・・」
ミナ「そんな・・・」
ララ「それでも、やるんだよね？」
ララ「覚悟はできてるんだろうな？」
ララ「失敗して怪物になっても、責任は取れないよ」
ララ「分かったね・・・」
ミナ「はい・・・」
ララ「急いで調合するから待ちな・・・」
ミナ「はい・・・」
「私の調合レシピには書いてあるね、それじゃ・・・」
ララ「できたわよ・・・」
ララ「これを飲めば、人間の男がたちまち人魚の姿に変わる」
ミナ「ありがとうございます！」
ララ「飲ます前には、必ず人間が着ている服を脱がせないといけないよ」
ララ「乱暴でも構わないから、服を着たまま薬を飲ませてしまうと、大変なことになるからね」
ミナ「服？」
ララ「そうだ服だ、脱げばたちまち我らと同じように裸になるが、私たち女性は基本的にはブラジャーをつけてるけどね」
ララ「脱がし方はブラジャーか上着を脱ぐぐらいだと思った方がいいよ・・・」
ミナ「分かったわ」
ララ「万が一、失敗して怪物になっても、文句は言わないでよ・・・」
ミナ「はい・・・」
　　ミナは早速、ミナトがいる無人島に向かいました。
ララ「うまく成功するといいけど・・・」

〇海辺
　　無人島
ミナ「よし薬を手に入れた！」
ミナ「後は・・・」
ミナト「・・・」
ミナ「・・・」
　　最初はミナトの上半身を脱がしました。
「まあなんて立派な体格・・・」
　　そして、下半身の服も全部脱がした瞬間・・・
「あ・・・なんて立派な・・・足なの・・・」
「こんな立派な下半身なのに・・・魚に変化するなんてもったいない・・・」
「それにしても・・・足と足の間のついているミル貝のようなものは何かしら・・・」
「ダメよ！妄想したらだめよミナ！」
「しっかりするのよ！」
　　ミナトが浜辺の砂で全裸で倒れている姿は、それはまるでアダムの創造の完成のような姿であった。
ミナ「この薬を飲まさないと・・・」
　　ミナは人魚化の薬（生命の実）を口に含み、それをミナトの口に直接キスという形で飲ませました。
　　それはまるで禁断の果実をアダムに食べさせたかのように。
　　やがて、足から青い鱗が生えており、やがて足は１つになりました、足の骨格も徐々に変わり始め、ミナトは苦しみます。
「あ・・・あ・・・」
「痛い・・・熱い・・・苦しい・・・」
　　やがて、足はやがて魚の尾鰭に変わりました。
ミナト「あ・・・あ・・・」
ミナ「・・・」
ミナト「ゲホゲホ！」
ミナト「はあ・・・はあ・・・」
ミナ「なんとか間に合って、うまくいったようね」
ミナト「はあ・・・」
ミナ「呼吸が安定している」
　　ミナは安堵しました、ミナトの呼吸が落ち着いていたからでした。
　　そしてミナは、そのままミナトを目覚めるまでの間に様子を見ることにしました。

〇水中
　　海中
　　ミナはミナトに泳ぎ方を教えていました。
ミナ「そうよ、そんな風よ！」
ミナト「最初は難しいが、慣れてきたかも」
　　ミナの指導のもと、ミナトも徐々に人魚としての泳ぎ方に慣れていきました。
ミナト「やった！うまく泳げた！」
ミナ「よかったわ！」
ミナ「それじゃあ海の底までご案内するわ」
　　ミナはミナトを引っ張って、海底（エデンの園）を案内した。
ミナト「うわ！」

〇アクアリウム
　　海中
ミナト「うわー！綺麗だ・・・」
　　ミナトの目の前には、美しい珊瑚礁と色とりどりの魚たちが泳いでいました。
ミナ「海の中は初めて？」
ミナト「テレビでは見たことがあるんだけど・・・」
ミナト「まさか生で見ることになるとはね」
ミナ「それは良かった」
ミナト「ありがとう、こんな美しい場所に連れてきてくれて」
ミナ「いいのよ」
ミナト「はは・・・」
ミナ「うふふ・・・」
　　ところが突然、ミナトは悲しみ始めた
ミナト「・・・」
ミナ「どうしたの？」
ミナト「いや、何でもないけど・・・」
ミナ「急に表情が暗いのね、もしよかったら私が聞いてあげるよ」
ミナト「ありがとう・・・」
　　ミナトは実の両親の兄弟差別や、恋人と親友の裏切り、さらには義両親が交通事故で亡くなったことをミナに話しました。
ミナ「そんなことがあったのね・・・」
ミナト「ああ・・・」
　　ミナトの心の中では過去のことで傷が大きかった、そして一粒の涙が真珠に変わった。
ミナト「これは真珠？」
ミナ「言い忘れたけど、人魚の涙は基本的に、真珠が出るからね」
ミナト「そうなんだ・・・」
ミナ「寂しかったらこっちに来て！」
　　ミナはミナトに自分の胸をミナトの顔に押し当てます。
ミナト「むご！」
ミナ「落ち着かない時は、これが一番」
ミナト「あ、ああ・・・」
ミナト「!」
　　ミナトはミナの胸から引き離した。
ミナト「ミナ、それは好きな人に対する行為だよ」
ミナト「僕初めてなんだから」
ミナ「ごめんなさい！」
ミナ「やっぱりダメでしたか？」
ミナト「ダメじゃないけど」
ミナト「普通はそれは恋人がやる行為だけど」
ミナ「そうだったんですね」
ミナト「でも俺は嬉しいよ」
ミナト「僕を思ってくれて、ついでに僕の顔を君の胸に押し当ててしまったことで」
ミナト「僕の心が落ち着いたよ」
ミナト「ありがとう・・・」
ミナ「どういたしまして」
ミナ「まさか人間世界では恋人同士がやることとはつゆ知らなかったね」
ミナト「気にしないで、僕は嬉しいよ」
ミナ「本当ありがとう！」
ミナト「というか、僕たちは友達だよね？」
ミナ「まあ、友達かな？」
ミナト「というか？胸を押し当てた時点で、友達の域を超えてるけどね」
ミナ「ごめんなさい」
ミナト「別に気にしないから安心して」
ミナト「これからお互い徐々に深まればいいんだから」
ミナ「そうですね、わかりました」
ミナト「これからもよろしく」
ミナ「私の方こそよろしくお願いします」
　　こうして２人は手をつなぎ喜び合いました。

〇洞窟の深部
　　魔女の深海の洞窟
ミナ「ララ！」
ララ「どうだ。無事成功したか？」
ミナト「あの、こんにちは・・・」
ララ「あら、まあ！」
ララ「成功したじゃないか！」
ミナ「紹介するわ、彼は友人のミナトよ」
ミナト「どうも、ミナトです・・・」
ララ「ミナトね」
ララ「どう体の調子は？」
ミナト「ええ、特に問題ありません」
ララ「それなら良かった」
ララ「成功したからには、しばらくは観察対象になってもらうよ、ミナト」
ミナト「え・・・それは困りますな・・・」
ララ「そんな重苦しいことは考えないの・・・」
ララ「大丈夫よ」
ミナト「本当に大丈夫かな・・・」
ララ「フフフフ・・・」
ミナ「もう・・・ララたら」
ミナ「ミナトが怖がってるじゃないの」
ララ「あら・・・失礼したわね」
ミナ「それじゃあミナト、案内するわね」
ミナト「ああ」
　　ミナトとミナは、魔女の深海の洞窟から出て行きました。
ララ「何よ、全くどう見ても恋人同士じゃない」
ララ「それにしても、今後の人魚の未来にも関わるから、この研究は続けよう」
　　ララは洞窟の奥に行き、薬の研究を行いました。

〇水中
　　海中
　　２人は深海の魔女の洞窟から出た後、ミナが突然悲しい表情を浮かべた。
ミナ「・・・」
ミナト「ミナ、どうしたの？」
ミナ「ミナト、魔女の洞窟に入る前に、私にあなたの人生のことを聞いたね」
ミナト「ああ・・・その話ね」
ミナ「実は私、幼い頃を両親を亡くしたのよ」
ミナト「え？何があったの？」
ミナ「それは・・・」
　　ミナはミナトに両親について話した。
　　幼い頃は家族４人で幸せに暮らしていたが、人間やサメに対抗する戦いの中で、王族である両親を失った。
　　それを聞いたミナトは、悲しんだ。
ミナト「やっぱり、ミナも両親を失ったんだね・・・」
ミナト「聞いて悪かった・・・」
ミナ「うんん、気にしないで」
ミナト「俺の義両親は最近亡くなったばかりだから」
ミナト「その気持ちは共感するよ」
ミナ「ありがとう」
ミナト「寂しかったら俺を頼っていいよ」
ミナ「ありがとう、嬉しい」
　　ミナトとミナはお互い慰めました。
ミナト「お互い両親を失ったことだし」
ミナト「これから一緒にいよう」
ミナ「うん」
ミナ「ありがとう」
ミナト「どういたしまして」
　　２人はお互い抱きしめました。

〇沖合
　　海上
　　ミナトはミナを連れ、一度だけ海上の空気を吸いに行きました。
ミナト「ぶはー！」
ミナ「ふう・・・」
ミナト「ごめんね、ちょっと海上の空気が吸いたくてね」
ミナ「いいですよ、気にしませんから」
ミナト「空気を吸わないと落ち着かないからね」
ミナ「そうですね」
　　すると、上空には星々がたくさんありました。
ミナト「うわー星がこんなにたくさんあると綺麗だな」
ミナ「そうですね」
　　するとミナトは、とある星座を見つけた。
ミナト「天の川と夏の大三角形だ！」
ミナト「それに七夕も近いな！」
ミナ「七夕？」
ミナト「あー七夕のことを知らないんだね」
ミナト「七夕は、中国に伝わる民話でね」
ミナト「内容は織姫と彦星が恋に落ちる物語なんだ」
ミナト「後に日本に伝わったけどね」
ミナ「じゃあ、その物語を聞かせてくれるかな？」
ミナト「もちろん！」

〇宇宙空間
　　夜空にキラキラときらめく天の川。
　　その川のほとりでは、天の神さまの娘「織姫」が世にも美しいはたを織っていました。
　　織姫の織る布は五色に光り輝いて、季節が変わるごとにいろどりまで変わるというそれはそれは美しいものでした。
　　天の神さまはそんな娘がとても自慢でしたが、織姫ははたを織るのに一生けんめいで、自分の髪や服をかまおうともしません。
天の神「織姫もそろそろ年頃なのに、人のはたを織ってばかりではかわいそうじゃ。そうだ、織姫にふさわしい婿を探してやろう！」
　　天の神さまはさっそくあちこちを探しまわりました。
天の神「どこかに織姫に似合いのむこはいないかのぅ･･･」
　　天の神さまが天の川の岸辺をずっと歩いていると、そこで牛の世話をしている若者と出会いました。
　　若者は「彦星」といい、牛に水をやったりえさの用意をしたり畑しごとに精を出したりと、休む間もなくまじめに仕事をしています。
天の神「うむ、この働き者の青年であれば、織姫と幸せに暮らしていけるじゃろう」
　　天の神さまは織姫の結婚相手に彦星を選びました。
　　織姫と彦星はお互いににひとめで好きになり、とても仲の良い夫婦になりました。
　　しかし、それからというものふたりは遊んでばかりでちっとも仕事をしようとしません。
　　はたおりの機械にはほこりがかぶり、彦星の飼っていた牛もえさをやらなくなったのでだんだんやせてきました。
天の神「おまえたち、そろそろ仕事をしてはどうじゃな」
織姫「はい・・・」
彦星「わかりました・・・」
　　答えるだけでまったく仕事をしようとしません。
　　織姫がはたを織らなくなったので空の神さまたちの服はもちろん、天の神さまの服もボロボロになってしまいました。
　　彦星も仕事をしなくなったので、畑は草がぼうぼうに生えて作物はすっかり枯れて、牛はついに病気になってしまいました。
天の神「もうこのまま放っておくわけにはなるまい！」
　　怒った天の神さまは
天の神「もうおまえたちふたりを会わせるわけにはいかぬ！」
　　織姫を天の川の西へ、彦星を天の川の東へとむりやり引き離しました。
　　そうして二人は広い広い天の川をはさんで別れ別れになり、お互いの姿を見ることさえできなくなったのです。
　　それからというもの、織姫は毎日泣きくらすばかりで、まったくはたを織ろうとしませんでした。
　　彦星も家に閉じこもってしまい牛の病気はますますひどくなるばかりです。
　　困った天の神さまはふたりにいいました。
天の神「おまえたちが前のように毎日まじめに働くのなら、一年に一度だけふたりが会うのを許そう」
　　その言葉に、おりひめとひこぼしは心を入れかえてまじめに働き始めました。
　　一年に一度、そう７月７日の夜に会えることを楽しみにして･･･。
　　そして織姫は前にもまして美しいはたを織るようになったのでみんなはとても喜びました。
　　彦星も一生けんめい牛を世話し畑を耕したので、牛はすっかり元気になり畑にも豊かな作物が実りました。