新たなる世(脚本)
〇豪華な王宮
雅仁皇子改め 後白河帝
後白河帝「ゴッシーと」
寵「グーメーの」
「和歌座興(ワカ・コンート)!」
後白河帝「寵卿、最近和歌など始めたらしいな」
寵「ははーっ。殿上人たるもの 歌のひとつも詠めぬようでは、 どこぞの左大臣の如く宮中で敵を増やし やがて身を滅ぼしまする」
後白河帝「それはよい心掛けだ、 朕に一首献じてみせよ。 出来がよければ勅撰集に載せて進ぜよう」
寵「有難き幸せ。では」
寵「真澄鏡~ただ一目のみ君を見ゆ~ ぬまたばの夜に永久となれ~」
後白河帝「おお、真澄鏡(ますかがみ)とは 諏訪大社の宝にて曇りなき光の鏡。 そして、ぬばたまとは夜の闇」
後白河帝「どちらも美しきものの喩え。 それを一首の中で対比させるとは、 色ボケのわりに よく勉強しているではないか」
寵「恐悦至極。ではもう一首」
寵「真澄鏡~恋衣映すぬばたまの~ 夜も日も明けず~我泣きぬれむ~」
後白河帝「よいぞよいぞ! 可憐な乙女の涙が目に浮かぶようだ。 こちらも光と影の対比が実に秀逸!」
寵「ではもう一首」
寵「真澄鏡~あと、ぬばたまと~」
後白河帝「そればっかりやないかい!」
後白河帝「打ち首」
「どうもありがとうございました~」
信西「血生臭い座興はそのへんで宜しいですか?」
後白河帝「う~ん。やっぱ色ボケのくだりは、 軽く反撃してきてもいいんじゃない?」
寵「いえ、私的にはそこは流したいですね」
信西「反省会も後ほど」
後白河帝「よおし右大臣、続きは宴松原じゃ~」
信西「また昼日中から・・・」
後白河帝「よいではないか~」
後白河帝「お前も『そこの者』と 込み入った話をしたいんだろ」
信西「・・・」
後白河帝「ここ(清涼殿)使っていいよ~ それじゃ行こうか右大臣~」
寵「ははーっ。では早速踊り女を 用意(アテンド)しちゃいま~す」
「反省会する気さらっさらないだろ~ このグーメーってば~」
「お褒めに預かり~」
「褒めてな~い」
信西「それではお言葉に甘えるとしましょうか」
信西「義朝殿」
義朝「全く、帝となっても食えぬお方ですな」
信西「賢者か愚者か。 養育者の私ですら、 今もって図りかねています」
信西「帝は行ってしまわれましたが、 日を改めますか?」
義朝「信西殿で構いません。 今の内裏を取り仕切っているは、 他ならぬあなた様なのですから」
信西「清盛のことでしょう?」
義朝「はっ!平氏は先の戦より増長しています」
義朝「近衞の長にありながら西海を支配し、 独自に宋と交易。 私腹を肥やしております」
信西「確かに由々しき仕儀」
信西「新たなる世は公家も武家も 秩序の下に平等に従わねばなりません」
信西「或いは帝すらも」
義朝「その秩序を司るは信西猊下」
信西「そして検非違使の長たる、源氏」
義朝「・・・え?」
信西「法の番人、源義朝。 頼りにしておりますよ」
義朝「ははっ!この宝刀、鬼切にかけて 猊下と帝に命捧げまする!」
義朝「では、失礼致します」
信西「全く、東夷めが。 汚らわしき太刀を振りかざしおって。 殿上を何と心得るか」
信西「頼長の次は清盛。その次はお前だ」
信西「私の創る世にいらぬは源氏も同じ。 王家の目の届かぬ穢れ武者など、 根絶やしにしてくれる」
〇中華風の城下町
鬼丸「なあ、オイラが言うのもなんだけどさ」
鬼丸「本当に家来全員帰しちまっていいのかよ」
清盛「俺一人なら会ってもいい。 そう言ったんだろう?アイツは・・・」
鬼丸「まあ、そうだけどよ」
清盛「ゴリゴリに怒ってんだろな~」
清盛「なにせ王を呪い公家を呪い 武家を呪い僧を呪い、 己のハレをぶち壊した全てを呪って 死んだって噂だからよ」
鬼丸「それも信西が流した噂だろ。 まあ、そっちの方がもう少し 仕え甲斐があるんだけどな」
清盛「どういうこった?」
〇城の回廊
『いたぞ!藤原左府だ!捕らえよ!』
左府「おのれ覚えたか餓鬼畜生どもめが! 我、日本の大魔王となりて、 かならず都に舞い戻り復讐を・・・」
鬼丸「オラああッ! かっこつけてる暇あったら早く逃げろよ! 死にてえのかこのやろう!」
左府「いったあああい!足グネったあああ!」
左府「おんぶ!おんぶ!おんぶ!おんぶ!」
鬼丸「ああくっそ!ちゃんと走れや大魔王!」
〇中華風の城下町
清盛「まあ、血の気が多いわりに 腕っぷしはからっきしだったからな」
清盛「想定外のことが起こると錯乱するところも ガキの頃と一緒だ」
鬼丸「そういうの早く知りたかったよ」
鬼丸「とにかくオイラは左府さんを背負って 追手の目を逃れ、 都を出て方々を転々としたんだ」
鬼丸「で、結局あそこに戻ることにしたのさ」
清盛「『あそこに戻る』って・・・?」
鬼丸「都に来る前、オイラがしばらく 厄介になってた場所・・・」
〇きのこ料理の店
『常闇の世界・・・ってヤツさ』
清盛「・・・き、きのこ?」
CONTINUED


