5 良くある話その3(後編)(脚本)
〇オフィスのフロア
数日後。
川島直哉「えぇ!?こんな物要らない!?」
職員「当たり前でしょ!何でこんな物採用したんですか!!」
職員「これ、ちゃんと確認したんですか!?上の人達は何考えてるんです!?」
川島直哉「ま、待ってくれ!何が不満なんだ!?」
職員「・・・なら、実際見て下さい・・・」
AIアプリ「Yo〜!仕事の事で何聞きたいんだ〜い!?」
川島直哉「え?特に変わった所は無い見たいだが?」
職員「問題はここですよ!」
AIアプリ「HaHa〜!そんな事も分からねぇとかダッセェなぁ!そこの所はなぁ!」
職員「何なんですかこの上から目線!分からない事聞くだけでなんでここまでディスられなきゃならないんですか!?」
川島直哉「えぇ!!これなら若者受けも良さそうだし!何より聞いてて楽しいだろ!?」
職員「小学生ですか!?私達は社会人で、こんな風にされて喜ぶと思いましたか!?」
川島直哉「ほ、ほら!仕事って常に緊張に包まれてるだろ!?こんな風にラップ口調にしたら少しは和らぐし、」
川島直哉「職場が明るくなれば仕事もやり易く!」
職員「それで俺らが不快になってりゃ意味無いでしょ!!外のお偉いさんがこんなの聞いたらどうなります!?」
職員「一気に信用無くしますよ!?」
川島直哉「あ、えっと・・・」
職員「・・・とにかく、こんなの恥ずかしくて使えませんし、これ以上こんな物使うなら、」
職員「退職も視野に入れさせて頂きます・・・」
川島直哉「んな!テメェそれは!」
職員「・・・とにかく、俺らはもうこんな物使いたくありません・・・どうしても導入するってんなら、」
職員「1からデータを見直して下さい・・・」
川島直哉「けっ!何だよあいつら!折角人が作ってやったってのに!」
良くある話、自分を過信すると後で痛い目を見る。
山澤人志「お、おい直哉、お前が作ったAIアプリだが、社員達からの不評の声が溢れ返っているぞ?本当に大丈夫なのか?」
川島直哉「あのなぁおじさん・・・俺は皆が笑顔になれる様にプログラムを組んだんだ!それなのに!」
山澤人志「えぇ・・・ちょっとそれ、おじさんにも見せてくれないか?」
川島直哉「あぁ、良いぜ?」
山澤人志「・・・・・・」
山澤人志「・・・・・・」
川島直哉「どうだすげぇだろ!?これなら職場の空気も・・・」
山澤人志「お前は何を考えているんだこの馬鹿たれ!!」
川島直哉「えぇ!?お、おじさん!?」
山澤人志「良くもこんな恥ずかしくて不快な物を作ろうとしたな!これじゃあ不満が来てもおかしく無いし、」
山澤人志「こんな物外にも出せないだろ!?」
川島直哉「そ、そんなぁ!」
川島直哉「ほ、ほらおじさん!いつも緊張した状態で仕事なんて誰も出来ないだろ!?だから俺こんな風に・・・」
山澤人志「それで他人を不快にさせて良い理由にはならないだろ!こんな物は今直ぐ回収だ!プログラム書き換えの準備をしろ!」
川島直哉「えぇ!?折角作ったのに!?」
山澤人志「人を不快にさせるツールなど要らん!これに従わなければクビだからな!」
川島直哉「わ、分かった分かった!それだけは!!」
その後、川島が作ったAIは即座に回収され、川島はプログラムを書き換えるのだった。
〇繁華な通り
数時間後。
山澤人志「あぁ、直哉のお陰で酷い目にあった・・・何とかお偉いさん方に聞かれる前に回収出来て良かったが、」
山澤人志「最近の若造の考える事はイマイチ分からんな・・・」
山澤人志「まぁ、ウダウダ言っても仕方が無い・・・一杯やってくか・・・」
〇大衆居酒屋
店員「いらっしゃいませ!お一人様ですか?」
山澤人志「あ、はい・・・」
店員「畏まりました!どうぞこちらへ!」
数分後。
山澤人志「くあ〜!やっぱ仕事終わりのお供はこれに限るなぁ!」
山澤人志「ん?」
「お疲れ〜!!」
青山和人「あ〜頑張った頑張ったぁ!俺達が作ったプログラムが採用して貰えるなんて思っても見なかったぜ!」
桐山明日香「それもこれも和人が頑張ったからだよ!」
月島博「本当すげぇよ!自分達の力だけで形にしちゃうんだからさ!」
山澤人志「あれ?あいつらここで何してるんだ?何だか嬉しそうだが・・・」
山澤人志「おい、お前達!」
青山和人「あれ?山澤部長じゃ無いですか?こんな所で奇遇ですね・・・」
山澤人志「久し振りだな・・・随分景気が良さそうな感じだが、何かあったか?」
桐山明日香「あ、えっとですね・・・最近あたし達和人を社長として企業したんです・・・それで最近開発したAIプログラムが」
桐山明日香「別会社で正式採用されて!」
山澤人志「えぇ!?お前達企業したのか!?しかもAIまで使って!?」
青山和人「はい!そうなんですよ!自分でもまさかここまで行くとは!」
山澤人志「そ、そうだったのか!?しかもそっちもAIを!?てか、」
山澤人志「青山、確かお前、AI嫌いじゃ無かったか?」
青山和人「え?何言ってるんです?俺AI嫌いじゃ無いですよ?」
山澤人志「え?それなら何故?」
青山和人「前から考えてたんです・・・自分の力で企業して、自分のプログラムがどれたけ社会貢献出来るかって・・・」
青山和人「AIに頼り切っちゃうと自分の力が鈍っちゃうでしょ?そう言う体制になるのが嫌で、あの時部長が背中を押してくれたから、」
青山和人「決心出来たんです・・・」
山澤人志「そ、そうだったのか・・・でもそれは杞憂だ、直哉が無礼なAIを作成したが、広まる前に私が止めた・・・」
桐山明日香「え?何かあったんですか?」
山澤人志「あぁ、実はカクカクシカジカでな・・・」
青山和人「成る程、確かにあいつならやりそうですね・・・」
桐山明日香「あの態度を見て何と無くでしたが、そうなるんじゃ無いかとは思ってましたよ・・・」
山澤人志「あぁ、正直私も軽率だったよ・・・でも直哉には伸び代があるから簡単には切り捨てられないし・・・」
青山和人「まぁ、確かに・・・」
山澤人志「なぁ、お前達に頼みたい事があるんだが・・・」
青山和人「ん?何です?」
山澤人志「あぁ、実はな・・・」
〇オフィスのフロア
山澤人志「良し!出来た!」
川島直哉「おいおいおじさん・・・こんなショボいので本当に良いのかよ?」
川島直哉「もっとこう、ポップだったり、聞いてて楽しくなる様な・・・」
山澤人志「だから、そう言うのは学生の時までにしろ!社会に出て大切なのは謙虚さと学ぶ姿勢だ!」
川島直哉「んげぇ・・・まぁおじさんが言うなら仕方ねぇけど、」
川島直哉「でも一体どう言う風の吹き回しだよ?自分からプログラムを作りたいだなんて・・・おじさん機械苦手だったろ?」
山澤人志「あぁ、私も正直このままではいられないと思ってな・・・物を教えるならキチンと教えられる様にと青山達に頼んだんだ・・・」
川島直哉「えぇ!?先輩達に教わったの!?良い年して!?」
山澤人志「失礼だな!そうやって要らぬプライドを掲げて何もしようとしない方がもっと恥ずかしいだろ!」
川島直哉「え、あ、うん・・・」
山澤人志「とにかく、私はこれからお前からもプログラム作りを教わるから、お前には確り礼儀を覚えて貰う!」
川島直哉「あ〜分かった分かった!やる!やるからさ!俺も1回戻るな!」
山澤人志「・・・まさか私が、嘗ての部下から学びをこう事となるとはな・・・青山の成長は私が促したし、」
山澤人志「本当に変わるべきは自分なのかもな・・・」
山澤人志「ははは!そうと分かれば!私もあいつらに負けない程成長して見せようじゃ無いか!」
山澤人志「見てろよ皆!今度会う時には、私がDQN商事を一級の職場にして見せるぞ!」
良くある話。自分から変わろうとする奴は大体強い。