2 良くある話その1(後編)(脚本)
〇渋谷マークシティ
数分後。
〇豪華な社長室
職員「育田社長、お客様をお連れしました・・・」
育田光一「あ、お疲れ様です・・・後はこちらでやりますので・・・」
職員「畏まりました!」
矢場井ワルオ「あなたが夏目カンパニーの社長さんですね?」
育田光一「はい!私が夏目カンパニー社長の育田です・・・急ぎの用があるとの事でしたが、本日はどの様なご要件で?」
矢場井ワルオ「単刀直入に言います!ここにいる明石光輝を返して頂けませんか!?」
育田光一「明石君を返せと?何故です?」
矢場井ワルオ「あいつは中卒だと言って俺達を騙してたんですが、あいつがいなくなった途端に会社が回らなくなって!」
育田光一「え?でもそれ相手の事を良く調べなかったあなたの落ち度じゃないですか?」
矢場井ワルオ「うっ!?」
育田光一「中卒だからクビにした・・・それはあなた方が決めた事であり、その後の責任を取れる自信があるからやった事・・・」
育田光一「でも実際そうなって見たら何も出来ない・・・何をどうして良いか分からない・・・」
育田光一「自分達を過信して自滅しただけじゃ無いですかね?」
矢場井ワルオ「ぐはつ!!」
育田光一「僕も明石君の実績を見ましたが、確かにあれは誰でも出来る様な事じゃ無い・・・」
育田光一「技術力もトップクラスで誰もが喉から手が出る程欲しくなる程の逸材・・・」
育田光一「そんな彼を学歴だけで判断して自ら手放すなど、家事をまともに熟せない夫が家事が出来る妻を手放す様なもんですよ?」
育田光一「正直ビックリしましたよ!限られた数の1人である彼を簡単に切り捨てるだなんて!明石君を雇ったお陰で」
育田光一「内の業績は鰻上りですよ!」
矢場井ワルオ「そ、そんな・・・あいつ1人でそれだけの・・・」
矢場井ワルオ「な、なら何故奴は自分がナーツーメ大学の首席だと隠してたのですか!?」
育田光一「あれ?そんな事も分からないとは、あなたの底が知れますね・・・それは彼が学歴だけじゃ出来ないって分かってたからですよ・・・」
育田光一「良くあるじゃ無いですか・・・中卒でも実力を培って上り詰めた人、自分の力を理解して栄光を勝ち取った人・・・」
育田光一「そもそも僕らには自分で考えて行動する力があるんです・・・学歴を自慢してウダウダ抜かしてる内に、」
育田光一「自分より学歴の低い人間に追い抜かれてるって気付かなかったんですか?」
矢場井ワルオ「あ、いや・・・その、」
育田光一「さらに追い打ちをさせて頂きますと・・・」
矢場井ワルオ「う、うわあぁぁ!!もう止めて下さい!!言いたい事は良く分かりましたから!!」
育田光一「え?もうギブアップですか?」
矢場井ワルオ「も、もう止めて下さい!私にはもう何も出来ません・・・もう勘弁して下さい・・・!!」
育田光一「そうですか・・・なら責めて、あなたが押し掛けて僕の時間を奪った事、そちら側の社長に報告させて頂きますね?」
育田光一「ん?どうぞ?」
明石光輝「社長、頼まれてた資料が完成しました・・・」
育田光一「あ!明石君!待ってましたよ!早速拝見させて下さい!」
明石光輝「はい、こちらです・・・」
育田光一「ふむふむ成る程・・・」
明石光輝「あの、さっき矢場井さんが部屋から逃げてく所を見たんですが、何かありましたか?」
育田光一「あ、気にしないで下さい・・・後で僕の方で片付けますので・・・」
明石光輝「そうですか?」
育田光一「はい、それはそうと、このプロジェクトは些か欠陥が見えますね・・・」
明石光輝「え!見直しはキチンとしたんですが・・・僕もやられますか?」
育田光一「やっちゃいましょうか!」
〇異世界のオフィスフロア
数時間後。
矢場井ワルオ「あぁ、酷い目にあった・・・何なんだあの社長は・・・」
部長「矢場井君!君は何て事をしてくれたんだ!?」
矢場井ワルオ「え?部長?何かありましたか?」
部長「先程夏目カンパニーの社長からクレームが来た!向こうが多忙にも関わらず押し掛けて来て明石君を返せと無礼を働いて!」
部長「君は一体何を考えている!?もっとまともなやり方があっただろうに!!」
矢場井ワルオ「えぇ!そ、そんな事が!?」
部長「夏目カンパニーからのクレーム、明石君不在のこの状況、一刻も早くこの状況を収めなければどうにもならん!」
部長「矢場井君!何としてもこの状況を打開するんだ!良いな!!」
矢場井ワルオ「は、はい!!」
部長「頼むぞ・・・それと、もう1人で勝手な判断をしない事だ・・・」
矢場井ワルオ「も、もしかして、俺が良かれと思ってやった事って、間違いだったんじゃ・・・」
矢場井ワルオ「あ、はい!こちら悪態商事の矢場井ですが何か?」
良くある話、自分の勝手な判断で上手く行かなくなる。