アイドル市長

りをか

市長、商店街を蘇らせる!(脚本)

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〇個別オフィス
  月曜日、愛香はぼんやりしながら業務をしていた。
星野愛香「はぁ~、昨日のアイラとミレイ可愛かったなぁ~ あんな間近で二人を見たの初めて。 陶器みたいに白くて肌もツヤツヤしてたし」
星野愛香「まるでフランス人形みたいだったなぁ・・・」
石川「市長!どうしました?顔真っ赤ですよ?まさか熱でも?」
星野愛香(しまった。 今が勤務中なのすっかり忘れてた)
星野愛香(市長モードに入らないと・・・)
星野愛香「別に何でもないわ・・・」
石川「そうですか・・・ ならいいですけど・・・」
石川「それより市長、これ飲んでみて下さい」
  石川は愛香にティーカップを差し出した。
星野愛香「これ・・・何? 新しい紅茶?」
石川「いいからいいから。 さっ、グイッと飲んで下さい」
星野愛香「グイッとって、お酒じゃないんだから」
  愛香は警戒しながら、ティーカップに口を付け飲み始める。
星野愛香「石川くん、これは何? 紅茶じゃないよね?」
石川「はい。 そちらは、ジャコウネコの糞です」
星野愛香「ジャコウネコの・・・糞?」
石川「はい」
星野愛香「石川くん!私に糞を食べさせるなんてどういうつもり?」
石川「あははっ、そんな糞食べたくらいで興奮しないで下さいよぉ。 糞だけに・・・ 何てねっ」
星野愛香「ちっとも面白くないんですけど・・・」
石川「正確に言うと、コーヒーの実を食べたジャコウネコの腸から発酵されたものでそれが糞となり、回収して焙煎・乾燥させたものです」
石川「風味がよくて、最高級のコーヒーって呼ばれてるんですよ? ホテルとかで飲むと、一杯8000円するみたいです」
星野愛香「はっ、8000円!?」
星野愛香(8000円もあれば、ピンキーのグッズいくら買えるかしら・・・)
星野愛香「石川くん、これ政務活動費で使ってないでしょうね?」
石川「まさか。 これは水野さんから頂いたんですよ。数量限定で販売してるみたいです」
星野愛香「水野さんが?」
石川「はい。 カフェの件で色々とお世話になったからって。 今度の週末、イベントで猫の譲渡会もするみたいですよ」
石川「それと水野さん、これを機にペット資格アドバイザーを取得し、ペットの悩みとか相談を聞いてアドバイスしてるみたいです」
星野愛香「そうなんだ。 水野さんも頑張ってるんだね」
石川「あと、水野さんの更なる目標は猫ちゃんのショップを作ることらしいですよ。 猫ちゃんの洋服とかおもちゃとかの販売」
石川「いやぁ、志高いっすねぇ。 市長、負けていられませんよ? 我々も上を目指していかないと!」
星野愛香「そうね。 私達も市の為に頑張らないと。 じゃあ、これから視察に行くわよ! 石川くん、クルマお願い」

〇原宿の通り(看板無し)
  二人は視察で、商店街を訪れる。
星野愛香「次なる課題はこの古びた商店街ね」
石川「シャッターも降り、人もほとんどいませんよ。 ここは正にゴーストタウンです」
  二人は人気のない商店街を歩く。
  すると、一人のおじさんが寂しそうに立っていた。

〇原宿の通り(看板無し)
星野愛香「こんにちは」
住人「何だ、女市長さんか・・・」
石川「どうしました?こんなところで・・・」
住人「どうもしとらん・・・ ただ、この商店街を眺めてただけだ あんた達こそどうした? こんな所で・・・」
星野愛香「私達は、視察で商店街を訪れました」
住人「ふんっ、視察視察って結局は何もせんのやろ? 前の市長もそうだったからな・・・」
星野愛香「いえ、私は決してそのようなことはしません!必ず、この商店街をどうにかしてみせます」
住人「猫カフェか何か知らんが、んなもん作って ・・・ あんたみたいな女市長に何が出来るんじゃ!」
星野愛香「お怒りなのはごもっともです。 私が市長じゃ頼りないって思われるのも承知の上です」
星野愛香「ですが、市長になったからにはこの町に全身全霊をかけるつもりでいます。 私もこの町の人間ですから・・・」
住人「ふんっ、せいぜい頑張るんじゃな。 まっ、期待はしとらんよ」
  そう言うと、住人は去って行った。
石川「市長、随分と強気に出ましたねぇ。 あのじいさん、前の市長にも噛み付いてきたんです」
星野愛香「そうだったの?」
石川「はい。 あのじいさん、この商店街で魚屋をしてたんです」
石川「ですが、近くに大きなスーパーができ商店街で買い物するお客さんが減ってしまった。 結局、そのスーパーも潰れたんですけどね」
星野愛香「私もよくそのスーパーで買い物してたわ。 日用品も衣料品もあって、そこだけが唯一買い物するところだったの」
石川「そうだったんですね」
石川「けど、何で潰れちゃったんですか?」
星野愛香「恐らく、隣り町に大きなディスカウントストアーやデパートが出来たからじゃないかしら。それでそっちに人の流れが出来てしまった」
石川「隣り町は、ここより人口増えてますもんね。 やはり、人口が少ないと難しいんですかね」
星野愛香「ちょっと!さっきの意気込みはどうしたのよ!私達も上を目指すんじゃなかったの?」
石川「そっ、それはそうですけど・・・」
星野愛香「あのおじいさんにも、どうにかしてみせますって言ってしまったのよ? 今更後には引けないの」
石川「う~ん、よそにあってここにはないもの・・・ ここにあってよそにはないものを・・・か」
星野愛香「石川くん、確か前に集計したアンケートに、この商店街のこと誰か書いてあったわよね?」
石川「はい、ファッションストリートを作ってほしいとか、インスタ映えするスポットを作ってほしいとか書いてありました」
星野愛香「若い人の意見か・・・」
星野愛香「高齢者の方の意見はなかった?」
石川「商店街に魚屋さんや肉屋さん、惣菜屋さんを作ってほしいとの意見がありましたよ」
石川「お年寄りの方は、車を持ってる方がほとんどいませんし、店のレジもセルフレジになったりしてて、お年寄りさんには不便らしいです」
石川「それに、前みたいに気兼ねなく店員さんに話しかけることも出来ずらくなってるみたいですね」
星野愛香「コロナ禍で、何もかもが変わってしまったものね・・・」
星野愛香「石川くん、あなたに課題を出すわ」
石川「えっ?僕に課題ですか?」
星野愛香「そうよ。来週までにどうすればこの商店街に人が集まるか考えてきてほしいの・・・」
石川「市長は?」
星野愛香「私?」
星野愛香(参ったなぁ。 今週末は、ボイストレーニングやダンスレッスンも控えてるのに。 正直、商店街のことなんて考えてられないよ)
石川「市長? どうしました?」
星野愛香「なっ、何でもないわ。 私は週末、ちょっと用事があって今はそっちを優先しなくちゃならないの」
星野愛香「だから、一旦この件はあなたにお任せするわ」
石川「そんなぁ。僕は秘書ですよ? いくらなんでも課題とか無理ですって!」
石川「それに、僕だって今週末はちょっとした予定が・・・」
星野愛香「何よ。 予定って・・・」
石川「イベントに行くんですよ。 イ・ベ・ン・ト」
星野愛香「イベントですってぇ? 一体何のイベントよ?」
石川「実は今、めっちゃハマってるアイドルがいるんですよぉ~ ピンキームーンって二人知ってます?」
星野愛香(うそっ!? まさか、石川くんもピンキーにハマってるの?そのうち、Polarisにハマったりすることないよね?)
  石川は、愛香の心配をよそにピンキーの
  話しを延々とし始める。
石川「何か、近いうちに重大発表があるみたいなんです。 何かなぁ。 あっ、もしかしてデビューだったりして。楽しみだなぁ~」
石川「そうだっ!」
石川「市長、いいこと思いつきました。 この商店街に、ピンキー呼びましょうよ。 そしたらすぐに人集まりますよ?」
星野愛香「あのねぇ、ピンキーはそんなに暇じゃないの! 今ライブに向けて、振りの練習とかで忙しいんだから!」
石川「えっ、何で市長がそんなこと知ってるんですか?」
星野愛香(しっ、しまった。 どう誤魔化そうかしら・・・)
石川「ひょっとして・・・」
石川「市長もピンキーがお好きなんですか?」
星野愛香「ちっ、違う。 ピンキーなんて、私知らない」
石川「ですよねぇ。 市長は、三度の飯より紅茶がお好きですもんね」
星野愛香「そっ、そうよ? 私は紅茶が好きなのっ!」

〇カウンター席
  昼休み、愛香は一人猫カフェを訪れる。
水野楓「星野市長、お久しぶりです」
星野愛香「水野さん、この間はジャコウネコのコーヒーありがとうございました」
水野楓「早速、飲んでくれたんですね。 いかがでしたか?」
星野愛香「すごく美味しかったです。 やっぱり、最高級のコーヒーは格別ですね」
水野楓「お店でも人気なんです。 中々飲めない代物だから、セレブの人に人気が高くて・・・」
水野楓「いやぁ、お金持ってる人は違いますね~」
星野愛香(水野さん、最近石川くんとキャラ被ってきたな・・・ 前はこんな感じじゃなかったのに・・・)
水野楓「あっ、石川さんはいらしてないんですか?」
星野愛香「えぇ、今日は私だけで来ました」
水野楓「そうなんですね。 どうぞゆっくりしてって下さい」
  コーヒーを飲み、愛香は考えていた。
星野愛香(駅前は、猫カフェで少しは客足が増えたけど、あそこの商店街はどうしたらいいかしら・・・)
  そこに水野がやって来る。
水野楓「市長、良かったらこれどうぞ」
  水野は愛香の前に、紅茶を置いた。
星野愛香「これは?」
水野楓「シナモンティーならぬ『シニャモンティー』です。 うちには、看板猫のシナモンがいるからシナモンティーとかいいかなと思って」
水野楓「あと、柚子茶も追加メニューに入れたんですよ。あの新入り猫ちゃん『ゆず』って名前にしたんです。 石川さんには悪いけど・・・」
星野愛香「ううん、あの猫ちゃんには『ウバ』より『ゆず』の方が断然いいよ。シナモンティーかぁ。どんな味かなぁ。 いただきます」
星野愛香「うん。シナモンのスパイシーな風味があって美味しい」
水野楓「シナモンティーには、血行促進やリラックス効果、それに美肌効果もあるんですよ。 女性には嬉しいですよね」
星野愛香「へぇ~、そんな効果があるんだ」
星野愛香「人気商品になりそうだね。 ネーミングも面白いし・・・」
水野楓「はい。 石川さんに伝授してもらいました」
星野愛香(全く。 石川くんたら、水野さんに何教えてんのよ! 有能なのはダジャレだけじゃない)
  愛香が一人悶々していると、近くの席から女性の話し声が聞こえてきた。
女子高生「こないださぁ、話題のここに行ってきたんだぁ」
女子高生「え~、いいなぁ。 彼氏と行ったの?」
女子高生「まぁね。 インスタ見る?」
女子高生「見たい見たい」
  二人はスマホを見ながら、終始楽しんでいる。
女子高生「いいなぁ~。 私も彼氏欲しいよぉ」
女子高生「真美も早く作んないとね。 今度、ハロウィンパーティーするんだぁ」
女子高生「超リア充満喫してるじゃん。 理花だけズルいよぉ」

〇カウンター席
星野愛香(恋ばなかぁ~。 私にもそんな時代あったなぁ。 裕太とテーマパーク行ったり、ハロウィンパーティーもしたなぁ~)
星野愛香(って、何でここに裕太が出てくんのよっ! アイツには、散々イヤな思いされてきたのにっ!)
「けどさ、ここ入場料高くて中々行けないんだよね」
「えっ、そうなの?」
女子高生「うん。だから一回行ったらもぉいいかなって感じかな・・・」
女子高生「へぇ、そうなんだ・・・」
女子高生「ここにもこんなスポットがあればいいのにねぇ」
女子高生「それはいくら何でも無理っしょ」
女子高生「だよねぇ~」
星野愛香「あの、お話し中すみません」
星野愛香「私、ここで市長をしてます。 星野と申します」
  愛香は二人に名刺を渡した。
星野愛香「もし良かったら、さっき話してた話題のスポット見せてもらえませんか?」
女子高生「は、はい・・・」
  女子高生は愛香にインスタを見せる。
星野愛香「ここは一体何のスポットですか?」
女子高生「ここはアートトリックストリートです」
星野愛香「アートトリックストリート?」
女子高生「はい。道路や壁に立体的に書かれてる絵のことです。目の錯覚を利用するやつ」
星野愛香「あ~、だまし絵みたいな?」
女子高生「それです。 色んなアートがあって、面白かったですよ? 市長さんも行かれてみて下さい。 彼氏と一緒に」
星野愛香「そっ、そうですね・・・」
  愛香は苦笑いした。
女子高生「ねぇ、そろそろ行かない?」
女子高生「そうね。 それじゃあ、市長さん」
  二人は猫カフェから去って行った。

〇カウンター席
星野愛香「アートトリックストリートかぁ。 確かに面白そうね・・・」
星野愛香「そうだっ! これだわっ!」
  愛香はパソコンを開き、その場で何かを書き込んでいた。

〇稽古場
  週末、愛香はPolarisとして練習スタジオに来ていた。
月島虹花「二人とも久しぶりだね。 どう?課題曲練習した?」
立花花音「あんま自信ないけど、まぁそれなりに練習したかな」
月島虹花「愛香は? 市長の仕事もあるから、あまり出来なかったんじゃない?」
星野愛香「ピンキーの歌は、日頃から歌ってるから大丈夫だと思う」
月島虹花「そっか。何かオーディションよりこっちが緊張しちゃうよね。 私、ジャージとか高校生以来だもん」
立花花音「言えてる。 私もそうだもん」
星野愛香(私なんか、七年近く着てないよ・・・ まさかこの年齢で、ジャージ着るとは思わなかったなぁ)
月島虹花「そういえば、ピンキー今日どっかの大学でライブするみたいだね」
立花花音「知ってる。 行きたかったなぁ」
星野愛香(もしかして、石川くんはこの大学のイベントに行ってるのかしら)
ボーカル講師 津田「皆さん、話しはこれくらいにして練習しますよ!」
  気が付くと、ボーカル講師の津田がピアノの前に立っていた。

〇稽古場
ボーカル講師 津田「全く。いつになったらおしゃべりが終わるのかしら?」
月島虹花「すっ、すみません」
ボーカル講師 津田「まっ、いいわ。 ボーカル講師の津田です。 アイドルになったからには、ビシビシ指導していきますから、よろしくお願いします」
ボーカル講師 津田「因みに、ピンキーの講師も私がしてます。 だから、同じ様に鍛えていきますからね! いいですか?これはパワハラじゃありません」
星野愛香「はっ、はい・・・」

〇稽古場
ボーカル講師 津田「では、今から課題曲を一人ずつ歌ってもらいます。歌唱力のレベルで誰がセンターをするか決めていきます。 まずは月島さんね」
月島虹花「はいっ、お願いします・・・」
  こうして、三人の歌唱力テストが終わった。
ボーカル講師 津田「はっきり言って、カラオケレベルの歌唱力ね。抑揚も何にもない。声は小さいし、それでアイドルになるつもりかしら?」
ボーカル講師 津田「一時間だけ時間をあげます。 それまでに、自分で欠点を見つけ再度歌ってもらいます」
ボーカル講師 津田「自身で見つけることが出来ないなら、メンバーにアドバイスをもらっても構いません。それでは始めて下さい」
  三人は一時間で、それぞれの欠点を見つけアドバイスをもらい、再度歌唱力テストを行った。
ボーカル講師 津田「皆さん、お疲れ様でした。 先ほどに比べたら、少し良くなった気はします。 けど、まだまだです」
ボーカル講師 津田「そのような中で、早速センターとグループのリーダーをこれから決めていきます」
ボーカル講師 津田「まず、センターは・・・」

〇稽古場
ボーカル講師 津田「月島さん、あなたにお願いするわ」
月島虹花「えっ、私がですか?」
ボーカル講師 津田「何?出来ないの? なら、他のメンバーにするしかないわね・・・」
月島虹花「まっ、待ってください! やります!センター、私にやらせて下さい」
ボーカル講師 津田「いいわ。 じゃあ、センターは月島さん。 リーダーは・・・」
ボーカル講師 津田「星野さん、あなたよ」
星野愛香「えっ、私ですか!?」
ボーカル講師 津田「そうよ。 あなた、確か市長をされてるわよね? リーダーシップが垣間見えて良かったわよ」
星野愛香「あっ、ありがとうございます」
ボーカル講師 津田「さっ、そうと決まったらレッスン始めるわよ!」

〇個別オフィス
  月曜日、愛香は喉を気にしながら業務を行う。
星野愛香(何か、昨夜から喉痛いなぁ。 レッスンのせいかしら・・・)
石川「市長、おっはようございます~」
星野愛香「おはよう。 石川くん、イベントはどうだった?」
石川「もう、さいっこうでしたよ~ ピンキーから、ファンサ貰っちゃいました」
星野愛香「ふ~ん、そうなんだ・・・」
石川「市長、元気ありませんね。 体調でも悪いんですか?」
星野愛香「ちょっとね・・・ でも大丈夫よ。 それより、課題はどうなったかしら?」
石川「あっ・・・」
石川「課題のこと、すっかり忘れてました~」
星野愛香「そんなことだろうと思ったわ」
石川「市長は? 何かいいアイデアありました?」
星野愛香「あるにはあったわよ。 石川くん、アートトリックストリートって知ってる?」
石川「アートトリックストリート? なんですか?それ」
星野愛香「口頭で言うより、書面の方が早そうね・・・」
  愛香は石川に、猫カフェで作成した提案書を見せる。
  石川はそれを黙って読んでいた。
星野愛香「どう思う?」
石川「市長・・・」
星野愛香「なっ、何よ?」
石川「ナイスアイデアじゃないですかぁ。 面白そうですよ。 早速形にしましょ」
石川「その前に、アート作家と交渉しないと」
星野愛香「そのことなんだけど、アート作家に依頼はしないの」
石川「どういうことですか? 交渉しないって」
星野愛香「私が考えてるのは、美大に通ってる学生さんや専門学校生にお願いしようと思ってるの。プロの作家だとコストがかかってしまうから」
星野愛香「それに、若い人の方が感性もありそうで色んな作品が出来そうな気がするの」
石川「確かに、若い人の方が独創性はありそうですからね。市長、今から交渉しに行きましょう」
星野愛香「そうね」

〇おしゃれな大学
  二人は市から離れ、市内の大学や専門学校を訪れて交渉の話しを進める。困難を極めるかと思ったが、両校とも快く承諾してくれた。

〇原宿の通り(看板無し)
  それから一週間後、商店街に学生が集まりアートトリックストリートの制作が始まった。
星野愛香「皆さん、作業お疲れ様です。 良かったらこれ差し入れです。 皆さんでどうぞ」
  愛香は、弁当とお茶の入った箱を渡した。
大学の教師「こんなにたくさん。 星野さん、ありがとうございます」
星野愛香「いえ、制作は順調ですか?」
大学の教師「はい。 皆楽しんで取り組んでますよ」
石川「それはよかったです」
星野愛香「出来上がり、楽しみにしてますね」
大学の教師「はい。 期待してて下さい」

〇商店街
  そして一か月後、ついにアートトリックストリートが完成した。カラフルなアスファルトが並び、壁にもアートが描かれた。

〇商店街
石川「市長、学生さん達のおかげでこのゴーストタウンも随分と変わりましたねぇ」
星野愛香「そうね。 まさかここまで変わるなんて思ってもみなかったわ」
石川「後はここに、どうやって人を呼び込むかですね」
星野愛香「ゴーストタウン・・・」
星野愛香「そうだ、これだわ!」
石川「市長、何か思いついたんですか?」
星野愛香「えぇ、とびっきりいいアイデアをねっ」

〇商店街
  10月31日
  商店街に仮装をした人々が集まった。
  キッチンカーや特殊メイクをその場で体験出来るコーナーもあり、賑わいを見せる。
石川「市長、ハロウィンイベント大成功ですね。 アートトリックの方も人気ですし」
星野愛香「ゴーストタウンだから、ハロウィンとかけてみたの」
石川「なるほど! この幽霊の町に、死者を呼び寄せたってことですね」
星野愛香「そういうこと」
  二人が笑い合ってると
  誰かが石川の肩を叩いた。
「うわぁ~、 本物のお化け~」
住人「バカもんっ! 誰が本物のお化けじゃ」
石川「だって、 えっ? もしかして、魚屋の・・・じいさん?」
住人「全く。相変わらず失礼なやつじゃ! それに、わしの名前は魚屋じゃない! 『魚沼』じゃ!」
星野愛香「魚沼さん、すっ、すみません。 うちの石川が大変ひどいことを・・・」
石川「うっ、魚沼さん。 入院中なんですか? 顔も怪我されてるし・・・」
星野愛香「いっ、石川くん。 違うわよ! 魚沼さんは、仮装してるの!」
石川「そうなんですか? すいません。 僕てっきり、その顔のキズ本物かと思っちゃいました」
住人「わけの分からんヤツに、特殊メイクってのをされたんじゃ・・・ 後、この病院着を着させられてな・・・」
星野愛香「そうだったんですね・・・」
星野愛香「あの、何か私達に御用でしょうか」
住人「とりあえず、礼を言おうと思ってな・・・」
星野愛香「お礼・・・ですか?」
住人「一応、この商店街に人を集めてくれたことをじゃ。 まだ、あんたに期待はしとらんが一応礼だけ言っておく。 それだけじゃ」
  魚沼はそう言って去って行った。

〇商店街
石川「何か・・・ 魚沼さんって、いい人か悪い人か分かんないですね」
星野愛香「とりあえずは・・・ いい人なんじゃない?」

コメント

  • ゴーストタウンが賑やかに!🎃
    魚屋のおじさんも認めてくれて良かったなぁ。星野市長、絶好調ですね。

    公務員とアイドル。二足の草鞋を履いて人生を歩めるか。
    続きが楽しみです。

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