妖怪テケテケ事件(脚本)
〇駅のホーム
A子「結局終電になっちゃった」
A子「毎日サービス残業辛すぎ」
〇学校脇の道
A子「は! 誰?」
妖怪テケテケ「おほほほほほ」
A子「!!!!」
A子「きゃあ!!!!!」
妖怪テケテケ「ほほほほほほほほほほほほほほほほ」
妖怪テケテケ「ほほほほほおほおほほほほほおほおほほほほほほほほほほほほほほほほほ」
〇黒
A子「ぎゃあああああ〜ーーー!!!」
A子「・・・」
A子「ほほほほほほおほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ」
〇映画館の座席
「・・・」
〇映画館の入場口
樺島 ここね(かばしま ここね)「『妖怪テケテケ』、怖かったね!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・ぐぬぬぬ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「お、お兄ちゃん?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「妖怪テケテケに追いかけられた女性を 救えなかったのが悔しくて」
樺島 ここね(かばしま ここね)「って、ホラー映画だし!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「シーズン2では、僕が助けてやるからな!!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「出演する気なんだ!?!?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「はい。ゾンビ課 樺島・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・!!」
〇黒
妖怪テケテケ事件
〇街中の交番
「見たんですよ!」
「はっきりこの目で!!!」
〇取調室
男子高校生「下半身がない血だらけの女の人が 追いかけてきて」
男子高校生「あれは妖怪テケテケだ!!!」
警察官「妖怪テケテケ? 都市伝説だろ?」
男子高校生「早く捕まえてくれよ!!」
警察官「冗談はいいから 犯人像をさっさと話しなさい」
男子高校生「本当なんですよー!!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ゾンビ課の樺島です。 襲われた被害者はこの方ですか?」
〇警察署の廊下
警察官「申し訳ありません!」
警察官「特徴からしてゾンビかと早とちりして ゾンビ課に連絡を・・・!」
警察官「被害者は、妖怪テケテケの仕業だと言っていまして・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「襲ってきた犯人が妖怪ってことですか!?」
警察官「実はここ最近、目撃情報が寄せられてまして・・・」
〇学校脇の道
夜、帰宅途中に
テケテケテケテケテケテケ
という足音が聞こえてきて
振り返ると
背後に下半身のない女が・・・
〇警察署の廊下
警察官「妖怪に見せかけた事件の可能性も あると思っているんですが・・・」
〇オフィスのフロア
平 光和(たいら みつかず)「なるほど、学生を追いかける下半身がない妖怪と・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ゾンビの可能性もありますので」
樺島 一心(かばしま いっしん)「うちでも捜査することになりました」
平 光和(たいら みつかず)「では、提案なんだが・・・」
〇駅前ロータリー(駅名無し)
樺島 ここね(かばしま ここね)「お兄ちゃんが高校生の格好・・・」
樺島一心(かばしまいっしん)「仕方がないだろう!」
樺島一心(かばしまいっしん)「被害者が全員男子高校生だから」
樺島一心(かばしまいっしん)「僕が囮になるしか!」
樺島一心(かばしまいっしん)「・・・って、 やはり年齢的に無理があるかな?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「はあ、・・・尊い」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あ、あの! 玄関先に、拡大したパネル貼ってもいいかな!!」
樺島一心(かばしまいっしん)「流石に恥ずかしいーーー!!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「それで妖怪テケテケは、この駅の近くで目撃されてるってことだよね」
樺島一心(かばしまいっしん)「テケテケが狙うのは、塾帰りの男子学生」
樺島一心(かばしまいっしん)「そろそろ、9時過ぎ。 テケテケが出没する時間だ」
樺島一心(かばしまいっしん)「僕が囮になるから もしゾンビだった時は頼む!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「はぁーい♪」
〇学校脇の道
樺島一心(かばしまいっしん)(妖怪テケテケ そんなに簡単に遭遇できるものか?)
樺島一心(かばしまいっしん)(あ、あれはまさか?)
妖怪テケテケ??「・・・い・・・・い」
樺島一心(かばしまいっしん)(でたぁああーーー!!)
樺島一心(かばしまいっしん)「来い!! 妖怪テケテケ!」
〇駅前ロータリー(駅名無し)
警察官「おい、そこの子。 こんなところで何してる?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あ、っえっと!」
警察官「子供が出歩く時間じゃないぞ。 お父さんかお母さんは?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あ、あわわわ!!」
警察官「あ! ちょっと!」
〇学校脇の道
樺島一心(かばしまいっしん)「おーい。ここねー! いったい何をしてるんだ?」
テケテケテケテケ・・・・
樺島一心(かばしまいっしん)「やばい! 近づいてきてる!」
テケテケテケ・・・・・
妖怪テケテケ??「・・・」
樺島一心(かばしまいっしん)(・・・と、止まった??)
妖怪テケテケ??「・・・」
樺島一心(かばしまいっしん)(後ろにいるの・・・って・・・)
ゾンビ「あー〜ーうーーーー」
樺島一心(かばしまいっしん)「よく見たら、妖怪じゃなくって! ゾンビじゃねえかー!」
ゾンビ「・・・うう〜〜〜」
〇広い公園
樺島一心(かばしまいっしん)「はあっ、はあっ・・・」
樺島一心(かばしまいっしん)「どうにか逃げ切ったか?」
樺島一心(かばしまいっしん)「って、逃げてどうする!!!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「お兄ちゃん!!!」
樺島一心(かばしまいっしん)「ここね!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「テケテケは?」
樺島一心(かばしまいっしん)「それが・・・」
「い〜〜〜あ〜〜〜」
樺島 ここね(かばしま ここね)「妖怪テケテケ!!」
ゾンビ「あ〜〜〜〜〜」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ゾンビじゃん!!」
ゾンビ「ああ・・・ううう」
樺島一心(かばしまいっしん)「何か言ってるようだが・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「高校生の夜の独り歩きは危ない。だって」
樺島一心(かばしまいっしん)「僕を心配してくれたの?」
ゾンビ「・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あっ!!」
〇広い公園
樺島一心(かばしまいっしん)「ああ・・・逃げられた・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「これあの人の落とし物だよ」
樺島一心(かばしまいっしん)「妖怪テケテケの?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「チェーンが切れちゃったみたい。 直せるかなあ?」
樺島一心(かばしまいっしん)「署に戻って調べてくる!」
〇オフィスのフロア
平 光和(たいら みつかず)「つまり、妖怪テケテケはゾンビで」
平 光和(たいら みつかず)「そのゾンビは夜遅くに帰宅する高校生を 見守っていたと?」
樺島一心(かばしまいっしん)「怪我をした学生が」
樺島一心(かばしまいっしん)「自分で怪我したのに、 テケテケのせいにしたようで」
樺島一心(かばしまいっしん)「テケテケが人を傷つけてはいませんでした」
平 光和(たいら みつかず)「学生を追いかける異常行動の原因を 突き止めないといけないね」
樺島一心(かばしまいっしん)「それとこれを」
平 光和(たいら みつかず)「『ねがいごとをかなえるけん」」
平 光和(たいら みつかず)「「やまとやまだいいちしょうがっこう 1ねん3くみ てじま なぎ 』」
樺島一心(かばしまいっしん)「テケテケが落としたペンダントの中に入っていたものです」
平 光和(たいら みつかず)「調べてみよう」
平 光和(たいら みつかず)「ところで学生服、案外似合っているよ」
樺島一心(かばしまいっしん)「お、お恥ずかしい限りです」
〇オフィスのフロア
平 光和(たいら みつかず)「例の件、身元がわかったよ」
平 光和(たいら みつかず)「東京都大江戸区の手嶋恵子さん 失踪当時は48歳」
平 光和(たいら みつかず)「人相的にも、ペンダントに入っていた」
平 光和(たいら みつかず)「『てじまなぎ』くんの母親で間違いない」
樺島 一心(かばしま いっしん)「この住所・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「MIMINプラザから近いですね!」
平 光和(たいら みつかず)「失踪届は・・・ 手嶋さんの職場の人が出している」
樺島 一心(かばしま いっしん)「息子さんと二人暮らしなのに?」
平 光和(たいら みつかず)「息子さんは恵子さんが失踪する前に、」
平 光和(たいら みつかず)「失踪届が出されているんだ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「じゃあ、息子さんも・・・」
平 光和(たいら みつかず)「息子さんの失踪と、彼女の異常行動」
平 光和(たいら みつかず)「何か関係性があるかもしれないね」
〇学校の校舎
教師「こちらがお探しの卒業アルバムです」
教師「あの年はゾンビのバンデミックがあったでしょう?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「かなり多くの方が犠牲に・・・」
教師「うちの生徒もそうです」
樺島 一心(かばしま いっしん)「まさか手嶋くんも・・・?」
教師「いえいえ、 手嶋は、元気にやってるみたいですよ」
教師「手嶋からの年賀状です」
教師「今もここに住んでいるかは わかりませんが・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「お預かりいたします」
〇中規模マンション
「帰ってください!」
〇おしゃれな廊下
手嶋 ナギ「母とは縁を切りました」
手嶋 ナギ「今更、母に会って欲しいなんて言われても!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「一度でいいですから!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「あ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「聞く耳持たずか・・・ 困ったな」
樺島 ここね(かばしま ここね)「息子さんと、何があったんだろう?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・」
〇警察署の入口
〇オフィスのフロア
樺島 一心(かばしま いっしん)「また、テケテケの通報が?」
平 光和(たいら みつかず)「このままだと、 ゾンビ地区行きもあり得るよ」
樺島 一心(かばしま いっしん)(早くどうにかしないと!)
〇警察署の入口
〇中規模マンション
手嶋 ナギ「またあんた達ですか」
手嶋 ナギ「しつこいですよ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「実は、恵子さんについて」
樺島 一心(かばしま いっしん)「あなたに、お伝えしなくてはならないことがあるんです」
樺島 一心(かばしま いっしん)「一度だけ、お時間をもらえませんか」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ご協力いただけたら、 2度と、ここには来ません」
手嶋 ナギ「・・・」
〇広い公園
手嶋 ナギ「で・・・、なんで制服なんです?」
樺島一心(かばしまいっしん)「諸事情がありまして」
樺島一心(かばしまいっしん)「あなたのお母様、 学生服にしか反応しないんです!」
手嶋 ナギ「???」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あ! きた!」
テケテケテケテケ・・・
ゾンビ「うー。あーーー」
手嶋 ナギ「ゾ・・ゾンビ!?」
手嶋 ナギ「あ! 足が・・・!」
ゾンビ「うー。あーーー」
樺島一心(かばしまいっしん)「おそらく 手嶋恵子さんがゾンビになった後」
樺島一心(かばしまいっしん)「下半身を失われてしまったのかと」
手嶋 ナギ「お・・・ふく・・・ろ?」
ゾンビ「うーーーー。あーーーー」
樺島一心(かばしまいっしん)「これに見覚えがありますか」
手嶋 ナギ「こ、これは!!」
手嶋 ナギ「僕が子供の頃にあげたものです」
手嶋 ナギ「一体どこに??」
樺島一心(かばしまいっしん)「恵子さんがつけていた ペンダントの中にありました」
手嶋 ナギ「・・・!!」
手嶋 ナギ「あれは、僕の母・・・なんですね」
手嶋 ナギ「僕があげた『願い事を叶える券』」
手嶋 ナギ「ずっと持ってたんだ」
樺島一心(かばしまいっしん)「実は、恵子さん 夜遅くに男子学生を見かけると」
樺島一心(かばしまいっしん)「帰宅できるか心配になって 着いていってしまうようでして」
手嶋 ナギ「怖っっ!!」
樺島一心(かばしまいっしん)「恵子さんの行動の理由を、ご存知では?」
手嶋 ナギ「・・・僕のせいです」
〇おしゃれな教室
高校生だった頃の僕は、
朝から晩まで
勉強漬けの毎日を送っていた
塾が終わると
「帰り道は危ないから」という理由で
毎日、母は、僕を待っていた
雨の日も、雪の日も
一日たりと欠かさず
僕を監視していた
母の考えなんて一ミリも理解できない
理解したくもなかった──
〇ネオン街
だから──
僕は家を出た
〇インターネットカフェ
ネットカフェに寝泊まりしたり
〇シックなバー
出会った女性の家に泊まり込んだり
〇女の子の一人部屋
母親のことなどお構いなしに
生きてきた
〇ホストクラブ
もう2度と過去は振り返らない
そう決めた
けれど──
〇広い公園
手嶋 ナギ「母は・・・」
手嶋 ナギ「ゾンビになっても・・・」
手嶋 ナギ「高校生だった僕を・・・ 見守り続けていたんですね」
ゾンビ「あーーー。うううー」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あなたが元気で良かった。って言ってます」
手嶋 ナギ「お袋・・・・」
手嶋 ナギ「お袋・・・!! ごめん! ごめん!!」
〇警察署の入口
〇オフィスのフロア
樺島 一心(かばしま いっしん)「息子さんに会えて 恵子さんの異常行動はおさまりました」
樺島 一心(かばしま いっしん)「息子さんと恵子さん一緒に 住み始めたそうです」
樺島 一心(かばしま いっしん)「もう妖怪テケテケの通報はないでしょう」
平 光和(たいら みつかず)「気になるんだが・・・」
平 光和(たいら みつかず)「テケテケは、どうして最近になって目撃されるようになったんだろうね」
樺島 一心(かばしま いっしん)「きっと『妖怪テケテケ』の映画が流行ったせいで」
樺島 一心(かばしま いっしん)「若い世代から、テケテケへの認知度が上がったからでしょう」
平 光和(たいら みつかず)「映画のせいで 妖怪と勘違いされてしまったんだね」
レックス「テケテケ! スキ! テケテケ!! エイガミタイ!!」
〇広い公園
手嶋 ナギ「『願いごとを叶える券』で、なにをお願いするつもりだった?」
ゾンビ「うう〜〜〜。あ〜〜〜」
樺島 ここね(かばしま ここね)「願いごとは叶ったわ。だそうです」
手嶋 ナギ「そっか・・・」
手嶋 ナギ「そうだこれ・・・直しておいた」
手嶋 ナギ「もう無くさないで・・・」
手嶋 ナギ「あの・・・ここねさん」
樺島 ここね(かばしま ここね)「?」
手嶋 ナギ「ここねさんも警察のお仕事がありますし、」
手嶋 ナギ「これからは母の通訳をしなくても 大丈夫です」
樺島 ここね(かばしま ここね)「でも・・・」
手嶋 ナギ「大丈夫です」
手嶋 ナギ「母親の言いたいことぐらい、わかります」
手嶋 ナギ「だって、親子ですから!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「・・・」
〇広い公園
樺島 一心(かばしま いっしん)「あれ? 恵子さんと息子さんは?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「今夜は2人で料理するんだって」
樺島 一心(かばしま いっしん)「良かったな。恵子さん」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ねえ、お兄ちゃん」
樺島 ここね(かばしま ここね)「今、ここねが考えてること、わかる?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・ラーメンが食べたい?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「まだまだかあ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「何がまだまだなんだ?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「教えなーい!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「なんだ! 教えろー! ここねー!」
〇黒
「妖怪テケテケ事件」終わり──



映画の影響力は、時として誤解を招く事もありますよね……。
親子が和解出来て良かった。
学生服の一心くん、とても似合ってますね。👍️