〇養護施設の庭
顕仁皇子「おのれ雅仁・・・」
顕仁皇子「武者どもを集めろ」
左府「お、お待ち下さい殿下」
顕仁皇子「天下の大学生殿がまだ分からぬのか。 王者議定は既に開かれ雅仁が帝位についた」
顕仁皇子「お前抜きで・・・いやお前を出し抜いてな」
顕仁皇子「そして私とここに集った者と一絡げにして 反逆の罪をなすりつけ 後顧の憂いを断とうとしている」
顕仁皇子「笑えるな。位人臣を極めし氏長者頼長よ」
顕仁皇子「私は義理の母と弟に。 お前は関白たる兄、 いや、のみならず 全ての貴族に裏切られたのだ」
平右馬助「殿下！遂に始まりましたな！」
鎮西八郎「こういう時の為の我らですぞ」
左京大夫「刻が参りました。殿下が宝冠を頂く刻が」
左京大夫「雅仁は貴人ではなく、奇人なり！ まことの帝は顕仁様こそふさわしい！」
「この皇戦、我らがお支え致す！ 顕仁殿下に勝利を！」
顕仁皇子「女院の専横！ 雅仁の卑劣！ 佞臣どもの暗躍！ 何もかもこの我が天に代わって誅伐する！」
顕仁皇子「南無八幡照覧あれ！往くぞ！」
左府「公春は無事であろうな」
鬼丸「分かんねえよ。 オイラ達家人を逃がすために一人で・・・」
左府「無事かと聞いているのだ！」
鬼丸「だから分からねえつってるだろ！」
武者丸「鬼丸！」
左府「・・・」
左府「よい。些か取り乱した」
武者丸「・・・殿」
鬼丸「き、きっと無事だよ。 あの人、見かけによらねえ強さだもん」
左府「公春・・・無事でいてくれ」

〇黒
公春「・・・クッ」
公春「鬼丸ちゃん・・・上手く逃げられたかな？」

〇後宮の廊下
義朝「流石は惡左府が随身。 見事な散り際であった」
義朝「東三条殿は制圧した。 私はこれより藤家家宝朱器台盤を 関白様にお返しする。 忠臣秦公春が亡骸、丁重に葬れ！」
検非違使「畏まりました」
検非違使「だとよ。どうする？」
検非違使「左府の犬だ。そのへんに転がしておけ」
検非違使「しかし宝物庫だけで一棟とは恐れ入るな」
検非違使「だからなんだ」
検非違使「こっちは貴族の諍いに巻まれてんだ。 ひとつふたつくすねて飯の種にしても 罰は当たらねえって思わないか？」
検非違使「確かに神罰が下るなら、 何百年もの間己の庭で得たものだからと 税を逃れていた藤原家の方からだな」
検非違使「違いねえ」

〇養護施設の庭
左府「愚物どもめが・・・ よくも私が作り出した都を・・・ 私が作り上げた平安を・・・」
左府「断じて渡さぬぞ。 帝にも、院にも、関白にも、誰にも渡さぬ」
左府「平安京は私の・・・この惡左府のものだ！」

〇神殿の門
　　朱雀門
清盛「惡左府頼長は源平傍流と結託し、 優柔不断な顕仁親王を担ぎ上げ、 力ずくで内裏を支配しようとしている」
清盛「顕仁親王は叛徒を率い白河離宮に入った。 我らは東三条殿にてこれを迎え撃つ」
清盛「聴け比類なき王家の守護、白面武者団よ！ 王者議定によって定められた 正当なる皇帝（すめらみかど）の 御鳳声である！」
雅仁皇子「顕仁親王・・・いや兇徒顕仁が決起した。 これより朕自ら王朝の平安を守る」
雅仁皇子「朕が勅である！都の禍を祓い、清めよ！」

〇豪華な王宮
信西「ご安心ください。 雅仁親王・・・いえ、帝は 私が全知全能を賭け養育しました。 顕仁様如きに劣る所など 何一つございません」
信西「女院様の威光も永劫お守り致します」
美福門院「今はそなただけが頼りです」
信西「はっ。 摂関の復権、武家の勃興、 悪しき新時代の根の全て、 必ず断ち切ってみせます」
信西「この信西のみ、お信じなされませ」
　　ＣＯＮＴＩＮＵＥＤ