第一話:私、怖いの苦手なんです(後編)(脚本)
〇黒背景
〇何もない部屋
敷島杏「ここは・・・」
岩倉哲也「うちで扱ってる物件でね。 まあ今はリフォーム中ってところか」
敷島杏「うっ・・・」
敷島杏(なんだろ、この匂い?)
岩倉哲也「どうかした?」
敷島杏「あっ、いえ・・・ それで、どんなことをやるんでしょうか?」
岩倉哲也「どんなこと?」
敷島杏「会社でもう一人の方が 就職試験だって言ってたので・・・」
岩倉哲也「真山が? 就職試験か・・・ あいつ面白い事言うな」
敷島杏「違うんですか?」
岩倉哲也「就職試験ね・・・じゃあそれでいくか」
岩倉哲也「なあ敷島さん、君はこの部屋に どんな奴が住んでいたと思う?」
敷島杏「住んでた人ですか?」
岩倉哲也「そう、それを考えてみてよ。 どんな奴がどう暮らしていたのか?」
岩倉哲也「うちの仕事じゃ、それが結構重要でね」
敷島杏「わかりました・・・ 部屋少し見ていいですか?」
岩倉哲也「もちろん」
敷島杏「あの、窓開けても」
岩倉哲也「どうぞー」
敷島杏「眺めいいですね」
岩倉哲也「5階だからな。 この部屋の広さは8坪26㎡」
岩倉哲也「地域的な理由もあって、住居ではなく オフィスとしての利用だったかな」
敷島杏「5階でオフィス利用。 なのにエレベーターは無しなんですね」
岩倉哲也「不便な物件だよな。何でよりによって こんな場所を選んだんだか」
敷島杏「不便な物件・・・もしかしたら 前に住んでいた人って」
敷島杏「目立たないようにしてたんじゃ ないでしょうか?」
岩倉哲也「目立たないように?」
敷島杏「はい。こんな不便な場所をわざわざ 借りるぐらいですから」
敷島杏「人目を避けて何かをやりたい人 だったのかなって・・・」
岩倉哲也「ふーん・・・」
敷島杏「違いますかね・・・」
岩倉哲也「いや、いい線言ってると思うよ」
敷島杏「ホントですか!」
岩倉哲也「ああ。前の住人に聞いたわけじゃないが、 人目を避けてってところは思い当たるな」
敷島杏「そうですか! よかった。 ・・・あっ! あと」
岩倉哲也「ん?」
敷島杏「あ、言え。 ちょっと気になっただけなんで」
岩倉哲也「いいから。気になったこと何でも言って」
敷島杏「じゃあ・・・ あの、何か匂いませんか、ここ?」
岩倉哲也「おおっ! どんなニオイ?」
敷島杏「何て言うか、古い木の家みたいな、 でもあんまりいい匂いじゃ無いんですよ」
岩倉哲也「そう、匂いがね・・・」
岩倉哲也「よし、ここまでで十分だな。 会社に戻ろうか」
敷島杏「はい?」
岩倉哲也「だから、就職試験だっけ? それは済んだって事だよ」
敷島杏「あっ、そうですか。あのー・・・」
岩倉哲也「どうした?」
敷島杏「この部屋って、何かあったんですか?」
岩倉哲也「ああ、後で話すよ。とりあえず行こう」
敷島杏「はぁ・・・」
〇寂れた雑居ビル
岩倉哲也「タクシー捕まんないか・・・しょうがない、ちょっと距離あるけど歩こう」
敷島杏「あっ、はい」
〇商店街
敷島杏「それで、さっきの場所って」
岩倉哲也「あそこな、前の住人があの場所で ちょっとした事業をやっててな」
敷島杏「事業?」
岩倉哲也「まあ事業って言っても、占いだか何だかで 胡散臭い高額品を売りつけるような、」
岩倉哲也「詐欺みたいなもんだったらしいけど」
岩倉哲也「だから君が言ってた人目を避けてって、 意外と合ってるんだよ」
敷島杏「そう言う事だったんですか・・・ それで、その方は今どうしてるんですか?」
岩倉哲也「死んだよ」
敷島杏「えっ?」
岩倉哲也「あの場所で首吊ったって話だ」
敷島杏「首を・・・吊っ・・・」
岩倉哲也「凄かったらしいぞ、発見が遅れたから 吊られた首がビよ~んって伸びちゃって」
敷島杏「ひいいっ」
岩倉哲也「警察は自殺って判断したらしいけど、 噂じゃあ殺されたんじゃないかってな」
岩倉哲也「まあ、色々と恨みかってた 奴みたいだったから」
敷島杏「そ、そういうことは 先に言ってくださいよー」
岩倉哲也「脅かすわけじゃないけどな、うちが 扱うのはそういった物件がほとんどだから」
敷島杏「それはつまり、 誰か亡くなった物件って事ですか?」
岩倉哲也「年寄りの孤独死に自殺や殺人、 その手の事が起きた物件って事だよ」
岩倉哲也「だけどそんな物件だって、 誰かが面倒見なくちゃならないだろ?」
敷島杏「それはわかりますけど・・・」
岩倉哲也「それがわが社の主力商品ってことだ」
敷島杏「もしかして、そんな物件を専門に・・・」
岩倉哲也「なかなか独創的だろ、うちの会社?」
敷島杏「あははは・・・」
岩倉哲也「でもな、あんなことがあった 部屋だって、部屋は部屋だ」
岩倉哲也「酷い事があった物件だからこそ、 新しく住む誰かが安心出来るようにする」
岩倉哲也「それがうちの役目だから」
敷島杏「そう言うお仕事も大事ですよね・・・ そうですよ・・・そうなんですけど・・・」
岩倉哲也「なに? 何か言いたそうだね?」
敷島杏「正直に・・・言っていいですか?」
岩倉哲也「いいよ、遠慮せずどうぞ」
敷島杏「私・・・怖いの苦手なんです」
岩倉哲也「は?」
敷島杏「すーっごく、すーっごく苦手なんです! 怖いの!」
敷島杏「もちろん重要な仕事だって事は わかります!」
敷島杏「大切な役目なんだってわかります!」
敷島杏「わかるんですよ! わかるんですけど、」
敷島杏「ただ首吊りとか考えただけで 『ひいいっ』ってなっちゃって」
敷島杏「しかもそんなの見るなんてホント無理! もう絶対に無理で」
岩倉哲也「いや何か勘違いしてないか?」
岩倉哲也「確かにそう言う物件を扱うけど、 直接死体を見たりするわけじゃないから」
敷島杏「でもそんなお部屋をちゃんと 住めるようにするって・・・」
岩倉哲也「清掃やリフォームは専門業者の仕事だよ」
岩倉哲也「うちがやるのはもっと別の事。 違う意味で綺麗にするんだよ」
敷島杏「違う意味?」
岩倉哲也「そう。色んな意味でちゃんと 住めるようにする」
岩倉哲也「それがうちの仕事だから」
〇事務所
真山文雄「あー、おかえりなさい。 どうだった? 新人さん?」
敷島杏「いや、どうって言われましても・・・」
真山文雄「あの部屋の事情聞いた?」
敷島杏「はい。あの、首を吊って・・・」
真山文雄「あらー。社長、そこまで話したんだ」
敷島杏「色々と、教えて頂きました・・・」
真山文雄「大丈夫? 顔色悪いけど?」
敷島杏「はい、まあ・・・それで、そのー・・・」
真山文雄「はい?」
敷島杏「色々考えましたが・・・」
敷島杏「ちょっと自分が思っていたのとは 違いまして・・・そのー・・・」
真山文雄「あー、そっかー・・・」
岩倉哲也「これでどう?」
敷島杏「これ?」
岩倉哲也「給料。これだけ出す」
敷島杏「さっさっ、ささささささ35万!!」
敷島杏(入社予定だった会社よりも 10万円も高い!)
岩倉哲也「それに結果を出してくれたら、もっとね」
敷島杏「結果? 結果って何ですか?」
岩倉哲也「まあ、それは働いてくれたらおいおい」
敷島杏「うーん・・・」
敷島杏(35万・・・奨学金の支払いに実家への 仕送りに弟の学費に・・・むむむむ)
敷島杏「あの!」
岩倉哲也「うん?」
敷島杏「色々考えましたが・・・ やっぱりこちらでお世話になります!」
真山文雄「あっ、金でなびいた」
敷島杏「うっ・・・」
岩倉哲也「じゃあ、とりあえず明日からね」
敷島杏「はい!」
岩倉哲也「明日の8時、またここに来て。 今日はもう帰っていいよ」
敷島杏「はい、わかりました!」
敷島杏「明日から宜しくお願いします。 じゃあ、失礼します!」
真山文雄「ところで、実際どうなんです、あの子?」
岩倉哲也「彼女、なかなかいいよ。 発想も面白いしな」
岩倉哲也「それに、匂いがしたらしいんだよ」
真山文雄「匂い・・・それってもしかして 社長と同じ・・・」
岩倉哲也「そういうこと」
真山文雄「そりゃまた、逸材と言うか、 お気の毒と言うか・・・」
岩倉哲也「なかなか期待できそうだよ、色々とな」
〇商店街
敷島杏「よぉーし! もうこうなったら、ガンガン稼ぐぞー!」



タップノベル初めて読みました!面白かったです!!
SEも凝ってて面白いです!
続きが楽しみです!
これからも応援してます!