休み時間ストーリー① ノベル大学の謎(脚本)
〇講義室
蕾太「友情を肯定する主人公と、友情を否定する悪役――。 あのさ、ここからは授業に関係ない話だけど」
蕾太「先生はどっちなんだ?」
小雪「!」
小雪「私は──」
小雪「私の生きる世界には、友情など存在しない」
〇大学の広場
・・・あれはどういう意味だったのだろう
しかし、どこまで行っても壁だけだ。
この大学には出口がない。
人もいない。
でも、学内のコンビニにはいつでも新鮮な食料が供給されているし、教室の掃除は隅々まで行き届いている。
どうなってるんだ──
スマホはあるが、家にも警察にも繋がらない。
寮もあるから生活には困らないものの、やっぱり親とか友達が心配してるよな
蕾太「あ」
小雪「あ」
小雪「君も散歩か」
蕾太「うん。 大学の敷地内から出られないかと思ったんだけど」
小雪「不可能だろうな」
蕾太「はしごがあれば、壁を越えられないかな?」
小雪「壁を越えたところで、この世界からは出られない。私も一度やってみたことがある」
蕾太「先生も!?」
蕾太「いったいここは何なんだ? 俺たちはどうして閉じ込められた!?」
小雪「・・・深く考えない方がいい。 ただ、名作を書けばこの空間から出ることができる。確かな真実はそれだけだ」
蕾太「何でだよ! 先生、授業ではいつも、ひたすら考えろっていうじゃないか!」
小雪「そうだったな。 矛盾するようだが、世の中には知らない方がいいこともあるのだ」
蕾太「世の中・・・」
蕾太「これは俺の直感なんだけど」
蕾太「小雪先生は、ノベル大学から出られないんじゃないか?」
小雪「っ──」
小雪「なぜそう思った・・・」
蕾太「だって、名作を書いて受賞すれば出られるんだとしたら、先生なら簡単にできるじゃないか」
蕾太「はしごを持ってきて脱出する必要なんかない」
蕾太「だから、先生は受賞しても大学から出られないんじゃないかと思ったんだよ」
小雪「・・・正解だ。 私はこの世界を出ることができない」
蕾太「そんなの、おかしいだろ! 閉じ込められたまま、卒業もできないなんて!」
小雪「私は君と違って、この大学の『先生』だからな」
蕾太「だったら、退職すればいいじゃないか!」
小雪「えっ」
蕾太「先生にだって、帰りを待っててくれる人はいるだろ?」
小雪「――ふふ。 いいのか?」
小雪「私がいなくなれば、君は誰から小説を学ぶというのだね」
蕾太「あっ」
蕾太「ちょ、ちょっと待って。 今すぐいなくなられると困るかも・・・」
小雪「そうだろう。 この大学には、優秀な教員が必要だ」
小雪「迷い込んだ学生をプロ作家にして、元の世界に送り帰す教員がな」
蕾太「うーん、確かに。 先生がいないと、この大学には卒業できない学生が溜まっていく一方なのか・・・」
小雪「そういうことだ。 誰かがここで教鞭をとらなければならない」
蕾太「・・・先生はそれでいいの?」
小雪「意外とここも悪くない。 ネットショッピングもできるし、好きなだけ図書館の本を読めるからな」
小雪「それに、君のような学生を、立派な小説家として世に送り出すのもいいものだ」
小雪「その日を楽しみにしているよ、夢野蕾太──」
蕾太「・・・・・・」
蕾太「俺が小説家になる、その日には」
蕾太「絶対に先生を授賞式に呼んでやる!」