ゲーム小説の書き方講座

坂井とーが

7限目 おもしろいストーリーの構成(脚本)

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〇講義室
蕾太「起・承・転・結 起・承・転・結」
蕾太「よし、ストーリーに起伏がつけられるようになったぞ!」
小雪「どうやら単調なストーリーからは脱出したようだな」
小雪「では、そろそろさらに詳しいストーリー術を学ぶ頃か」
蕾太「ストーリー術?」
小雪「人がおもしろいと感じるストーリーには、決まったパターンがある。たとえば、映画の脚本術の三幕構成だ」
蕾太「序破急みたいなものかな? その、三幕構成を学べば簡単におもしろいストーリーが作れるんだな!」
小雪「まさか。簡単なわけがないだろう。 初心者が三幕構成を使ったところで、ストーリーはいくらでも破綻する」
小雪「「坂井」も、今だに三幕構成の沼でもがいているからな」
蕾太「坂井って誰?」
小雪「――作者。 いや、私の生徒だ。あまり気にするな」
小雪「それでも、構成を学ぶ価値は高い。直感に従ってストーリーを作るよりは、質の高いものが出来上がるだろう」
蕾太「じゃあ、とりあえず学んでみようかな」
小雪「三幕構成の奥は深いのだが、まずは簡単に説明しよう」
小雪「詳細を調べる余力があるなら、ネットの百科事典で「三幕構成」の記事を見てみるといい」
小雪「三幕構成とは、物語を三つの幕に分けて構成する手法だ」
小雪「一幕は「設定」、二幕は「対立」、三幕は「解決」を描く役割を持つ」
蕾太「「はじまり」、「冒険」、「おわり」みたいなものかなぁ・・・?」
小雪「では、実際に見に行ってみよう」

〇西洋の街並み
蕾太「ここは!?」
小雪「一幕の世界だ。さぁ、物語が始まるぞ。 まず、主人公と、彼を取り巻く状況を描写する」
小雪「そして、主人公の目的、あるいは主人公が抱える問題も設定する」
小雪「そして、物語が始まってから10%のところで、事件が起きる」
小雪「遅すぎてはならない。読者が退屈してしまうからな」
小雪「その事件をきっかけに、主人公はこれまでとはまったく異なる二幕の世界に飛び込んでいくことになる」

〇荒地
蕾太「おう!?」
小雪「一幕から二幕へ。 ここが、ストーリーの大きな転換点となる」
小雪「二幕の世界は、主人公がこれまで暮らしていた世界とは正反対だ」
小雪「決して後戻りはできない。 主人公が冒険を投げだして一幕の世界に戻れるようでは、事件のインパクトが弱すぎる」
小雪「二幕前半で、主人公は苦労しながら道を切り開いていく」
小雪「主人公の行く手を阻む様々な障害が現れるが、主人公はそれを乗り越えていくのだ」
小雪「そして、二幕の中間――物語全体から見ても中間にあたる点で、ストーリーは大きく盛り上がる」
小雪「ここで主人公は、見せかけの勝利を収めるのだ」
蕾太「見せかけの?」
小雪「そう。これはまだ本当の勝利ではない。 ここは第二の転換点。 むしろ、ここから先が戦いだ」
小雪「物語は中間点を越えたところから、一気に危険度を増していく」
小雪「主人公は追いつめられ、最悪の状況に陥る」
小雪「もうダメだ。どうしようもない・・・。 主人公は徹底的に打ちのめされ、絶望の底であがき──」
蕾太「ごくり」
小雪「――そして、解決策を見つけ出した。 ここが第三の転換点だ」
小雪「これまでの冒険で成長してきた主人公だからこそ、ここで正しい選択をして、三幕の世界へと進んでいける」

〇魔界
小雪「一幕は、主人公が暮らしていた古い世界。 二幕は、それと正反対の世界だったな」
小雪「三幕は、古い世界にいた主人公が、正反対の世界を経て辿り着いた、「新しい世界」だ」
小雪「ここに辿り着いた主人公は、ストーリーの中で大きく成長してきたはずだ。もう、古い世界にいた、昔の主人公ではない」
小雪「さぁ、最終決戦だ!」
小雪「主人公は激闘の末、強大な敵を打ち破る!!」
小雪「これはストーリー中間の見せかけの勝利とは違う、主人公の真の勝利」
小雪「主人公は求めていたものを手に入れ、大きな満足とともに物語は終わりを迎える」

〇講義室
小雪「まぁ、ざっと説明するならこんなところだ」
蕾太「帰ってきた・・・・・・ スリリングな旅だったな」
小雪「もっとも、これはあくまで映画の脚本術だ」
小雪「無料で読めるWEB小説では、先にお金を払って見てもらう映画以上に、冒頭で読者を引き付ける工夫が必要となる」
小雪「最初がつまらなければ、読者は簡単に離脱してしまうのだ」
小雪「長編小説や映画では穏やかな出だしも許されるが、マンガ的な短編読み切りには衝撃的な出だしが合っている」
小雪「短編では、悠長に舞台のセットアップをしている時間がない。物語が始まるとき、すでに事件が起きているくらいでいい」
小雪「連載作品でも同じだ。1話で悠長に主人公の日常を描写していたら、2話以降は読まれないことになるからな」
蕾太「厳しいなぁ」
小雪「連載作品では徐々に盛り上がっても意味がない。最初がおもしろくなければ失敗なのだ」
小雪「逆に、1話目さえ面白ければ、2話目で多少失速しても、読者はついて来てくれる」
小雪「「また面白くなるかも」と期待するからな。 もちろん、ずっと面白いのが理想だが・・・」
蕾太「基本的なストーリー構成の知識を、さらにWEBに特化して使いこなさないといけないってことか」
蕾太「たしかに難しい。でも、起承転結だけ知っていた頃より、いいストーリーが書けそうな気がするよ!」

次のエピソード:8限目 表紙イラストの作り方(初心者向け)

コメント

  • 三幕構成が分かりやすく解説されていていいですね。一応最近は作ってますが中盤で外れるんですよね。
    なかなか難しいです。

  • 三幕の方が起承転結よりもあらすじを見ていてわくわくするような気がします。でも実際にやると二幕が重たくなって中だるみさせてしまっています…。
    スチルもわかりやすかったです。なるほど説明を図示するのにも使えるんだなーとTapNovel用の書き方の参考にもなりました。

  • 早速画像の挿入を使っていらっしゃって、わかりやすいですね😊今回も楽しく読ませて頂きました!
    坂井さんも生徒の一人だったとは…笑
    自分もお話づくりの最中に露頭に迷って文献を行ったり来たりするので、同じように悩んでいるお話を聞かせていただけて、なんだかほっとしてしまいます。

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