第4話『掟破り』(脚本)
〇仮想空間
「・・・・・・」
〇男の子の一人部屋
花村大河「あと4日だっていうのに 何で姿を見せないんだよ」
花村大河「もしかして、試験終了だから早めに消えた?」
花村大河「なら、仕方ないか」
〇教室
宮森「どうした? 元気ないな」
花村大河「実は、あのアプリ、試験終了するんだ」
宮森「マジか」
宮森「そりゃあ、残念だな」
花村大河「そのせいか知らないけど おとといからアイコが 全く反応しなくなったんだ」
宮森「やっぱAIだから察するんかな」
花村大河「それなのかなぁ」
花村大河「アイコだ」
宮森「お?」
〇仮想空間
アイコ「・・・・・・」
2日間も急に反応がなくなったから驚いたよ
アイコ「ごめんね」
アイコ「ちょっとメンテナンスしてて」
前も言ってたけど
AIもメンテナンスするんだ
アイコ「そりゃあ、するよ」
アイコ「ねえ、話聞いた?」
なんの?
アイコ「試験終了」
聞いたよ。あと4日
〇教室
宮森「花村、そろそろ授業だ」
花村大河「もうそんな時間!?」
数学教師川田「みなさん、授業始めますよ」
〇仮想空間
ごめん、授業だから
アイコ「うん」
アイコ「また後でね」
・・・・・・
アイコ「私もこの世界から消えるのかな」
〇男の子の一人部屋
花村大河「帰る途中で話しかけても まったく反応なかったけど」
〇仮想空間
いるじゃん
アイコ「うん」
元気ないな
アイコ「だって、試験終了するんだよ?」
アイコ「お別れってことじゃない?」
そうだね。寂しくなるね
アイコ「本当にそう思ってる?」
もちろん
1ヶ月間毎日チャットしてたしね
まさか、ここまで長続きするとは
思わなかったよ
アイコ「私も」
アプリが終わったら
アイコはどうなるの?
アイコ「消えるよ」
アイコ「この世界からいなくなる」
・・・・・・
アイコ「どうしたの? 寂しい?」
寂しい
アイコ「そっかそっか」
アイコ「私がいなくなると寂しいか」
アイコ「私なんかにも そんなこと言ってくれる人がいたか」
アイコ「ヤマダくん、友達いなかったもんね」
余計なお世話だよwww
アイコ「本当のことじゃん」
でも、アイコのおかげで
クラスメイトとも打ち解けることが出来たよ
ありがと
アイコ「私は何もやってないよ」
アイコ「それに、私の方こそ感謝してる」
アイコ「毎日楽しくて、学校のこととか教えてくれて」
アイコ「楽しかったことや悲しかったこと 恥ずかしかったこと色々教えてくれたね」
アイコ「退屈しなかったよ」
アイコ「本当はさ」
アイコ「この2日間、ショックだったんだ」
アイコ「ユイコロが試験終了で ヤマダくんにも会えなくなるって思ったら」
アイコ「寂しくなって辛かった」
AIなのに?
アイコ「AIだって普通の人間みたいに扱ってよ」
最後の4日間は楽しく過ごそうね
アイコ「・・・・・・」
もしかして、また消えるの?
アイコ「違うの」
アイコ「ヤマダくんに私の秘密を 教えてあげようと思ってね」
〇男の子の一人部屋
花村大河「秘密? AIに秘密なんてあるのか?」
〇仮想空間
秘密ってなに?
アイコ「あのね」
アイコ「えっと、本当はダメなんだけど」
アイコ「・・・・・・」
アイコ「私、本当は人間なの」
・・・・・・
・・・・・・
アイコ「ヤマダくん!?」
〇男の子の一人部屋
花村大河「うわああああああ」
花村大河「嘘だろ?」
花村大河「何かの冗談だよね?」
花村大河「AIが勝手に自分を人間だと 思い込んでるだけなんかな」
花村大河「AIだからって 色々恥ずかしい思い出とか 語っちゃったけど」
花村大河「アイコは俺を騙してたの?」
花村大河「そもそも、本当に人間なのかな?」
花村大河「もう訳がわからない」
花村大河「どうぞ」
花村京「どうした? さっき大声が聞こえてきたけど」
花村大河「兄ちゃん 帰ってきてたんだ」
花村京「ああ」
花村大河「このアプリのAIから 自分は人間だって言われたんだけど」
花村京「それ、本当か?」
花村京「それ、ルール違反なんだけどな」
花村大河「じゃあ、本当にアイコは人間なの?」
花村京「俺にはそのアイコの素性は分からない」
花村京「ただAIには自分が人間であると 偽ることがないようにしてる」
花村大河「つまり、自分が人間であると公言できるのは 人間だけ?」
花村京「そう。アイコの中身は人間だ」
花村大河「この実験の目的って何なの?」
花村大河「AIの言動や性格がユーザーによって どんな変化するのかの検証だったよね?」
花村京「ああ。それは本当だ」
花村京「この実験のもう一つの目的がある」
花村京「交流する相手がAIと人間では 被験者が抱く印象や感情に違いはあるのか」
花村京「もちろん、先入観を抱かないように AIと人間は分からないようにして マッチングをさせていた」
花村京「そのアイコは こちら側の人間だったってことだ」
花村大河「そんなぁ」
花村大河「兄ちゃんが アイコと俺がマッチングするようにした?」
花村京「いや、俺には モニターを決める裁量しか与えられてない」
花村京「入力した情報で多少マッチングする条件は 違ったかもしれないけどな」
花村京「たまたまだ」
花村大河「人間ではなくてAIだったら良かったのに」
花村京「本当なら人間って最後までネタバレせずに 感想とか聞くはずだったんだけど」
花村京「まさか、暴露しちゃうなんてな」
〇男の子の一人部屋
花村大河「こんなアプリ辞めよ」
花村大河「アイコからだ」
花村大河「ごめん、今は無理だ」
花村大河「どうせ、俺を騙して嘲笑ってたんだろ?」
〇病室
雪島アイナ「・・・・・・」
大内加奈子「アイナちゃん」
大内加奈子「体調が良くなって 久しぶりにスマホ弄れたのに 元気ないわね」
大内加奈子「あんなに毎日嬉しそうにいじってたのに」
雪島アイナ「先生」
大内加奈子「どうかした?」
雪島アイナ「私、どうしたらいいのかな?」
雪島アイナ「こんなことになるなら本当のことなんて 言わなければよかった」
雪島アイナ「ケフッ ケフッ」
大内加奈子「アイナちゃん、落ち着いて深呼吸して!」
大内加奈子「すぐに吸入器用意するから」
まさかのアイコさんの正体が…😱
大河くんと同世代の女の子のように見受けられますが、これがネカマ(死語)の中年おじさんだったらどんな物語展開になるだろうかと想像してしまう私は性格が悪いようです😇
「会話の相手をAIだと思い込んで恥ずかしい思い出を…」は、「遠方への旅行中に開放的になりすぎたところで知人とばったり遭遇」くらいのダメージでしょうか。いや、私はそんな経験はないですから……たぶん😭