第1話『アイコ』(脚本)
〇教室
花村大河「先生、日誌です」
石上「もう書き終わったのか」
石上「ありがとう」
花村大河「昼休みの間に書いてたんで」
石上「相変わらず真面目だね」
花村大河「ありがとうございます」
石上「気をつけて帰るんだよ」
花村大河「はい」
宮森「花村」
花村大河「なに?」
宮森「今からみんなで飯食いに行くけど 一緒に行かね?」
花村大河「ごめん、今日、兄ちゃんが帰ってくるから すぐに帰らないといけないんだ」
宮森「そっか、なら仕方ないな」
宮森「また誘うわ」
花村大河「ありがとう」
花村大河「はあぁ」
花村大河「いつも誘ってくれるのに 断ってばかりで悪いな」
花村大河「このまま卒業しちゃうのかな」
〇明るいリビング
花村大河「まあ、兄ちゃんが帰ってくるのは 嘘じゃないしな」
花村大河「そういえば、用事があるから帰ってくるって言ってたけど何だろう」
花村京「ただいま」
花村大河「兄ちゃん、お帰り」
花村京「お前、この時間に帰宅してるのかよ」
花村京「部活入ってねえなら もっと友達と遊んだりしろよ」
花村大河「いや、俺は兄ちゃんと違ってコミュ障だから」
花村京「お前3年になるのに まともな友達いねえのやべえよ」
花村京「高校なんて1番楽しい時だろ」
花村大河「なんか、うまく行かなくてさ 中学とノリが違うっていうか」
花村大河「みんな、良くしてくれるんだけど」
花村京「そんなお前に、ちょうどいいものを 紹介してやるよ」
花村大河「なにを?」
花村大河「まさか、ともだち?」
花村京「半分正解かな」
花村京「これだ」
花村大河「スマホ?」
花村京「そう」
花村京「俺が大学で AIの研究してるのは知ってるだろ?」
花村大河「うん」
〇研究施設のオフィス
俺の大学は試験段階だけど
新しいAIアプリを開発したんだ
AIと会話できるチャットアプリ
その名も”ユイコロ”
ただAIとチャット出来るだけなら
今はわんさかあるよな
でも、チャットできるこのAIは
アバター付きで
AIの表情や感情を読み取ることもできる
あと直接会話することも可能だ
ただし、AIはまだ成長課程であり
言動にぎこちないところがある
そして、なるべく人間味を持たせている
AI「AIに対しユーザーが接することによって どのように性格が変化していくのか 試験として情報を収集したいんだ」
〇明るいリビング
花村京「つまり、このアプリの目的は」
花村京「AIの言動や性格がユーザーによって どのように変化するのかの検証だ」
花村京「お前にはAIと接してもらって その変化をサンプルとして収集したいんだよ」
花村大河「つまり、俺はそのモニター?」
花村京「そういうこと。面白そうだろ?」
花村京「ちょうどモニター探してたんだよ そのために家に帰ってきた」
花村京「お前、友達いないから時間あるだろうし ちょうどいいだろ?」
花村大河「なんか、納得できないけどいいか」
花村大河「面白そうだし引き受けるよ」
花村大河(気晴らしになればいいや)
花村京「じゃあ、言った通りにアプリを落とせ」
花村京「一応、試験段階だけど アカウント名は実名以外を使えよ」
花村京「あと年齢と性別だけだ。そっちは本物頼む」
花村大河「分かったよ」
〇男の子の一人部屋
花村大河「アプリ落としたのはいいものの」
花村大河「緊張するなぁ」
〇仮想空間
こんにちは
「・・・・・・」
おーい
アイコ「あ、来た」
アイコ「こ、こんにちは」
こんにちは
アイコ「わ、私はアイコって言います」
アイコ「よろしくお願いします」
僕はヤマダっていいます
アイコ「ヤマダさんですね」
アイコ「よろしくお願いします」
アイコ「・・・・・・」
・・・・・・
〇男の子の一人部屋
花村大河「なに、話せばいいんだ」
〇仮想空間
アイコ「・・・・・・」
・・・・・・
アイコ「しゅ、趣味とかあります?」
とくに
アイコ「・・・・・・」
・・・・・・
そちらは?
アイコ「えっと、特に・・・・・・」
・・・・・・
〇男の子の一人部屋
花村大河「AIってこんな感じなのか?」
花村大河「人間味溢れすぎだろ」
花村大河「仕方ない」
花村大河「話を盛り上げよう」
〇仮想空間
アイコ「・・・・・・」
今日、天気良いね
アイコ「あ!」
どうかした?
アイコ「そろそろ、ご飯の時間なので落ちますね」
アイコ「また明日」
え?
おーい
「・・・・・・」
〇男の子の一人部屋
花村大河「なんでだよ」
花村大河「どうぞ」
花村京「早速やってるみたいだな」
花村京「どうだ?」
花村大河「なんか、まだ6時なのに飯の時間だって 落ちたよ」
花村大河「AIなのに」
花村京「リアルを再現してるから、あいつらも飯食ったり寝たりする設定なんだよ」
花村大河「えっ?」
花村京「AIも1人の人間として 自分を認識してるんだ」
花村京「だったら飯食ったり、寝たり トイレ行くのが普通だろ?」
花村大河「確かに。変なところがリアルだな」
花村京「それでAIにも生活リズムがある」
花村京「それだけリアルに近づけてる」
花村京「だから、人と接することによって 実際の人間と同じように成長するかが 重要なんだ」
花村京「それを踏まえて、AIと接しろよ」
花村大河「なるほどな」
花村京「というわけだから、これからよろしくな」
〇男の子の一人部屋
花村大河「大して会話もしてないのに楽しかったな」
花村大河「明日が楽しみだ」
花村大河「ていうか、AIって何時に起きるんだろ」