リモート死刑

たかぎりょう

1人目(脚本)

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〇中規模マンション

〇明るいリビング
  祖母と電話をしている祐美
榊原佑美「今日は無理言ってごめんね」
榊原佑美「どうしてもお客様の接待旅行に同行しなくちゃならなくて・・・」
栗山みさ「それは全然いいんだけど、あんた大丈夫?」
栗山みさ「ここのところ働きすぎじゃないの?」
榊原佑美「大丈夫よ。パパがいなくなった分、私が頑張らないと」
栗山みさ「そりゃ、そうだけど・・・」
栗山みさ「あまり無理すんじゃないよ?」
榊原佑美「わかってる。ありがとう」
栗山みさ「ちょっとたっくんに代われる?」
榊原佑美「うん。拓海ー!」
榊原拓海「なーに?」
榊原佑美「電話、お祖母ちゃん」
榊原佑美「お母さんもすぐに家を出なきゃならなくて、あまり時間ないから長く話さないでね」
榊原拓海「うん!」
榊原拓海「もしもし、おばあちゃん?」
栗山みさ「たっくんおはよう!」
栗山みさ「今日は本当に一人で大丈夫かい?」
榊原拓海「うん! バスと電車乗れば行けるから簡単だよ」
榊原拓海「昨日の夜、ちゃんと調べてメモしてあるからバッチリだし」
栗山みさ「それでもほら、迷ったり何か困ったことがあったりしたら大変よ」
栗山みさ「やっぱり、こっちから迎えに行こうか?」
榊原拓海「大丈夫だって! おばあちゃん心配し過ぎー」
榊原拓海「携帯電話も持ってるから、何かあったらすぐに電話できるし」
栗山みさ「そう? じゃあ気をつけてね」
栗山みさ「ちょっとおじいちゃんに代わるね」
栗山康夫「拓海か?」
榊原拓海「おじいちゃん? 今日行ったら、カブトムシの捕まえ方教えてよ」
榊原拓海「今年は絶対にカッコいいの捕まえて友達に見せたいんだ!」
栗山康夫「わかった。待ってるよ」
榊原拓海「あとね、そっちに行ったらおじいちゃんとおばあちゃんの肩揉んであげるね」
榊原拓海「お母さんに上手だっていつも褒められるんだー」
栗山康夫「おお、そうか、それは楽しみだ」
榊原拓海「それから、釣りにも連れてってほしいなー」
榊原佑美「拓海、早く準備して」
榊原佑美「バスに間に合わないわよ!」
榊原拓海「あ、もうちょっと待って」
榊原佑美「だめ! 拓海がバスに乗り遅れたらお母さんが困るの!」
榊原拓海「わかったよ、もう・・・」
榊原拓海「じゃあ、おじいちゃん、お母さん怒ってるから電話切るね」
栗山康夫「わかった。気をつけて来るんだぞ」
榊原拓海「うん!」

〇男の子の一人部屋
  机の上に置いてある写真盾の中で、拓海の父が笑っている。
榊原拓海「パパ、行ってきます」
  手を合わせて目を閉じる拓海
  突然、写真盾がパタンと倒れる
榊原拓海「え?」
  不思議そうに写真盾を元に戻す拓海
榊原拓海「何でだろう?」
榊原佑美「ほら、拓海、行くよ!」
榊原拓海「う、うん・・・」

〇開けた交差点
榊原佑美「ふぅー、何とか間に合ったー」
榊原拓海「結局、ママの着替えで時間かかったじゃん」
榊原佑美「変な恰好で外出れないから仕方ないでしょ」
榊原佑美「ママも拓海を見送ったら、すぐに出かけないと」
榊原拓海「あまりお酒飲みすぎちゃだめだよ?」
榊原佑美「あー、わかってるよ」
榊原拓海「お酒飲むとママは着てるもの脱ぎたがるから、ホントにやばいよ?」
榊原佑美「うるさい!」
  そこへバスがやってくる
榊原佑美「それじゃ、気をつけてね」
榊原拓海「うん!」
榊原佑美「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんによろしくね」
榊原拓海「ママもお仕事がんばってね!」
榊原佑美「うん」
  拓海を乗せてバスは走り去っていく
榊原佑美「ありがとう」

〇大会議室
刑務官「お母さんの佑美さんが、拓海君と話をしたのはこれが最後になりました」

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コメント

  • じわじわと怖くなってきています。執行人は? リモートとは? など手探り中です。1人目のコメント目線も更に怖さを感じます。どうなっていくんだろう。

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