鳥居のそばでキスをして

にゃぴょう

第4話 バスとキスのゆくえ(脚本)

鳥居のそばでキスをして

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〇空
荒木 煌一(あらき こういち)「よーつかまっときやー!」
  勢いあまって、煌一の背中に頬が当たる。なんだかいい匂いがする。
  天気のいい日に芝生に寝そべったときのような、
  ちょっとこそばゆくて、あたたかくて、落ち着く──
???「危ない──!!」

〇学校脇の道
山田さん「そこの学生! 二人乗りは禁止!」
荒木 煌一(あらき こういち)「やばっ」
山田さん「あれ、煌ぼんやないか」
荒木 煌一(あらき こういち)「山田さん、ごくろーさんです」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あの、すいませんでした・・・」
  やっぱり、日本でもダメなんじゃないか。
山田さん「きみ、悪ガキに付き合わされたらあかんで〜」
長谷川「オレのチャリ〜!!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「やっぱり・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「ノア、そんな目で見んといて〜!」

〇和風
  鳥居のそばでキスをして
  第4話 バスとキスのゆくえ

〇街中の道路
荒木 煌一(あらき こういち)「こうなったら、バスや」
荒木 煌一(あらき こういち)「京都観光はバスが基本やでぇ!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「さっき、自転車で行こうとしてたけど・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「えーと、ほんなら・・・どのバスや〜?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「これじゃない? 15番」
荒木 煌一(あらき こういち)「ほんまや! なんでそんなすぐ分かるん」
英田 乃亜(あいだ のあ)「ガイドブックに路線図が載ってたから・・・覚えてた」
荒木 煌一(あらき こういち)「覚えた!?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「まえ住んでたところの地下鉄の方が、難易度高かったかな」
荒木 煌一(あらき こういち)「ノア、お前は天才か!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「別に、普通・・・あ、早く!」

〇銀閣寺

〇日本庭園

〇ラーメン屋

〇バスの中
荒木 煌一(あらき こういち)「なんでラーメン屋!?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「だって、有名店だよ」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あっ、あの神社も行ってもいい!?」
荒木 煌一(あらき こういち)「ええでええで、ノアの好きなとこ行こ」

〇古びた神社

〇古びた神社
英田 乃亜(あいだ のあ)「わぁ・・・」
  煌一の神社よりもこじんまりとしてるけど、
  そのぶん観光客の姿も少なくて、厳かな雰囲気の神社だった。
荒木 煌一(あらき こういち)「ふーっ、なんか落ち着くなぁー」
英田 乃亜(あいだ のあ)「お参りしていい?」
荒木 煌一(あらき こういち)「もちろん」
  一礼、2拝。そして、手を合わせる。
  次のアルバイト、上手く行きますように。
  ちょっと、真面目すぎるだろうか。
英田 乃亜(あいだ のあ)「・・・・・・」
英田 乃亜(あいだ のあ)「えっ、なに」
荒木 煌一(あらき こういち)「一生懸命お願いしてるなーって」
英田 乃亜(あいだ のあ)「見てたの!? 自分のお願いは!?」
荒木 煌一(あらき こういち)「オレ、お願いせーへんもん」
英田 乃亜(あいだ のあ)「え、どうして?」
荒木 煌一(あらき こういち)「なんでって? んー」
荒木 煌一(あらき こういち)「願うより、願われる側。みたいなかんじ?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「コウイチが、ってこと?」
荒木 煌一(あらき こういち)「うん」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あ、神社の人だから? お願いしてはいけないって、そういう決まりがあるの?」
荒木 煌一(あらき こういち)「いや、決まりはないけど」
英田 乃亜(あいだ のあ)「じゃあ、誰かに言われた?」
荒木 煌一(あらき こういち)「誰にも言われてへんけど・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「小さい頃から、そういうもんやって思ってたかな・・・ずっと」
  願うより、願われる側。僕にはその感覚がよくわからなかった。
  でも煌一は、ごく当たり前のことであるかのように笑っている。
荒木 煌一(あらき こういち)「おもろいこと聞くなぁ、ノア」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あ・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「・・・ん、どした?」
  僕は思わず、煌一の制服の裾を掴んでいた。
  なんだか、彼がこのまま神社の森の中に溶けて消えていきそうな気がして──。
英田 乃亜(あいだ のあ)「・・・お願いしたいことも、ないの?」
荒木 煌一(あらき こういち)「へ?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「いや・・・なんでもない」
  僕はパッと煌一の服から手を離して、なんでもない風をよそおった。
英田 乃亜(あいだ のあ)「あそこ、行ってきていい? 他の神社で何が売ってるのか見てみたくて」
荒木 煌一(あらき こういち)「おう」
荒木 煌一(あらき こういち)「お願いしたいこと、なぁ・・・」

〇繁華な通り

〇温泉街
英田 乃亜(あいだ のあ)「ここ・・・もしかして先斗町(ぽんとちょう)!?」
荒木 煌一(あらき こういち)「せやで。さっきノアが本で見てたとこ」
  いつの間にか日が暮れていて、店の灯りがぼんやりと通りを照らしている。
  道の脇にふっと立っている枝垂れ柳がなんとも風情にあふれていて、
  いかにも“京都“って感じだ。
荒木 煌一(あらき こういち)「ノア、時間だいじょぶか?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あぁ、うん。親、帰り遅いし」
荒木 煌一(あらき こういち)「よっしゃ、じゃここ見たら帰ろか」
英田 乃亜(あいだ のあ)「本物の舞妓さん!?」
荒木 煌一(あらき こういち)「あぁ、あれは舞妓やなくて──」
芸妓さん「あー! 煌ぼんやない!?」
荒木 煌一(あらき こういち)「げっ」
芸妓さん「ほんまや、相変わらずのオトコマエどすなぁ」
芸妓さん「こんなとこで夜遊びなんて、悪い高校生やわぁ」
芸妓さん「遊び人やなぁ〜」
英田 乃亜(あいだ のあ)「・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「ノア、ちゃうで! オレは遊び人やない・・・」
英田 乃亜(あいだ のあ)「コウイチ、舞妓さんとも知り合いなの!?」
芸妓さん「舞妓さんやて、そんな若う見える? 嬉しおすなぁ」
芸妓さん「うちらは芸妓ゆうてな、舞妓ちゃんはこっち」
おゆき「こんばんは」
芸妓さん「ほなおゆき、うちらちょっと用事すませてくるさかい」
おゆき「はい、お姉さん」
おゆき「煌ぼん、久しぶりどすな」
荒木 煌一(あらき こういち)「おぉ、元気にやってるか?」
おゆき「ぼちぼちな。そちらは、あたらしいお友達?」
おゆき「えらいかわええ子やん」
荒木 煌一(あらき こういち)「かわええてなんやねん」
おゆき「初めまして、おゆきと申します」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あ、英田乃亜です」
荒木 煌一(あらき こういち)「9月に転校してきたんやで。海外から」
おゆき「へぇ、どこから来はったん?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「えっと、最後にいたのはロンドンです」
おゆき「〈ええなあ! うち、小さい頃旅行で行ったことある〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「!」
  舞妓さんから突然の英語。僕が驚いているうちに、彼女は英語でスラスラと話し続けた。
おゆき「〈ロンドンは、ずっと住んではったん?〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈いえ、2年ぐらいかな。その前は別の国にいて──〉」
荒木 煌一(あらき こういち)「・・・」
おゆき「ふふ、煌ぼんが仲間はずれにせんといてって顔で見てはる」
英田 乃亜(あいだ のあ)「ごめん、つい・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「いや、こうなるとは思てた」
英田 乃亜(あいだ のあ)「舞妓さんって、英語話せるんですね」
荒木 煌一(あらき こういち)「おゆきは特別やで。舞妓なってから勉強したんやて」
おゆき「海外からもぎょうさん来てくれはるからなぁ。お話できたほうがええやろ」
荒木 煌一(あらき こういち)「努力家やねんな、おゆきは」
おゆき「煌ぼんにそない褒めてもらえるなんて、おそれ多いわ」
  二人、仲が良さそうだな。
  小さな口でふふと笑うおゆきさんは、まるで時代劇に出てくるお姫さまのようだ。
  煌一が告白を断り続けているのは、もしかして。
  だからって、べつにどうってわけでもないけど──
芸妓さん「おゆき、お待たせ!」
おゆき「ほんなら、また」
おゆき「そうや、ノアさん!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「へ?」
おゆき「〈言うとくけど、うちと煌ぼんは何でもないさかいな〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈え!?〉」
  心を読まれたのかと思って、変な声をあげてしまった。
おゆき「〈仲よくしてあげてね〉」
おゆき「ほな、煌ぼん。おきばりやす」
荒木 煌一(あらき こういち)「ちょお、ノアになにゆうてん!」

〇バスの中
英田 乃亜(あいだ のあ)「写真、100枚以上撮ってたよ」
荒木 煌一(あらき こういち)「ノア、バシバシ撮ってたもんな」
  帰りのバス。
  すっかり遅い時間になっていて、僕たち以外の乗客はまばらだった。
荒木 煌一(あらき こういち)「・・・なぁ。最後、おゆき何言うてたん?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あぁ。私と煌一はただの友達同士ですよって言ってたけど」
荒木 煌一(あらき こういち)「はぁ!? なんでそんなこと、わざわざ・・・」
英田 乃亜(あいだ のあ)「舞妓さんって、ボーイフレンドがいたら問題なのかな」
荒木 煌一(あらき こういち)「さぁ、どうなんやろなー・・・」

〇バスの中
  ガタン、ガタン。
  バスが心地よく、歩き回って疲れた身体を揺らしてくる。
荒木 煌一(あらき こういち) 「道混んでんなー。まだかかりそう」
「んー。そうなん、だ・・・」
  煌一の声を意識の遠くで感じながら、僕はバスの揺れに身を任せた。
荒木 煌一(あらき こういち)「おっ!? ノア、どうした・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「・・・寝てんの?」
荒木 煌一(あらき こういち)「肩くらい、貸すでー・・・」
  夢見心地に、頭にふわっと温かいものが置かれた気がした。
  なんだか、撫でられているみたいな・・・
  猫にでもなったようで気持ちがよくて、僕はそのまま意識を手放した。
荒木 煌一(あらき こういち)「・・・ノア、ほんまに寝てる?」
荒木 煌一(あらき こういち)「・・・寝てるな」
荒木 煌一(あらき こういち)「・・・ノア、」
荒木 煌一(あらき こういち)「オレ、お願いしたいこと、あるかも・・・」
「・・・?」
  鼻先に微かな吐息を感じて、僕は目を開いた──

コメント

  • 一話ごとにほんの少しずつ距離が近づいていくのが、何とも心地よいですね。ただ、次話では一気に動き出すような気も…続き、楽しみにしてます!
    数年前、京都へ何度か行く機会があったのですが、背景のチョイス、登場キャラ、京言葉が相まって、当時の記憶が蘇ってくるようでした^^

  • 読了しました。
    お巡りさんに注意されるも、コネのお陰で大事には至らなかったようですね……。

    バスでのぶらり旅。
    芸妓さんや舞妓さんにも知り合いが居る煌一くんの顔の広さには圧巻ですね。😶

    そんな煌一くんにも、ついに願い事が……!
    乃亜くんとの関係がどうなるか楽しみですね。

  • 世界に引き込まれますね✨☺️
    素敵な作品ありがとうございます✨😊

    二人の自然なやりとりや、他の人との関わり合いで少しずつ違った表情が見えたりと、面白いです✨🥰

    にゃぴょうさんにも幸あれー💕
    続きも楽しみにしてます✨

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