ハレの惡左府

山本律磨

ⅩⅡ(脚本)

ハレの惡左府

山本律磨

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ハレの惡左府
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〇祈祷場
鬼丸「キッショ・・・」
トンボ「よし!聞いた!チクってやる!」
鬼丸「ト、トンボ。 どこから入って来た? 裏口は閉めたはずだぞ」
トンボ「俺達ハレの衆は 左府様の密偵(スパイ)でもある。 ここの鍵なんてついてないも同じだぜ」
鬼丸「あっそ」
トンボ「どうした?  お館勤めからこっち元気ねえな」
トンボ「あんまり考えこまねえこった。 俺らはこの世のハレを一手に請け負い 民の苦悩を笑い飛ばす」
トンボ「ただそれだけの為に生きて それだけの為に死ぬ。 単純でいいじゃねえか」
鬼丸「まるで傀儡だな」

〇貴族の部屋
武者丸「構いません。 傀儡であろうと、人形であろうと」
左府「傀儡でも人形でもない」
左府「胸を張れ、お前たちは神の使いだ」
武者丸「神の使い・・・?」
左府「私は幼き頃、神を見た」

〇華やかな広場
貴族「ご覧あれ綾若殿」
貴族「あのお方こそが治天の君」
貴族「あの舞こそが神の舞」
貴族「この世の全てを寿ぐハレの舞である」
綾若「神・・・」
綾若「あのお方が・・・私の神様・・・」

〇貴族の部屋
左府「その時に、はじめて私は 神の神官たる摂関家に生まれた己を 心から誇りに思った」
左府「この一生の全てを 我が神と我が国に捧げようと決意した」
左府「だからまことは違うのだ」
左府「私が身命を賭すべき神は、 妾に産ませた帝でも、 今様狂いの愚物でも、 引籠りの臆病者でもない!」
左府「何故こうなった、 何故王朝はかくも脆弱で醜くなった」
武者丸「・・・」
左府「覚えておけ。 お前達非人は人を越えし者・・・」
左府「神と共にハレの世界に生きる強く美しき者」
左府「この国と私を寿いでくれる者だ」
武者丸「左府様・・・」

〇祈祷場
トンボ「人形結構コケッコウさ。 暗闇でのたうち回ってた俺に、 左府様は光を与えてくれたんだからよ」
ミズチ「食うも寝るも命懸けだった俺に、 平安の毎日を与えてくれたんだ」
ムジナ「おまけに民の拍手喝采ときた。 歌舞音曲は一度やったらやめられねえよ」
鬼丸「どんどん入ってくるんじゃねえよ。 隠し扉の意味ねえだろ」
鬼丸「・・・ったく。 オイラ、都が、あの男が分からねえよ」
マシラ「考えるな!感じろ!」
トンボ「歌え!踊れ!笑え! それが俺達の生きる道だ!」
トンボ「よおし!今宵もとんぼ返り! やっちゃうよ~馬鹿野郎~♪」
ムジナ「おいおいあんまり無理すんな~」
トンボ「ハッ!」
鬼丸「・・・!」

〇黒

〇貴族の部屋
公春「殿!お目覚め下さい! 一大事にございます!」
左府「如何した?」
公春「内裏より火急の使いです! 文武百官直ちに参内せよ との女院様の命にございます!」
武者丸「ま、まさか帝が!」
左府「うろたえるな。 女院の世の終焉。 『来るべき時』が来たと言うだけだ」
左府「粛々と参ろう」

〇後宮の庭
寵「ええい急げ急げ!」
寵「輿でも唐車でも馬でも何でもよい! 次の世への忠誠が試される時じゃ! 急げ急げ急げ急げ~~~~~~~!」
寵「あ、やっぱり馬はちょっと・・・」

〇屋敷の一室
信西「恒舒百億光王手 普摂有縁帰本国 願共諸衆生 往生安楽国」
「信西様!お急ぎ下され!信西様!」
信西「南無至心帰命礼 西方阿弥陀仏」

〇中華風の通り
鬼丸「殿さん!大変だ殿さん!」
武者丸「如何した?雑事ならあとにせよ」
鬼丸「雑事じゃねえ!トンボが・・・」
鬼丸「トンボが死んじまう!」
武者丸「な、何だと!」
  『止めよ。武者丸』
左府「何があった?」
鬼丸「・・・」
  CONTINUED

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