第8話「昇叙と叙爵」(脚本)
〇城の回廊
後日、オルフォード国王に呼ばれたナハト達は、城に来ていた。
ナハト「おっと!忘れるところだった──」
ラレシィエンヌ「何を・・・ですか?」
ナハト「この姿のままじゃ駄目だったんだった──」
ニュイ「──これでよし」
ラレシィエンヌ「いつ見ても凄いですね。変身術で姿を変えられるっていうのは」
ニュイ「あら有難う」
ニュイ「でも・・・」
ラレシィエンヌ「でも?」
ニュイ「一つだけ悩みがあって──」
ラレシィエンヌ「悩み・・・ですか?」
ニュイ「肩が凝りやすいの」
ニュイ「何故だろう?」
ラレシィエンヌ「・・・」
ラレシィエンヌは自分の手を胸に当て、目線をニュイの胸に向ける。
ニュイ「どうしたの?そんなに私の胸を見て──」
ラレシィエンヌ「ま・・・負けた──」
ニュイ「負けたって、何が?」
ニュイ「ふご!?」
アリュシオーネ「それ以上はやめなさい──」
アリュシオーネはニュイがそれ以上聞くのを、口を押さえて阻止した
ミシェラ「・・・」
ヒュルステイン大公「どうしたんだミシェラ?」
ミシェラ「いや・・・親子でこんなにも『大きさ』が違うことって、あるんだなぁって思って──」
ヒュルステイン大公「・・・何言ってるか、サッパリだな──」
〇謁見の間
アンジュ「あ!お父様。皆さん、来ましたよ」
オルフォード国王「うむ──」
オルフォード国王「皆の者、良く来てくれた」
ラレシィエンヌ「凄い・・・壮観ですね──」
ラレシィエンヌが驚くのには無理はない。
国王と王女の他に、そこに居たのは爵位を持つ貴族とそれらに連なる家系の者達。
そして、国王の左右前には聖響騎士団の隊長達が並んでいたからだ。
ニュイ「おっと!私も並ばなくちゃ──」
アリュシオーネ「私も早く並ばなければ──」
オルフォード国王「うむ。──さて、本日皆に集まってもらったのは他でもない」
オルフォード国王「昇叙と叙爵の儀を行う為だ」
オルフォード国王「それではまず昇叙から──」
オルフォード国王「ルートヴィッヒ伯爵、エチュード子爵、ファランドール男爵の3名は前へ・・・」
国王に呼ばれた3名は前へ歩み寄る
オルフォード国王「まずルートヴィッヒ伯爵を侯爵に。エチュード子爵を伯爵に。ファランドール男爵を子爵に昇叙とする」
オルフォード国王「そしてラレシィエンヌよ・・・前へ──」
ラレシィエンヌ「はい──」
オルフォード国王「そなたに爵位を叙爵。本日から『男爵』とする」
ラレシィエンヌに男爵の爵位が叙爵された途端、貴族たちがザワザワし始めた。
貴族の男性
『待ってください国王陛下』
オルフォード国王「どうしたのだ?」
貴族の男性
『女性に爵位を叙爵するのは、どうかと思うのですが?』
貴族達
『そうだそうだ!!』
貴族の男性のその一言でその場は騒がしくなった
オルフォード国王「・・・」
オルフォード国王(これは私には、もうどうしようもならないな──)
オルフォード国王「ニュイ・・・頼む」
ニュイ「!」
ニュイ「わかりました」
ラレシィエンヌ「!!」
ニュイ(彼女もあんなに言われて、あんな表情だし、仕方がない)
ニュイ(本来ならこんなところで使用することじゃないけど・・・)
ニュイ「『歌唱魔術・歓喜の歌』」
ニュイが歌い出した瞬間、その場にいた怒りの感情に満ちた貴族達は、みるみるとその感情が薄れていった。
そして、騒ぎが静まったのを確認した国王はニュイに感謝を述べた。
オルフォード国王「騒ぎを治めてくれたこと。そして、素晴らしい歌を聴かせてくれたこと、感謝する」
ニュイ「いえいえ。お役に立てれば幸いです」
オルフォード国王「ではこれにて、昇叙と叙爵の儀を終了とする」
オルフォード国王「・・・」
オルフォード国王「あと、聖響騎士団の隊長達と、ラレシィエンヌとファランドール子爵夫妻は残ってくれ」
オルフォード国王「我が娘アンジュから話がある」
オルフォード国王「あとは頼んだアンジュ」
アンジュ「わかりました御父様」
アンジュ「・・・では早速──」
アンジュ「ラレシィエンヌ・・・前へ──」
ラレシィエンヌ(?)
アンジュはラレシィエンヌを自分の前へ呼び、そして次のことを伝えた
アンジュ「ラレシィエンヌ。今日から貴女を『聖響騎士団・聖刻隊・副隊長』に任命します」
ラレシィエンヌ「・・・」
ラレシィエンヌ「え!?」
ラレシィエンヌ両親
『え!?』
ニュイ「え!?」
その場にいたラレシィエンヌと彼女の両親。そしてニュイまでもがアンジュの言ったその言葉に驚いた
アンジュ「何で貴女まで驚くのですニュイ」
ニュイ「いやだって、初耳だし──」
アンジュ「あら。だって今言ったのが初言だったので──」
ニュイ「そういう事は事前に言ってください」
ニュイ「まったく。そういう『突然思いついたこと』をその場で言うところ、誰に似たんだか──」
オルフォード国王「?」
ラレシィエンヌ「あのぉ、すみません──」
アンジュ「どうしたのかしら?」
ラレシィエンヌ「何故私に爵位を?」
ラレシィエンヌ「私、女だし・・・」
アンジュ「あら。別に女性が爵位を持っている前例が無い訳じゃないのよ──」
アンジュ「そうでしょ?ミシェラ、アリュシオーネ」
アリュシオーネ「はい」
ミシェラ「私とアリュシオーネが昔仕えていた『御主人様』が、その人なの」
ラレシィエンヌ「そう・・・ですか──」
オルフォード国王「昔、仕えていたって──。300年も前の話・・・」
ニュイ「あ!?」
アリュシオーネ「『アクセル』」
オルフォード国王「ふご!?」
ラレシィエンヌの父親
『国王陛下!?』
アリュシオーネ「・・・」
ラレシィエンヌ「国王陛下は大丈夫なのですか?」
アンジュ「大丈夫ですよ」
ラレシィエンヌ「はぁ・・・」
オルフォード国王
『うぅぅ・・・』
無闇に人の年齢をバラすような言動と行動は辞めよう・・・と誓ったオルフォード国王
アンジュ「あ!そうだラレシィエンヌ」
ラレシィエンヌ「はい?」
アンジュ「ちょっと耳を貸して──」
ラレシィエンヌ「はい──」
アンジュはラレシィエンヌの耳元でこう呟いた
アンジュ「負けないから!」
ラレシィエンヌ「何にですか?」
アンジュ「わからないのなら、私にもチャンスはあるみたいですね──」
ラレシィエンヌ(何なんだろう?)
アンジュの呟いた言葉に対してラレシィエンヌは、その意味がわからなかった。
・・・とその時突然──
そこに急にやってきたのは近衛兵だった
近衛兵
『た・・・大変です国王陛下!!』
オルフォード国王「どうしたのだ?そんなに慌てて──」
近衛兵
『前・・・前侯爵様が遺体で見つかりました──』
オルフォード国王「何だと!?」
近衛兵
『今、遺体安置所に運んで詳しいことを調べさせています』
オルフォード国王「うむ、わかった。下がって良いぞ」
近衛兵
『わかりました。では、失礼します』
オルフォード国王「・・・」
オルフォード国王「さて、どうしたものか・・・」
マリ・クズノハ「国王陛下。私、調べてくるよ!」
オルフォード国王「うむ。頼む」
次回に続く──