鳥居のそばでキスをして

にゃぴょう

第3話 初バイトと初デート(脚本)

鳥居のそばでキスをして

にゃぴょう

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〇学校脇の道
荒木 煌一(あらき こういち)「ノアー、学校行こー!」

〇教室
荒木 煌一(あらき こういち)「ノア、昼めし食おー!」

〇学校の廊下
荒木 煌一(あらき こういち)「ノア、帰るでー!」

〇学校の廊下
英田 乃亜(あいだ のあ)「うん、ちょっと待って」
  転校初日から一週間、煌一はずっとこの調子だ。
荒木 煌一(あらき こういち)「おっけ〜!」
  ・・・やっぱり犬みたいだ。大型犬。
  ふさふさのしっぽが見える気がする。
長谷川「英田、しょんべん行こ〜」
荒木 煌一(あらき こういち)「そんなんひとりで行け」
長谷川「煌一もなんでもかんでも誘ってるやんけ」
伊藤「ほんまや、過保護なかあちゃんかい」
荒木 煌一(あらき こういち)「なんやと、オレはやなぁ──」
小川「英田くん、日本の学校どない?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あ、うん・・・思ってたよりも」
  日本人っていうか、京都の人って
  もっと落ち着いてるというか、静かで上品なイメージがあったけど
英田 乃亜(あいだ のあ)「想像と違った、かな」
荒木 煌一(あらき こういち)「お、ノア! そろそろ行かな」
小川「なんかあんの?」
荒木 煌一(あらき こういち)「ノアの初出勤」
小川「出勤?」
荒木 煌一(あらき こういち)「うちの神社のバイト」
長谷川「お前の神社、人めっちゃ来るやん。京都で一番来るんちゃう!?」
長谷川「忙しいやろ絶対」
英田 乃亜(あいだ のあ)「そうなの!?」
伊藤「英田、だまされてんで! 優しいふりしてこき使うつもりやぞこいつ」
荒木 煌一(あらき こういち)「ちゃうって!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「まぁ、今日はトライアルだから・・・」
???「荒木〜、また他校生から呼び出されてんぞ〜」
荒木 煌一(あらき こういち)「お? あー、わかった」
  他校生の呼び出し・・・って

〇体育館の裏
不良「お前が洛高の荒木か」
不良「やっちまいましょう」
荒木 煌一(あらき こういち)「フッ・・・後悔するぜ」

〇学校の廊下
  大丈夫なのか・・・!?
伊藤「あの制服、聖南女子ちゃう!?」
長谷川「超お嬢様学校やん!」
  皆につられて、窓から下を覗きこむと、
  校門の外で女の子が3人、そわそわした様子で立っている。
小川「お、煌一出てきた」
伊藤「来るで、来るでぇ・・・」
  女の子のひとりが煌一の前に進み出て、なにか言ったようだ。
英田 乃亜(あいだ のあ)「これって・・・」
長谷川「・・・あー、やっぱあかんかったかぁ〜!」
  煌一は頭を下げていた。女の子たちがそそくさと走り去る。
  日本のドラマで見たことあるやつだ!!
英田 乃亜(あいだ のあ)「こういうこと、よくあるの?」
伊藤「告白的な? いや、普通はあんまないな」
長谷川「煌一に限ってはめっちゃある。週一で勃発してる」
小川「いつも断ってるけどな」
長谷川「せやねん! 一回ぐらい付きおーてみたらいいのに」
長谷川「トライアルやトライアル!」
伊藤「そんなんやからお前はモテへんのや」
長谷川「出たわ、彼女いるヤツの余裕!」
  ずっと、断ってるんだ・・・
荒木 煌一(あらき こういち)「ノア、ごめん! 遅なった」
荒木 煌一(あらき こういち)「行こか!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あ、うん」
  もしかして、僕と同じ・・・
  なわけ、ないか。

〇和風
  鳥居のそばでキスをして
  第3話 初バイトと初デート

〇神社の本殿
松尾のじいちゃん「おぉー、似おてるやんか!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「ありがとうございます・・・」
  初めての和服。袖がバサバサして、袴が足にまとわりついてきて
  なんだかソワソワする・・・
巫女さんバイト「きゃー!! かわー!!」
巫女さんバイト「あ、先輩にかわいいとか言ったらあかんあかん!」
巫女さんバイト「みかんです、高校1年生でーす」
巫女さんバイト「よろしくお願いします、のあのあ先輩⭐︎」
英田 乃亜(あいだ のあ)「ノアノア・・・」
松尾のじいちゃん「今日はわしらがついて教えるさかいな」
英田 乃亜(あいだ のあ)「松尾さん、神社の人だったんですね」
松尾のじいちゃん「神社も手伝わせてもろてんねん。ダブルワークっちゅうやつや」
巫女さんバイト「そしたら、早速なにやるか教えますね! これがお守りでぇ〜」
  目の前には、色とりどりのお守りが並んでいる。
  学業成就、家内安全、恋愛成就
英田 乃亜(あいだ のあ)「すごい数・・・」
参拝客「<わー、素敵>」
参拝客「<すいません、これは何ですか?>」
巫女さんバイト「うおぉ、さっそく!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「<えっと、お守りでして、健康でいられるよう守ってくれるんです〉」
参拝客「<へー、お父さんに買って行こうかな>」
参拝客「<ひとつください!>」
英田 乃亜(あいだ のあ)「<ありがとうございました>」
松尾のじいちゃん「さすがやな、スムーズ!」
巫女さんバイト「はじめてにしては、めっちゃええ感じでしたね」
英田 乃亜(あいだ のあ)「いや、ただ答えただけで──」
参拝客「〈そうだ! この近くでおすすめのご飯やさん、ありますか?〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈えっと、ご希望は〉」
参拝客「〈うーん、地元の人が行くようなところがいいかな〉」
  そんなの、知らない──
荒木 煌一(あらき こういち)「ノアー、着替えたか?」
荒木 煌一(あらき こういち)「おー・・・」
英田 乃亜(あいだ のあ)「コウイチ! この近くでいいレストランってある!?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「ガイドブックに載ってなさそうなところで・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「お、あぁ! 地元民のオススメ的な?」
荒木 煌一(あらき こういち)「せやなー。肉食べれるんやったら、ここのお好み焼き屋とか美味いで」
荒木 煌一(あらき こういち)「こっからやと、参道出たあとに右曲がって──」
  煌一の言うとおり、英語にして伝えてみる。
参拝客「〈わー、最高! 聞いてよかった〉」
参拝客「〈行ってみますね!〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「・・・・・・」
巫女さんバイト「さっすがー! ネイティブ英語つよ強!!」
松尾のじいちゃん「こりゃすごいわ!」
荒木 煌一(あらき こういち)「乃亜、助かったわ」
英田 乃亜(あいだ のあ)「それは僕の台詞・・・」
  僕はただ、言葉の橋渡しをしているだけ──
松尾のじいちゃん「そろそろ時間やな」
松尾のじいちゃん「ほい、おつかれさんでした」
英田 乃亜(あいだ のあ)「え? これは」
松尾のじいちゃん「今日のお給料や」
英田 乃亜(あいだ のあ)「そんな、何もしてないのに」
荒木 煌一(あらき こういち)「めっちゃええ仕事してたやん!」
巫女さんバイト「もらえるもんはもろといた方がいいですよ、のあのあ先輩!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あ、ありがとうございます・・・」
松尾のじいちゃん「今週末、もっかい来てもらう予定やな」
松尾のじいちゃん「よろしくな、英田くん!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「はい・・・」
  悔しいような、申し訳ないような、
  もやもやした気持ちで、僕のアルバイト初日は終わった──

〇学校の校舎

〇図書館
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈えーと、『先斗町』・・・なんて読むんだこれ〉」
担任「お、英田くん。勉強熱心やね」
担任「『京都の歩き方』『京都の歴史』・・・」
担任「ええな、京都に興味わいてきた?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「いえ、その、ちょっと」
  興味がわいた、わけではない。
  ただ、お金をもらう以上はしっかりやらないと。それだけだ。
担任「こうやって、何かを新しく学ぼうとするんは素晴らしい」
担任「自分の世界がどんどん広がっていくからなぁ」
英田 乃亜(あいだ のあ)「はい・・・」
  僕は、あいまいに頷くことしかできなかった。
  世界なんて、これ以上広がらなくていい。
担任「京都での生活、楽しめたらええな。英田くん」
1年生「届かんなぁ・・・あっ」
荒木 煌一(あらき こういち)「ほい、どーぞ」
1年生「荒木先輩! ありがとうございます」
荒木 煌一(あらき こういち)「あ、ノア発見ー!!」
担任「荒木くん、図書室では静かに」
荒木 煌一(あらき こういち)「すんませーん!」
担任「ほな、おきばりやす」
荒木 煌一(あらき こういち)「ノア、なにしゃべってたんー?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「えっと、京都の話」
荒木 煌一(あらき こういち)「これ全部読んだん!?」
荒木 煌一(あらき こういち)「もう、オレより京都のこと知ってんちゃう!?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「そんなわけないでしょ」
英田 乃亜(あいだ のあ)「そうだ、これ・・・なんて読むの?」
荒木 煌一(あらき こういち)「『先斗町』ぽんとちょう、やな」
荒木 煌一(あらき こういち)「豆知識、教えたろか?」
荒木 煌一(あらき こういち)「昼間に先斗町歩いてる舞妓さん、だいたいホンモノじゃない説」
英田 乃亜(あいだ のあ)「えっ、どういうこと」
荒木 煌一(あらき こういち)「舞妓さん体験してる、観光客の可能性が高いってこと」
英田 乃亜(あいだ のあ)「へぇー。それ、どこにも書いてなかった」
荒木 煌一(あらき こういち)「・・・なぁ。本で読んだとこ、実際に行ってみたらええんちゃうか」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あぁ、確かに」
  位置関係も分かりそうだし、記憶も定着しそうだ。
英田 乃亜(あいだ のあ)「うん、行ってみようと思う」
荒木 煌一(あらき こういち)「ほんま!? ほな行こ!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「え、行くって、今!?」
荒木 煌一(あらき こういち)「善は急げや! 案内したる!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「えぇ・・・!」
  なんかデジャヴなんですけど・・・

〇学校の裏門
荒木 煌一(あらき こういち)「お待たせー」
英田 乃亜(あいだ のあ)「自転車、持ってたんだ」
荒木 煌一(あらき こういち)「長谷川に借りた。ポケットからカギ取ってきたわ」
  それは借りたのではなく、盗んだのでは・・・
荒木 煌一(あらき こういち)「よっしゃ! ノア、うしろ乗れる?」
  煌一はひょいと自転車にまたがって、後輪うえの荷台をポンポン叩いた。
英田 乃亜(あいだ のあ)「え、ふたりで乗っていいの?」
荒木 煌一(あらき こういち)「大丈夫やって! まぁ、嫌ちゃうかったら」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あ、うん」
英田 乃亜(あいだ のあ)「んしょ・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「そんな端っこにちょこんて座ってたら、落ちるて!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「え」
荒木 煌一(あらき こういち)「つかんでええで、オレのこと」
英田 乃亜(あいだ のあ)「う、うん」
  べつに、煌一のことをどうこう思っているわけではないけど、
  多少意識はしてしまう・・・。
  僕はできるだけなんともない風を装って、煌一の腰にうでを回した。
荒木 煌一(あらき こういち)「おし! ノアと京都巡りツアー、しゅっぱーつ!」

〇空
  煌一の背中が目の前にある。
  このまえ子供をおぶってあげていた、大きな背中。
荒木 煌一(あらき こういち)「よーつかまっときやー!」
  自転車のスピードが上がった。
  勢いあまって、煌一の背中に頬が当たる。なんだかいい匂いがする。
  天気のいい日に芝生に寝そべったときのような、
  ちょっとこそばゆくて、あたたかくて、落ち着く──
???「危ない──!!」

次のエピソード:第4話 バスとキスのゆくえ

コメント

  • 乃亜くんの白衣と袴、最高に輝いてますね。✨️
    海外からのお客さんに対応しつつ、知らない場所については煌一くんがフォロー。ナイスだ。👍

    しかし、煌一くん。自転車の2人乗りは駄目だぞ。👎
    最後の声はお巡りさんか、それとも……。 
    続きを楽しみにしてます!

  • わー!!✨ノアの新衣装素敵ですね💖🥰
    にあってます✨🥰
    二人のバランス最高ですねー✨
    お似合いだぁ…✨😍

    初デート楽しみにしてます✨☺️

  • のあのあ先輩、言葉の壁超えて対応出来るのはちゃんとした教養(スキル)が必要だから実際すごいことなんすよ…
    翻訳アプリとかでも簡単なやり取りは出来るかもだけど、ちゃんと相手の意図を理解したり細かいニュアンス間違えないで橋渡しするのって人間の心ありきの所業だから!もっと自信もっていいから!!頑張れ!!!
    それはそうと最後に2人乗り指導?入ったっぽい描写で草でした😂

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