第一話:私、怖いの苦手なんです(前編)(脚本)
〇空
〇安アパートの台所
敷島杏「よしっと!」
〇古いアパートの部屋
敷島杏「出来たよー、はい食べなー」
敷島漣「いただきまーす」
敷島杏「あれ? 漣だけ? 柚斗は?」
敷島漣「部屋じゃない?」
敷島杏「何だよ、あいつー。遅刻するぞ」
〇木造の一人部屋
敷島杏「柚斗! 起きろ!」
敷島柚斗「うーん・・・」
敷島杏「ほら早く! お姉ちゃんもう仕事行くんだから!」
敷島柚斗「いってらっしゃーい・・・」
敷島杏「寝るなーーー!!」
敷島香織「杏、何してるの?」
敷島杏「だって柚斗がー」
敷島香織「それより時間大丈夫?」
敷島香織「新入社員が遅刻したら ダメなんじゃないの?」
敷島杏「あっ、ヤバっ!」
敷島香織「あと、行く前にお父さんに──」
杏の声「わかってるー」
〇大きな箪笥のある和室
敷島杏「おとうさん、今日から私も社会人だよ。 がんばってくる」
〇電車の中
敷島杏「おっ押される・・・ まっすぐ立てない・・・すごいな通勤電車」
敷島杏「うわっ! ちょっ! 倒れる!」
敷島杏「だぁっ!」
乗客男性「ぐぇっ! げほっげほっ!」
敷島杏「あっ、すみません! ごめんなさい!」
敷島杏「あれ、なんだ?」
倒産のお知らせ
敷島杏 様
お世話になっております。
三吉不動産株式会社は諸般の事情により、
本日をもちまして廃業致します。なお~
敷島杏「はぁ? 何これ?」
『デイリーニュース~~
本日、三吉不動産株式会社が倒産の~』
敷島杏「わ、私の就職先、とっ倒産したの? 今日、入社日なのに・・・」
〇ハローワーク
〇職業安定所の面談カウンター
敷島杏「うわ・・・こんなにたくさんいるんだ、 仕事探してる人・・・」
ハローワーク職員「お待たせしました、お次の方どうぞ」
敷島杏「えっ? あー・・・」
ハローワーク職員「どうぞ、整理券お取りください」
敷島杏「あっ、えっと、またにします!」
ハローワーク職員「はい?」
敷島杏「すみません、失礼しまーす」
〇商店街
敷島杏「はぁ・・・ お母さんになんて言おう・・・」
〇岩倉不動産の外観
敷島杏「不動産屋さんか・・・ どんな仕事だったのかな・・・」
真山文雄「もしかして就職希望の方?」
敷島杏「へっ?」
敷島杏「あっ、そう言う事・・・ 私、間取りを・・・」
真山文雄「あれ、違った?」
〇電車の中
倒産のお知らせ
敷島杏 様
お世話になっております。
三吉不動産株式会社は諸般の事情により、本日をもちまして廃業致します。なお~
〇岩倉不動産の外観
敷島杏「あの! どんなお仕事か聞かせて もらっていいですか?」
〇事務所
真山文雄「しゃちょー・・・・・・あれ? しゃちょー! 出てこないなー」
真山文雄「ちょっと待ってね」
敷島杏「はい・・・」
真山文雄「しゃちょーー!」
真山文雄「何でパジャマなんすか・・・」
岩倉哲也「いや、寝てたから」
真山文雄「さっきまでスーツ着てたじゃないですか」
岩倉哲也「あれじゃ寝にくいんだよな」
真山文雄「そりゃそうかもしれませんけど・・・」
岩倉哲也「ふわぁー・・・で、何かあった?」
真山文雄「ああ、就職希望の方ですよ」
岩倉哲也「就職?」
真山文雄「だから、社員募集の張り紙見て」
岩倉哲也「社員募集の張り紙・・・・・・」
岩倉哲也「あー、あれか」
真山文雄「あれです」
岩倉哲也「まだ貼ってあったのか」
真山文雄「社長がそのままにしとけって言うから、 そのままですよ」
岩倉哲也「そういやそうだ。もうどんぐらいだ?」
真山文雄「1年ぐらいですかねー」
岩倉哲也「いつかは誰か来ると思ってたんだけど、 そうか、ようやくか」
敷島杏「あのー・・・じゃあ、今まで ここに就職希望で来た方って・・・」
岩倉哲也「いないよ」
敷島杏「へっ?」
真山文雄「君がはじめて」
敷島杏「あー・・・」
岩倉哲也「まあ、座って座って。 まやまー、お茶入れてくれるー」
真山文雄「はーい。あと社長、せめて着替えて下さい」
岩倉哲也「あっ、そうな。これじゃあな(苦笑)」
敷島杏「この会社・・・失敗かも」
〇校長室
真山文雄「はい、お茶どーぞ」
敷島杏「あっ、ありがとうございます」
岩倉哲也「あー、今日倒産したあの会社か」
真山文雄「ニュースでやってましたねー」
敷島杏「すみません、 だから履歴書も持ってなくて・・・」
岩倉哲也「そりゃ、大変だったね」
敷島杏「突然だったので、もう何がなにやら・・・」
岩倉哲也「ふーん・・・」
敷島杏「あのー、やっぱり履歴書持って改めて お伺いしたほうが宜しいでしょうか?」
岩倉哲也「うーん、そうねー・・・ じゃあ、ちょっと行こっか」
敷島杏「えっ?」
岩倉哲也「まやまー」
真山文雄「はい?」
岩倉哲也「北新宿のアレ行ってくるわ」
真山文雄「北新宿って、もしかして例の部屋ですか?」
岩倉哲也「そう。後は頼むわ」
真山文雄「わかりましたー」
敷島杏「あのー、例の部屋ってなんですか?」
真山文雄「何て言っていいのか・・・」
真山文雄「まー、行けばわかるよ。 ほら、就職試験みたいなもんだと思って」
敷島杏「・・・はぁ」
真山文雄「はい、がんばって! いってらっしゃーい」
〇寂れた雑居ビル
岩倉哲也「ここね。このビルの5階」
敷島杏「5階が何なんですか?」
岩倉哲也「まあ、とりあえず行こう。 あと、ここ、エレベーター無いから」
敷島杏「えっ?」
〇マンションの共用階段
岩倉哲也「はぁはぁ、早いな、あの子」
〇雑居ビルの一室
敷島杏「ふーっと、よし到着。あれ?」
岩倉哲也「はぁ、着いた・・・」
敷島杏「あのー・・・大丈夫ですか?」
岩倉哲也「はぁはぁ、君、体力あるんだね」
敷島杏「はい、陸上やってたんですよ」
岩倉哲也「はぁ、なるほどね」
岩倉哲也「じゃあ、この部屋だから」
敷島杏「あのー、この部屋、なんなんですか?」
岩倉哲也「いいのいいの。とにかく入って」
恐る恐る扉を開ける杏。


