AI食堂

夏目心 KOKORONATSUME

8 幸せの形(脚本)

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〇居酒屋のカウンター
  それから約束の日当日。俺は今日もいつもの様に仕事を終わらせた後、中村さん達に頼んで店をまだ開けてもらう事に。
安藤楽「ここが冬弥の仕事場か・・・俺らの地元にこんな所があったなんて知らなかったぜ・・・」
雨宮香織「そんな事どうでも良いじゃ無い・・・早く冬弥を見つけて連れ戻さないと・・・」
安藤楽「あ、あのなぁ・・・」
中村育美「あ、お客様、もしかして冬弥さんのお友達の方で?」
安藤楽「あ、はい・・・」
中村育美「そうですか・・・あなた達が自分都合で冬弥さんを追い出して、その挙句に自分達のお店が炎上したって言う、」
中村育美「ダサい人達ですか・・・」
雨宮香織「は、はぁ!?あんたAIの凄さが分からないの!?私達が何の苦労もしない様に仕事やってくれるのよ!!」
安藤楽「な、なぁ・・・もうそれ自慢にならねぇから・・・」
中村育美「ふぅん・・・やっぱダサい人達ね・・・努力を怠って楽ばかりするクソ馬鹿野郎・・・」
雨宮香織「ねぇ!さっきから好き放題言わないで頂戴!!」
榊原冬弥「おい、一体何の騒ぎだよ?」
安藤楽「あぁ!冬弥!」
雨宮香織「冬弥!ここにいたのね!今直ぐ帰りましょう!お店が大変なのよ!」
榊原冬弥「あぁ、知ってる・・・」
雨宮香織「え!?なら話は早いわね!やっぱ冬弥のレシピは冬弥じゃ無いと扱えないのよ!これからあなたの作ったレシピを」
雨宮香織「AIにインプットして頂戴!それで!」
榊原冬弥「悪いが断わる・・・」
雨宮香織「えぇ!?何でよ!?」
榊原冬弥「あれから何日経ったと思ってるんだ?AIじゃ無くて、俺は自分の力で料理したいんだよ・・・」
榊原冬弥「あの後自分達で管理とか確りやったか?味見はちゃんとしたか?何より、自分で料理しようと思わなかった訳?」
雨宮香織「な、何よ!AIよ!もう私達、何の努力もしなくて良いのよ!?」
安藤楽「か、香織!1回落ち着けって!」
中村育美「信じられない・・・冬弥さんに頼まれて態々お店を閉めないでいたのに、冬弥さんにロクな謝罪もせずにまだAIに頼るとか、」
中村育美「あなたここへ何しに来たんです?これ以上自分勝手に振る舞うなら警察呼びますが?」
雨宮香織「はぁ!?ふざけんじゃ無いわよ!!」
安藤楽「いやそれ、特大ブーメラン・・・」
榊原冬弥「育美ちゃん、落ち着いて・・・」
中村育美「冬弥さん!こんな奴らと話し合いなんて最初から無理だったんですよ!特にこの女、凄く自分勝手だし!」
榊原冬弥「今こいつらに帰って貰われたら俺が困るんだ・・・それやって駄目なら、もうそこまでだからさ・・・」
中村育美「・・・分かりました・・・」
榊原冬弥「お前ら、昨日話した通り、夕飯はまだ食って無いよな?」
安藤楽「あ、あぁ・・・でもこの状況だから食欲は流石に失せたが・・・」
雨宮香織「あぁ、そう言えばそんな事言ってたわね・・・すっかり忘れてた・・・」
榊原冬弥「なら今から注文してくれ・・・今日だけ俺が奢るよ・・・」
安藤楽「わ、分かった・・・ならラーメン頼む・・・」
雨宮香織「ならカレーライス頂戴・・・」
榊原冬弥「分かった・・・待ってろ・・・」
榊原冬弥「さて、やるか・・・」
  数分後。
榊原冬弥「お待たせ・・・」
安藤楽「お、おう、ありがとう・・・」
雨宮香織「料理なんて誰が作っても一緒でしょ?」
榊原冬弥「何の為にお前らを呼んだんだよ?頼むから食ってくれよ?」
雨宮香織「まぁ良いわ・・・はむ・・・」
安藤楽「どれどれ?」
雨宮香織「・・・・・・」
雨宮香織「えぇ!?何これ!?そこらのカレーと大差無いと思ってたのに、何でこんなに美味しいの!?」
雨宮香織「ねぇ!一体何をした訳!?」
榊原冬弥「何って、どうやったらもっと美味くなるか考えてただけだが・・・」
雨宮香織「は、はぁ!?たったそれだけ!?」
安藤楽「う、うぅ!!」
雨宮香織「えぇ!?楽!どうしたのよ!?」
榊原冬弥「おい、大丈夫か楽!?」
安藤楽「美味え!美味えよ!!ロボットなんかに現抜かしてて忘れてた!料理するってどう言う事か、食って貰うってどう言う事か!」
安藤楽「冬弥!お前これがやりたかったんだな!だからAI反対したんだな!!」
雨宮香織「ちょ!ちょっと楽!どうしたってのよ!!」
中村育美「あなたまだ分からないんですか!?」
雨宮香織「はぁ!?」
中村育美「AIが優秀なのはあたしも重々承知してます!ですが、只レシピをインプットすれば良い物じゃありません!」
中村育美「冬弥さんはここに来て、父のやり方を抜かり無く自分の物として取り込みました・・・ですが、そこで終わりとせず」
中村育美「毎日の様に料理の改善に取り組みました・・・」
雨宮香織「・・・だから何よ?」
中村育美「その一言で済ますんですか?あなた冬弥さんの事何も分からないんですか?」
中村育美「冬弥さんはこう言ってるんです!人は努力を続ける限り幾らでも強くなれるんです!何に対しても努力を忘れれば」
中村育美「それだけ自分も弱くなって、いつか取り返しが付かなくなります!冬弥さんはそれが嫌だったんです!」
雨宮香織「し、信じられない!自分が汚れてまで、泥水を啜ってまで強くなりたいって?」
雨宮香織「ふざけんじゃ無いわよ!世の中はデジタル化がどんどん進んでるのよ!私達は幸せになる為に!!」
安藤楽「冬弥、俺料理ロボット全部返却するよ・・・」
雨宮香織「ちょ!何言ってるのよ楽!?」
榊原冬弥「楽、良いのか?」
安藤楽「あぁ、最初は俺らの負担を減らすつもりでやって見たけど、只楽するだけが幸せじゃ無い・・・何事も努力を忘れたら」
安藤楽「今回見たいになるって事が良く分かったよ・・・だから・・・」
雨宮香織「楽!そんなの私が許さないわ!」
安藤楽「か、香織!?」
雨宮香織「昔から嫌だったよ!努力とか、頑張りとか!親に言われて仕方無くやって来たけど、昔からそう言うのが大嫌いだった!」
雨宮香織「折角手に入れたAIよ?私の代わりに仕事してくれるのよ?人類の叡智がここまで来て、いつかAIが全部やってくれるのよ?」
雨宮香織「それを全部台無しにしようと言うなら、明日中に荷物を纏めて出て行って!権利書も全部私が貰うから!!」
安藤楽「ま、待て!そんな事したら!!」
雨宮香織「もう!どいつもこいつも知らないわよ!!」
安藤楽「あぁ、マジかよ・・・」
榊原冬弥「楽、お前これからどうするんだ?」
安藤楽「どうするもこうするもねぇよ・・・こうなっちまったからには、俺も再就職先しないと・・・」
榊原冬弥「なら、ここで働かないか?」
安藤楽「えぇ!?良いのか!?」
中村育美「ちょ!ちょっと待って下さい!さっきの人とこの人は、冬弥さんの事裏切ったんですよ!簡単に許して良いんですか!?」
榊原冬弥「許すも許さないもねぇよ・・・実を言うと、楽達の事は少し気になってたんだ・・・」
安藤楽「冬弥・・・」
榊原冬弥「確かに俺は裏切られた・・・でも、そんなのは今となっては小さな事だ・・・こうして料理を続けて分かったんだ・・・」
榊原冬弥「幸せには色んな形がある・・・皆違うからそれを求めるんだって・・・正直今日、楽達をここへ呼んで良かったと思ってる・・・」
中村育美「冬弥さん・・・」
榊原冬弥「もう俺はAIが間違ってるとも、自分が正しいとは言わない・・・何より本当は、俺は自分以外と戦っちゃ駄目なんだって」
榊原冬弥「良く分かったんだ・・・他人と戦うのは辞めて、俺は俺だけと戦ってく・・・もう周りが何言おうと関係無い・・・」
安藤楽「・・・冬弥、本当に良いのか?俺は・・・」
榊原冬弥「楽、俺はもうお前とも香織とも戦わないよ・・・でも、ここに来るなら手加減するつもり無いからな?」
安藤楽「・・・!ありがとう・・・ありがとう!!」
  こうして、俺達の蟠りに決着が着いた。香織はAIに固執し過ぎて話が通らなかったが、楽とは無事に和解出来た。
  やって見なきゃ分からない事もある。今回の事は、俺に取っても大きな教訓となったのは言うまでも無い事だった。

次のエピソード:9 努力が勝つか、AIが勝つか

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