6 努力とAI(脚本)
〇居酒屋のカウンター
数日後。
中村育美「お待たせ致しました!ご注文のお品物になります!」
モブ「来た来た!ありがとうございます!」
モブ「こいつは美味そうだな・・・育美ちゃん、親父さん怪我治ったのかい?」
中村育美「あ、それはまだですね・・・ですが、数日前に腕の立つ人を雇って鍛えてましたので・・・」
モブ「そっか・・・大変ですね・・・でも新しい人を雇ったのは懸命な判断ですが・・・」
モブ「だよな・・・俺ら親父さんの腕に惚れてるからな・・・」
中村育美「・・・その親父さんが絶賛する程の腕なんですよ・・・先ずは食べて見て・・・」
モブ「・・・まぁそうだな・・・はむ・・・」
モブ「・・・・・・」
モブ「えぇ!確かに美味い!」
モブ「すげぇな!親父さんと良い勝負じゃねぇか!」
中村育美「でしょでしょ!って、あたしそろそろ戻りますね!他のお客様もいらっしゃいますので!」
モブ「おう!頑張ってな!」
中村育美「お待たせ致しました!ご注文お伺いします!」
モブ「あ、えっと、天ぷら蕎麦下さい!」
モブ「こっちは唐揚げ定食お願いします・・・」
中村育美「畏まりました!今暫くお待ち下さいませ!」
〇居酒屋のカウンター
数時間後。
榊原冬弥「あぁ、やっと終わった・・・」
中村育美「あ!お疲れ様です冬弥さん!」
榊原冬弥「あ、育美ちゃん・・・今日から本格的にやらせて貰ったけど、お客さんの反応とかどうだった?」
中村育美「大盛況でしたよ!あたしの父さんと良い勝負だって!」
榊原冬弥「ま、マジか・・・良かった・・・君のお父さん俺から見てもプロ意識強そうだったから・・・」
中村育美「まぁ、そうですよね・・・これで大人しく休んでくれてたら良かったんですけどね・・・」
榊原冬弥「まぁ、気を付けるに越した事無いでしょ・・・」
中村俊博「よぉ、初日は随分と大盛況だったな・・・」
中村育美「あ、父さん・・・」
中村俊博「冬弥、疲れて無いか?」
榊原冬弥「いえ、寧ろ久々に料理やれて嬉しかった・・・」
中村俊博「へぇ!言うじゃねぇか!やっぱ自分でやってこそだな!」
中村俊博「あぁ、これで怪我さえして無きゃなぁ・・・」
中村育美「でも父さん、そのお陰で冬弥さんが家に来てくれた訳でしょ?」
中村俊博「それは確かにだが、怪我で休んでたら腕が鈍っちまうよ・・・」
中村育美「まぁまぁ、神様から休む様に言われてると思えばさ・・・」
中村俊博「まぁ、そう言う事にして置くか・・・」
中村俊博「あ、冬弥・・・今日の新聞でこんなの見つけたんだ・・・」
榊原冬弥「え?何です?食中毒か何かですか?」
中村俊博「食中毒では無いんだが、この店、修行期間に聞かせてくれた店じゃ無いかと思ってな・・・」
榊原冬弥「・・・・・・」
榊原冬弥「・・・!これは!?」
〇大衆居酒屋
俺が俊博さんから見せて貰った新聞には、以前俺が楽と香織と共に切り盛りしていた店の名前が載っていた。その内容は。
関西「なぁ、最近ここの料理どう思う?美味いっちゅうのは分かるんやが、何か最近イマイチなんよ・・・」
不良「あぁ、最近何と言うか、味が濃過ぎると言うか、薄過ぎると言うか・・・」
委員長「2人の意見は最もです・・・味付けが何か物足りないと言うか行き過ぎてると言うか・・・」
不良「今でもロボットに飯作らせてるってのは勝手だが、責めて自分らも味見位しろってんだ・・・」
不良「正直俺はもうここ行かなくても良い様な気がして来たぜ・・・」
関西「僕もや・・・どうせなら、ちゃんとしたのが食いたいわ・・・」
委員長「・・・そうですね・・・好きでも無い店に無理に行っても仕方無いです・・・」
委員長「店員さん・・・お会計お願いします!」
安藤楽「あ、はい・・・でもお客さん、残してる見たいですが・・・」
委員長「申し訳ありませんが、ここの料理の味はもう好きになれそうにありません・・・」
安藤楽「えぇ!?何か理由でも!?」
不良「ったりめぇだろ!味付けが何かズサンだし、そんなの食っても嬉しくねぇよ!」
安藤楽「で、ですがAIは・・・」
不良「ここは工場か何かか!?俺らはカップラーメンか何か食いに来た訳じゃねぇんだ!味付けとか見直さねぇなら」
不良「もうここには来ねぇよ!」
委員長「まぁ、そう言う事です・・・それでは・・・」
安藤楽「えぇ?どうしてだ?冬弥から貰ったレシピはちゃんと見てるのに?自分らなりに改良だってしてるのにどうしてだ?」
安藤楽「な、何だ!?」
前川敦子「ぺっ!ぺっ!!」
黒部真由「ちょ!ちょっと敦子大丈夫!?」
前川敦子「な、何よこのラーメン・・・塩が濃過ぎでしょ!?」
安藤楽「お、お客様!どうしましたか!?」
黒部真由「ちょ!ちょっと店員さん!敦子がラーメンの味が濃過ぎるって言って吐いちゃったんですよ!」
黒部真由「一体どう言うつもりです!?お仕事してるならもっと確りして下さいよ!!」
安藤楽「も、申し訳ありません!お代は結構ですので!」
楽達の所は、最近営業が上手く行って無かった。
〇広い厨房
雨宮香織「おっかしいなぁ・・・レシピは間違って無いのに・・・」
安藤楽「・・・・・・」
雨宮香織「あれ?どうしたの楽?まだ営業時間中でしょ?」
安藤楽「それが、皆味に対して不評でさぁ・・・さっきまで数人いたのに、今はもぬけの殻で・・・」
雨宮香織「はぁ!?そんな訳無いでしょ!AIは完璧なのよ!?それなのに!」
雨宮香織「ほら!レビューだって・・・」
雨宮香織「え?何よこれ・・・」
『この店の手抜き感半端無い。』
『ここ工場か何か?』
『AIに働かせて自分は何もしないって?』
『何でもAIに頼れば全部上手く行くかよ。』
雨宮香織「な、何よこれ!?お店のレビューがこんなアンチコメントに溢れ返って!?数日前はあんなに上手く行ってたのに!?」
安藤楽「もしかすると、冬弥はこれが分かってたのかな・・・」
雨宮香織「は?」
安藤楽「お客さんの思ってる通りだ・・・AIにインプットって言っても、そのレシピの通りにしかやってくれねぇ・・・」
雨宮香織「ま、待ってよ!私達だってレシピの改良や見直ししてるのに!それなのにどうして!」
安藤楽「多分、俺らAIの操作ミスったりしてる・・・味見だってまともにして無いし・・・」
雨宮香織「だ、だったらその辺を改善すれば良いじゃん!」
安藤楽「無理だ、レビューもこんなに荒らされて、俺ら自身も最近全く料理して無い・・・一度炎上したら」
安藤楽「中々消えないんだぜ?」
雨宮香織「だ、だったらどうしたら良いのよ!?こんな所でウジウジ考えても・・・って、」
安藤楽「ん?どうした?」
雨宮香織「そ、そうよ!冬弥に戻って来て貰えば良いんだわ!」
安藤楽「は、はぁ!?それ本気で言ってるのか!?勢いとは言え、俺らが追い出したんだぜ!?」
雨宮香織「大丈夫よ!話せば分かってくれるし、何より私の彼氏なのよ!何を不安がるのよ?」
安藤楽「で、でも、あいつが何処にいるのか・・・」
雨宮香織「大丈夫よ・・・冬弥の実家の電話番号、私達も持ってたでしょ?だから・・・」
安藤楽「まぁ、それはそうだが・・・」
雨宮香織「えぇ!そうと決まれば行動開始よ!」
そして香織は、俺の実家に電話を掛けるのだった。