5 中村親子(脚本)
〇居酒屋のカウンター
それから俺は、店の事情を知って厨房を借りて料理をする事に。
榊原冬弥「お待たせしました!」
中村育美「わぁ!これは美味しそう!」
中村俊博「けどなぁ・・・見た目だけ良くて味が駄目ってなったらなぁ・・・」
中村育美「ちょっと父さん!折角作ってくれたのに失礼でしょ!?」
中村俊博「あ、いやな・・・前にお前の作った飯もそうだったし・・・」
中村育美「もう!今はそんなの良いでしょ!?」
榊原冬弥「ま、まぁまぁ!これで駄目なら、俺も諦めますので!」
中村俊博「まぁ、何事も論より証拠だな・・・どれどれ?」
中村育美「はむ・・・」
榊原冬弥「・・・・・・」
中村俊博「・・・・・・」
中村俊博「何だ美味えじゃねぇか!兄ちゃん料理の道極めてたってのかい!?」
中村育美「あ、あたしのよりずっと美味しい!どうやったらこんなに美味しく出来るの!?」
榊原冬弥「え、えぇ?2人共驚き過ぎですよ?確かに調理専門学校で修行してましたし・・・」
中村俊博「いやいや謙遜するな!まだ若ぇのに大したもんだぜ!冬弥っつったよな?前職は何してたんだ?」
榊原冬弥「あ、えっと・・・」
中村俊博「ん?どうした?そっちも何か訳ありなのか?」
榊原冬弥「う〜ん、余り人に話すのは好ましく無いんですが、折角中村さん達が話してくれたので・・・」
俺は昨日までの事をありのまま話した。
中村俊博「なるほど、昔からのダチと一緒に飲食店やってたが、AIの導入で意見が対立して、しかも元カノさんはAIにドップリと・・・」
榊原冬弥「はい、正直俺は持ち運びロボットだけで充分とは思ったんですが、香織の奴はロボットの凄さに惹かれちゃって・・・」
中村育美「う〜ん確かに入れるかどうかは難しいですが、彼女さんだってなら、責めて冬弥さんの事応援して上げる位の事、」
中村育美「してくれても良かったんじゃ・・・」
榊原冬弥「まぁ、世の中十人十色って言葉がある程ですからね・・・俺自身も、目の前に100人の人間がいてその100人全員と」
榊原冬弥「友達になれって言われても、出来ないって答える自信ありますから・・・」
中村俊博「まぁ、そうだな・・・幸せになりたいってのは誰だって思う事だ・・・でもその幸せの形が皆一緒だってなったら」
中村俊博「苦労はしねぇ・・・」
中村俊博「けどな冬弥!俺はお前さんのその努力する姿勢は買いたいと思うぜ!俺だってそう言う類の人間だしな!」
中村俊博「これが正しい間違いかなんてイチイチ気にしてたらキリがねぇ・・・お前さんはお前さんのやりたい様にやって見れば良いし、」
中村俊博「その先で使える物があれば何でも使え!周囲ってのは、良くも悪くも気付かせてくれる為にあるからな!」
榊原冬弥「・・・ありがとうございます・・・何か救われた気分です・・・」
中村育美「ねぇ父さん、ここまで来たらさ・・・」
中村俊博「あぁ、早速家の料理覚えて貰うか!」
榊原冬弥「え、えぇ!?一体何を言って!?」
中村俊博「あん?何寝ぼけてやがんだ?まさかこのまま飯食わして貰ってはい終わりとでも思ったか?」
榊原冬弥「え?いやいやいや!確かに俺今無職ですけど、俺なんかで大丈夫ですか!?」
中村育美「駄目ですよ冬弥さん!俺なんかって言っちゃうと、それまでの自分の道のりを自分で否定しちゃう事になりますよ?」
中村育美「冬弥さん、自分の力で料理したいんですよね?だったら尚更ここで働いて見ません?」
榊原冬弥「た、確かに・・・」
中村俊博「そうだな、お前さんの腕をこのまま野放しにするのは俺としても好ましくねぇし、何よりこの腕を手放したダチや元カノも、」
中村俊博「見る目が無かったって訳だからな・・・何処の世界も実力と心意気が物を言う・・・冬弥、先ずはやって見ないか?」
榊原冬弥「・・・・・・」
榊原冬弥「・・・・・・」
榊原冬弥「あの、先ず何したら良いですか?」
中村俊博「お、やる気になってくれたかい?」
榊原冬弥「正直何が出来るかって思いますが、ここまで言われたのも始めてだし・・・」
中村育美「だったら尚更やりましょうよ!あたしもあなたに是非料理を教わりたいと思います!」
榊原冬弥「え?マジで?」
中村俊博「あぁ、正直育美の腕だけじゃ死ぬ程不安だし、俺はまだ腕が完治してねぇ・・・暫くの間鍛えてやってくれねぇか?」
中村育美「ちょっと!死ぬ程は余計でしょ!」
榊原冬弥「あ、あはは・・・こりゃもう断るに断れないな・・・」
榊原冬弥「あの、今日からやれますか?」
中村俊博「おう!良いぜ!手加減するつもり無いから腹くくれよ?」
榊原冬弥「・・・!はい!」
こうして俺は、新しい就職先を見つける事が出来たのだった。