あのね結び

胡林

真夏の雪(脚本)

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胡林

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〇黒
  愛はない
  愛などない

〇路面電車
  それが壊れる瞬間を
  見てきたから

〇黒

〇総合病院
  僕に恋など
  必要ない
  そう思っていた

〇ビルの屋上
  靴紐の結べない
  キミと出会うまでは

〇黒


〇黒

〇並木道

〇木の上

〇神社の石段
亜乃音 (あのね)「今日も気になる?」
革 (アラタ)「・・・気になる」
亜乃音 (あのね)「じゃあ、仕方ない」



〇神社の石段
革 (アラタ)「断る」
亜乃音 (あのね)「まっ!?」
亜乃音 (あのね)「ふぅん」
亜乃音 (あのね)「いーよ、別に」
亜乃音 (あのね)「一日中ずっと」
亜乃音 (あのね)「コレで過ごすから」
亜乃音 (あのね)「・・・」
亜乃音 (あのね)「ムズムズ」
亜乃音 (あのね)「ソワソワ」
亜乃音 (あのね)「──よし!」
亜乃音 (あのね)「ワンちゃんみたい」

〇名門の学校
「ローファー履けよ」
「校則。知らないの?」

〇学園内のベンチ
亜乃音 (あのね)「はい。機嫌直して」
革 (アラタ)「やった──」
革 (アラタ)「あっ」
革 (アラタ)「調教されてる・・・」
亜乃音 (あのね)「ねぇ」
亜乃音 (あのね)「今日の夜、空いてる?」
革 (アラタ)「空いてるけど」
亜乃音 (あのね)「一緒に雪を見ようよ」
亜乃音 (あのね)「真夏の雪」
革 (アラタ)「ニュースでみた・・・」
革 (アラタ)「いや、降らないだろ」
  八
  月
亜乃音 (あのね)「靴紐」
革 (アラタ)「了解」
亜乃音 (あのね)「やったぜ」
  僕らは
  恋人ではない
  靴紐を結ぶ。それだけの関係

〇桜並木
  出会いは
  春
革 (アラタ)「結べ」
革 (アラタ)「靴紐さんが不憫だ」
亜乃音 (あのね)「断る」
亜乃音 (あのね)「あのね結び」
革 (アラタ)「は?」
亜乃音 (あのね)「これが私流の結び方なの」
革 (アラタ)「靴職人の卵を・・・」
革 (アラタ)「ナメるな!」
  無許可・蝶結び
革 (アラタ)「ふん」
  それからというもの・・・

〇神社の石段

〇神社の石段

〇路面電車のホーム

〇奇妙な屋台
  最初は
  鬱陶しかった
  でも
  いまは違う

〇リサイクルショップ(看板文字無し)
「恋か?」

〇古書店
革 (アラタ)「はぁ!?」
靴職人の師匠「最近の習作」
靴職人の師匠「同じ足の形だ」
靴職人の師匠「女の子だろ?」
革 (アラタ)「ぁ──」

〇学園内のベンチ
  そんなわけ
亜乃音 (あのね)「えっちな目で」
革 (アラタ)「ありえない」

〇神社の石段
  恋
  そんな

〇名門の学校

〇神社の石段
「アラタくん」
亜乃音 (あのね)「ふふっ」
革 (アラタ)「18時集合だろ?」
革 (アラタ)「わかってるよ」
亜乃音 (あのね)「縁日」
革 (アラタ)「え?」

〇神社の出店
亜乃音 (あのね)「風船もろたでぇー」
革 (アラタ)「子どもか?」
革 (アラタ)「んっ」
革 (アラタ)(わさびアイス)
革 (アラタ)「奢ってあげる」
革 (アラタ)「あのね──」

〇黒

〇神社の出店

〇神社の石段

〇渋滞した高速道路

〇東京全景

〇総合病院
  そうか
  娘はキミに
  何も話してないのか

〇病院の廊下

〇黒
  脳
  腫
  瘍

〇黒

〇総合病院

〇綺麗な病室
亜乃音 (あのね)「あっ」
亜乃音 (あのね)「ごめんて」
亜乃音 (あのね)「熱中症。だから──」
革 (アラタ)「亜乃音さん」
亜乃音 (あのね)「えっ」
亜乃音 (あのね)「お父さんが?」
革 (アラタ)「うん」
亜乃音 (あのね)「そっか」

〇大きい病院の廊下
  バレちゃったね
  靴紐が
  結べない理由

〇綺麗な病室
革 (アラタ)「なんで手術を受けないんだよ」
亜乃音 (あのね)「・・・説得しろって言われたの?」
革 (アラタ)「なんでだ」
革 (アラタ)「今なら間に合うって──」
亜乃音 (あのね)「これ」
  お母さん
  美人でしょ?私に似てるの
亜乃音 (あのね)「だからかな」
亜乃音 (あのね)「同じ病気で亡くなった」
革 (アラタ)「でも」
亜乃音 (あのね)「手術が成功しても」
亜乃音 (あのね)「その後は」
亜乃音 (あのね)「化学療法が待ってる」

〇墓地
  お母さんはね
  薬の副作用で・・・
  かわいそうだった
  苦しんで、苦しんで・・・

〇綺麗な病室
亜乃音 (あのね)「怖い」
亜乃音 (あのね)「無理だよ」
革 (アラタ)「諦めるのか?」
亜乃音 (あのね)「いけないの?」
革 (アラタ)「当たり前だろ!」
革 (アラタ)「キミは僕の──」
革 (アラタ)「・・・」
亜乃音 (あのね)「何?」
亜乃音 (あのね)「言ってよ」
革 (アラタ)「僕の」

〇神社の石段
  僕の・・・

〇綺麗な病室
革 (アラタ)「・・・」
亜乃音 (あのね)「・・・そうだよね」
亜乃音 (あのね)「ごめん」

〇総合病院
  帰って
  私もう・・・
  疲れちゃった

〇海辺の街

〇渋谷の雑踏

〇街中の道路

〇黒

〇街中の道路

〇ゆるやかな坂道

〇ビルの裏
チンピラニキ「少ねぇな」
チンピラ「こいつは?」
チンピラ「遺書?」
チンピラニキ「おい」
チンピラ「チッ」
「遺書?」

〇一戸建て

〇明るいリビング

〇部屋の扉

〇黒

〇総合病院

〇病院の診察室

〇ビルの屋上

〇シックな玄関

〇黒

〇神社の石段

〇ビルの裏

〇街中の道路
  先生
  今から工房に行きます

〇東京全景
  一足
  作りたいんです

〇総合病院

〇綺麗な病室

〇大きい病院の廊下
  治療計画

〇綺麗な病室

〇黒
  不和の絶えない家庭で
  両親の怒号が
  私の子守唄でした

〇リサイクルショップ(看板文字無し)
  愛なんてない

〇小さな小屋
  いつしか
  そう思うようになって

〇古書店

〇桜並木
  けれど
  あの日から
  私は──

〇古書店

〇神社の石段
  これ以上は
  自重します
  遺書なので

〇古書店
  でも
  ひとつだけ
  許してください



〇白
  いつだって
  あなたでした

〇古書店
革 (アラタ)「先生」
靴職人の師匠「かまわんよ」
靴職人の師匠「あまり待たせるな」
革 (アラタ)「はい!」
靴職人の師匠「やれやれ」

〇黒

〇東京全景

〇渋谷のスクランブル交差点

〇路面電車のホーム

〇開けた交差点

〇総合病院

〇大きい病院の廊下

〇綺麗な病室
「──!」
「亜乃音さん!」

〇大きい病院の廊下
「アラタくん」
亜乃音 (あのね)「どうして」
革 (アラタ)「真夏の雪」
亜乃音 (あのね)「え?」
革 (アラタ)「見に行こう」

〇渋谷の雑踏

〇川沿いの公園

〇ビルの屋上
亜乃音 (あのね)「わぁ〜」
革 (アラタ)「これを」


〇ビルの屋上
亜乃音 (あのね)「ピッタリ」
革 (アラタ)「わかってた」
革 (アラタ)「本当は」
亜乃音 (あのね)「え?」
革 (アラタ)「僕も」
革 (アラタ)「この靴と同じ」



〇黒

〇路面電車
  ・・・気になる?

〇総合病院
  気になる

〇ビルの屋上
亜乃音 (あのね)「・・・」
亜乃音 (あのね)「じゃあ」
亜乃音 (あのね)「仕方ない」



〇東京全景

〇路面電車のホーム

〇リサイクルショップ(看板文字無し)

〇総合病院

〇ビルの屋上
  真夏の雪から10年──
医師「指輪の代わりに」
医師「靴紐を結ぶ。か」
医師「・・・変なのっ」

〇結婚式場の前

〇教会の中

〇神社の石段

〇黒


〇黒

コメント

  • 最高すぎますっ!!!!!!!💖もうっ!!!!!!!このお話大好きでずぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!💖😭

    最初のコミカルなところからの、中盤終盤にかけての…とにかく全てが素晴らしかったです!!!!!!!!!!!!!💖アラタは彼女に希望という名の星をあげたんだ…ってもう・・・とにかく最高でした・・・😭💖

  • 凄過ぎる。靴紐だけでここまで話を広げられるなんて…… 感服です。
    m(_ _)m

  • 個人的にTapNovel史上、一番好みなお話でした! ただ靴紐を結ぶだけという行為が、どんどん違う意味に変わっていく…すごかったです。セリフがなくても、セリフと感情がにじみ出てくるような演出も最高でした^^

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