人形の家(4)(脚本)
〇大衆居酒屋
予約席『ぼっけもん三人会様』
佐藤「ぼっけもん(金)です」
和泉「ぼっけもん(銀)です」
吉備「ぼっけもん(クリスタル)です」
「三人揃って~」
「ボッケモーーーンGO!」
「おやっとさーーーん!」
吉備「で、どこまで話したっけ?」
佐藤「ああ、いや。 俺は部外者なんで席外しましょうか? ・・・って所までです」
和泉「何言ってんだ! お前も立派なヤオヨロズの社員だろ。 ・・・って所までだろ」
佐藤「うう・・・そう言ってくれるのか? 俺は嬉しいぞ! ・・・って所までだぞ」
和泉「佐藤~!」
和泉「・・・って所までだ」
佐藤「和泉~!」
「・・・って所まで話しました」
吉備「何のファンサだ?ファンいないのに」
吉備「話を戻そう。 これが私の提案している 警備違士の新たなる装備だ」
和泉「何かひょろ長くて弱っちいですね~」
佐藤「おい、失礼だぞ和泉。 吉備さんが精魂込めて 進めている計画なんだろう?」
和泉「す、すみません」
吉備「いや、現時点では確かに絵に描いた餅さ」
吉備「私よりも遥かに能力の優れた 対魔士の力を用いねば、 この武器は完成しない」
和泉「そんな!吉備さん以上の 呪術使いなんてヤオヨロズにいませんよ!」
佐藤「そうですよ。これじゃあ、 永遠に完成しないじゃないですか!」
吉備「お、お前達・・・それほどまで 私の実力を認めてくれてるのか」
「吉備さ~~~ん!」
〇高級住宅街
藤原「薄ら寒い回想を差し挟んでる場合か」
菅原「志半ばにして逝った吉備さんの新装備。 この戦いでその威力を証明するんでしょ」
和泉「ああ、そうだ」
和泉「吉備対魔士の置き土産、 有難く使わせてもらうぞ!」
「承知!」
和泉「来るぞ。甲級禍異物・・・」
和泉「付喪神が」
〇街中の道路
隊員「ヤオヨロズ警備違士隊です!」
隊員「任務遂行中です! 危険ですので迂回をお願いします!」
坂上隊長「近隣住民は全員退避させているな?」
杜屋副隊長「はい。この街区は完全に無人であります」
坂上隊長「甲級が街から出るようならば、 死を賭して食い止めよ」
坂上隊長「何としても『エリア』に追い込むのだ」
隊員「御意!」
杜屋副隊長「しかし奴ら三人のみで大丈夫でしょうか?」
杜屋副隊長「今からでも間に合います。 スリーマンセルならば、 やはり本官が交代すべきでは?」
坂上隊長「ならぬ。副隊長は替えが効かぬ」
坂上隊長「吉備対魔士の武器が通じぬ場合もある。 まず犠牲となる人柱は彼らでよい」
杜屋副隊長「犠牲、ですか」
坂上隊長「なんだその顔は? 先の大戦の鬼軍曹が随分甘くなったな」
坂上隊長「大東亜戦役の煉獄を忘れたか?」
杜屋副隊長「申し訳ありません!気を引き締めます!」
杜屋副隊長「総員警戒せよ! 作戦開始である!」
〇高級住宅街
Catherine「petite frite」
和泉「ニッポン国に来たならニッポン語を喋れ!」
Catherine「邪魔よ、雑魚」
Catherine「私、表情変えられないから 分かんないでしょうけど。 今、相当ムカついてるの」
和泉「それはこちらも同じだ」
Catherine「何それ? そんなナマクラで この妖力に守られた体を、 傷つけられると思う?」
和泉「テロリストの呪術師に 底上げしてもらった力だろ?」
Catherine「天パ、殺す」
和泉「天パは余計だ!」
和泉「うおおおおーーッ!」
Catherine「何ッ?」
Catherine「ウソでしょ? 何故あんな棒切れみたいな剣が?」
Catherine「どうして私の体を・・・」
和泉「ちぇすとォォーーッ!」
Catherine「・・・っ痛いわね!雑魚のクセに!」
和泉「ああ、確かに俺は雑魚だ。 でもこの武器を作ったのは、 ニッポンいちの呪術師なんだよ!」
「対魔刀ハバキリ!推して参る!」
「フォーメーション『浄』!」
Catherine「うう・・・」
Catherine「こんな傷・・・何てことないわ」
Catherine「私は帰るの・・・家に帰るの・・・」
Catherine「あの娘の所に帰るの・・・」
Catherine「邪魔するな・・・邪魔するな・・・」
Catherine「邪魔するなーーーッ!」
和泉「・・・クッ。頃合いか」
和泉「一旦退くぞ!散開!」
菅原「うわー。こりゃ参ったー」
藤原「むむむー。本隊と合流だ―」
和泉「・・・」
和泉「ブース!」
Catherine「天パコラ!お前だけは許さん!」
〇広い公園
Catherine「・・・!」
Catherine「ここは・・・」
『そうさ。君とこの娘がよく遊んだ思い出の公園』
九十九「そして僕は~晴れ男~♪」
九十九「『今回雨が降ってないじゃ~ん』 と思ったアナタ。 作者のミスじゃあないんだよ~♪」
九十九「今後そういう失敗あるかもだけどね~♪」
九十九「やあ久しぶり。公式お兄ちゃんだよ」
Catherine「相変わらず意味分かんないわね。 この変態対魔士」
九十九「なるほど、変態対魔士。 略してヘンタイマシとはこれ如何に」
九十九「誰が変態じゃい!」
まいたん「カトちゃん」
まいたん「もうやめて」
Catherine「・・・」
まいたん「捨てたのは謝るから。 だから、もう私のことは忘れて」
『忘れて。忘れて。忘れて』
Catherine「そんなに・・・」
Catherine「そんなに・・・」
Catherine「そんなにそいつがいいの?」
Catherine「そんなに新しい人形がいいの?」
まいたん「ひいっ!」
『カトリーヌ怖い。カトリーヌ怖い』
Catherine「黙れ!」
Catherine「お前がいるから!お前さえいなけりゃ!」
九十九「そこまでだ。 君の大好きなまいたんが、 怖がってるじゃないか」
九十九「女も男も人形も、 嫉妬というのは醜いものだよ」
九十九「なあ、和泉君」
和泉「・・・」
九十九「さて、 対魔刀とやらで彼女を浄化するかい? それとも僕がやっちゃうかい?」
和泉「お任せしますよ」
和泉「あの人形の体は 俺達がほぼほぼ壊してるんで、 ヘンタイマシでも余裕でしょ?」
九十九「そうかい。それじゃあ、 このヘンタイマシたるこの僕が」
九十九「何だとう?」
Catherine「・・・」
Catherine「・・・分ったわ。もういい」
Catherine「その娘には愛想が尽きたわ」
Catherine「普通の人形に戻るから。 だから、壊さないでよ」
九十九「さんざん暴れ回った挙句 壊さないで~ときたか」
九十九「随分と虫のいい話だけど、 そういう態度もおフランス流なのかい? 或いはおフェミニズム的なアレかい?」
Catherine「どいて。 アンタに言ってるんじゃないわ」
Catherine「・・・」
和泉「・・・え?」
Catherine「壊さないで・・・」
Catherine「私を助けて。警備違士さん」
和泉「ああ、いや・・・え?」
Catherine「お願い」
九十九「ほう。面白くなってきたじゃないか」
九十九「どうする?和泉成」
つづく。