16 行き場の無い怒り(脚本)
〇洞窟の深部
飯塚隼人「・・・・・・」
盗賊「え?あれからまだ飲んでるのか?」
盗賊「困った事にな・・・止めようとしても全然聞いてくれないんだ・・・」
アサド「うぃ〜、ヒック!おぉい!もっとだぁ!もっと酒くれぇ!!」
盗賊「じょ、冗談だろ・・・気持ちは分からなくも無いが、ここまで酷いと・・・」
盗賊「あぁ、このまま行けば色々とアウトだ・・・」
武藤和樹「え?アサドさん捕まってるのに飲んでるの?てか良く飲ませて貰えてるね・・・」
飯塚隼人「いやいや、そんな事はどうでも良く無い気もしますが、これどうします?」
武藤和樹「見た所盗賊はあの2人で間違い無いね・・・こう言う時は、隠密攻撃で事を運びたいけど・・・」
陣内香織「なら、あたしの出番ですね・・・あたしのクロスボウなら、ライフル見たいに狙撃出来ますし・・・」
飯塚隼人「うん、俺は賛成!もしかして、香織の持ってる矢にも麻酔あるの?」
陣内香織「御名答よ隼人・・・流石に殺すのはマズいからね・・・」
武藤和樹「決まりだね・・・でも、くれぐれも慎重にね?」
陣内香織「分かってます・・・始めますね・・・」
俺達は物陰に隠れて、香織がクロスボウを構えて標準を盗賊に向けるのだった。
盗賊「なぁ、もうここまで行くとアルコールの匂いがキツいんだ・・・その辺にしてくれないか?」
アサド「あ〜煩いなぁ!俺は酒が無いとやってられないんだよ!」
アサド「あぁこらっ!俺の盃返しやがれって!!」
盗賊「なぁ本当頼むよ・・・人質に死なれたら俺らが拉致した意味が・・・」
盗賊「ぐっ!な、何だ!?」
盗賊「ん?おいどうした?」
盗賊「はぁ?おい何寝てるんだよ!?まだ寝るには・・・」
盗賊「うっ!な、何だ!?一体何が・・・」
アサド「あん?何だ?とにかく酒、俺の酒・・・」
武藤和樹「すみません、アサドさんですね?」
アサド「あん?今度は何だ?俺の酒はどこだよ?」
飯塚隼人「んげ!この人の身体から凄いアルコールの匂いが・・・今までどれだけ飲んでたんだ?」
武藤和樹「確りして下さい!僕達はアーシャさんに頼まれてあなたを捜してたんです!」
アサド「アーシャ?何だそりゃ??」
武藤和樹「確りして下さい!僕達はあなたを迎えに来たんです!アーシャさんがあなたの事を心配してるんですよ!」
アサド「・・・さっきから何言ってるんだこいつ?アーシャなら今仕事してるだろ?そんな事より酒はどこだよ?」
武藤和樹「もう、こんな時に酒の事なんか良いでしょ!飲みながらでも良いから、帰りますよ!」
アサド「・・・あぁぁ!!さっきからデカい声出すなよ!!頭にギンギン来るじゃねぇか!!そんな事より酒を・・・」
アサド「ぬぁっ!?」
陣内香織「さっきから聞いてれば酒だ酒だって!あんたあたしらの話聞いてるの!?」
飯塚隼人「ちょ!何してるんだよ香織!?」
陣内香織「ここはあたしに任せて貰える?もうあたし我慢の限界よ!!」
アサド「ぐわっ!!」
陣内香織「あたしはね!あんた見たいに酒にしか興味が無い父親に何度も何度も酒を持って行ったわ!」
陣内香織「でも幾ら飲ませても親父の気は収まらなかった!それ所か、酒が無いと直ぐあたしや周りに当たり散らして!」
陣内香織「酒を飲んでるのがそんなに偉い訳?自分は何やっても許されると思ってる訳?ふざけないでよ!!」
陣内香織「あたしにだって、アーシャさんにだってやる事があるってのに、自分は酒飲んで威張り散らしてるだけ?ふざけんじゃ無いわよ!!」
陣内香織「あんた達がどんな苦労をして来たか知らないけどね、子供作った責任取れずに酒に逃げるなら、最初から親になんかなるな!!」
陣内香織「それで傷付けられるあたし達の身にもなれ!!」
陣内香織「お前らなんか!お前らなんか!!お前らなんかぁぁ!!!」
飯塚隼人「香織・・・」
遠藤かな恵「ちょ!ちょっとちょっと!隼人君止めなくて良いの!?このままじゃ!」
飯塚隼人「ごめん、俺には出来ない・・・」
遠藤かな恵「え?」
飯塚隼人「今はやらせて上げて欲しいんだ・・・もしここで自分の中身を曝け出させて上げなかったら、香織は今より、」
飯塚隼人「もっと苦しい思いをすると思う・・・だから俺には止められない・・・」
武藤和樹「・・・確かに、今の僕なら、彼女の気持ち分かるかも知れない・・・」
遠藤かな恵「・・・そんな・・・」
アサド「かはぁ!!」
陣内香織「父親なら最後まで責任取れ!酒に逃げてばっかいるな!本気で子供の事思ってるならハッキリ言え!」
陣内香織「子供が困ってるなら助けろよ・・・どんな苦労してるか聞かせろよ・・・」
陣内香織「うわあぁぁぁ!!!」
洞窟の中に響く香織の嘆き。俺達は只、黙ってそれを見守る事しか出来なかった。