99クレージー

山本律磨

人形の家(3)(脚本)

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〇モヤモヤ
  『恐怖!リターン・オブ・カトちゃん』
ヤオヨロズ社員「これは俺の友達の友達の友達の 友達の友達から聞いた話なんだけど」
ヤオヨロズ社員「ある貿易会社の船乗りさんが、 遠洋漁業中に娘が生まれたんで お祝いに人形を一体買って帰ったんだ」

〇ダイニング
  『カトちゃんと名付けられたその人形は、親子三人家族の一員として温かく迎え入れられた』
  『とくに、小さな娘はカトちゃんをまるで妹のように可愛がった』
  『折しも世は高度経済成長。三人の家族もどんどん豊かに。そしてさらに幸せになっていった』
  『人形と一緒に・・・』

〇クリスマス仕様のリビング
まいたん「~♪」
まいたん「~♪」
まいたんパパ「舞。メリークリスマス」
まいたん「わーい!ありがとうパパ!」
まいたん「かわいー!」
まいたんパパ「頭、撫でてみてごらん」
まいたん「よしよし。よしよし」
  ありがとう。まいたん、だいすき
まいたん「すごーい!しゃべった!」
まいたんママ「本当、凄いわね。 名前まで記録されてるの?」
まいたんパパ「ヤオヨロズが開発した新世代の人形だって」
まいたんパパ「揺らしたり話しかけたりすると、 50パターンくらい反応するらしいよ」
まいたんママ「ちょ、ちょっとママにも貸して」
まいたんママ「こんばんわ!初めまして、ママです!」
  よろしくね!ママ!
まいたんママ「可愛い!舞、この子ママにちょうだい!」
まいたんパパ「何だよ。大人げないな」
まいたん「いいよ」
「・・・え?」
まいたん「私、カトちゃんがいるからいい」
まいたんママ「もう、冗談よ。 両方とも可愛がってあげてね」
まいたんパパ「名前、つけてあげて」
まいたん「うん!おいでマーガレット!」
まいたん「こっちがカトちゃんだよ」
  私、マーガレット。よろしくね
  『そして女の子は新しい人形にも古い人形にも、分け隔てない愛を注ぎ続け・・・』
  『なかった』

〇可愛い部屋
まいたん「でね~。パパってとっても汗臭いんだよ」
  パパ、汗臭い。パパ、汗臭い
まいたん「ママも勉強勉強ってうるさいし~」
  ママ、うるさい。ママ、うるさい
「舞!また玩具出しっぱなしにして!」
「早く片付けなさい!」
まいたん「あ~もう。全部捨てていいよ~」
「本当に捨てるわよ!いいのね!」
「カトちゃんも捨てるわよ!」
まいたん「捨てていいよ!」
  『次の日、女の子はとても後悔した』

〇明るいリビング
まいたん「カトちゃんは?カトちゃんは?」
まいたんママ「舞が捨てていいって言ったんでしょ」
まいたんパパ「おい、何もそこまでしなくても」
まいたん「ママのバカーーーーッ!」
まいたんママ「これも教育なの。あなたは黙ってて」

〇可愛い部屋
まいたん「・・・」
まいたん「・・・!」
まいたん「カトちゃんだ!」
まいたん「カトちゃん!お帰り!」

〇明るいリビング
まいたん「~♪」
まいたんママ「・・・」
まいたんパパ「ただいま~」
まいたん「~♪」
まいたんパパ「お、なんだ。お前もやるじゃないか」
まいたんパパ「捨てたフリして隠してたんだな。 さすが教育ママ!」
まいたんママ「本当に捨てたのよ」
まいたんパパ「・・・え?」
まいたんママ「確かに捨てたはずなのに。どうして・・・」
まいたんパパ「ウソだろ・・・?」
まいたん「マガちゃん。 またカトちゃんと仲良くしてあげてね」
  カトちゃん、嫌い。カトちゃん、嫌い
  カトちゃん、怖い。カトちゃん、怖い
まいたん「そういうこと言っちゃダメ! 仲良くするの!」
  カトちゃん、怖い。カトちゃん、怖い
「・・・」

〇可愛い部屋
まいたん「・・・」
  『ステナイデ』
  『ステナイデ』
まいたん「・・・?」
  『オマエガ・・・イルカラ・・・』
まいたん「・・・!」
  『少女の前には、古い人形が新しい人形にのし掛かったまま倒れていた』
  『そしてその時、古い人形はじっと少女を睨みつけていた』

〇可愛い部屋
まいたん「・・・」
「舞!いい加減にしなさい!」
「また何度も何度も 人形出しっぱなしにして!」
まいたん「捨てていいよ」
「・・・え?」
まいたん「カトちゃん、怖いから捨てて」
「・・・そうね、分かったわ」
まいたん「マガちゃん。私のこと守ってね」
  ずっと一緒だよ。まいたん
  『だが、古い人形は捨てても捨てても戻ってきた』
  『そして何度目かの夜』
まいたん「・・・」
まいたん「ゴメンね。カトちゃん」
まいたん「私、カトちゃんが怖いの」
まいたん「だから・・・」

〇学食
ヤオヨロズ社員「小さな子が、一緒に育ってきた人形を 切り刻んじゃうなんて。 ・・・悲しい話ね」
ヤオヨロズ社員「実はこの話には続きがあるんだけど。 聞きたい?」
ヤオヨロズ社員「聞きたい聞きたい!」
藤原「だったら今晩、 海の見えるレストランで一緒に」

〇高級住宅街
菅原「・・・で、その後どうなったんですか?」
藤原「上手くいってたら速攻で有給消化だ。 こんな所で張り込みなんかしてるかよ」
菅原「やっぱ引きが弱いか~ 『都市伝説ナンパ』は」
藤原「まあ、ほぼほぼノンフィクションだけどな」
和泉「にしても、切り刻むは盛りすぎだろ」
菅原「実際は蓬莱島に埋めてきた、と」
和泉「それでも不安は拭えない。 だからこそヤオヨロズのアフターサービス」
「古い品物も~処分~処分~♪」
藤原「世知辛い仕事だぜ」
菅原「今晩こそお見えになりますかね」
和泉「来たぞ。 捨てられても埋められても蘇る 恐るべき不滅の人形、カトちゃん」
和泉「いや」
  『付喪神、カトリーヌ』
  つづく

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