13 嫌悪感(脚本)
〇兵舎
翌日。
飯塚隼人「なぁ、香織・・・」
陣内香織「ん?どうかしたの隼人?」
飯塚隼人「いやさぁ、昨日どうして突然飛び出したのか、まだちゃんとした理由を聞いて無いと思ってさ・・・」
飯塚隼人「あの酔っ払い、どこかで関わった事とかあるのかなって・・・」
陣内香織「あぁ、隼人その事心配してくれてたのね・・・昨日のあいつの事だけど、あたしも初対面だったんだけどさぁ・・・」
飯塚隼人「え?初対面なのにどうして?」
陣内香織「昨日のあのおっさん・・・心無しかあたしの父親にそっくりだったのよ・・・前に話して覚えてるかさて置くけど、」
陣内香織「あたしの父親、酷い呑んだくれでね・・・あいつの顔見た途端嫌な感じしまくったわ・・・」
飯塚隼人「ま、マジかよ・・・そう言えば、それが嫌で自殺しようとしたんだよね?」
陣内香織「えぇ、その後の事はもう見ての通りだから・・・」
武藤和樹「あ、2人共ここにいたんだね・・・」
陣内香織「あ、武藤さん、どうかしたんですか?」
武藤和樹「新しい依頼が無いかチェックしてたんだけどさ・・・何かまた僕達向けだって依頼を紹介されてね・・・」
武藤和樹「隼人君達にも見て貰おうと思ってたんだ・・・」
飯塚隼人「え?また俺達向け?今度は何やらされるんだ?」
陣内香織「どうだろう・・・武藤さん、見せて貰えますよね?」
武藤和樹「勿論さ・・・これなんだけど・・・」
陣内香織「・・・・・・」
陣内香織「え?これって・・・!?」
飯塚隼人「ま、マジかよ・・・」
武藤和樹「ん?どうかした?」
陣内香織「あ、いや、何でも無いです・・・うん・・・」
武藤和樹「まぁ、何がともあれ、これから依頼主に挨拶する事になってるから、早めに準備してね・・・」
飯塚隼人「・・・・・・」
陣内香織「・・・・・・」
飯塚隼人「と、取り合えず行こうか・・・」
陣内香織「そ、そうね・・・あはは・・・」
〇ヨーロッパの街並み
遠藤かな恵「あ、来た!皆こっちこっち!」
飯塚隼人「あぁ、かな恵さんお待たせ・・・」
陣内香織「かな恵さん、依頼者の人は?」
遠藤かな恵「あぁ、さっきあたしも話聞いてた所よ・・・この人なんだけど・・・」
アーシャ「あぁ、皆さん初めまして!私がお仕事の依頼をさせて頂きました、アーシャと申します・・・」
飯塚隼人「はい、初めまして・・・」
陣内香織「早速ですが、お仕事の内容を教えて頂けますか?」
アーシャ「あ、はい・・・この度は、どうしても捜して欲しい人がいるんです・・・」
陣内香織「はい・・・その人ってもしかして、太っててお酒にだらしなくて乱暴な感じの人ですか?」
アーシャ「はい、正にその通りです・・・名前はアサドと言って、彼は私の父なんです・・・」
陣内香織「やっぱり・・・でも、どうしてこの様な依頼を?」
アーシャ「はい、私は母を幼少期の頃に亡くして、父はそれ以降お酒にばかり手を付ける様になってて・・・」
アーシャ「今でこそ家の仕事は私がやってますが、それでも彼は私の父なので、放って置けなくて・・・」
アーシャ「お医者様からも、直ぐに治療を受けないと危険だと言われてて・・・」
陣内香織「なるほど・・・医者に言われる程飲んでたなんて・・・」
飯塚隼人「つまりアーシャさんは、俺達にお父さんを捜して貰って、病院に連れて行きたいって事なんですよね?」
アーシャ「はい、私は彼に更生して欲しくて・・・」
飯塚隼人「・・・分かりました、確りやりますね・・・」
アーシャ「・・・!ありがとうございます!」
陣内香織「・・・まぁ、頼まれたからにはやりますが、呑んだくれを更生させるってのは、無理だと思いますよ?」
アーシャ「え?」
飯塚隼人「ん?どうしたんだ香織?」
陣内香織「お酒って一度嵌まったらほぼ永久的に続きますし、何より、自分が誰かを変えるなんて、絶対出来ないと思います・・・」
陣内香織「悪い事は言いませんから、別れるとかした方が・・・」
アーシャ「え、えぇ?一体何を言ってるんです?」
陣内香織「酒にしか興味が無い人なんか助けたって、良い事なんか何も・・・」
飯塚隼人「あ、あぁ!アーシャさん!俺らお父さん捜して来ますので、何かあれば報告します!」
アーシャ「は、はい・・・」
飯塚隼人「香織、行こう!」
飯塚隼人「どうしたんだよ香織!何か変だぞ!?」
陣内香織「変?あたしは何とも無いよ?て言うかさ、何で酔っ払った父親なんかあたしらが捜さないといけないの?」
遠藤かな恵「ちょっと香織ちゃん!流石にこれは無責任だよ!」
陣内香織「だって・・・酔っ払いだよ?いても邪魔だし、ウザいし、只周りに迷惑掛けるだけじゃ無い・・・何でそんなの助けるの?」
遠藤かな恵「でも、その人はアーシャさんのお父さんなんだよ・・・何よりアーシャさんはお父さんを助けたいと思ってる・・・だから・・・」
陣内香織「家族だから何!?」
飯塚隼人「香織!?」
陣内香織「家族だから助ける?だから迷惑掛けるの?家族だから何しても許される訳!?ふざけないでよ!!」
飯塚隼人「香織・・・」
武藤和樹「分かった分かった!この依頼は3人だけでやるよ!香織ちゃんは宿に戻って休んでて!」
陣内香織「えぇ、勝手にさせて貰うわ!酔っ払いなんて放って置けば良い・・・」
遠藤かな恵「驚いた・・・香織ちゃん、酔っ払いに対してあんなに嫌悪感を抱いてたなんて・・・隼人君、知らなかった?」
飯塚隼人「・・・俺も、香織があんなになるのは初めてだよ・・・でも、どうせなら相談して欲しかった・・・」
武藤和樹「・・・まぁ、それだけ彼女が追い詰められてたって事だよ・・・何がともあれ、アーシャさんのお父さんを捜そう・・・」
武藤和樹「念の為武器も用意してね・・・」
酔いどれの相手をずっと1人でして来た香織の気持ちも理解出来なくも無かったが、俺達はこの依頼を受ける事とした。