九つの鍵 Version2.0

Chirclatia

第13回『ショコラートル・ドール・スペアボディー』(脚本)

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〇貴族の部屋
  ──翌日の午前中
  上体を起こしたフリートウェイは、二度寝防止のため部屋のカーテンを開けて空を見つめていた。
フリートウェイ「眩しっ・・・」
  昨日の夕方、偶然異空間で出会った人間の能力のせいか、光に対して『過剰反応』らしきものが出てきていた。
フリートウェイ(目の奥が痛くなるから、光はちょっと嫌なんだけどな・・・)
フリートウェイ(そんなこと言っても仕方ないのは分かっているけど)
  一度両目を閉じたフリートウェイはベッドの真横にあるテーブルに置いてある瘴透水(ショウトウスイ)に手を伸ばす。
  それを一気に飲み干す。
  まだ頭に残る眠気が無くなったような気がした。
フリートウェイ「チルクラシアに会いに行くか・・・」
  第13回『ショコラートル・ドール・スペアボディー』

〇宮殿の部屋
チルクラシアドール「ŧ‹"ŧ‹"( ˙༥˙ ) ŧ‹"ŧ‹"」
  チルクラシアは、朝からハート形の板チョコを食べていた。
  城の食堂の料理はチルクラシアの身体に合わず、体調を崩す原因になるため、レクトロが彼女の食事を作ることになった。
  チルクラシアは朝ごはん前にチョコレートを少し食べることで精神を安定させようと考えている。
チルクラシアドール「( '༥' )ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"」
フリートウェイ「おはよう、チルクラシア」
  様子を見に来たフリートウェイが、顔を出す。
  が、チルクラシアはチョコレートに夢中になっているため、フリートウェイが近くにいることに気づいていない。
チルクラシアドール「ŧ‹"ŧ‹"(o'ч'o)ŧ‹"ŧ‹"」
  気づかれていないことを察したフリートウェイは彼女の隣に座り、目線を合わせて声をかけてみる。
フリートウェイ「チョコレートに夢中だな? ちょっとだけ、オレにも分けてはくれないか?」
  ニコニコ笑顔になったチルクラシアは、フリートウェイにチョコレートをそのまま渡す。
フリートウェイ「おいおい、朝からこんな大量に食べられないぞ」
フリートウェイ「オレは半分食べる。 残りの半分はチルクラシアが食べなよ」
  パキッと音を立ててチョコレートを半分に割り、口に入れる。
フリートウェイ「・・・・・・・・・」
フリートウェイ「甘過ぎないか? びっくりしちゃったんだけど」
  目が覚める──ホワイトチョコレートに似た甘さだった。
  目を見開きそうになったが、ぐっと堪える。
フリートウェイ(たくさんは食べられないな・・・ 半分でも大分キツい)
  『朝からこんな甘いものを食べさせるわけにはいかない』と思ったフリートウェイは、チルクラシアに提案する。
フリートウェイ「チョコレートが好きなのは分かったが・・・これは甘過ぎだな」
フリートウェイ「だからさ、オレが作ろうか?」
  アイシングクッキーを作った時は好評だったし、チルクラシアのために何かを作ることは好きな方だ。
チルクラシアドール「~♪」
  フリートウェイの手作りデザートが好きなチルクラシアは、笑顔を浮かべて両腕を上げる。
フリートウェイ(かわいい)
フリートウェイ「作ってくるから、部屋で待ってて」
  こくこくと頷くチルクラシアはフリートウェイの赤色の瞳を見つめる。
チルクラシアドール「キュルル・・・」
フリートウェイ「そんなにオレの目が気になるかい?」
フリートウェイ「いつか、身体ごとあげるから」
  チルクラシアの頭を撫で、フリートウェイは部屋を出ていった。
  一人になったチルクラシアは、目を閉じる。
  人間を模した姿に変わる。
  外に出るときは、こうしろってレクトロが言っていたっけ。
チルクラシアドール「・・・・・・・・・」

〇城の廊下
  大人しく部屋で待てないチルクラシアは、フリートウェイを探していた。
チルクラシアドール「い、た」
  フリートウェイを後ろから抱き締めて、彼の顔を見つめる。
フリートウェイ「いきなりこんなことするのは・・・・・・チルクラシアか?」
  びっくりしたフリートウェイだが、自分に対してこんなことをするのは一人だけだと確信していた。
フリートウェイ「いきなり動くと身体がびっくりするぞ」
  フリートウェイの言うとおり、チルクラシアはブロットの蓄積の影響かその場でダウンしてしまうのだった。
フリートウェイ「ほら、言わんこっちゃない・・・」
  脱力しかけているチルクラシアに、昼寝を勧めることにしたフリートウェイは彼女を横に抱く。
  人形の姿よりも少し大きい、チルクラシアの身体だが軽すぎるのでフリートウェイでも余裕をもって抱き抱えることが出来た。
フリートウェイ「寂しかったか?」
フリートウェイ「気持ちは嬉しいけど、無理をしてはいけないよ」
フリートウェイ「分かった?」
  少し間が空いて、
チルクラシアドール「うん」
  チルクラシアが小さく返事をした。
フリートウェイ「部屋に戻ったら昼寝でもどうかな?」
チルクラシアドール「そうする・・・」

〇城の廊下
  ──フリートウェイは気づいていなかった。
  和装の男が、フリートウェイとチルクラシアを無言で見つめていたことに。
ナタク「・・・・・・・・・」
ナタク「今のところは順調か・・・・・・」

〇貴族の部屋
フリートウェイ「・・・・・・・・・」
  どれだけ布団を鼻まで被り大人しくしても、どれだけ目を閉じ羊を数えようとも。
フリートウェイ「・・・寝れない! 困ったな、身体を休ませたいのに」
  具合が悪くなった可能性のあるチルクラシアに昼寝を勧めた後、自身も昼寝でもしようかと思っていた。
  異形との戦いに身を投じているからか、部屋が変わってしまったなのか、フリートウェイの寝つきは悪くなっていた。
フリートウェイ「原因は何だろうか?」
  まずは寝付きが悪い原因を探すことにしたフリートウェイ。
  心当たり・・・と思われるものは幾つかあった。
フリートウェイ「あのガキか・・・ それとも、瘴透水(ショウトウスイ)のせい?」
  姫野晃大の持つ『光』を操る能力の制御不能のせいか、『劇毒』そのものである瘴透水(ショウトウスイ)の服用のせいか・・・
  今のフリートウェイに、原因は分からない。
  だが、瘴透水の服用で自分の身体の中が『変わってしまった』可能性があることは理解していた。
フリートウェイ(光って見えるものを見ると目の奥が痛くなるのは困ったな)
  二度寝を避けるために、起きてすぐに部屋のカーテンを開け太陽光を浴びているが、煩わしさを感じ、
フリートウェイ(人間が食べるモノは急に不味く感じるし・・・ 何でだろう・・・)
  人間が当たり前に食べている物が不味く感じ、吐き気まで出てしまうほどの拒絶反応。
フリートウェイ(・・・後、色の見え方が変わったような。 昼間だと鮮やかに見え過ぎて気持ち悪くなる)
  視覚から来る情報の異様な変化。
  どれも生活に多大な支障が出てしまうものだ。
フリートウェイ「・・・疲れているだけであってほしいけど」
  『ただの過労であってほしい、これが続くと面倒なことになる』と思い、さっさと寝ようとしているのに。
フリートウェイ「はぁーーーー・・・・・・・・・」
  ──眠気は来ない。
  長々とため息をつくが、これで解決などしない。
フリートウェイ「どうしようかな・・・」
  疲れた頭で考えることが億劫になり始めた。が、眠れないのも事実。
  睡眠薬以外の方法で眠くなる方法を考えようと目を閉じかけ──
フリートウェイ「──? 誰だ?」
  ノックの音で思考がリセットされ、眠気は完全に消え失せる。
  誰が来てもいいように、こっそり投げナイフの準備をして、扉が開かれるのを待つ。

〇貴族の部屋
フリートウェイ「・・・チルクラシアか。 どうした?」
  扉を静かに閉めたチルクラシアはフリートウェイの顔を無表情で見つめ続けている。
  フリートウェイはチルクラシアが来たことに嬉しく思いながら、ナイフをベッドの下へ隠した。
フリートウェイ(・・・?)
フリートウェイ「おいで。 何かあったんだろう?話は聞くぞ」
  扉の近くで棒立ちするチルクラシアを
  フリートウェイは手招きして呼ぶ。
  その瞬間、張り詰めた糸が切れたのか彼女は無言を貫いたままボロボロ泣き出してしまう。
フリートウェイ「マジで何があったんだ!?」
  流石のフリートウェイもこれには驚くも
フリートウェイ「・・・悪い夢でも見た?」
フリートウェイ「とにかく、おいで」
  何か嫌なことがあったか悪夢で飛び起きたのだろうと考え、チルクラシアを落ち着かせることにした。

〇貴族の部屋
フリートウェイ「・・・ん、そっか。 悪い夢を見たのか」
  チルクラシアの分のココアを作りながら、フリートウェイは彼女の話を少しずつ聞いていた。
  彼女はベッドの上で俯いている。
フリートウェイ「・・・で、あまりにもリアルだったからオレの部屋に来たわけか」
  一人分のココアが出来たフリートウェイはそれをお盆に乗せてチルクラシアの隣に座る。
フリートウェイ「ココアだ。 気分転換にいかがかな?」
  フリートウェイから出来立てのココアを受け取ったチルクラシアは、それを一口飲んだ。
フリートウェイ「『夢が現実になる』ことなんて無いぞ。 だから、夢のことは早く忘れた方がいい」
フリートウェイ「気にしすぎると寝れなくなるぞ」
  まだ顔色が悪く表情も悲しそうなチルクラシア。
フリートウェイ(疑いの表情をしている。信用されていないな)
  『言葉だけ』では、不安感を拭えないようだ。
フリートウェイ「こうしようか、チルクラシア」
フリートウェイ「このままオレと一緒に寝よう。 悪い夢も多分、見なくなるぞ」
  フリートウェイは寝転ぶとチルクラシアもそれを真似するように恐る恐る横になる。
フリートウェイ「目覚めても隣にいるから、安心してほしい。オレからは何もしないさ」
  警戒心を解いたチルクラシアはすぐに寝落ちた。
  再び悪夢を見ることを恐れているのか、彼女の小さな身体は少し震えている。
  それを、フリートウェイは見逃さない。
フリートウェイ「大丈夫だって。 現実にはオレがさせないから」
  チルクラシアの背中を擦り、落ち着かせる。
  眠気は来ない。
  だが、もうこれでもいいかと思い始めていた。

〇城の廊下
  眠れないことよりも吐き気が強いことが辛いフリートウェイはレクトロを探していた。
フリートウェイ(どこ行った・・・)
  どこかふらふらしながら、フリートウェイは廊下を歩く。
  何者か──昼間にフリートウェイ達を見つめていた男に身体がぶつかったフリートウェイはついに倒れてしまう。
ナタク「・・・・・・・・・・・・」
ナタク(レクトロの元へ運ぶか・・・)
  振り返り、不調で倒れたフリートウェイを見つめる男──ナタクはとりあえずレクトロにフリートウェイを渡すことになった。

次のエピソード:第14回『予期せぬ二色の一計』

コメント

  • 新キャラ登場ですね!
    どう関わっていくのか楽しみです。
    フリートウェイはどうなってしまったのか・・・
    次回も楽しみにしてます!

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