僕と半分ゾンビな妹は対話でゾンビを理解する。

薊未ヨクト(あざみよくと)

少女誘拐未遂事件(脚本)

僕と半分ゾンビな妹は対話でゾンビを理解する。

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〇開けた交差点

〇公園の砂場
警察官「ゾンビ課の方々ですね? こちらです!」
警察官「被害者は、徳田明里さん12歳。 公園で一人で遊んでいたところを──」
警察官「ゾンビに誘拐されかけました!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ゾンビが誘拐なんて、どうして・・・!」
徳田 明里「あのね──」

〇公園の砂場
「ばいばーい」
「また明日ー!」
徳田 明里「わたしも、もう帰らないと・・・」
徳田 明里「お父さんが心配しちゃう・・・」
ゾンビ「あー」
徳田 明里「え?」
徳田 明里「なぁに?」
徳田 明里「わっ」
徳田 明里「え? え? やめて、引っぱらないで!」
徳田 明里「もしかして──」
徳田 明里「どこかについて来てほしいの?」
主婦「ちょっと! その子をどうする気!?」
主婦「誰かー! ゾンビが子どもを攫おうとしているわー!」

〇公園の砂場
徳田 明里「それでゾンビさん、どっか行っちゃったの」
警察官「足どりを追っていますが、未だ見つからず・・・」
???「明里!」
明里の父「連絡を受けて、驚いたぞ! 大丈夫だったか?」
明里の父「すみません、娘がご迷惑をおかけました」
警察官「いえいえ! 悪いのはゾンビなんですから、お気になさらず!」
徳田 明里「ご、ごめんなさい、お父さん」
明里の父「お前が無事で、本当によかった」
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・お二人に、少々お話を伺いたいのですが」
樺島 一心(かばしま いっしん)「明里ちゃんは、今日会ったゾンビに見覚えはなかったかな?」
徳田 明里「・・・知らない人だった」
樺島 一心(かばしま いっしん)「お父さんは、心当たりありますか?」
明里の父「いいえ、全く」
明里の父「娘も怯えているようですし、もう帰っても?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「またお話を伺うと思いますが、今日のところはお引きとりいただいてかまいません」
樺島 ここね(かばしま ここね)「・・・あのお巡りさん、感じ悪い!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ゾンビが悪い、なんて」
樺島 ここね(かばしま ここね)「本当に悪いかどうかは、話を聞いてみるまでわかんないじゃん!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「今回は特に被疑者だからな」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ゾンビに話を聞くにしても、まずは捕まえないといけないが──」
樺島 一心(かばしま いっしん)「さて、どうしたものか」
樺島 ここね(かばしま ここね)「なら、いい考えがあるよ!」

〇ゆめかわ
樺島 ここね(かばしま ここね)「ここは、円谷さん特製メイク道具の出番だね!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「じゃーん!」

〇広い公園
樺島 ここね(かばしま ここね)「これで、半分ゾンビとはわからないでしょ?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「それはそうだけど、どうするつもりだ? まさか──」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ここねが囮になって、ゾンビをおびき寄せればいいんだよ!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「子どもに用があるなら、ここねのところにも来てくれるかも──」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ダメだ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「もし、本当に危険なゾンビだったら・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「でも、このままゾンビが見つからないと、お兄ちゃんが困っちゃうでしょ?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「だからといって、妹を危険にさらすわけにはいかない!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「それに、ゾンビのためでもあるんだよ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「誤解があるなら、解いてあげなきゃ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ゾンビだからって、悪者にされちゃ可哀想だよ!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「お兄ちゃんが手伝ってくれなくても、ここね一人でやるから!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ハァ・・・仕方ないな」

〇公園の砂場
樺島 ここね(かばしま ここね)「お兄ちゃ〜ん!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「どこ〜!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「え〜ん、え〜ん!」
樺島 一心(かばしま いっしん)(あの演技で、本当に大丈夫か・・・?)
樺島 一心(かばしま いっしん)(来た・・・!)
樺島 一心(かばしま いっしん)「そ、そこのゾンビ、止まれ!」
ゾンビ「あー」
樺島 一心(かばしま いっしん)「それ以上、こ、ここねに近づくな!」
ゾンビ「ああー」
樺島 ここね(かばしま ここね)「『違った』っていってるよ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「子どもなら、誰でもいいというわけではないのか・・・?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「って、お兄ちゃん! 捕まえなくていいの?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「しまった!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「確保ぉっ!!」

〇警察署の入口

〇取調室
樺島 一心(かばしま いっしん)「女の子を連れていこうとした理由は?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あー、あー?」
ゾンビ「うー、うううー」
ゾンビ「あーあーああぁぁ!!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「なんかねー、この人はもともと、ジドーソーダンジョ? で働いていたんだって」
樺島 ここね(かばしま ここね)「だから、ギャクタイから助けたいって」
樺島 一心(かばしま いっしん)「虐待!? あの子が?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「実際に、虐待されるところを見たのか?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「うあー?」
ゾンビ「ううー・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「見てないって」
樺島 一心(かばしま いっしん)「お父さんは優しそうだったし、とてもそんな風には見えなかったが・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「もしかして、そのゾンビの勘違いじゃないのか・・・?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「うぅうー・・・?」
ゾンビ「ううう!!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「違う! あの子は、絶対虐待されている! って」
ゾンビ「あー、ううー!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あの子を助けてあげて!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・話だけでも、聞きにいってみるか」

〇住宅街の道
樺島 一心(かばしま いっしん)「住所はこの辺のはずだけど・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「もう遅いし、ここねは帰ってもよかったんだぞ?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「相手はゾンビじゃないんだし」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ここねに、夜道を一人で帰れっていうの?」
レックス「レックス、イルゾ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「確かに、一人で帰すのは心配だな」
レックス「レックス、イルゾ!!」
???「きゃーー!!」

〇綺麗な一戸建て

〇シックなリビング
明里の父「お前のせいで、警察から呼びだされたじゃないか!」
明里の父「恥をかかせやがって! どうしてくれるんだ? え!?」
徳田 明里「ごめ・・・なさ・・・」
???「そこまでだ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「どうやら、あのゾンビの証言は本当だったようだな」
明里の父「お前、警察の・・・!」
明里の父「何勝手に入ってきているんだ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「暴行の現行犯で、逮捕する!」
明里の父「暴行!?」
明里の父「違う! これは躾だ! 邪魔をするな!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「やれやれ・・・」
明里の父「うっ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「人間相手なら、簡単には負けないさ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「公務執行妨害で、現行犯逮捕する!」

〇綺麗な一戸建て
徳田 明里「お父さんを連れていかないで!」
徳田 明里「全部、わたしが悪いの」
徳田 明里「お父さんは、わたしを教育してくれてるだけ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「明里ちゃん、それは違うよ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「どんな理由であれ、暴力をふるっちゃいけないんだ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「お父さんは、いけないことをしたんだよ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「君は、何も悪くない」
徳田 明里「わたし、悪くないの?」
徳田 明里「本当に?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ああ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「もう君に暴力はふるわせない。 大丈夫だから、安心して」
徳田 明里「あ、あのね・・・」
徳田 明里「本当は叩かれるの、やだったの・・・」
徳田 明里「だから、家に帰りたくなかった」
徳田 明里「そしたら、あのゾンビさんに会ったの」
樺島 一心(かばしま いっしん)「そのゾンビさんに、君を助けてほしいと頼まれたんだ」
徳田 明里「あの人ね、ゾンビだけど、全然怖くなかったの」
徳田 明里「お願い、ゾンビさんに・・・ありがとうって伝えて?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「任せて、ちゃんと伝えるから」

〇住宅街の道
樺島 一心(かばしま いっしん)「子どもって案外、本質を見抜くものなんだな」
樺島 ここね(かばしま ここね)「どういう意味?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「いや、あの子には、あのゾンビが無害だとわかっていたんだなって」
樺島 一心(かばしま いっしん)「大人の方が、先入観で目が曇っていた」
レックス「イッシンノメ、フシアナ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ぐっ・・・!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「だが、いつかその先入観をなくして、ゾンビと共生できる世の中にしてやるさ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ゾンビとの共生なんて、本当にできるのかな・・・?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「無理でも、やってやる!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「また、家族皆で暮らすために──」

〇警察署の入口
樺島 ここね(かばしま ここね)「あー、ああー (あの子が、『ありがとう』って)」
ゾンビ「あうー」
樺島 一心(かばしま いっしん)「そういえば、何で虐待がわかったんだ?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「その場面を見てもいないのに」
樺島 ここね(かばしま ここね)「うー、ううー?」
ゾンビ「あ、ああー」
樺島 ここね(かばしま ここね)「見ればわかる、って」
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・え、それだけ!?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ばいばーい!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「何というか・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「腐っても、プロはプロってことだな」

次のエピソード:幹線道路のヒマワリ事件

コメント

  • メイクでゾンビの肌を隠す、ここねちゃん可愛い。☺️
    あのゾンビは誘拐ではなく保護しようとしてましたか。
    虐待を躾と称して恐怖を与えた父親は絶対に許してはなりませんね。

  • ここねのメイクで肌の色を変えるのは良いアイデアですね!
    何といってもキュートっ😆推しますっ👍🏻✨
    ゾンビは虐待を受けている子を助けようとしていたのですね👏🏻
    言葉が通じないだけであって…😢
    ゾン ビにも、ちゃんと意思があるという事が理解(りか い)出来る回でした!
    ここねの存在が、きっとゾンビ達の希望となるのでしょう✨
    続きを楽しみにしております!🧟

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