十六話(脚本)
〇山間の集落
エビス「・・・」
ミコ「もっと」
エビス「・・・」
ミコ「もっと!」
エビス「・・・」
ミコ「もっと!」
〇水玉2
〇山間の集落
ミコ「怖い!」
エビス「なんだ!そなたが笑えと言ったから、 笑っとるのではないか!」
ミコ「やっぱり 無理矢理ってのはよくないですね」
エビス「今気づくな」
ミコ「さてと。そろそろ行きますね」
エビス「・・・」
エビス「もっと他にないのか?願い事・・・」
エビス「ただ笑ってお終いではないか」
ミコ「いや、全然出来てないし」
ミコ「そういう上からな言葉は、 最初の注文に答えられる様になってから ほざいて下さい」
エビス「おぬし、滅茶苦茶クチ悪くなったな」
ミコ「そりゃそうですよ」
ミコ「私はエビス様が作り出した、 マボロシなんですから」
エビス「そうであった」
エビス「・・・」
エビス「幻でもよい」
エビス「もう少し、一緒にいてくれぬか」
ミコ「まあ、いいですよ。マボロシですから」
エビス「・・・」
エビス「・・・」
『キッ・・・・・・・・・ショ!!!』
エビス「だ、誰だ! 我の精神世界(プライバシー)を犯す者は!」
〇空
アマテラス「・・・」
アマテラス「・・・」
エビス「登場早々引くでない」
アマテラス「こうして相対するは初めてですね」
アマテラス「偉大なるタカマガハラの長兄ヒルコ様」
エビス「思ってもない言葉を吐くな」
エビス「アマテラスだな。父と母は息災か?」
アマテラス「母、伊邪那美大神は知っての通り冥府へ」
アマテラス「父、伊邪那岐大神もまた 第十八次元へと旅立たれました」
エビス「十八次元?なんだソレは?」
アマテラス「とか言っちゃうとカッコよくない?」
エビス「ようは行方知れずか」
エビス「随分ファンキーだな。 キャラ変わってないか?」
エビス「それともお前も我が作り出した幻か?」
アマテラス「否」
アマテラス「私は六次元廻廊を経て、 今直接お兄様に語りかけています」
アマテラス「如何でしたか? 貴方様の故郷の神々、 そして人々の生き様は?」
エビス「ろくなものではなかった」
エビス「はっきり言って、 海の果てで引籠っていた方がよかった」
アマテラス「なるほど」
アマテラス「ゆえに貴方は、 四肢を必要とせず生まれてきたのですね」
エビス「・・・なに?」
アマテラス「ゆえに父と母は、 貴方を孤独の島に流したのでしょう」
アマテラス「全ておのれが望んだ未来。 おのれが望んだ、今」
アマテラス「違いますか?我が兄よ」
エビス「・・・」
エビス「・・・」
エビス「・・・」
エビス「得心した」
アマテラス「あら?わりと聞き分け良いんですね」
アマテラス「折角の新旧日輪対決なのですよ」
アマテラス「多分、今ってラストバトルですよ」
〇格闘技リング
アマテラス「もっとやりあおうぜ! ヘイヘイへーーーイ!」
〇空
エビス「何が光の神だ」
エビス「実体(己)を持たぬ幻は我の方だ」
エビス「そなたこそが、まことの日輪」
アマテラス「当然です」
アマテラス「この地がある限り私こそが太陽」
アマテラス「貴方は流され忘れ去られる神」
アマテラス「ところで、ひとつお教えしましょう」
アマテラス「あの娘、ミコが最後に見た光景を」
エビス「・・・え?」
エビス「最後に見た光景?」
アマテラス「最後に願った思いを」
エビス「・・・」
エビス「聞きとうない」
エビス「聞いたところで何だというのだ」
エビス「ただ苦しいだけではないか!」
エビス「・・・ただ辛いだけではないか」
アマテラス「それでも耳を傾けねばならない。 知らねばならない。 数多の命の想いを、声を、言葉を」
アマテラス「私達は神なのだから」
エビス「・・・」
『に、逃げろ!ミコ!』
エビス「・・・!」
『おっと、そう言わずに見ていきなよ』
〇太子妃の御殿
エビス「・・・!」
『神様・・・』
『アシハラに永久の平和を・・・』
『みんなに永久の笑顔を・・・』
『笑顔を・・・』
エビス「・・・」
〇先住民の村
ヒルコ「・・・」
ヒルコ「・・・ミコ」
ヒルコ「ミコ・・・ミコ・・・」
エビス「ミコが・・・祈ってくれた・・・」
エビス「我に祈ってくれた・・・」
エビス「こんな出来損ないの神に・・・」
ヒルコ「ミコ・・・ミコ・・・」
カグツチ「チッ・・・さっきから 何をぼんやり突っ立ってやがる」
カグツチ「原初の光の力もこの程度か」
カグツチ「ならこの俺が焼き払ってやらあ!」
カグツチ「・・・!?」
カグツチ「馬鹿な? あんな弱々しい光が何故・・・」
カグツチ「何故俺の呪いを跳ね除けるッ!?」
〇先住民の村
カグツチ「何だと?」
カグツチ「ひ、蛭じゃねえだと? お前は・・・一体・・・?」
『まだ分からぬか?』
『光・・・であろう』
スサノオ「極めて不本意だがな」
カグツチ「スサノオ・・・貴様ああああッ!」
カグツチ「グアアアアアアアッ!」
スサノオ「ヒルコよ! まことの神ならば恨みに飲まれるな!」
スサノオ「気高く、誇り高く、この地を導いてみよ!」
スサノオ「アシハラを守ってみせよ!」
カグツチ「おのれえええ!何が光だ!何が日輪だ!」
カグツチ「こんな生ぬるい光に・・・」
カグツチ「こんな穏やかな光に・・・」
カグツチ「この俺の炎が・・・ この俺の怒りが・・・」
カグツチ「俺が・・・俺が・・・俺が・・・」
カグツチ「・・・」
カグツチ「・・・父さん・・・母さん」
タケル「・・・」
ヒルコ「・・・」
『原初の光よ』
『今ひとつ、日輪とは何かお教えしましょう』
『それは再生の力』
『命の源としての光』
〇太子妃の御殿
ミコ「・・・」
ミコ「・・・エビス様」
ミコ「この地に・・・平和を・・・」
〇先住民の村
スサノオ「兄上」
スサノオ「共に来い。タカマガハラに」
スサノオ「我らと共に神話となるのだ」
スサノオ「そうか。人の傍にいるか」
スサノオ「神を捨てた人の傍にな」
スサノオ「ならばせいぜい、空しき道を歩むがいい」
ヒルコ「・・・」
アシハラの童「・・・」
アシハラの童「・・・出ていけ」
〇先住民の村
エビス「・・・え?」
アシハラの童「出ていけ!ワタツミ!」
アシハラの民「ワシらの村を滅茶苦茶にしやがって!」
アシハラの民「禍神め!厄病神め!」
「出ていけ!出ていけ!出ていけ!」
ドキ「・・・」
『アシハラに神はいらぬ!』
『出ていけ!出ていけ!出ていけ!』
『出ていけ!出ていけ!出ていけ!』
『そうか。人の傍にいるか』
『せいぜい空しき道を歩むがいい』
つづく