2 謎の存在ウェヌス(脚本)
〇屋上の隅
飯塚隼人「・・・・・・」
不良2人にボコボコにされた俺は、家に帰らず1人でビルの屋上に来ていた。戻った所で誰かに相談する気も起きないし、
何より、今は心から1人になりたいと思っていたのだった。
飯塚隼人「このビルの屋上、こんなに高いんだな・・・ここを飛び降りれば、俺は死ぬ・・・」
飯塚隼人「死んだら何もしなくて良くなるし、もうあいつらの顔も見なくて良いんだよな・・・」
飯塚隼人「ははは、そうだよ・・・簡単な事じゃ無いか・・・もし自分に原因があるなら、それは俺が生きてるからなんだ・・・」
飯塚隼人「俺があいつらに酷い事されるのは、俺が生きてるから・・・俺がいなくなれば、もう全部解決なんだ・・・もう迷いは無い・・・」
飯塚隼人「ここを飛び降りて!」
「本当にそうだと思うの?」
飯塚隼人「勿論さ!俺さえいなければ、皆が笑顔に・・・って、」
飯塚隼人「え?何だ?誰かいるのか?」
「そう、もしあなたが望まれた命じゃ無いなら、あなたのそれは間違いと言う物ね・・・」
飯塚隼人「だ、誰なんだ!?おい!悪ふざけして無いで出て来いよ!」
「えぇ、お望み通り出て来てあげるわ・・・」
ウェヌス「初めまして・・・」
飯塚隼人「え?何今の!?あなたは一体!?」
ウェヌス「困惑するのも無理は無いわね・・・私はずっとあなたの様な存在を見て来たの・・・」
飯塚隼人「お、俺を見てた??一体どう言う・・・」
ウェヌス「幼い頃はそれ程感じる事は無かったと思うけど、人は年を重ねるに連れそれに対する理解を深め、」
ウェヌス「やがて自らの快楽に溺れて行く・・・飯塚隼人君、あなたは考えた事がある?何故自分はここにいるのか・・・」
飯塚隼人「え?」
ウェヌス「自分は何の為に生まれたのか・・・只誰かに傷付けられる為?あなたが誰かを傷付ける為?」
ウェヌス「違うでしょ?あなたは、あなたが幸せになる為に生まれて来たのよ・・・」
飯塚隼人「・・・さっきからあんたは何を言いたいんだ?俺見たいな奴を見てたってどう言う事だ?」
ウェヌス「あら、私とした事が、紹介が遅れたわね・・・私に名乗る名前は無いけど、私の事はウェヌスと呼ばせているわ・・・」
飯塚隼人「ウェヌス?」
ウェヌス「ねぇ飯塚隼人君、あなたがここに来たと言う事は、あなたは自殺をしようとしてたのよね?」
飯塚隼人「あ、うん・・・」
ウェヌス「あなた自身はそれで良いと思ってる見たいだけど、そんな風に命を捨てるのはおかしいと思わない?」
飯塚隼人「え?だって俺、もう周りの奴らにウンザリしてたし・・・」
ウェヌス「そうね・・・だからあなたは自分を望まれた命じゃ無いと切り捨てた・・・でももし、その望まれた命じゃ無い者に」
ウェヌス「他の何かが救えたら、そんな風に考えた事は無い?」
飯塚隼人「え?」
ウェヌス「飯塚隼人君、私はあなたに問うわ・・・私はあなたが死ぬ事を止めたりしない・・・このままこの屋上を飛び降りるか、」
ウェヌス「それとも私と一緒にこのゲートを潜り、望まれない者として何かをして、それを成し遂げた後に死ぬか・・・」
ウェヌス「あなたの気持ちを聞かせて頂戴?」
飯塚隼人「望まれた命じゃ無い俺が、何かをする?一体何をしようってんだ?」
飯塚隼人「・・・・・・」
飯塚隼人「・・・・・・」
飯塚隼人「ウェヌスさん、だったよね?もし俺に何か出来るなら、それを教えて欲しい・・・」
ウェヌス「あら、気持ちがハッキリしたのね!でも私に対しては君とかさんとか付けなくて良いから!気軽に話して頂戴ね!」
飯塚隼人「・・・分かったよ、ウェヌス・・・俺をどこへ連れてってくれるの?」
ウェヌス「えぇ!これからあなたを連れて行くのは、あなたと同じ痛みを持った者達の所よ!」
飯塚隼人「同じ痛み?」
ウェヌス「彼らと合流したら、その先は皆で考えて決めて頂戴!それじゃあ、行きましょう!」
俺の目の前に現れた謎の存在ウェヌスは、ゲートを開いて俺をその先へと連れて行くのだった。