インソムニア

komarinet

第23話 永い眠り(脚本)

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〇暗い洞窟
アルテミス「ねぇ、どうしてあんなとこにいたの?」
小判 早馬(こばん そうま)「無賃乗車の妙な通報があってな」

〇車内
  その運転手は市内で客を乗せたんだが
  目的地を聞くと、共同墓地だという
  嫌だなー、怖いなー、と目的地に着き──
  ふと振り返ると・・・

〇暗い洞窟
小判 早馬(こばん そうま)「後部座席には血の跡が!」
アルテミス「にゃあああ!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「なにはしゃいでんのよ」
小判 早馬(こばん そうま)「猫くんの反応が面白くて、つい・・・」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「その件を相談されたのはあたしなんだけど」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「六道の件と関係ありそうな気がしてね」
小判 早馬(こばん そうま)「タクシーの血痕が六道のものと一致」
小判 早馬(こばん そうま)「急いで共同墓地に向かったというわけだ」
アルテミス「二人とも、待って! ここだよ!」

〇牢屋の扉(鍵無し)
小判 早馬(こばん そうま)「ただの岩壁のようだが・・・」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「でも、なんか不自然じゃない?」
アルテミス「触ってみて。扉があるから」
小判 早馬(こばん そうま)「うわっ、本当だ!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「扉は開いているようね」
小判 早馬(こばん そうま)「なるほど、ではここで待つとしよう」
アルテミス「待つ? 何言ってるんだよ!」
アルテミス「早くしないと仲間が・・・!」
アルテミス「え?」
アルテミス「うわああああっ!」

〇黒背景
  何も感じない
  自分の名前さえわからない──
  薄れていく・・・何もかも・・・
「ぐああああっ!」

〇実験ルーム
白宵 覚(しらよい さとる)「意識が・・・何が起こった?」
白宵 覚(しらよい さとる)「なんだ? この血は!?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「どうやら、あいつの血らしいで」
白宵 覚(しらよい さとる)「なっ──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「クソッ、離せっ!」
「ガウガウガウガウッ!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「離せよ、畜生!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「ぐっ・・・」
小判 早馬(こばん そうま)「観念するんだな、六道」
小判 早馬(こばん そうま)「その傷じゃ、犬の拘束からは逃れられんぞ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「ふん。こんなの、記憶を消して逃れるさ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「無理よ。貴方に犬の記憶は消せない」
六道 睦月(ろくどう むつき)「──!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「監視カメラを見てて気づいたのよ」

〇住宅地の坂道
  あなたの横を通る警察官は気づかないのに
  近くにいた犬はあなたを見ていた

〇実験ルーム
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「あなたの能力は人間にしか作用しない」
六道 睦月(ろくどう むつき)「思ったより賢いんだな、警察って」
小判 早馬(こばん そうま)「大人しく投降するんだ」
小判 早馬(こばん そうま)「銃創からの出血が酷い。長くは持たないぞ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「ふふ・・・ははははっ」
小判 早馬(こばん そうま)「何がおかしい?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「命なんて・・・どうだっていいよ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「俺は眠りのために全てを捧げてきた」
六道 睦月(ろくどう むつき)「もし、眠れないならそれは──」
白宵 覚(しらよい さとる)「──!」

〇実験ルーム
六道 睦月(ろくどう むつき)「もし、眠れないならそれは──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「死んでいるのと変わらない!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「出力最大だ! 消えてなくなれぇぇ!」
白宵 覚(しらよい さとる)「やめろ! 睦月──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「はは・・・全員道連れだ」

〇流れる血
六道 睦月(ろくどう むつき)「もう犬の感覚もない・・・」
六道 睦月(ろくどう むつき)「これで本当にゆっくり眠れる・・・」

〇実験ルーム
白宵 覚(しらよい さとる)「九条、手を狙え! 装置に触れさせるな!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「オーケー。3m、高速ストレートッ!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「ちっ・・・覚の未来視か」
九条 醒夜(くじょう せいや)「はよ、あの装置も破壊せんとな」
六道 睦月(ろくどう むつき)「装置を破壊しても君らに未来はないよ」
白宵 覚(しらよい さとる)「どういうことだ?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「見れば分かるさ。装置を壊した先をね」

〇黒背景
  なんだこの未来は・・・何もない

〇実験ルーム
白宵 覚(しらよい さとる)「これは・・・また予知を消したのか?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「そんな小細工はしないさ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「予知が消えたんじゃない、未来がないんだ」
白宵 覚(しらよい さとる)「未来が・・・ない?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「装置を壊せば、不眠と過眠は逆転する」
六道 睦月(ろくどう むつき)「十年間のリバウンドが一気に来るんだ」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「まさか、十年間寝たきりになるのか!?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「下手すりゃ死ぬまでかもね」
涅群 騎士(くろむら ないと)「文字通りの永眠か。笑えないね」
アルテミス「そんな・・・嘘だよね、ひより!」
三井 陽和(みつい ひより)「残念だけど、嘘はついてないわ」
三井 陽和(みつい ひより)「でもあなただって、無事には済まない」
六道 睦月(ろくどう むつき)「ああ。俺は一生眠れなくなるだろうね」
六道 睦月(ろくどう むつき)「そこで、だ。俺と協力しないか?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「この犬と警察を一緒に片付けよう」
小判 早馬(こばん そうま)「なっ・・・貴様、何を!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「君らが俺を倒し、装置を壊したところで」
六道 睦月(ろくどう むつき)「君らに生きる道はない。それなら──」
白宵 覚(しらよい さとる)「悪いがそいつはお断りだ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「なんでだよ! 死ぬまで眠るんだぞ!?」
白宵 覚(しらよい さとる)「不眠の解消は俺たちの悲願だった」
白宵 覚(しらよい さとる)「それに、本当はお前自身──」
白宵 覚(しらよい さとる)「装置が壊れることを望んでいるだろう?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「馬鹿な。何を根拠にそんな」
白宵 覚(しらよい さとる)「高校の頃──」

〇学校の駐輪場
  親に捨てられ、周囲に壁を作ってた俺に
  お前は手を差し伸べてくれた

〇実験ルーム
六道 睦月(ろくどう むつき)「それは・・・お前を監視するためだ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「記憶が戻ると困るからな」
白宵 覚(しらよい さとる)「嘘だな。消去を保つなら接触は控えるはず」
白宵 覚(しらよい さとる)「お前は──俺を見捨てられなかったんだ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「おめでたい奴だ。そんな風に思ってたとは」
六道 睦月(ろくどう むつき)「友人ごっこは楽しかったかよ」
白宵 覚(しらよい さとる)「ははっ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「何がおかしい!」
白宵 覚(しらよい さとる)「十年も隣にいたら分かるさ」

〇立ち飲み屋
  自分の隣にいるやつが──
  友人のフリをしてるかくらいな

〇実験ルーム
白宵 覚(しらよい さとる)「睦月、お前はずっと──」
白宵 覚(しらよい さとる)「誤った遮断器を戻したかったんだ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「馬鹿じゃないのか。俺は・・・俺はっ」
白宵 覚(しらよい さとる)「お前が手を伸ばしたから俺がここにいる」
白宵 覚(しらよい さとる)「睦月、お前を倒すのは──」
白宵 覚(しらよい さとる)「お前自身の良心だ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「黙れぇぇええ!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「消えて──」
九条 醒夜(くじょう せいや)「1打席、遅かったな」
九条 醒夜(くじょう せいや)「4メートル、高速──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「させるかぁぁ!!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「スイーパー!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「よしっ・・・外れ──」
九条 醒夜(くじょう せいや)「スイーパーいうたやろ?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「曲がるでぇ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「軌道が・・・ッ!?」

〇実験ルーム
六道 睦月(ろくどう むつき)「嘘だろ・・・俺の眠りが・・・」
九条 醒夜(くじょう せいや)「見たか・・・九条醒夜、最後の投球」
涅群 騎士(くろむら ないと)「うわー、何これ? 凄い・・・疲れ?」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「それが眠気ってやつだよ」
涅群 騎士(くろむら ないと)「へー。そうなん・・・だ」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「はは・・・怒られちまうな。都くんに」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「最後まで嘘ついて・・・ごめんな」
アルテミス「ひより、怖いよ・・・」
アルテミス「言葉がだんだん・・・わからなくなるんだ」
三井 陽和(みつい ひより)「おいでアル。私と一緒に・・・」
アルテミス「ありが・・・とう」
三井 陽和(みつい ひより)「アイドルなんてすぐ忘れられちゃうよね」
三井 陽和(みつい ひより)「でも楽しかった。みんなごめんね」
三井 陽和(みつい ひより)「新しい推しを・・・見つけて」
白宵 覚(しらよい さとる)「みんな・・・すまなかった」
六道 睦月(ろくどう むつき)「覚!」
小判 早馬(こばん そうま)「あいつ、まだあんな力を残して」
小判 早馬(こばん そうま)「まさか腹いせに何かする気じゃ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「いいえ。よく見なさい、彼を」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「そんな顔、してないわ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「覚・・・寝るんじゃねぇよ。覚」
白宵 覚(しらよい さとる)「はは・・・勘弁しろよ」
白宵 覚(しらよい さとる)「こっちは十年ぶりの睡魔なんだぜ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「なんで・・・なんでだよ」
白宵 覚(しらよい さとる)「お前と同じ理由だよ。放っておけなかった」
白宵 覚(しらよい さとる)「友達が悪事を続けるのがさ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「まだそんなこと言うのかよ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「だって俺は、お前の家族を・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「ダチは家族より長く付き合うんだぞ」
白宵 覚(しらよい さとる)「どっちも大事に決まってるだろ」
白宵 覚(しらよい さとる)「誰かさんの・・・受け売りだ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「覚・・・覚!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「覚ーーーー!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「お取り込み中悪いけど、逮捕させて貰うわ」
小判 早馬(こばん そうま)「先に病院だな。立ってるのもやっとだろ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「──」
小判 早馬(こばん そうま)「あっ! おい、六道!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「小判くん! 彼、脈がないわ!」
小判 早馬(こばん そうま)「俺は心臓マッサージをします!」
小判 早馬(こばん そうま)「警部は救急車をお願いします!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「わかったわ!」
小判 早馬(こばん そうま)「戻ってこい! 六道!」
小判 早馬(こばん そうま)「死んで逃げようなんて許さんからな!」

〇電車の中
白宵 覚(しらよい さとる)「ここは・・・」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「気がついたか?」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「まあ、俺もさっき目が覚めたばかりだが」
白宵 覚(しらよい さとる)「明闇? いつからそこに?」
アルテミス「覚、起きたの!?」
アルテミス「もう起きないかもって心配してたんだよ」
九条 醒夜(くじょう せいや)「ほらな、心配せんでええって言うたやん」
白宵 覚(しらよい さとる)「みんな・・・。ここはどこなんだ?」
白宵 覚(しらよい さとる)「確か俺たちは装置を壊して・・・」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「永遠の眠りについたはず。だよな?」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「だがこうして生きてる」
涅群 騎士(くろむら ないと)「生きてるかどうかはわからないけどね」
涅群 騎士(くろむら ないと)「能力は消えてるし、身体の感覚も曖昧だ」
三井 陽和(みつい ひより)「夢なのかしらね」
アルテミス「こんなにちゃんと話してるのに?」
白宵 覚(しらよい さとる)「そういやアルテミス、なぜ言葉を?」
白宵 覚(しらよい さとる)「能力がないならしゃべれないだろ」
アルテミス「本当だ。なんでだろう?」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「偶然意識が繋がったとかかもな」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「俺の予想だが、ここは三途の──」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「いや、止めとくか。縁起でもない」
白宵 覚(しらよい さとる)「みんな・・・すまなかった」
白宵 覚(しらよい さとる)「俺たちの問題に、皆を巻き込んでしまった」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「巻き込まれたつもりはない」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「不眠の解消は俺たちの悲願だった。だろ?」
白宵 覚(しらよい さとる)「しかし、みんなの人生が・・・」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「あのなぁ、覚」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「未練なく死ぬ奴なんているか?」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「お前さんは真面目に考えすぎなんだよ」
九条 醒夜(くじょう せいや)「せやで。僕らが自分の意志でやったんや」
涅群 騎士(くろむら ないと)「そもそも装置を壊したのは九条さんだしね」
九条 醒夜(くじょう せいや)「ナイト、お前それ今言うかぁ?」
三井 陽和(みつい ひより)「私、みんなの心をずっと見てたけど──」
三井 陽和(みつい ひより)「最後まで、誰も後悔はしてなかった」
アルテミス「謝るのは僕の方だよ、覚」
アルテミス「僕が君を最初に巻き込んだんだから」
白宵 覚(しらよい さとる)「いや、アルテミスは悪くないぞ、俺は──」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「はいはい、止めだ止めだ」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「誰も誰かの責任にするつもりなんかない」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「お前さんが言うべき言葉は一つだけだ」
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・そうか。そうだな」
白宵 覚(しらよい さとる)「──みんな」
白宵 覚(しらよい さとる)「ありがとう」

〇総合病院

〇総合病院

〇綺麗な病室
看護師「バイタル異常なしね」
看護師「・・・ん?」
看護師「ぎゃああーーーー!」

〇総合病院
看護師「先生、大変です! 17号室の患者さんが!」

〇綺麗な病室
医者「信じられないかもしれませんが──」
医者「あなたは長い間眠っていたんです」
???「長い間・・・?」
医者「時間にして約十年といったところです」
医者「恐らく記憶も混乱していることでしょう」
医者「ご自分のお名前は言えますか?」
???「自分の・・・名前・・・」
白宵 睡(しらよい すい)「白宵・・・睡、です」

コメント

  • 能力が無ければ関わり合うことのないインソムニア達。
    全員、誰かの意識の中(異世界、三途の川、夢の中)にいるのか、どの様な未来に向かっていくのか想像もつかないまま、次回が最終回。様々な結末、楽しみに待ってます😊

  • アルテミスが睦月から無事逃げ出せたのは「なぜ?」と思っていたら、なるほどの展開! 最終決戦でのかつての敵との共闘はやっぱりたまらんですね、胸熱。
    そして、ラストで目覚めたのはインソムニアの誰かかと思いきや…予想を裏切る展開続きで、楽しませてもらいました^^
    まだまだ謎は残ってるので、最終話でどう回収されるのか、待ち遠しいです。

  • 睦月、死んだら許さんー!警察コンビ頑張って! 犬の記憶は操作できない、なるほどでした。
    アルテミスの言葉が消えるのはつらいですね😭
    次回最終回!?どうまとまるのか……作者の手腕を信じてますー!!

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