ヴィンチ、愛の冒険

武智城太郎

第一話 自由への旅立ち(脚本)

ヴィンチ、愛の冒険

武智城太郎

今すぐ読む

ヴィンチ、愛の冒険
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇ファンタジーの学園
  萬谷邸──

〇城の客室
メイド「坊ちゃま、起床の時間でございます」
ヴィンチ「ワニャワニャ(もう食べられない)・・・」
メイド「坊ちゃま、お目覚めの時間でございますよ」
ヴィンチ「ワワン(もう朝? まだちょっと眠いな)」
メイド「シャワーを浴びて、朝食になさってください」

〇清潔な浴室
ヴィンチ(ふう・・朝はやっぱりこれだよね♪)

〇城の会議室
専属シェフ「坊ちゃま、朝食でございます」
ヴィンチ「ワン(ごくろう)」
ヴィンチ「モグモグ・・・」
ヴィンチ「黒トリュフのスクランブルエッグはまあまあいけるな」
ヴィンチ「メインはまた仔羊のローストか。一口で十分だ」
ヴィンチ「デザートは苺ソースのアイスか。ベリー系のほうが好みなのに、モグモグ・・・」

〇大広間
「坊ちゃま、お上手!」
メイド「次は何をしてお遊びになられますか?」
ヴィンチ「ワンワワン(もう疲れたな。歌でも歌ってよ)」
メイド「かしこまりました」
「ラ~♪ ラララ~~♪♪」
「お帰りなさいませ、真姫子さま」
萬谷真姫子「ヴィンチ!!」
ヴィンチ「ワン!(マミー!)」
萬谷真姫子「ん~いい子にしてたでちゅか~」
萬谷真姫子「はい、お土産のアンリ・シャルパンティエのスイーツよ~」
ヴィンチ「ワン(クッキー大好き♡)」
メイド「真姫子さま、矢野先生がお見えですが」
萬谷真姫子「すぐに行くと伝えておいて」

〇貴族の応接間
萬谷真姫子「どうも、矢野先生」
矢野医師「いかがですか? 最近のヴィンチ君は?」
萬谷真姫子「もちろん、いい子ですよ。百点満点」
萬谷真姫子「ただ、ちょっとその・・なんというか・・・」
萬谷真姫子「メス犬に興味を示しているようなんです」
矢野医師「まもなく二歳になりますからね、当然でしょう」
  ヴィンチは、床に広げた愛犬雑誌を熱心に眺めている。
ヴィンチ「クゥ~~ン・・・」

〇美しい草原
  ドラマやCM等で大人気のタレント犬、サクラ(♀)を特集した記事だ。

〇貴族の応接間
ヴィンチ(この子、なんてカワイイんだろう♡)
萬谷真姫子「ですけど男の子の場合、メス犬に近づかなければ・・・」
矢野医師「ええ、発情はしません」
萬谷真姫子「じゃあ、どうして?」
萬谷真姫子「うちの子は生まれてから一度も、この屋敷から外に出したことはないんですのよ」
矢野医師「発情期のメス犬のフェロモンは強烈で、空中を何キロメートルも飛んでオス犬を引きつけるものなんです」
萬谷真姫子「まあ、いやらしい!」
矢野医師「だったら、こういう便利なものがあります」
矢野医師「犬用のラブドールです」
萬谷真姫子「あら、可愛いヌイグルミ♡ 手触りもいいし」
萬谷真姫子「でもこれ、ラブラドールではないですわよね。トイプードル・・・」
矢野医師「〝ラブラドール〟ではありません。〝ラブドール〟です」
矢野医師「早い話が、犬用のダッチワイフですな」
萬谷真姫子「ヒイッ!!」
矢野医師「これがあれば、ヴィンチ君が大事なお客様の足に、見境なく腰を振るようなこともなくなります」
萬谷真姫子「うちの子は、そんな下品なことしません!!」
萬谷真姫子「ヴィンチは天才で、人間の言葉もわかるんですのよ! テレビも大好きで・・・」
矢野医師「飼い主の方は、皆さんそうおっしゃいますね」
矢野医師「それなら去勢手術をお勧めします」
矢野医師「去勢すれば、発情期のメス犬に誘われることもなくなります」
萬谷真姫子「あら、それはいいわね」
矢野医師「前立腺などの病気の予防にもなりますし、いいことづくめですよ」
矢野医師「これは、実際の手順を解説したDVDです」
ヴィンチ(なんだろ? またアニメかな?)

〇手術室
  麻酔で眠っている小型犬が、手術台に四肢を括りつけられている──

〇貴族の応接間
萬谷真姫子「痛くはないの?」
矢野医師「全身麻酔ですから何の苦痛もありません」
ヴィンチ(ぼくと同じ小型犬が病院みたいなところにいる。病気なのかな?)

〇手術室
  画面の中の獣医が、小型犬の片方の睾丸に──

〇貴族の応接間
萬谷真姫子「あら、簡単に切り取れるものねえ」
矢野医師「はい、それはもう」
萬谷真姫子「手術は立ち会ってあげたいから・・・」
萬谷真姫子「来週、火曜の二十時はどうかしら」
矢野医師「すぐに予約を入れときましょう」

〇ファンタジーの学園

〇ファンタジーの学園

〇城の客室
メイド「それではおやすみなさいませ、坊ちゃま」
ヴィンチ(・・・迷ってる暇はない)
  ヴィンチはベッドから下り、窓に近づく。
ヴィンチ(やるしかないんだ・・・!)
ヴィンチ(もっと高くジャンプを!)
ヴィンチ(よし、ロックを外した!)
ヴィンチ(窓も開いたぞ!!)

〇養護施設の庭
ヴィンチ(窓から前庭に出られるのか・・・)
ヴィンチ(このまま正面門にむかおう)

〇名門校の校門(看板の文字無し)
ヴィンチ(正面門だ。ここまでなら来たことがあるけど・・・)
ヴィンチ(マミーは、外には怖いものがいっぱいって言ってた・・・)
ヴィンチ(ゴクリ・・でも・・・)
ヴィンチ(なんとか柵の隙間をくぐって、外へ・・・!)
ヴィンチ(出られた!!)
ヴィンチ(門の外には警備の人が・・・)
警備員(朝飯、何食うかな~)
ヴィンチ(ぼくには気づいてないみたい)
ヴィンチ(マミー、心配しないで。外の世界で、ぼくはたくましく生きるから)
ヴィンチ「さよなら・・・!」

〇黒
  翌朝──

〇ビルの裏
ヴィンチ「キャンキャン!!」
野良猫「ニャーオ!」
  ヴィンチは野良猫に追いかけ回されていた。

〇繁華な通り
ヴィンチ「ゼイゼイ!!」
野良猫「ニャー!」
野良猫「ニ゛ャ!!」
ヴィンチ「あわてて逃げちゃった。どうしたんだろ?」
ヴィンチ「ワッ!?」

〇黒
  つづく!

次のエピソード:第二話 初めての仲間(前編)

コメント

  • こんにちは!
    ヴィンチちゃんとても可愛くて愛らしいです
    人間のように扱われ、本人も人間のように振る舞っているので虚勢が何とも、リアルに写りました😂
    これからどうなるのか楽しみです✊

  • まるで人間のようなセリフを発するヴィンチがシュールでかわいいお話でした
    これから彼がどんな冒険をするのかが楽しみです

  • 「ヴィンチ、愛の冒険」は、コメディジャンルの作品である。ヴィンチは、贅沢三昧で甘やかされて育てられた天才犬であるが、去勢手術を受けることを知り、豪邸を飛び出す。その後、ヴィンチは警備員に気づかれずに外へ出て、野良猫に追いかけ回されたり、繁華な通りを駆け抜けたりする。ヴィンチは、外の世界でたくましく生きる決意をした。この作品は、愛犬家にはたまらないストーリーであり、ヴィンチの勇気ある行動には心が温かくなった。また、ヴィンチのキュートな表情や、メイドさんたちの可愛らしい動きなど、コミカルな演出も楽しめる。全体的に、とても面白い作品だった。

コメントをもっと見る(9件)

ページTOPへ