第二話 初めての仲間(前編)(脚本)
〇空
ヴィンチ(いったい、どこまで運ばれるんだろう・・・)
ヴィンチ(テレビで見たことがある。巣に持ち帰って食べられちゃうんだ)
ヴィンチ(あれ? 爪の力が少し弱くなってるみたい)
ヴィンチ(長いこと掴んでるから疲れたのかな?)
ヴィンチ「う~~ん・・・!!」
ヴィンチは空中でジタバタ暴れる。
ヴィンチ「あ・・・!!」
〇木の上
〇森の中
ヴィンチ「ウ~~ン・・・!!」
ヴィンチ「助かったみたい!」
ヴィンチ「良か・・・」
ヴィンチ「ヒッ!!!!」
ヘビ「シャーーッ!」
ヴィンチ「ヘビだ!!」
ヴィンチ「色は違うけど、形はテレビで見たのと同じだ!!」
ヴィンチ「噛まれたら、毒で死んじゃう!」
〇けもの道
ヴィンチ「早く逃げないと!!」
ヘビ「シャーーーッ!!」
ヴィンチ「わっ!! 足がないのに走るの早い!」
チャゲ「下がってな、小さいの」
ヴィンチ(わっ! あっというまにやっつけちゃった)
チャゲ「ガツガツ・・・」
チャゲ「うん、やっぱりシマヘビは肉付きがいいな」
ヴィンチ「グゥ~~!」
ヴィンチ(そういえば、屋敷を出てから何も食べてなかった)
チャゲ「チビ、腹がへってるなら、おまえも食いな」
ヴィンチ「ほんとですか? ありがとうございます」
ヴィンチ(う・・・まぢかで見るとすっごいグロテスクだ)
ヴィンチ(変な匂いもするし、このおじさんの残り物だし)
ヴィンチ(でもおなかへってるし、仕方ない)
ヴィンチ「モグモグ・・・」
ヴィンチ(う! ものすごく生臭い! 耐えられない!)
チャゲ「もういいのか?」
ヴィンチ「は、はい。美味しかったです」
〇けもの道
チャゲ「タカに捕まったって? そいつは災難だったな」
ヴィンチ「はい・・・」
ヴィンチ「それでここは、どこなんですか?」
チャゲ「アサヒ山さ。おれたちの住処だよ」
ヴィンチ「山って犬が暮らすものなんですか? おれたち?」
チャゲ「ほら、仲間だ」
〇山の中
シロ「兄弟、そいつは?」
チワ「新入りか? 見ねえ顔だな」
チャゲ「ああ、さっきたまたま出くわしてな」
ヴィンチ「ど、どうも。ヴィンチと言います」
ヴィンチ「わけあって家出をして・・・ もしかして、あなたがたもそうなんですか?」
シロ「家出? 自分から?」
チワ「何言ってやがんだ。俺たちは泣く子も黙る捨て犬様よ」
シロ「飼い主に、おいてけぼりくらったんだよ。この山中でな」
チャゲ「おれは一度は自力で家に戻ったんだがな」
チャゲ「二回目は、リードを木にくくりつけられたよ。食いちぎれなかったら、あのまま餓死してたな」
チャゲ「それでやっと自分の境遇を理解したよ。邪魔になっちまったんだってな」
ヴィンチ(捨て犬・・・! 知ってる。テレビで見た)
ヴィンチ(そんなひどい飼い主が、本当にいるんだ。信じられない)
チャゲ「で、坊主はこれからどうするんだ? 行く当てはあるのか?」
ヴィンチ「それが、何も考えてなくて・・・」
チワ「俺たちとここで暮らすか? チビにはちっと厳しいぜ」
チワ「そうそう、すぐそこの杉がズタズタになってたぜ。あれはクマの仕業だな」
ヴィンチ「え!? クマ!!」
ヴィンチ「三メートルもあってすごく凶暴なんでしょ!? 黒色? 白色?」
チャゲ「そこまではデカくないがな」
チャゲ「爪研ぎか、皮を剥いで食ってたんだろ」
チャゲ「そこまで警戒する必要は──」
ヴィンチ「出た! クマ─ッ!!」
シロ「ちがう。奴らだ」
二世「よう、家犬ども」
二世「まだ生きてやがったのか」
二世「とっくにクマ公の糞にでもなってると思ったぜ」
「ヒャッハッハ!!」
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ニ話目も読ませて頂きました!
チャゲ達に教えてもらいながらサバイバルしていくヴィンチ
種族同士の縄張り争いもお話を盛り上げますね
犬同士の会話が妙な雰囲気で楽しいです😆
犬的にはサバイバルだと思うのですが、何だかほっこりするような…… 笑
温室育ちのヴィンチくんに突如訪れる過酷な環境、テレビの中の事物が周囲に……適応するだけでも一苦労そうなのに、しかも熊……生きて……