第6話 レッツ・追い出し作戦(脚本)
〇綺麗なリビング
遠山陽奈子「よしっ、準備は万端! これで満弦を諦めさせるぞ──!」
梨花から「男の撃退法」を学んだ私は、その日の夜、さっそくそれを実行に移すことに。
まずは──
〇綺麗なリビング
満弦「ふむ、今夜はなかなかの馳走のようじゃの。 ちと変わっておるが」
遠山陽奈子「洋食だからね。張り切って作っちゃった!」
満弦の前に並べたのは、エビのグラタンに、ミートボールハンバーグ、タラとアサリのアクアパッツァにポテトサラダだ。
見た目はどれも完璧だけど、味は激マズに作ってある。
遠山陽奈子(グラタンはホワイトソースがボソボソだし、ミートボールはタバスコをかけまくった)
遠山陽奈子(アクアパッツァは塩の代わりに砂糖を使って、ポテトサラダは隠し味のお酢を隠せないほど投入)
遠山陽奈子(こんなマズいもの、ぜーったい嫌がるはず!)
満弦「ではありがたくいただくとしよう」
遠山陽奈子「いっぱい食べてね♪」
ご満悦といった顔の満弦が、早速ミートボールに箸を伸ばし、口に運んだ。すると。
満弦「むぐっ!?」
満弦の表情が明らかに固まって、すぐにせき込み始めた。
遠山陽奈子「あっれ~? ごめ~ん、ちょっと辛かったかなぁ?」
遠山陽奈子「タバスコかけすぎちゃったかも~」
満弦「いいから、水! 水を早よう!」
遠山陽奈子「はいどーぞ」
コップに水を並々次いで差し出すと、満弦はそれを一気に飲み干した。
それを見届けた私は、間髪入れずにエビのグラタンをフォークですくって満弦の口の前に差し出した。
満弦「む。なんじゃこれは」
遠山陽奈子「ミートボール辛くしすぎちゃったおわびに、グラタン食べさせてあげるね」
満弦「そうか」
満弦「お主もようやっと、わしに嫁入りするにふさわしい振る舞いをする気になったようだな」
遠山陽奈子(ぷくくく、騙されてる騙されてる)
遠山陽奈子「はい、あ~ん」
満弦「あ~ん」
小さな口を精一杯開けて、フォークにかぶりつく満弦。
その様子にちょっぴりキュンとしてしまう。
遠山陽奈子(餌付けみたい)
遠山陽奈子(って何考えてるの!)
満弦「おい・・・むぐむぐ」
満弦「これも何やら・・・妙な食感が・・・もぐもぐ」
遠山陽奈子「じゃ、じゃあ、アクアパッツァはどう!? こっちのポテトサラダも!」
私は次々、激マズ料理を満弦の口元に差し出して食べさせてやった。
満弦の反応は、思った通りのもので。
満弦「なんじゃこの甘ったるい魚は!?」
満弦「このふかし芋など、酸っぱくて食べられたものではないぞ!?」
遠山陽奈子(だってそう作ってるし!)
遠山陽奈子「やだ~。私ってば、料理へたっぴだから~!」
満弦「今朝までは普通だったはずだが・・・」
ギクリ。
遠山陽奈子「よ、洋食! 洋食が特に苦手で! 昨日今日のは、なんとか作れるやつで!」
満弦「ふー・・・」
長いため息を吐き出して、満弦が私を睨みつける。
遠山陽奈子(やば。怒った?)
一瞬怯んだものの、これは作戦通りなのだと自分に言い聞かせて唾を飲みこんだ。
満弦「まさかお主がここまで料理下手とはの」
遠山陽奈子「は、はは・・・そ、そうなんだよね!」
遠山陽奈子「だから、み、満弦が満足するようなゴハンは作れないっていうか!」
満弦「ならば仕方ない」
遠山陽奈子(もしかして、諦める気になってくれた!?)
満弦「誰しも多少の不得手はあるもの。 ことに、お主は人間だからの」
遠山陽奈子「じゃ、じゃあ・・・?」
満弦「お主の料理の腕があがるよう、これからはわしが毎日お主の手料理を食べて指導してやろうな」
遠山陽奈子(ええっ? そっち!?)
満弦「まずは、お主がどれほど不味い料理をわしに振る舞ったか──」
満弦「身をもって知るが良い」
遠山陽奈子「は、はは・・・それってまさか・・・?」
満弦「食卓に並んだ不出来な料理。 ひとつ残らず食してもらうぞ!」
遠山陽奈子(や、やっぱりー!!)
言葉通り、満弦は完食するまで私を食卓から離してはくれなかった。
〇ファンシーな部屋
遠山陽奈子(昨日は大失敗だったけど、今日こそは・・・!)
遠山陽奈子(準備も整ったし、あとは満弦が起きるのを待つだけね)
満弦は日中、お昼寝をする。
本人いわく、それも力が弱っているせいなのだとか。
だから私は、満弦がぐうぐう寝ている間に部屋の中をひっくり返して待っていたのだ。
そして。
満弦「ふわぁ・・・!」
遠山陽奈子「おはよ! よく眠れた?」
満弦「うむ。ところで、そこで何を・・・」
と、満弦が寝ぼけ眼をこする。
それからすぐに、金色の目を大きく広げて声を上げた。
満弦「っっ!? な、なんじゃこの部屋は!?」
遠山陽奈子「ああ~、なんか、お片付けしようと思ったら逆にグチャグチャになっちゃって~」
満弦「どこをどうしたら、これほどの状態になるというのか」
満弦「そもそも、お主、部屋はずっとキレイに保っていたはずではないか」
遠山陽奈子「本当は、お掃除って大っ嫌いなんだよね~。 いつもは友達に手伝ってもらってて~」
遠山陽奈子「満弦は清潔なのが好きでしょ? だって神様だもんね?」
遠山陽奈子「でも私、毎日お掃除なんて無理かも!」
満弦「なんと・・・」
ピクリと満弦の肩眉が動いて、いかにも呆れた表情になる。
今度こそ、私が嫌になって出ていくはずと期待した、次の瞬間。
満弦「では、掃除に関してはわしが自ら手伝ってやろう」
遠山陽奈子「は・・・?」
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