ゲーム脳とは何だったのだろうか

ましまる

④.印象、そして虚栄(脚本)

ゲーム脳とは何だったのだろうか

ましまる

今すぐ読む

ゲーム脳とは何だったのだろうか
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇学校の部室
せんせー「じゃあ、前回のおさらいね」
せんせー「【悲報】M氏、理論ガバガバ【虚言癖?】」
ぶちょー「いったい何のスレタイですか・・・」
せんせー「1行でまとまったんだから、イイじゃない」
ぶちょー「ていうか、内容が問題だらけの この「ゲーム脳」理論って、 いったい何なんですか?」
せんせー「そうね・・・」
せんせー「一言で表すと、”M氏の「主観」” ね」
せんせー「M氏の著作や発言内容って、 一見、真っ当な学者っぽいことを 述べているような感じがするけど、」
せんせー「よくよく見ると、 M氏の「主観」に基づいて 論が進められることが非常に多いのよ」
ぶちょー「「主観」って、自分の意見や感想ですよね」
せんせー「ええ、そのとおり」
せんせー「自分の意見を持つことは 悪いことではないのだけど、」
せんせー「学術的な文章を記すときには、 極限まで主観性を排除して、 客観的な論理を組み立てなければならない」
せんせー「これは、大学生の論文やレポートでも 普通に求められることなの」
ぶちょー「でも、M氏はそれができていない、と」
せんせー「ええ、研究者にとっては一丁目一番地、 基本中の基本のことなのにね」
せんせー「たとえば、M氏が挙げた 「ゲーム脳」の特徴だけど、」
せんせー「「キレやすい」「表情に乏しい」 「笑わない」「羞恥心がない」 「人間らしさが失われている」など」
せんせー「これって、よく考えてみたら 見る人によって評価が変わるという 主観的な判断事項でしょ」
せんせー「しかも、侮蔑的な表現も さらりと入れ込んでいるし」
ぶちょー「まさに、M氏の主観ですよね・・・」
せんせー「さらに、推量表現がかなり多いことも 容易に見て取れるわよ」
るる「すいりょーひょーげん?」
せんせー「「と思われます」「のようです」 「かもしれません」 といったものよ」
るる「「それってあなたの感想ですよね」って 言われそう・・・」
せんせー「そう、まさにM氏の感想が示されただけ」
せんせー「M氏の著作や発言は こういったもので構成されているわ」
ぶちょー「主観や感想を「理論」だなんて・・・」
せんせー「だから、現在では疑似科学として 認識されているのよ」
せんせー「そんなM氏の主観のベースにあるものは、」
せんせー「・ゲームという存在(興じる人も含め)の  全否定、嫌悪」
せんせー「・「最近の若者」に対する批判感情」
せんせー「この2点と言えるわ」
せんせー「そして、これらの感情をベースに、」
せんせー「嫌悪対象であるゲーム、そして ゲームに熱中する若者を否定するために」
せんせー「「ゲーム脳」という 極めて侮蔑的なレッテルを自ら生み出し、」
せんせー「さらに、ゲームに関係なく 気に入らない若者に対して 手当たり次第にレッテル貼りを行う、」
せんせー「これが、M氏と「ゲーム脳」理論の 本質的な要素と言えるわよ」

〇学校の部室
せんせー「M氏は、著作の中で、 次に列挙する事象に対して」
せんせー「「すべてゲーム脳ないし何らかの脳の異変が原因で理性や羞恥心などを失っている」と述べているのよ」
せんせー「・若い女性が電車の中で化粧をする行為」
せんせー「・若者が電車のドア近くの床に  座り込む行為」
せんせー「・若者がチャラチャラしたものを  ファッションとして  たくさん身につける行為」
せんせー「・若者がお尻を半分出す行為」
せんせー「・若者のカップルが人前で抱き合ったり、  キスをしたりする行為」
せんせー「・若者が定職に就かないこと」
ぶちょー「・・・見事なまでの若者批判ですね」
せんせー「でしょ」
ぶちょー「ちなみに、「お尻を半分出す行為」って 何を指しているのでしょうか?」
るる「公然わいせつプレイ?」
せんせー「この当時、 男の子の「腰パン」が流行っていたのよ」
ぶちょー「単なる流行のファッションすら 「理性や羞恥心を失っている」って・・・」
るる「なんか、老害ジジイが若者に ケシカランって言ってるだけみたい・・・」
ぶちょー「ちなみに、M氏はこうした若者の 脳波を測定したのですか?」
せんせー「いえ、一切行っていないわよ」
ぶちょー「えーっ!?」
せんせー「これはすべて、M氏の主観に基づく レッテル張りなのよ」
せんせー「著作でも『簡易脳波計がなくても、見た目だけでその子供がゲーム脳であるという見当をある程度つけられる』と言っているわ」
ぶちょー「脳波を測定していないのに、 「脳の異変」を決めつけているって・・・」
せんせー「そう、本来は脳波計による測定で 「β波が低下、α波が活性化」を確認し、」
せんせー「そういった状態を「ゲーム脳」とする 論理構成のはずだった」
せんせー「しかし、M氏は「見た目だけ」で 「ゲーム脳」と次々と決めつけていったの」
せんせー「つまり、M氏の主観こそが 「ゲーム脳」診断の基準なのだと 示しているのよ」
せんせー「このことは、エセとはいえ科学的な構造の 「ゲーム脳」理論自体を、」
せんせー「自ら、非科学的な ”主観” 言説へと 貶めてしまうことになったのだけど、」
せんせー「ま、当のM氏ご自身が 気付いていないみたいだけどね」
ぶちょー「・・・なるほど」
せんせー「ただ、M氏が自由自在に 「ゲーム脳」の認定を行えることは、 かなりヨロシクナイことでね・・・」
ぶちょー「気に入らない若者は 片っ端から「ゲーム脳」認定ですからね」
せんせー「これが単なる老害の「お気持ち表明」なら 「個人の感想」で片づけられるところ、」
せんせー「「ゲーム脳」は一応は 科学の皮をかぶったモノとして 扱われていたからね」
るる「皮かぶりはよくないとおもいます」
せんせー「しかも、「ゲーム脳」という概念には 多分に否定的・侮蔑的な意味合いが 込められている訳だし」
せんせー「そんな、相手を侮蔑する「レッテル」を M氏が自由自在に貼ることができる状態」
せんせー「しかも、そんなM氏の言説を メディアは挙って積極的に持ち上げている」
せんせー「これが意味するところの 恐ろしさがわかるかしら?」
ぶちょー「・・・はい」

〇学校の部室
せんせー「さて、そんな感じで 自由自在に「ゲーム脳」認定できるという」
せんせー「ある意味 ”無敵” なM氏だけど、」
せんせー「氏は積極的に、少年犯罪の加害者を 「ゲーム脳」呼ばわりしていくのよ」
せんせー「そして、「ゲーム脳」こそが 近年増加する少年犯罪の要因であるとね」
ぶちょー「ええと、少年犯罪って この時期に増加していたんですか?」
せんせー「いえ、統計上は減少傾向にあったわ」
せんせー「それこそ、テレビゲームが開発される前と 比べて、明らかに減少しているのよ」
ぶちょー「じゃあ、これもウソ・・・」
せんせー「この時期、テレビのワイドショーが 少年犯罪をセンセーショナルに 扱い続けていたため、」
せんせー「総数こそ少ないけど、それ以前よりも 視聴者の印象に残るようになっていた」
せんせー「その現象につけこんで、M氏は 少年犯罪と「ゲーム脳」を 巧みに結びつける言説を繰り返していたの」
せんせー「視聴者にとっては 頻発しているように見える少年犯罪、」
せんせー「あたかもそれは 「ゲーム脳」によって引き起こされたと 言わんばかりにね」
ぶちょー「それって、根拠は一切ないですよね?」
せんせー「ええ、それでも メディアの発信ということで 信じる視聴者も多かったのよ」
せんせー「このようにして、M氏は 社会での好ましくない事故・事件を」
せんせー「何でも「ゲーム脳」と結びつけていくのよ」
ぶちょー「ちなみに、M氏って、事件の当事者の 脳波を測っていたのですか?」
せんせー「いいえ、測定は一切行っていないわよ」
せんせー「それどころか、直接に会ったことすら ないと考えられるわ」
ぶちょー「なのに・・・」
せんせー「そう、結局のところ、M氏はね・・・」
せんせー「著作で述べた「見た目」すら飛び越して、 印象だけで「ゲーム脳」認定をしていたの」

〇学校の部室
せんせー「唐突だけど 「JR福知山線脱線事故」って知ってる?」
るる「しらないです・・・」
ぶちょー「名前だけは・・・」
せんせー「ま、だいぶ昔の事故だから仕方ないわね」
せんせー「「JR福知山線脱線事故」は、 2005年4月に、JR西日本の福知山線で 発生した列車脱線事故のこと」
せんせー「乗客と運転士合わせて107名が死亡、 562名が負傷という、」
せんせー「日本の交通機関の事故として、 トップクラスの被害を起こした事故なのよ」
ぶちょー「ええと、その事故が・・・」
せんせー「M氏は、この事故を引き起こした 23歳の運転士が「ゲーム脳」と考えられる という言説を展開したのよ」
ぶちょー「えっ!?」
せんせー「これだけ凄惨な大事故だったので、 事故調査委員会は、再発防止のために 2年もの歳月を費やして原因究明に動いた」
せんせー「それこそ、列車の設備・機能面から 運転士のパーソナルな面まで ありとあらゆることを調査していたのよ」
せんせー「その一方、M氏の発言はというと、 翌日の新聞取材に対し答えたものであり、」
せんせー「事故の情報は ほとんど明らかになっていない時点のもの」
せんせー「つまり、根拠もロクになく恣意的に 「ゲーム脳」と運転士を結びつけたのよ」
せんせー「これは、大事故の真相を知りたいという 被害者の方やそのお身内の方にとって、」
せんせー「あまりにも無責任な発信であると 言わざるを得ないわ」
るる「やっぱり、脳波とってないんですよね・・」
せんせー「ええ、脳波どころか顔すら見たことないと 考えられるわよ」
ぶちょー「にもかかわらず、どうしてM氏は そんな発言をしてしまったのですか?」
せんせー「ここからは完全に想像になるのだけど、」
せんせー「全ては、M氏の虚栄心によるものだったと 考えられるわ」
せんせー「社会を揺るがす若者の言説は全て 我が「ゲーム脳」理論で説明できるという トンチンカンな見栄が根底にあったのかと」
ぶちょー「でも、その理論自体が 主観的かつデタラメだったと・・・」
せんせー「そう、それでも極限まで肥大化した 虚栄心に突き動かされて、」
せんせー「若者にまつわる事件には 全てしゃしゃり出て、 無理やり「ゲーム脳」と結びつけていった」
ぶちょー「あのー・・・」
ぶちょー「M氏はそれで満足かもしれませんが、」
ぶちょー「情報を受け取る側がそれを真に受けたら 大変なことになりますよね?」
せんせー「そう、次に紹介するエピソードこそ、」
せんせー「情報の受け取り手のことを 何も考えていないM氏の」
せんせー「傲慢で無神経な様が はっきりと示されているのよ」

〇学校の部室
せんせー「2004~05年ごろのことだけど、 M氏は各地の講演で 「自閉症=ゲーム脳」説を展開したのよ」
せんせー「Wikipedia にも、M氏の発言として、」
せんせー「『最近、自閉症の発症率が100人に1人 = 1%と増えているのは、ゲーム脳のせい──」
せんせー「先天的な自閉症の数は変わらないので、増えた分はゲーム脳による後天的自閉症だ』」
せんせー「と載せられているわよ」
ぶちょー「自閉症と「ゲーム脳」って 関係があるのですか?」
せんせー「結論から言えば・・・ありえない」
せんせー「そもそも「後天的自閉症」なんて 存在しないわよ」
せんせー「自閉症は生まれつきの障害、 これは本当に基本的な知識なの」
せんせー「だから、「ゲーム脳」という後天的な ゲームの習慣・環境に依るものとは、 自閉症は一切関わり得ないのよ」
ぶちょー「またまた、嘘なんですね・・・」
せんせー「これには、無神経なバカ作者も さすがに怒っちゃったのよ」
ぶちょー「この嘘の部分にですか?」
せんせー「嘘に不快感を覚えたりもしたようだけど、」
せんせー「最大の問題は、M氏の無知さ具合ね」
せんせー「自閉症のことを 原因すら知らないレベルの浅薄な知識で、」
せんせー「自身の用意した「ゲーム脳」という 侮蔑的・否定的なレッテルを 無神経に貼っていくM氏の言説は、」
せんせー「さすがに我慢ならなかったようね」
るる「・・・たしかに、ひどいかも」
ぶちょー「このM氏の発言って、 大問題になったりしなかったのですか?」
せんせー「一部では、けっこう問題視されていたわよ」
せんせー「特に、自閉症児の親で組織される 日本自閉症協会(現・東京都自閉症協会) からは、」
せんせー「M氏に対して正式に抗議文書が 送られているわ」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:⑤.経時、そして信念

コメント

  • 話を聞けば聞くほど、M氏は相当ヤバいですね😖
    ただ自分が気に入らないものは全部ゲーム脳、るるちゃんの言うとおり、まさに老害😇こんなクレーマーたまにいるよ、、
    しかも、何の根拠もない理論で、亡くなった方や障害を持たれ方を侮蔑する発言をするなんて、まさに愚の骨頂😡
    M氏自身が脳波とカウンセリング受けた方がいいと思います😓彼を増長させたメディアにも責任感じてほしいですね。

  • なるほど学びがありますね!
    「ゲーム脳」というキャッチーな差別用語を作ったのが唯一の功績ですね。
    簡単に使えて、ラベル付けできて意味も用語だけで解る。
    今も「スマホ脳」という応用がきき、汎用性が高い。
    一方で将棋AIにより天才棋士が誕生し、何兆円もの市場規模になったゲームの効用は大きいですね。
    彼自身もゲームのお陰で儲かったのではないですか? 一番ゲームの恩恵を受けてるのは当人でしょう。

  • ゲーム脳とはM氏の虚栄心から生まれたものという考えは納得しました!
    それにしてもM氏の暴走は凄いですね😓バズりたいからと放火を繰り返す人間みたいなものか…。
    今回の作品も楽しみながら、考えさせられました。面白かったです😊

コメントをもっと見る(4件)

成分キーワード

ページTOPへ