双つの顔のお狐様

北條桜子

第4話 同居スタート!(脚本)

双つの顔のお狐様

北條桜子

今すぐ読む

双つの顔のお狐様
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇ファンシーな部屋
遠山陽奈子「下ろして! 下ろしなさいよー!」
満弦「ジタバタ暴れるでない。危ないであろう」
  お狐様は至極当然のようにベッドまでやって来ると、その上に放るようにして私を下ろした。
遠山陽奈子「きゃっ!」
遠山陽奈子「放りなげるなんてひどい!  荷物じゃないんだから!」
満弦「お主が下ろせ下ろせというから、そうしてやったというのに」
満弦「まあよい」
満弦「そのやかましい口は、早々に塞いでしまおうな」
  間髪入れず、のっしり覆いかぶさってくるお狐様。
  少しだけ細められた瞳に熱がこもっているように見えて、一瞬だけドキっとする。
遠山陽奈子(で、でも、だからって)
満弦「今度こそ契りの儀式を──」
遠山陽奈子「するわけないでしょッッ!!!!」
  ガンッ!
  思いっきりお腹に力を入れて上半身を起こした私のおでこが、お狐様のおでこにスマッシュヒットした。
満弦「ぬぐっ・・・!?」
  想像以上の衝撃と鈍い痛みが広がって、涙目になった私の耳に、お狐様の悶絶が届く。
  それからすぐに、打って変わって可愛らしい声で喚き散らす声が聞こえてきた。
満弦「おっ、お主は、一度ならず二度までも・・・・・・!」
満弦「しかも、神に頭突きじゃとう!?」
満弦「おまけに、なんちゅー石頭・・・!」
  大きな金色の目にうっすら涙をためて、盛大に尻尾を逆立てながらこちらを睨むお狐様。
  その様子は、狐というより子犬のようでちょっぴり可愛い。
  だけど、ここで怯むわけにはいかない。
遠山陽奈子「あ、あなたが勝手に話を進めるからいけないんでしょ!」
遠山陽奈子「そりゃ、私だってまさか泣いて子狐に戻っちゃうとは思わなかったけど」
満弦「そんなわけがあるか!」
満弦「先ほどの口づけ程度では補充できる霊力はたかが知れておる」
満弦「あやかしとの一戦で力を使い果たしただけじゃ」
満弦「だからとっとと、続きをしようと思っておったというに・・・」
遠山陽奈子「え? 今なんて?」
満弦「そもそも、神の決めたことには、ありがたく従うが人間というものではないのか?」
遠山陽奈子「なっ・・・!」
遠山陽奈子「いくら神様だからって何でもホイホイ言うこと聞くわけないでしょ!」
満弦「何でもすると懇願したくせにか」
遠山陽奈子「それは、さっきのキスでチャラだから」
満弦「何故そうも頑なに拒む? 」
満弦「神への嫁入りとは、本来誉れあること! 年頃の娘ならば喜ぶが道理ではないのか!?」
遠山陽奈子「いつの時代の話よ!」
遠山陽奈子「それに私、あなたのこと何も知らないし」
遠山陽奈子「あなただって、私の名前すら知らないじゃない」
遠山陽奈子「そんな2人が結婚なんて、変よ変!」
満弦「なるほど、それは一理ある」
  そう言って、お狐様は腕を組んで目を閉じた。
遠山陽奈子(もしかして、わかってくれた・・・・・・?)
満弦「娘、名は?」
遠山陽奈子「へ?」
遠山陽奈子「陽奈子、だけど」
満弦「あいわかった」
満弦「では陽奈子。 今夜からわしはここに住むことに決めたぞ」
遠山陽奈子「は?」
満弦「共に暮らし、互いへの理解を深め、一日も早く良き夫婦となろうな」
遠山陽奈子「な・・・なっ・・・!?」
満弦「言っておくが、これは最大の譲歩。 断ることは許さぬぞ」
遠山陽奈子(なんっで、そうなるのーーー!?)
  愛らしい顔立ちからは信じられないくらい、意地悪な笑みを浮かべるお狐様。
  かくして、押しかけ神様・満弦と私の、奇妙な同居生活が幕を開けるのだった。

〇ファンシーな部屋
遠山陽奈子「ん・・・なんか、あつい・・・?」
遠山陽奈子(お腹のあたりがモフモフする・・・?)
  翌朝。
  午前10時も過ぎようという頃、ようやく目を覚ました私は、ボーっとしながら布団をはいで、ギョッとした。
満弦「んむぅ・・・っ」
遠山陽奈子(なんで一緒の布団に入ってんの!?)
  夕べ、押し切られる形で満弦の同居を承諾した後、確かに私は座布団と毛布で床に寝床を作ったはずだ。
  しかし今、満弦は私の眠る布団の中にすっぽり丸く収まって、すぴーすぴーと神様らしからぬ寝息を立てている。
満弦「んんっ・・・さむい、ぞ・・・」
  ぶるっと体を震わして、私にピッタリとくっついてくるではないか。
遠山陽奈子「っっ・・・!」
遠山陽奈子(かっ、かわいい)
  大人の姿だと、どこか“畏れ”を漂わせる満弦も、今は可愛らしい子狐妖怪にしか見えない。
遠山陽奈子(ずっとこうなら、いいのに・・・とか、思ったりして)
  そんなことを考えながら、私は眠っている満弦の頭をそっとなでてみたりした。
  すると。
満弦「誘っておるのか? ならば遠慮はせぬが」
  そう言って、すり寄るように満弦が私の胸に顔をうずめる。
遠山陽奈子「あっ、朝から」
遠山陽奈子「何考えてるのよーーーッ!!」
満弦「のわっ!?」
  油断しまくりの満弦を、突き飛ばす勢いでベッドから叩き出したのは言うまでもなかった。
遠山陽奈子(前言撤回。小さくてもやっぱり可愛くない)
遠山陽奈子(こんなんで同居とか不安しかないんだけど)
  その後も──

〇桜並木
満弦「仮にも夫となる相手と外出しようというのに、何故もっと着飾らぬ?」
遠山陽奈子「うるさいなぁ」
遠山陽奈子「フィールドワークの下見だって言ってるのに勝手についてきたのは、そっちでしょ?」
遠山陽奈子「文句があるなら、大人しく家で待ってればいいのに」
満弦「これは互いを良く知り、仲を深めるための同居」
満弦「わしは一秒たりとも無駄にする気はない」
遠山陽奈子「だったら私のことを尊重してよ」
満弦「だからこうして黙ってついて来てやっているではないか」
遠山陽奈子(全然黙ってませんけど!?)
  満弦は終始この調子である。
遠山陽奈子(朝ご飯の最中だって味が濃いとか、もっと出汁に気をつかえとか言うし)

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第5話 2度目のキス

成分キーワード

ページTOPへ