15話 自業自得(脚本)
〇学校の屋上
〜?年前〜
華城みくる「赤城くんって一匹狼でカッコイイわよね〜」
赤城「チッまたお前か」
赤城「屋上に入ってくんな」
華城みくる「屋上は皆のものだし」
華城みくる「赤城くんがいる限り来るわよ」
赤城「しつこい奴だな」
華城みくる「愛情深いって言いなさい」
華城みくる「私の名字、華城って言うんだけど」
華城みくる「赤城くんと“城”の部分がお揃いね」
華城みくる「なんだか運命感じない?」
赤城「ただの偶然だろ」
華城みくる「も〜冷たいんだから」
華城みくる「そういうところが好き♡」
華城みくる「いつも柵に寄り掛かって校庭見下してるけど」
華城みくる「それそんなに楽しい?」
赤城「やることがないだけだ」
華城みくる「落ちたらどうするの?」
赤城「落ちる時は落ちればいい」
華城みくる「潔い〜ますます好き♡」
赤城「屋上から突き落とすぞ」
華城みくる「赤城くんに落とされるなら光栄よ」
華城みくる「ただその前にプレゼント受け取ってほしいな」
華城みくる「はいっ、お誕生日おめでとう!」
赤城「全然誕生日じゃないが・・・?」
華城みくる「細かいことは気にしないの」
華城みくる「開けてみて?」
ガサッ
赤城「・・・赤いピアス?」
華城みくる「赤城くんに似合うと思って!」
華城みくる「赤城だけに!」
赤城「馬鹿にしてんのか」
華城みくる「私は本気よ」
赤城「要らない、返す」
華城みくる「意地でも受け取ってもらうわ」
華城みくる「それは結婚指輪みたいなものよ」
華城みくる「今日という日をパートナー誕生の記念日にしたいの」
華城みくる「私と契約してくれる?」
赤城「・・・・・・」
赤城「何が目的だ?」
赤城「俺はお前にやる金も好意も無いが」
赤城「何の得があって絡んでくる?」
華城みくる「私は赤城くんに血を与えられるだけで幸せなの!」
赤城「偽善者気取りが」
華城みくる「本当に赤城くんを思ってのことよ!」
華城みくる「それに契約から始まる恋だってあるでしょ?」
華城みくる「赤城くんと血も心も繋がりたくて・・・!」
赤城「ほら結局期待してるじゃないか」
赤城「自分のことしか考えてないな」
赤城「肉体関係だけでいいとか言ってたくせに」
赤城「強欲な奴は全てなくすぞ」
華城みくる「そ、それはあなたの方でしょ!?」
華城みくる「養って貰う立場なんだから」
華城みくる「ちょっとは妥協しなさいよ!」
華城みくる「私がいなきゃ生きていけない弱虫のくせに!!」
赤城「・・・やっぱりお前とは合わないみたいだな」
華城みくる「やっやだ、行かないで・・・!」
赤城「あと言いづらかったんだが、お前の血」
赤城「癖が強くて俺はちょっと苦手だった」
赤城「ごめんな」
華城みくる「!!」
華城みくる「な、なっ・・・」
華城みくる「今更何言っても無駄よバアアカ!!」
赤城「グハァッ!!」
華城みくる「吸血鬼なんか嫌い!!大ッ嫌い!!」
赤城「悪かった、悪かったから・・・!!」
〇綺麗な部屋
華城みくる(・・・あれからどのくらい経ったかしら)
華城みくる(だらだら生きてると感覚が鈍ってくるもので)
華城みくる(嫌いになんてなれなかったし)
華城みくる(まだいけるかもと思ってしまう)
華城みくる(もっと他に良い男がいるはずなのに)
華城みくる(なんでこんなにシュウくんが好きなんだろう)
華城みくる(今はそれすらよく分からない)
コンコン
羊山「みくるお嬢様、ターゲットを捕らえました」
華城みくる「ふふ、まんまと引っ掛かったわね」
羊山「このお方、玄関に入るなり閃光手榴弾を投げようとしたので」
羊山「話し合いを持ち掛けたところ素直に応じました」
華城みくる「ご、ご苦労だったわね」
藍原しずく「トマト型に偽装してたのに」
藍原しずく「瞬時に閃光手榴弾だと見破るとは」
藍原しずく「この下僕なかなかやるね」
華城みくる「執事を下僕って呼ぶな!!」
藍原しずく「執事?あ、そっか」
藍原しずく「執事だから“羊”山なんだ」
羊山「は、はは・・・」
藍原しずく「はは」
藍原しずく「何が面白いんだろ」
華城みくる「うちの執事イジらないで!?」
藍原しずく「で、何の真似」
藍原しずく「本当は武器で反撃できるけど」
藍原しずく「目的が分からないから応じてあげてるの」
華城みくる「え〜考えて分からない?」
藍原しずく「んん・・・」
藍原しずく「私も加えて3Pをしようと・・・?」
華城みくる「あんたの頭って結構お花畑ね」
華城みくる「あの動画はフェイクよ」
藍原しずく「え?でもシュウさんが縛られて」
華城みくる「シュウくん役は羊山がやった」
羊山「なかなか悪くなかったです(感想)」
華城みくる「わざと外の病院の看板を映り込ませたたのは」
華城みくる「場所を特定できるようにする為よ」
華城みくる「あんたが本当にシュウくんを想っているのか試したかったの」
華城みくる「弾む息、滲む汗・・・急いで来たことが分かる」
華城みくる「どうやら想いは本物みたいね」
藍原しずく「何姑ぶってるの」
華城みくる「姑じゃないわ」
華城みくる「今から私は嫁になるの!」
華城みくる「その為に邪魔者を排除しなきゃいけない」
華城みくる「あなたにはシュウくんから離れてもらうわ」
華城みくる「今からその為の話し合いをしましょう」
藍原しずく「くだらない」
藍原しずく「爆発させれば全部解決」
華城みくる「羊山!こいつから武器奪って!!」
藍原しずく「あーそんなことしたら起爆スイッチ押すよ」
華城みくる「あと高級トマトジュース出してやって!」
藍原しずく「それならこないだスーパーで買った」
華城みくる「フッ、そこらのやつとは格が違うわよ」
華城みくる「人気No.1のトマト農家から直接取り寄せたんだから」
華城みくる「トマト丸ごと絞り立ての」
華城みくる「一本一万円の逸品よ」
藍原しずく「是非夜明けまで語り明かそう」
華城みくる「いや2時間程度で終わるわよ・・・」
〇綺麗な部屋
ゴクゴク
藍原しずく「うあぁーすごい、良い」
藍原しずく「脳のてっぺんからつま先まで」
藍原しずく「じーんと痺れるような快感」
藍原しずく「感覚が冴え渡る」
藍原しずく「無限にキメられる」
藍原しずく「楽園にトベる」
藍原しずく「まさに母なる大地のヤク・・・」
華城みくる「例えが悪いのよ例えが」
華城みくる「その白いソファ高いんだから」
華城みくる「汚したら弁償してもらうわよ?」
藍原しずく「あ、純白の天使が見えてきた・・・」
華城みくる「幻覚見てんじゃないわよ」
〇綺麗な部屋
華城みくる「私は昔からシュウくんを気にかけてた」
華城みくる「無口でぶっきらぼうで」
華城みくる「人を寄せ付けようとしない」
華城みくる「子供ながらに何か闇のようなものを感じてた」
華城みくる「残念ながらその予感は当たっていたわ」
華城みくる「よく見るとシュウくんには沢山の傷があったの」
華城みくる「吸血鬼の身体はすぐ回復するはずだから」
華城みくる「回復を待たずに新たな傷ができている」
華城みくる「よっぽどの頻度で傷付けられている・・・」
華城みくる「そう、人間の母親から虐待を受けてたの」
華城みくる「パートナーの流れで結婚して生まれた」
華城みくる「吸血鬼と人間のハーフにはよくある話で」
華城みくる「私の場合“特別”だったから」
華城みくる「愛情を一身に受けて」
華城みくる「裕福な暮らしをさせてもらってるけど」
華城みくる「“普通”吸血鬼の子供は疎まれるの」
華城みくる「吸血鬼のことを受け入れたつもりでいた人間が」
華城みくる「いざ産んでみると後悔し出す」
華城みくる「人間の子供が良かった」
華城みくる「周囲がミルクをあげている中」
華城みくる「自分の子だけ血なんて」
華城みくる「気持ち悪い、醜い」
華城みくる「産まなきゃ良かったって・・・」
華城みくる「残酷よね、でもそれが現実なの」
華城みくる「シュウくんは現実に苦しめられてきた」
華城みくる「当時の私は何も救えなかった」
華城みくる「だから今からでも幸せにしてあげたいの」
華城みくる「私が母親になって吸血鬼の子供を産んで」
華城みくる「いっぱい愛し合いたいの・・・」
華城みくる「うふ、うふふふ・・・♡」
ちゅーーー
藍原しずく「おいしーーーい」
華城みくる「いや話聞きなさいよ!?」
藍原しずく「んわっ」
バシャッ
(トマトジュースこぼす)
華城みくる「ギャーッ私のソファが!!」
藍原しずく「自業自得、私は知らない」
藍原しずく「・・・シュウさんと拗らせたことも」
藍原しずく「私は何も関係ない」
藍原しずく「あなただけが引きずってることでしょ」
藍原しずく「もう一度告白したいなら早くすればいいのに」
藍原しずく「私に負けるのが怖いからって」
藍原しずく「話し合いなんて大袈裟な真似して」
藍原しずく「弱虫」
華城みくる「なっ・・・!?」
華城みくる「選ばれたからっていい気になって!!」
華城みくる「好き放題言ってんじゃないわよこのクソガキ!!」
羊山「『そして私の恋は終焉を迎えたのだった。』」
華城みくる「羊山も何読書始めてんの!?」
羊山「ご歓談が長引きそうだなと・・・」
華城みくる「話はもう終わりよ」
華城みくる「こいつ地下室に閉じ込めて!!」
〇小さい倉庫
羊山「冷房もトマトジュースも本もあるので」
羊山「死なないとは思いますが・・・」
藍原しずく「あの我儘お嬢様の八つ当たりに付き合って」
藍原しずく「しばらくここにいろってことでしょ」
羊山「察しの良い人質のようで・・・」
藍原しずく「トマトジュース飲めるから構わないけど」
藍原しずく「みくるさんってずっとあんな感じ?」
羊山「えぇ、恋愛のことになると余計にご乱心のようで」
羊山「私にはあの男のどこが良いのかさっぱりですが」
藍原しずく「私もそう思う」
藍原しずく「でも人って何を好きになるか分からないものだよ」
藍原しずく「私もトマトジュースとか吸血鬼が好きになるなんて思わなかったし」
藍原しずく「こんな場所まで駆け付けた自分が不思議」
藍原しずく(寝取られてないって分かった時)
藍原しずく(安心すると同時に)
藍原しずく(ちょっと惜しいと思ったのも不思議)
藍原しずく(虐待の話も本名も知らなかったから)
藍原しずく(色々知ってるみくるさんの方が)
藍原しずく(シュウさんを幸せにできるのかもって思ったり)
藍原しずく(私がシュウさんと出会わなければ)
藍原しずく(みくるさんは幸せだったのかもって思ったり・・・)
藍原しずく「はぁ、最近は会話だけじゃなくて」
藍原しずく「思考も騒がしい、疲れる」
藍原しずく「いっそ無になりたい」
羊山「時には無になることも必要だと思いますが」
羊山「ずっと無でいるというのは」
羊山「死と同義だと私は思いますよ」
藍原しずく「ふぅん、じゃあ今」
藍原しずく「私、すごく生きてるんだね」
〇高級一戸建て
赤城「流石に生きてるよな?」
赤城「昼ドラの修羅場みたいに」
赤城「揉み合いの末に刺し殺して」
赤城「庭に遺体埋めたりしてないよな?」
赤城「みくるよりしずくの方が殺りかねないし・・・」
赤城「あーストレスで胃が痛くなってきた・・・」
ガチャッ
華城みくる「あら、シュウくんどうしたの?」
華城みくる「私に会いたくないんじゃなかったの?」
赤城「とぼけるな」
赤城「しずくはどこにいる?」
華城みくる「さぁ何のことだか・・・」
赤城「答えないと本当に殴るぞ」
華城みくる「シュウくんに殴られるなら本望よ♡」
赤城「戯言も言えないくらいボコボコにするぞ」
華城みくる「シュウくんにそんなことできるわけないじゃない」
赤城「今ならできるかもしれん」
華城みくる「そんなにあの子が大事なわけ?」
赤城「いや、そこまで大事にできてない」
赤城「でもなるべく契約を持続させたい」
赤城「俺のせいで誰かが消えるのはもう嫌なんだ」
華城みくる「手遅れよ、あの子は去っていったわ」
赤城「え?なんで・・・」
華城みくる「私の圧倒的美貌に敵わないと気付いてしまったから」
赤城「本当の事を言え」
華城みくる「本当は」
華城みくる「吸血鬼との具体的な将来について話してあげたら」
華城みくる「途端に怖くなっちゃったみたい」
華城みくる「例えば世間とか生活とか」
華城みくる「子供とか?」
赤城「!!」
赤城「よくも余計なことしてくれたな」
華城みくる「だって長い時間を過ごしておいて後々駄目になるより」
華城みくる「早めに駄目か確認して次行った方がよくない?」
華城みくる「次っていうのは私のことなんだけど♡」
赤城「お前・・・!!」
(手を振り上げる)
赤城(いや、無意味か)
シーン・・・
華城みくる「ほらやっぱり殴れないじゃない」
赤城「お前を殴ったところであいつは戻ってこない」
赤城「俺は自業自得でまた一人になるだけだ」
華城みくる「一人って・・・」
華城みくる「私といるより一人がマシってこと!?」
華城みくる「そんなに私が嫌い!?」
華城みくる「私はこんなにシュウくんのことが好きなのに!!」
赤城「嫌いじゃない」
赤城「けど好きでもない」
華城みくる「じゃあ吸血鬼じゃなかったら好きになってた!?」
赤城「吸血鬼だから分からない」
赤城(吸血鬼で悪かった)
赤城(今までの俺ならそう謝っていただろう)
赤城(だがこれは気持ちの問題だ)
赤城「好きになれなくてごめんな」
華城みくる「謝るくらいなら血吸って!!」
華城みくる「嘘でも美味しいって言って!!」
赤城「それは吸血鬼としてできない」
赤城(吸血鬼であることに誇りを持たなければ)
赤城(醜い方に向かってしまう)
赤城「お前の血も、お前自身も」
赤城「気に入る吸血鬼がきっといるはずだ」
赤城「諦めず見つけろ」
赤城「その為に血フレやってるんだろ」
華城みくる「何よ、何なのよ・・・」
華城みくる「ボッコボコにして、嫌いにさせてほしかったのに」
華城みくる「ますます好きになっちゃうじゃない・・・」
華城みくる「はぁ、ほんとシュウくんって」
華城みくる「優しくないようで優しいんだから」
ぎゅっ
赤城「ちょっ、みくる・・・」
華城みくる「一生あなたを愛してる」
華城みくる「だからあなたも自分を愛してね」
華城みくる「もう一人で苦しまないで」
華城みくる「二人でどうか幸せになって」
赤城「あぁ、ありがとう」
赤城「みくるも幸せにな」
華城みくる「言われなくても幸せになるわよ」
赤城「じゃあ、またな」
華城みくる「うん、また」
〇ゆるやかな坂道
赤城(・・・また最初からか、パートナー探し)
赤城(向こうから来てもらうか)
赤城(襲うことでしか出会いようがないし)
赤城(やっぱりしずくをダメ元で引き止めるしか・・・)
赤城(あれ、俺もいつの間にこんな)
赤城(しずくに執着してるんだ)
赤城(これじゃみくると一緒じゃないか)
赤城(はは、駄目だな)
赤城(あいつにもあいつの幸せがある)
赤城(トマトジュースがあれば十分幸せに生きていけるだろう)
赤城(俺といない方が幸せだろう)
赤城(吸血鬼から離れた世界で)
赤城「元気でな、しずく」
つづく🍅