勇者にはほしい才能がある

東龍ほフク

38/オージュ・ウォゲはイイものを読みたい(脚本)

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〇教会の中
シグ「おぉい、俺だよ! シグだよ! 開けてくれや!!」
オージュ・ウォゲ「なんでお前、まだ外にいたんだよ‥‥‥」
シグ「あっちの方で戦ってて、気がついたら 皆いねぇんだもん、クソっ!」
オージュ・ウォゲ「おぉ、今 開ける‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「それよか、お前‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「私に押し付け続けた酒場のツケ、 払う気あるのか?」
シグ「はぁ?!?!」
シグ「今、ソレ訊く?!?!」
オージュ・ウォゲ「この際、ちょうどいいと思って」
シグ「何が『ちょうどいい』だ、コンニャロ!」
オージュ・ウォゲ「何で、私は酒を嗜まないのに お前の酒代のツケ払ってるんだっけ‥‥‥?」
オージュ・ウォゲ「いつからさぁ、そういう流れに‥‥‥‥」
シグ「わかった! わかったって! 今度まとめて払うって!」
シグ「あっ! ちょ‥‥‥」
シグ「‥‥‥‥クソッ!!!!」
オージュ・ウォゲ「あ、ちょ‥‥‥すまん」
オージュ・ウォゲ「いや、そんな‥‥‥ 開けない気はなかったから‥‥‥」
マッチョ兵士「オージュさぁん!  ちょっとコッチ、手伝ってくんなぁい?」
オージュ・ウォゲ「ん? あぁ‥‥‥」
オージュ・ウォゲ((まぁ、あぁいうクズは死なないもんだろう))

〇綺麗な教会

〇けもの道
  結論から言うと、
  シグは教会の先の森の中で
  魔物に半分食われて絶命していた。
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥」
  無論、人の死体を見るのはこれが
  初めて‥‥‥というわけではなかったが
  “見知った顔”が“自分のせいで”死体になった
   ── と、いうのは初めての事だったので
オージュ・ウォゲ「ふむ‥‥‥絶妙に“初めての感情”だな、 これは‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「罪悪感?」
オージュ・ウォゲ「埋葬してあげたほうがいいんだよな? コレ」
  少し前まで喋っていた相手を埋めると
  いうのは、どうにも不思議な気分であった。
  帰還後に一応、シグのご家族に
  報告しには行った。
  余計なことは言わず、ただ
  「魔物に食われて死んだ」とだけ。

〇結婚式場前の広場
  それから、何やかんやあって。
オージュ・ウォゲ((【魔物討伐戦死者の弔い会】‥‥‥))
オージュ・ウォゲ((行ったほうがいいよなぁ?))
オージュ・ウォゲ((取材がてら、足を伸ばすか‥‥‥))

〇墓地
オージュ・ウォゲ「お悔やみ申し上げます シグの奥様‥‥‥」
シグの奥さん「いえいえ、オージュさん オージュさんは悪くありませんから‥‥‥」
オージュ・ウォゲ((『閉め出したから』と知ったら、  この態度どうなるんだろうなぁ))
オージュ・ウォゲ((‥‥‥というか、奴の酒場のツケを  請求するのはやはりマズイかなぁ‥‥‥))
シグの奥さん「‥‥‥そういえば、今からウチの娘が 『パパへのお別れの手紙』を読み上げるので よかったら聞いていって下さいませんか?」
オージュ・ウォゲ「── えぇ」
オージュ・ウォゲ((酒場のツケ、めっちゃ請求したい‥‥‥))
司会「── それではこれより、遺族の方々による 『故人の方へのお別れの挨拶』を‥‥‥」
シグの娘「『だいすきな おとうさんへ』」
シグの娘「『おとうさん、まずは ごめんなさい』」
シグの娘「『おとうさんが出かけるまえ、もっと  いってきますのチューをしておけば  よかったなと思いました』」
シグの娘「『いつも あたりまえのように  そばにいてくれた おとうさんが  いないのは、とても‥‥‥』」
オージュ・ウォゲ((ちょっと待て‥‥‥))
オージュ・ウォゲ((まずい‥‥‥))
オージュ・ウォゲ((めっちゃ泣ける!!!!!!))
オージュ・ウォゲ((くっ‥‥‥! なんて、胸を打つ切なくて  可愛くて悲しいお手紙だ‥‥‥!!!))
街の娘「『愛する旦那様へ ──』」
オージュ・ウォゲ((‥‥‥‥‥‥))
オージュ・ウォゲ((うーん。この手紙も名文である‥‥‥))
オージュ・ウォゲ((‥‥‥‥‥))

〇黒
  この人達がこんな“素敵な手紙”を
  書けたのは
  “大事な人”が死んだからだよな‥‥‥。

〇墓地
  男共が死ななかったら、
  彼女らの熱くて切ない、切実な気持ちが
  こうして形になる事はなかったからなぁ。
オージュ・ウォゲ((‥‥‥‥‥))
  そういや、『いい物語』には
  “悲劇”がつきものだしな。
  ‥‥‥‥‥
  私にも、何か悲劇が起きれば
  いい刺激になって良い作品が書けたりするかな。
  親が死んでも、さほど感情が
  動かなかったから無理な話か。

〇空

〇宝石店
キン・ユルシャ「‥‥‥なぁ」
キン・ユルシャ「“小説を書けなくなった俺”って、 そんなに無価値なの?」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥‥」

〇お化け屋敷
キン・ユルシャ「‥‥‥そもそも、何でアンタこんなに 俺によくしてくれたんですっけ?」
キン・ユルシャ「俺とあんた、そんなに仲良かったんです?」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「もう、1周まわって面白いんだよなぁ」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥」

〇宝石店
オージュ・ウォゲ((‥‥‥‥‥))
  意外と、ショックではあった。
  親が死んだ時よか、心にぽっかりと
  穴が開いたような。
オージュ・ウォゲ((これが“大事な人を失くす”という事か‥‥‥))
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥‥」
  ── 今なら、いつもと違う
  新しいものが書けそうな気がする‥‥‥!

〇坑道
オージュ・ウォゲ「というわけで、私の『水瓶の底の穴』は そんな心境から書けたものなんだよねぇ」
ぼろぼろマモ「‥‥‥‥どおりで、あの本はいつもと比べて 叙情的な文面が多いな、と‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「この私が あんな女々しいキャラを 書けたのは、ナキュを失ったからなんだよ」
オージュ・ウォゲ「やったね!」

〇本屋
  ── で、ふと思った。
  他の人らも“悲劇”を体験すれば、
  誰かや何かを失くせば、
  とても素晴らしい名作・良作が
  生まれるのではなかろうかと。
  一般人であるあの子らですら、
  とても素晴らしい文章を紡いだのだから。

〇坑道
オージュ・ウォゲ「文章作品に限らず‥‥‥さ」
オージュ・ウォゲ「映像作品や立体物‥‥‥劇でも、良いモノが 作られるかもでワクワクするよね」
オージュ・ウォゲ「傷ついた心‥‥‥そこから回復した心から 作られる創造物には、やはり 並々ならぬ思いが作品に反映されるから」
マモ「‥‥‥‥‥‥‥」
マモ「そんな事のために、魔物の生態系を いじったり気候おかしくしたり‥‥‥?」
オージュ・ウォゲ「『そんな事』とはなんだい?」
オージュ・ウォゲ「君ら、読み専だって嬉しいはずだろう? 良質な創作物を消費できて」
マモ「そんな、故意的な不幸から出来たモンなんざ‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「そうそう。 ノココ・エミュダ 知ってる?」
オージュ・ウォゲ「農業系エッセイで話題の」
マモ「‥‥‥‥そりゃあ‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「あれ、魔物のせいで右腕を折っちゃって アググ・リシュケ大賞”不参加確定”だったんだけど」
オージュ・ウォゲ「読み書き出来なかったはずの旦那さんが、 奥さんの代筆をするために文字を学んだんだって」
オージュ・ウォゲ「── で、そのついでにノココ先生‥‥‥ 『文字読めなかった旦那』をネタに 新しいエッセイ本を出すんだって〜」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥すごくない?」
オージュ・ウォゲ「魔物のせいでどうなる事かと思ったけど、 賞に応募するわ、NEWエッセイのネタも 爆誕したし」
オージュ・ウォゲ「良かった×2」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥“悲劇や事故”は、創作にとって 『必要悪』だよ」
血を垂らすマモ「‥‥‥‥‥‥」
マモ「私ら、旅の道中に ──」

〇城壁
マモ「『気候変動による大雨』のせいで 洪水が起きて、」
マモ「半分、水没してしまった街に しばらく滞在したんですよ」

〇坑道
マモ「その洪水で家や大事なものを 失くしたり‥‥‥」
マモ「魔物によって奪われた安寧や命すら、 『創作の糧』と‥‥‥?」
オージュ・ウォゲ「うん」
マモ「‥‥‥‥‥!(ㆆ ㆆ)」
オージュ・ウォゲ「その町、どうせ『洪水体験からの復興本』 出して寄付金を募るって!」
オージュ・ウォゲ「楽しみだね! 『故郷が水に沈んだ人の手記』」
マモ「──── ‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「そういや、ヘア・トストローク先生が 自宅で熱中症で亡くなったの知ってる?」
マモ「え゙っ‥‥‥‥!」
オージュ・ウォゲ「でも、そのおかげで他作家による 『追悼アンソロジー小説』が出る事になったよ!」
オージュ・ウォゲ「さすがの大御所の死亡だから、なんとあの チヒィツ・ウォゾやメキーリ・モラランも アンソロ参加するってよ!」
  ※チヒィツ/遅筆で有名な作家
  ※メキーリ/〆切破って逃げる癖がある作家
オージュ・ウォゲ「あの2人がヤル気あるんだってよ?」
オージュ・ウォゲ「ね?  ヘア先生が亡くなったおかげで 生まれる作品があるんだよ?」
マモ「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
マモ「‥‥‥そんなことのために、」
マモ「ギンは執筆時間を割いて、こんな遠方まで はるばる来たのですか」
オージュ・ウォゲ「あ〜‥‥‥それはごめんね? 申し訳ないと思うよ」
オージュ・ウォゲ「─── でも」

〇森の中
オージュ・ウォゲ「そのおかげで、君とギン君会えたじゃない?」
オージュ・ウォゲ「なんやかんや あったんでしょう?」
オージュ・ウォゲ「その経験は、きっと引きこもりがちの ギン君の創作の糧になったはずだよ」

〇坑道
オージュ・ウォゲ「‥‥‥で?」
オージュ・ウォゲ「それでもやっぱり 「王様にチクる」とか言う?」
マモ「‥‥‥‥‥(無視)」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥‥」
マモ「──── !!!」

〇北極点
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥でもさ」
オージュ・ウォゲ「君が死んだら ギン君すごく悲しむだろうし もしかしたら、筆を折るかもだけど‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「もし、そこから立ち直れたのなら ギン君は きっともっと いいものを書いていくと思うよ!」
マモ((‥‥‥‥‥‥))
マモ(ㆆ ㆆ)((俺自身が、))
マモ((奴の作品に 影響あたえちゃうの))
マモ((ヤダな、とか 思って、た けど‥‥‥‥))
マモ「‥‥‥‥ほんと?」
マモ「おれ しんだら、ギンくん もっと イイもん かける?」
オージュ・ウォゲ「うん!」
マモ「‥‥‥‥‥‥」
マモ((じゃあ、いいか‥‥‥‥))
オージュ・ウォゲ「‥‥‥じゃ『暑いからって海水浴を していた時に寒さが戻って、そのまま 凍死した』感じの事故死、という事でね」

〇水中

〇黒
  割と本気で
  「ギン君がイイもん書けるように
  なるのなら、別にいいかな」と思ったけど
  その“イイもん”を、奴の1番のファンである
  この俺が読めないのは
  俺が悔しい。
  それは、おかしい。

次のエピソード:39/軟禁・遮断と……2話目の凡ミス謝罪

コメント

  • オージュ先生?!??!?!マモたん???!!!!!(´;ω;`)
    ……ちょ、時間の都合で後ほどDMにて感想とマモたんぴえんぱぉん送らせていただきます……!(´;ω;`)
    えぇ〜〜先生〜〜カッコイィ〜〜(え)

  • えええええっっ😱
    えええええええっっっ!?
    て言うかギン君は既に知性と言うものを失いかけた経験があるから今更マモたんを失わなくてもおもろい話し書けそうな気が(笑)
    人を失う事で湧き起こるインスピレーションはなんだか他の人ともジャンル被りそうだからマモたんは拾ってあげて下さい!!(笑)

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