1 義兄弟(脚本)
〇男の子の一人部屋
日野ホムラ「良し、準備終わり・・・」
「お義兄ちゃーん!もう行くよー!」
日野ホムラ「あぁ分かってるカガリ!直ぐ行くから!」
俺は日野ホムラ。高校2年生。これと言って目立った所は無いけど、周囲と少し違った所は義妹がいる事だ。
知らない人が親になるのは最初こそ抵抗があったが、父さんに苦労を掛けるのも悪い気がして了承して、今では何の蟠りも無く
過していた。
〇通学路
日野カガリ「あぁ・・・やっとお義兄ちゃんと同じ高校に行ける!もうお義兄ちゃんと一緒に登校できない地獄から抜けられるのね!」
日野ホムラ「大袈裟だなぁ・・・家ではいつも一緒だったろ?」
日野カガリ「それでも物足りなかったよ・・・受験勉強だって、お義兄ちゃんがいなかったら頑張れなかったし、中3の時は」
日野カガリ「毎日寂しかったんだもん・・・」
日野ホムラ「おいおい・・・」
彼女が俺の義妹のカガリ。お互いの片親が再婚したのは俺が小学6年生の時で最初こそ仲は良く無く警戒されてたが、
一緒に過ごしてく内に自然と仲良くなり、今に至ったのだ。
日野カガリ「でも今日からまたお義兄ちゃんと登校できるからもう最高の気分だよ!今日からまた宜しくね!」
日野ホムラ「あぁ、でも羽目は外し過ぎるなよ?」
日野カガリ「うん!」
今日からまた一緒に登校できる。その言葉の通り、今日はカガリの入学式の日でもある。義妹との新たな学校生活。
何だか少し楽しみになって来たのだった。
〇教室
数時間後。
日野ホムラ「あぁ、入学式とか色々、やっと終わった・・・」
海野雫「ホムラお疲れ!何だか眠そうね・・・」
日野ホムラ「あぁ、雫か・・・まぁ、日頃の行いかな?」
彼女は海野雫。俺の幼馴染で小中高と一緒に過して来た仲だ。
海野雫「ホムラもたまには休んでも良いんじゃ無い?放課後や休みはいつもバイトしてるんでしょ?」
日野ホムラ「まぁ、してるよ・・・でも、バドミントンの大会に向けて毎日練習してる雫に言われる義理は無いかな?」
海野雫「何よそれ?喧嘩売ってる?」
日野ホムラ「あ、あぁ、冗談だよ冗談・・・」
そうだ、俺達は高1になってからそれぞれ部活やバイトに精を出す様にしているのだ。
俺は近くのカフェ。雫はバドミントン部でそれぞれやっていて、毎日頑張っている。
日野ホムラ「でも大丈夫・・・本当に辛くなったらちゃんとやるから・・・」
海野雫「まぁ、そうだよね・・・今日もバイト行くの?あたしは今日からまたバドミントンやるけど・・・」
日野ホムラ「いや、今日はシフト入れて無い・・・今日位はカガリと一緒に帰ろうと思うから・・・」
海野雫「あ、そう言えばカガリちゃん、今日から高校生だったよね!何度も言ったけど本当おめでとう!」
日野ホムラ「本当そう言ってくれると嬉しいよ・・・そう言えば雫も・・・義弟君今日からだよね・・・」
海野雫「う〜ん・・・その話は余りしたく無かったかなぁ・・・あいつには本当困っててね・・・」
日野ホムラ「そうか?凄く仲が良い様に見えるけど・・・」
海野雫「勘弁してよ・・・いい加減お義姉ちゃん離れして欲しいって思うし・・・」
日野ホムラ「まぁ、色々あるよな・・・」
そうだ、俺達はお互いに義理の兄弟がいて、俺には義妹、雫には義弟がいる。お互いに好かれ過ぎてるので、時折困る事も
あったりする。それでもいつかは兄弟離れする事にもなるだろうが、俺は悔い無くやって行きたいと思った。
〇体育館の中
放課後。バドミントン部にて。
黒川唯斗「内の部に入りたいだって?」
海野並樹「はい!マイブラザーがここにいると聞いたので!」
黒川唯斗「ま、マイブラザー?君、名前は?」
海野並樹「海野並樹!神の右腕を持った男で、海野雫の義弟です!」
黒川唯斗「あ、あぁ!何言ってるのか分からないけど、海野の弟君か!その割には似てないね?」
海野並樹「あ、はい、俺達は義理の姉弟で、俺達は出会うべくして出会ったんです!」
黒川唯斗「そ、そうなんだね!分かった、先ずはやって見る事だ・・・お義姉さん、練習してるから!」
海野並樹「はい!バドミントンマスター!」
黒川唯斗「あ、はは・・・随分個性的な子だな・・・」
海野並樹「マイブラザー!」
海野雫「予想はしてたけどやっぱり来たわね・・・」
海野並樹「おぉ!ついにマイブラザーにも未来を見通す力が!」
海野雫「そんなの知らないわよ・・・いい加減その呼び方も止めなさい・・・恥ずかしいんだから・・・」
海野並樹「何言ってるんだよ!今日から俺もマイブラザーと共にスクールライフが送れるんだ!マイブラザーに近付く奴は、地獄の業火で」
海野並樹「焼き払ってやるから安心してくれ!」
海野雫「・・・お願いだから公衆の面前でその振る舞い止めてね?マジで恥ずかしいから・・・」
雫の義弟の並樹君。中二病を拗らせており、お義姉ちゃん大好きっ子だ。義姉がバドミントン部と聞いて、飛んで来たそうな。
海野並樹「マイブラザー!早速俺と戦いの儀を!」
海野雫「あたしと勝負する前に先ず準備運動!それと今日入って来たばかりなんだから黒川先生とかの話はちゃんと聞いてね?」
海野並樹「分かったよマイブラザー!それが終わったら俺と戦ってくれるんだな?」
海野雫「あぁ、マジで先が思いやられる・・・あの喋り方何とかならない?」
〇通学路
一方、こちらは帰り道。
日野カガリ「あぁ!やっと二人っきりになれたね!」
日野ホムラ「大袈裟だな・・・これから一緒の時間できるんだから大丈夫だろ?」
日野カガリ「でもでも、お義兄ちゃん明日からまたバイトでしょ?生活費助けてくれてお母さんも喜んでるけど、お義兄ちゃんは」
日野カガリ「何したいの?」
日野ホムラ「実を言うと分からないんだよね・・・」
日野カガリ「え?」
日野ホムラ「今はまだ何とも無い感じだけど、来年になったら大学受験だの就職活動だのやる訳だからさ・・・でも今の内にやれる事やってたら、」
日野ホムラ「自分でも何か分かるかなって思って・・・だから分からない・・・」
日野カガリ「そっか・・・お義兄ちゃんも大変だね・・・」
日野カガリ「あ!でもさぁ!お義兄ちゃんが18になったら結婚できるじゃん!その時はあたしと!」
日野ホムラ「だから、その事は前から断ってるだろ?」
日野カガリ「え〜・・・義理の兄妹なのに?」
日野ホムラ「確かにそう言うのがいないって訳じゃ無いけどさぁ・・・俺は俺でまだ色々ハッキリしないし、責めて卒業するまでに」
日野ホムラ「色々決めて置かない事には・・・」
日野カガリ「・・・・・・」
日野カガリ「そっか・・・そうだよね・・・ならあたしも将来の事考えて花嫁修業とかやらないとだね!」
日野ホムラ「ん?そうか?まぁ無理はしない様にな?」
日野カガリ「分かってるよ!明日楽しみにしててね!」
お互いの義兄弟に手を焼きながらも、俺達はまた明日に備えるのだった。