エピソード3 「好きな事を楽しんでいる時の笑顔が一番、素敵ですよ」(脚本)
〇古いアパート
恋のキューピット クレア(よし、1時になった。今日こそ小山さんの相手を見つけないと)
恋のキューピット クレア(小山さん、あまりの経験の無さにどうなっちゃうかと思ったけど、一気にかっこよくなっていたし・・・)
恋のキューピット クレア(この調子なら、すぐに相手も・・・)
恋のキューピット クレア「・・・・・・」
恋のキューピット クレア「よしっ」
クレア「小山さん、来ました・・・」
クレア「だから、なんで寝間着なんですかっ!!!!」
〇本棚のある部屋
恋のキューピット クレア「小山さん、なんで私が来る度に寝間着なんですか?」
恋のキューピット クレア「私だったら、もう何を着てもいいやって思っているんですか?」
小山 叶真(こやま とうま)「クレアさん、それは違います」
小山 叶真(こやま とうま)「クレアさんに見られてもいいように、寝間着を新調しましたよ」
恋のキューピット クレア「着替えろって言っているんですっ!!」
小山 叶真(こやま とうま)「あの、クレアさん。僕はクレアさんが来る度に怒られて、辟易しています」
小山 叶真(こやま とうま)「たまには、笑顔で迎えていただきたい、そして心を温めてもらいたい・・・」
恋のキューピット クレア「じゃあ、怒らせるような事をしないでもらえますー?」
小山 叶真(こやま とうま)「注文通りの笑顔なのに、心が温まる事なく、背筋が凍る・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「じゃあ、今日のクレアさんの怒り鎮火アイテム・・・」
恋のキューピット クレア「あのですね、毎回プレゼントで私の気持ちが収まるわけ・・・」
恋のキューピット クレア「え、綺麗・・・。これ、なんですか?」
小山 叶真(こやま とうま)「ハーバリウムって言うみたいです。お手入れいらずのお花です。クレアさんは、綺麗な物が好きみたいなので」
小山 叶真(こやま とうま)「僕の恋愛を手伝っていただいている、感謝の気持ちです」
恋のキューピット クレア「そんな、感謝だなんて・・・」
恋のキューピット クレア「・・・・・・」
恋のキューピット クレア「小山さん、いつもありがとうございます。私も、もっと頑張りますね!」
小山 叶真(こやま とうま)「クレアさんって、チョロ過ぎないかな・・・」
恋のキューピット クレア「何か言いましたー?」
小山 叶真(こやま とうま)「うぉい」
恋のキューピット クレア「でも、せっかくお洒落になったんですから、それは維持して欲しいんですよ」
恋のキューピット クレア「このままじゃ、私しかお洒落な小山さんを見ていない事になるじゃないですか」
小山 叶真(こやま とうま)「それはそれで、いいかなぁと思いますけど」
恋のキューピット クレア「それじゃあ、意味が無いじゃないですかぁ」
小山 叶真(こやま とうま)「そうですかねぇ」
小山 叶真(こやま とうま)「でも、ご安心ください。今日、寝坊したのには理由があるんです」
恋のキューピット クレア「理由、ですか?」
小山 叶真(こやま とうま)「前にクレアさんが言っていたマッチングアプリ、これをダウンロードしまして」
恋のキューピット クレア「え、凄いですね! いつの間にそこまで進めていたんですね」
恋のキューピット クレア「それで、調子はどうですか?」
小山 叶真(こやま とうま)「まだ、誰とも会話をしていません」
恋のキューピット クレア「あー、そうですよね。最初はそんな感じだと思いますよ?」
恋のキューピット クレア「それでそれで、プロフィールはどんな感じにしたんですか?」
小山 叶真(こやま とうま)「まぁ、こんな感じですかね」
自己紹介文
『恋愛が苦手ですが、それでも頑張っています。お話ししていただければ、きっちり返信します。』
一言
『時間を無駄にしても大丈夫な方は、いいねお願いします』
プロフィール写真
小山 叶真(こやま とうま)「こんな感じです」
恋のキューピット クレア「か、壊滅的センス・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「クレアさん、僕だって頑張っているんですよ。そんな言い方しなくてもいいじゃないですか」
恋のキューピット クレア「あ、ご、ごめんなさい。そうですよね、小山さんも頑張って・・・」
恋のキューピット クレア「・・・? 小山さん、なんでプロフィール写真は部屋の中で寝間着なんですか?」
恋のキューピット クレア「せめて、近くの公園で写真は撮れそうな気がしますが・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「今日、クレアさんが来るという事で急いで深夜にアプリをインストールしたもので・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「突貫工事で間に合わせたからですね!」
恋のキューピット クレア「大して頑張って無いじゃないですかっ!!」
〇住宅街の道
恋のキューピット クレア「っていうか、プロフィール写真を部屋の中で撮らないでくださいよ。特定されたらどうするんですか」
小山 叶真(こやま とうま)「大丈夫ですよ、誰も見てません」
恋のキューピット クレア「じゃあ、なんの為にマッチングアプリをやっているんですか!」
恋のキューピット クレア「まぁでも、今の見た目ならマッチングアプリに載せても文句なしの容姿ですし」
恋のキューピット クレア「場所と雰囲気さえ合わせれば、すぐに良い写真が撮れますよ!」
小山 叶真(こやま とうま)「じゃあ、その辺の公園で」
恋のキューピット クレア「なんか、適当になってません?」
小山 叶真(こやま とうま)「バレた」
恋のキューピット クレア「公園も、良いんですよ? でも、小山さんが一番、楽しめる場所に行きましょうよ」
恋のキューピット クレア「その方が、小山さんが楽しんでいる写真が撮れますよ。やっぱり、好きな事をしている写真が一番、素敵ですし!」
小山 叶真(こやま とうま)「僕の好きな所ですか・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「では、行きたい所があるので、案内しても良いですか?」
恋のキューピット クレア「はい、ぜひ!」
〇ゲームセンター
恋のキューピット クレア「へー、レトロなゲームセンターですね!」
小山 叶真(こやま とうま)「はい。僕、ゲームが好きでして。家でもよくゲームをしておりまして」
小山 叶真(こやま とうま)「特に昔のゲームが好きなんですよね。僕は仕事上、よくプログラムをしてまして。それで、ゲームのプログラムって凄いなって思って」
小山 叶真(こやま とうま)「特に昔のゲームのプログラムは本当に凄いなって。今みたいな性能の良いパソコンが無い制限の中で面白いゲームを提供して・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「・・・失礼しました。この話はどうも熱くなってしまって」
恋のキューピット クレア「いえ、全然! すっごく、聞いてて面白いです!」
恋のキューピット クレア「もっと、聞かせてください、そのお話」
小山 叶真(こやま とうま)「話すよりも、実際にやってみましょうか」
〇宇宙戦艦の甲板
モンスター君「うがぁぁぁぁぁ」
モンスター君「ぎにゃぁぁぁぁ」
クレア「凄い、あっさり倒しちゃった!」
小山「まぁ、ここは最初のステージですから、簡単ですよ」
クレア「え、こ、この音、何っ!?」
小山「ここからボスなんですが・・・」
即落ちボス君「ハイジョ、ハイジョ・・・」
小山「こいつは時間をかけると面倒なので、速攻で倒します」
即落ちボス君「エラー、テッタイ、テッタ・・・」
小山「そうだ、クレアさん。代わりましょうか?」
クレア「え、わ、私はゲームはやった事ありませんし・・・」
小山「大丈夫ですよ、フォローしますから」
クレア「じゃあ、ぜひ・・・」
次の瞬間、殺られるヒロイン「貴方達・・・」
クレア「撃てーーーーっっ!!!!」
小山「え?」
次の瞬間、殺られるヒロイン「なんでぇ・・・」
クレア「やった!」
小山「いえ、今のは味方です」
クレア「あれまっ!?」
〇ゲームセンター
恋のキューピット クレア「小山さん、凄いですね! 私のミスをカバーしてくれて」
小山 叶真(こやま とうま)「いえ、あの程度のミスなんて。むしろハンデになって面白かったですよ」
恋のキューピット クレア「あ、それと・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「あれ、写真、いつの間に!」
恋のキューピット クレア「良い笑顔だったので、撮っちゃいました!」
恋のキューピット クレア「これ、プロフィール写真にしましょ。すごく良い写真だと思います!」
小山 叶真(こやま とうま)「まぁ、確かに・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「・・・・・・」
恋のキューピット クレア「小山さん、どうかしました?」
小山 叶真(こやま とうま)「情けない話、不安、なんです・・・」
恋のキューピット クレア「不安ですか・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「やはり、女性とお話した事はほとんどないため、不安なんです。マッチングとなると、特に・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「それに、こんなゲームの趣味なんて、お相手の方が楽しんでいただけるかとも思いまして・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「そう考えると、どうしても女性とお付き合いする心構えが出来なくて・・・」
恋のキューピット クレア「なるほど・・・」
恋のキューピット クレア「私は、小山さんとのデート・・・」
恋のキューピット クレア「・・・叶真とのデート、楽しいよ」
小山 叶真(こやま とうま)「クレアさんっ・・・」
恋のキューピット クレア「今日のデートも、叶真が好きな所に案内してくれて、それでいて私と一緒に遊んでくれて、すっごく楽しかった!」
恋のキューピット クレア「っていうか、叶真の好きな事を気に入らない女なんて、無視無視! その時は相性が悪かっただけ!」
恋のキューピット クレア「叶真は我儘を言っているわけじゃないんだから、気にしないで! 自信持って!」
恋のキューピット クレア「叶真は、素敵な人だよ」
小山 叶真(こやま とうま)「クレアさん・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「・・・クレアさん、ありがとうございます。少し、勇気が出てきました」
恋のキューピット クレア「も、もう! 私が敬語をやめたんだから、叶真もタメ口にしてよ!」
小山 叶真(こやま とうま)「いや、それはまだ、緊張して・・・」
恋のキューピット クレア「私だって、緊張したのに・・・」
恋のキューピット クレア「・・・でも、わかった」
恋のキューピット クレア「叶真のペースでいいよ! ゆっくり、頑張っていこ!」
恋のキューピット クレア「あ、他の人とのデートの時は、フランクに話せるようになること、いいね!」
小山 叶真(こやま とうま)「・・・わかりましたよ、クレアさん」
〇住宅街の道
恋のキューピット クレア「あー、今日は楽しかったー!」
恋のキューピット クレア「叶真。帰ったら、アプリのプロフィール、修正だからね!」
小山 叶真(こやま とうま)「わかってますよ、クレアさん」
小山 叶真(こやま とうま)「・・・・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「今日は、本当にありがとう」
小山「クレア」
恋のキューピット クレア「え、と、叶真・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「クレアが、タメ口にして欲しいって言ったんでしょ?」
恋のキューピット クレア「そ、そうだけど・・・」
恋のキューピット クレア「びっくり、するじゃん・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「嫌じゃなかった?」
恋のキューピット クレア「・・・嬉しかった///」
小山 叶真(こやま とうま)「そっか、良かった!」
小山 叶真(こやま とうま)「なんだろ・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「あれ、マッチングアプリ、いいね来てる・・・」
恋のキューピット クレア「あ、本当に!?」
恋のキューピット クレア「・・・よ、良かったね!」
〇黒
ここからおまけ
〇本棚のある部屋
補足話 自己紹介文
恋のキューピット クレア「さ、自己紹介文、考えよっか」
小山 叶真(こやま とうま)「え、マッチングしたから良くない?」
恋のキューピット クレア「叶真、あのねぇ。一発目にマッチングした相手と一発ゴールイン出来ると思う?」
恋のキューピット クレア「ちゃんと失敗した時の事を考えて、せめてプロフィールはしっかりしないと」
小山 叶真(こやま とうま)「なるほど・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「クレア、本当にそんな事でいいのだろうか」
小山 叶真(こやま とうま)「せっかく僕の事を選んでくれた相手の事を、最悪失敗するなんて保険を考えながらお付き合いするなんて・・・」
恋のキューピット クレア「あ、そ、そう言われると・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「まぁ、初めてのデートで上手くいく未来が見えないし、プロフィールをきっちり埋めるのは正しい選択だと思うけど」
恋のキューピット クレア「じゃあ、なんで反論したのっ!」
小山 叶真(こやま とうま)「では、改めて自己紹介文を」
自己紹介文
『恋愛が苦手ですが、それでも頑張っています。お話ししていただければ、きっちり返信します。』
恋のキューピット クレア「まず、恋愛苦手って言うのはやめようよ。自信無いって思われるよ?」
小山 叶真(こやま とうま)「うん、全く自信が無いから合ってると思うけど」
恋のキューピット クレア「そうなんだけど、相手に悪印象は与えちゃ駄目なの。嘘をつけとは言わないけど、せめて悪い印象は隠さないと」
小山 叶真(こやま とうま)「なるほど」
恋のキューピット クレア「あと、声をかけられて返信するのは、当たり前だから!!」
小山 叶真(こやま とうま)「それは、そう」
恋のキューピット クレア「そうだ。せっかくだし、私がプロフィール書いてあげる」
小山 叶真(こやま とうま)「期待していないけど、どうぞ」
恋のキューピット クレア「えーっと、ねー」
恋のキューピット クレア「はい、出来たー!」
自己紹介文
『はじめまして、港区に住むIT企業の社長です! 趣味は旅行、風景を撮影するのが好きです。気軽に話しましょ!』
小山 叶真(こやま とうま)「おー、確かにキラキラした自己紹介文・・・」
小山 叶真(こやま とうま)「でも、全部、嘘じゃん」
恋のキューピット クレア「えー?」
結構小山君は積極的ですね!!
マッチングアプリなんて、よー使いませんわ💦
プロフィールをうまく書ける自信が全くないです😅
金も地位もないオッサンだから、誰も興味持たないだろうし・・・嘘しか書けないww
このように荒んだ私の心に一服の清涼剤。
なんだか未来を感じられて、青春を感じられて良いなぁと思いました。
言葉遣いが変わるだけで、距離感がぐっと変わりますよね。
クレアさんのアドバイスで、マッチングアプリの写真と自己紹介文を修正した小山君。
いいねした人は小山君に会ってくれるのか。楽しみにしております。