吸血鬼との共存を頑張ろう

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9話 喧騒の友・前編(脚本)

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〇ファミリーレストランの店内
赤城「今週金曜じゃなくて土曜で頼む」
藍原しずく「りょ」
藍原しずく「注文いつもので」
赤城「トマトパスタな、了解」
藍原しずく「そういえば昨日届いた今月分のトマトジュース」
藍原しずく「99本で1本足りなかった」
赤城「こないだ屋上で渡した分差し引いたからな」
藍原しずく「ケチ」
赤城「生活費ギリギリなんだよ」
藍原しずく「私の全財産あげようか」
赤城「たったの10円だろ」
藍原しずく「百均の税金分がタダだよ」
赤城「別に嬉しくないわ」
赤城「待て、一文無しでなぜサミゼリアに来れる?」
藍原しずく「なんかいける気がして」
赤城「いけるか馬鹿」
赤城「注文取り消しな」
藍原しずく「心まで貧しいんだね」
赤城「何か言ったか貧乏人」
如月天音「うーんこれは良くないなぁ・・・」

〇ファミリーレストランの店内
如月天音「じゃんっ、映画のWチケット!」
如月天音「職場の人から貰ったんだけど」
如月天音「残念ながら一緒に行く人がいないから」
如月天音「しずくちゃんと赤城くん!」
如月天音「二人で楽しい時間を」
藍原しずく「行かない」
赤城「遠慮しておく」
如月天音「えぇ〜つまんな!!」
藍原しずく「他にあげる人いないの?」
赤城「何だ、友達いないんじゃないかw」
如月天音「余るほどいるけど!?」
如月天音「僕は君たちにあげたいの!」
如月天音「毎回事務的なやり取りか言い争いしかしないじゃん」
如月天音「しかも冷淡、無愛想、棘だらけ」
如月天音「パートナーってもっと仲良しな感じじゃないの?」
藍原しずく「ただの利害関係だから」
赤城「お前の理想押し付けてくるな」
如月天音「んもう冷たいなぁ・・・」
如月天音「それじゃいずれ上手くいかなくなるよ?」
藍原しずく「その時はまたトマトジュースくれる人を見つければいい」
赤城「お前トマトジュース貰えれば誰でもいいのか?」
藍原しずく「うん(即答)」
赤城「はは・・・何だそれ」
赤城「とんだ阿婆擦れじゃないか」
如月天音「ウワァ君なんてことを!!」
藍原しずく「あなただって血吸えれば誰でもいいんでしょ」
赤城「お前と一緒にするな」
赤城「俺は肥えた目で冷静に逸品を厳選してだな・・・」
藍原しずく「童貞はそんな器用なことできないよ」
如月天音「君も抑えて抑えて!!」
赤城「おい誰が童貞だって?」
藍原しずく「童貞って言われて怒る人は童貞なんだって」
赤城「その理論で行くとお前も阿婆擦れなんだな」
藍原しずく「私は別に怒ってない」
  ミシミシ・・・(机にヒビが入る)
赤城「めちゃくちゃ怒ってるじゃないかw」
藍原しずく「今日は机を武器にしようかな」
赤城「やれるもんならやってみろw」
如月天音「もう駄目だこれ」
如月天音「喧嘩するほど仲が良いとはよく言うけど」
如月天音「この場合本当に仲が悪そう」
如月天音「巻き込まれたくないから失礼しよう・・・」
藍原しずく「何勝手に逃げてるの」
如月天音「い、いやぁお邪魔かなって」
藍原しずく「邪魔なのは確かだけど」
藍原しずく「チケット置いていって」
如月天音「え、行かないんじゃなかったの?」
藍原しずく「貰えるものは貰っとく」
藍原しずく「お金になるかもだし」
如月天音「転売ダメ絶対!!」
赤城「じゃあ俺も貰っとくか」
如月天音「君も転売目的でしょ!!」
藍原しずく「ちなみに何の映画?」
如月天音「『鬼増の呪術ミラクルロマンス編』」
如月天音「『〜余命一年の彼女と異世界無双する俺の100万回目のキス〜』」
如月天音「だってさ」
藍原しずく「だってさ、と言われても」
赤城「クソ映画だな」
藍原しずく「チケット売る価値もない」
如月天音「でも評価星5だよ?」
藍原しずく「・・・・・・」
赤城「・・・・・・」
藍原しずく「大衆の感性がどこまで落ちぶれたのか」
藍原しずく「見下しに行ってみようかな」
赤城「2時間以内にどうやって100万回キスするのか」
赤城「確認したい気もしなくもない」
如月天音「も〜二人共素直じゃないんだから」
如月天音「じゃあ僕もパートナーを探しに」
如月天音「満を持して合コンに行ってこようかな☆」
藍原しずく「席どこにしようかな」
赤城「後ろの方が見やすいだろ」
藍原しずく「前の方が迫力あって良い」
赤城「見上げる形になって首痛めるぞ」
藍原しずく「それ歳のせいじゃないの」
赤城「今歳関係ないだろ!!」
藍原しずく「怒ってる、こわ」
如月天音「・・・えっ無視?」

〇映画館の座席
  〜19:00〜
赤城「結局後ろの席になったな」
赤城「遅めの時間なら空いてると思ったが」
赤城「まさか前の方が満席だとは」
藍原しずく「楽しみにしてる人の気がしれない」
赤城「ポップコーンつまんでパンフレット読んでる奴が言うな」
赤城「奢った俺に感謝しろよ」
藍原しずく「はひはほ(ありがと)」
赤城「ってもう半分も食べてんのか!?」
藍原しずく「トマトジュースほどの速さではないよ」
赤城「何ちょっと謙遜してるんだ」
藍原しずく「赤城さんも食べる?」
赤城「いらん」
赤城(いや、断ってばかりもつまらないか)
赤城「じゃあちょっと貰う」
藍原しずく「はい、あーん」
赤城「なっ!?」
赤城「じ、自分で取らせろ!!」
藍原しずく「反応が大袈裟だね」
藍原しずく「じゃあ手のひらに置くから」
赤城「そうしてくれ」
  パクッ
赤城「・・・しょっぱい」
藍原しずく「塩味なんだから当たり前でしょ」
赤城(塩なのか手汗なのか分からん)

〇映画館の座席
  〜30分後〜
余命一年の女「んっ♡あっ♡」
余命一年の女「もうキスいいよぉ♡」
異世界無双の男「まだ10万回だろ?」
異世界無双の男「あと90万回残ってるぜw」
余命一年の女「あ〜んおかしくなっちゃううう♡」
藍原しずく「・・・・・・」
赤城「・・・・・・」
赤城(気 ま ず い)
赤城(公衆の面前でAV見てる感覚だ)
赤城(これがあと一時間も続くなんて耐えられん・・・)
  (立ち上がる)
藍原しずく「どこ行くの」
赤城「ちょっとお手洗いにな」
藍原しずく「お腹壊した?」
赤城「そういうわけじゃないが」
藍原しずく「ならいいけど」
赤城「なんだ、人を心配するなんて珍しいな」
藍原しずく「まぁ一応は」
藍原しずく「さっきあげたポップコーン床に落としたやつだったから」
赤城「ガハッゲホッ」
藍原しずく「今更吐き出そうとしても無駄だよ」
赤城「最低だなお前!!」
藍原しずく「貧乏人は落ちた物も食べるんじゃないの」
赤城「食べるけど食べさせてくるのはやめろ!!」
客「ちょっとそこ静かにしてもらえます?」
赤城「あっすみません・・・」
赤城(より気まずくなったじゃないか!!)

〇大衆居酒屋
女性「え〜こんなにカッコイイのに今フリーなんですかぁ?」
女性「信じられな〜い!私なら速攻」
女性「(色んな意味で)つきあいた〜い♡」
如月天音「でしょ、よく言われる☆」
如月天音「何なら今夜つきあっちゃう?」
女性「もうやだ〜♡」
如月天音「あはは冗談だって笑」
如月天音(・・・冗談も言い疲れた)
如月天音(いい加減本命が欲しいんだけど)
如月天音(擦り寄って来る蝶々達は)
如月天音(僕が吸血鬼だって知ったら一目散に去っていくんだろうな)
如月天音(あーあ今回も外れだ)
如月天音(貧血気味のままワンナイトしてもだるいだけだし)
如月天音(帰って『鬼増の呪術ハッピーセット編』でも見ようかな)
  チリンチリーン
花園清香「わわっ遅れてごめんなさい!!」
花園清香「筋トレ・・・じゃなくて」
花園清香「ストレッチしてたら時を忘れちゃって!」
如月天音「!」
如月天音(ふわふわ清楚系に見えて芯がある感じ)
如月天音(めちゃくちゃ僕の好みだ!!)
花園清香「まだ余ってる方いらっしゃいますか!?」
男性「余ってる方てw」
男性「俺の隣おいでよーw」
花園清香「では遠慮なくお邪魔します♪」
如月天音(まずい、取られる!)
  (手引っ張る)
花園清香「へっ?」
如月天音「あっ、これはその・・・」
如月天音「腕!」
如月天音「腕細いのに筋肉がある!」
如月天音「急に引っ張っても体幹ブレないし」
如月天音「しっかり鍛えられてて凄いですね!」
花園清香「・・・・・・」
  シーン・・・
如月天音(あれ、まずかった?)
男性「あー鍛えてる系かぁ、惜しいな」
女性「鍛えてる女性ってモテづらいですもんね〜」
男性「だからこんなに可愛いのに合コン来てるんだ?w」
女性「かわいそ〜誰か貰ってあげなきゃ〜!」
男性「まぁ俺ならいけるかなw」
花園清香「あ、ありがとうございます・・・」
如月天音(ウワアア地雷踏み抜いた!!)
如月天音(僕としたことがこんなミスするなんて)
如月天音(焦って調子狂ってる!!)
如月天音(でも・・・)
如月天音(これは冗談なんかじゃない、本気だ)
如月天音「僕は良いと思いますよ」
如月天音「筋肉に限らず自分を鍛えてる人ってカッコイイじゃないですか」
如月天音「それを惜しいとか言う方がどうかと思いますね」
如月天音「あなたも、こんな奴らにお礼なんか言ってあげる必要ないですよ」
花園清香「!!」
花園清香「あのっ、私花園清香っていいます」
花園清香「あなたのお名前は?」
如月天音「ん?如月天音ですけど・・・」
花園清香「天音さんっ」
花園清香「ちょっと一緒に来てくれますか!?」
  (手引っ張る)
如月天音「えっ!?」
如月天音(うわめっちゃ力強い!!抵抗できない!!)
如月天音(ますます好きだ・・・!!)

〇映画館の座席
赤城(流石にいつまでも席は外せない)
赤城(仕方ない、そろそろ戻るか)
藍原しずく「・・・・・・」
赤城(おっ、あいつ)
赤城(画面食い入るように観てるな)
赤城(ちょっと揶揄ってやろう)
赤城「おい、いつも澄ました顔で気取ってるくせに」
赤城「意外とこういうのに興味あるんだな」
藍原しずく「ん?」
藍原しずく「うん、あるよ」
藍原しずく「トマトジュースくらいあるよ」
赤城「トマトジュースって相当じゃないか」
藍原しずく「相当だよ」
赤城(そんな真っ直ぐな目で見つめられても)
赤城(逆にこっちが反応に困るな)
藍原しずく「赤城さんは好きじゃないの?」
赤城「え、いや俺は別に・・・」
藍原しずく「赤城さんってこういうの好きそうだけど」
赤城「えっ!?は!?」
藍原しずく「また反応が大袈裟だね」
藍原しずく「好きなの?違うの?はっきりして」
赤城「ま、まぁ好きじゃないと言ったら嘘になるが・・・」
赤城(って何答えてんだ俺!!)
藍原しずく「じゃあちゃんと目に焼き付けたら」
藍原しずく「ほら、今一番盛り上がってる場面だよ」
赤城「あ、あぁ・・・」
赤城(変に狼狽えたら揶揄われる)
赤城(平常心平常・・・)
余命一年の女「100万回目のキスを私以外に捧げやがったな!?」
異世界無双の男「お前に双子の姉妹がいるって知らなかったんだよ!!」
余命一年の女「たとえ私がいなくなっても」
余命一年の女「秒で見つけ出せるとか言ってたくせに!」
余命一年の女「この大嘘つき!!」
異世界無双の男「大嘘つきはそっちだろ!?」
異世界無双の男「余命一年とか幸薄アピールしながらバリバリ健康じゃねぇか!!」
余命一年の女「健康に越したことはないでしょうがよ!!」
異世界無双の男「こりゃ鬼増の呪術の出番のようだな・・・」
余命一年の女「そのようね・・・」
異世界無双の男「お前の余命はここで終いだ!!」
余命一年の女「貴様を地獄に転生させてやるわ!!」
藍原しずく「激熱バトルシーン、血湧き肉踊る」
赤城「何だこれ・・・」
藍原しずく「ん、バトル好きじゃなかったの?」
赤城「いやバトルはそこまで・・・」
藍原しずく「じゃあ一体何だと思ったの?」
赤城「!」
赤城(まさかこいつ)
赤城(さっき俺が席外した理由も分かって・・・!)
藍原しずく「ねぇ何だと思ったの?」
赤城「なっ何でもいいだろもう!!」
藍原しずく「赤城さんって結構揶揄い甲斐あるね」
赤城「うるさい!!」
客「うるさいのはあなたよ!!」
赤城「はいすいません!!」
  つづく🍅

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