インソムニア

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第21話 記憶vs記録(脚本)

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〇一戸建て
白宵 覚(しらよい さとる)「不眠症? お前が!?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「そうだ。生まれてからずっとな」
白宵 覚(しらよい さとる)「じゃあ、お前はこの10年ずっと──」
白宵 覚(しらよい さとる)「過眠症のフリをしてたっていうのか?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「いんや、それは本当。今もすげー眠いぜ」
白宵 覚(しらよい さとる)「どういうことだ?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「それが、お前についていた最大の嘘だよ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「本当はずっと前に完成してたんだ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「"俺の"不眠症を治す装置はな」

〇諜報機関
中堅の警官「AI画像センサーに反応ありました!」
中堅の警官「街頭の防犯カメラ113号です!」
小判 早馬(こばん そうま)「柏坂3丁目辺りだな。画像を確認しろ」

〇一戸建て

〇諜報機関
警察官「一致率97%。六道睦月で間違いありません」
小判 早馬(こばん そうま)「あの辺は住宅街か。何故そんな所に?」
警察官「六道は男性と話しているようです」
小判 早馬(こばん そうま)「六道を逃がしても男に事情を聞ける」
小判 早馬(こばん そうま)「チャンスかもしれんな」
中堅の警官「所轄の警官を派遣しますか?」
小判 早馬(こばん そうま)「記憶を消されて逃げられるのがオチだろう」
警察官「では、このまま見逃すと?」
小判 早馬(こばん そうま)「俺が出る。車を回してくれ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「待ちなさい、小判くん。危険すぎるわ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「記憶を消されるのはあなたも一緒よ」
小判 早馬(こばん そうま)「負け戦をするつもりはありませんよ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「その眼鏡は?」
小判 早馬(こばん そうま)「ま、見てて下さい」
小判 早馬(こばん そうま)「非常識には非常識ですよ、警部」

〇一戸建て
白宵 覚(しらよい さとる)「”俺の”・・・?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「インソムニアのお前ならわかるだろ?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「装置は俺には特効薬だった。けど──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「他の人間にとっては『毒』だったんだ」

〇一人部屋
  俺が気づいたのは──
  装置を使い始めて3年くらい経ってからだ
  やたらと不眠のニュースが流れ始めてね

〇一戸建て
六道 睦月(ろくどう むつき)「おかしいなと調べてみたら──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「都内に約5000人も不眠患者が生まれていた」
白宵 覚(しらよい さとる)「いや、しかし。装置のせいだって確証は?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「不眠が増えているエリアだよ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「装置から約20km以内に集中していたんだ」
白宵 覚(しらよい さとる)「わかっているなら何故──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「装置を使い続けるのかって?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「俺だって最初はやってみたよ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「熟睡した翌日は、装置を止めてみたりさ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「・・・けど、駄目だった」

〇手
  一度睡眠の快楽を知ってしまった俺は
  睡眠を手放すことが出来なくなったんだ

〇一戸建て
六道 睦月(ろくどう むつき)「俺にとっての睡眠はさ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「もはや食事や呼吸と同じなんだ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「だから罪悪感みたいなものは──もうない」
白宵 覚(しらよい さとる)「睦月・・・」
六道 睦月(ろくどう むつき)「こんな話を知ってるか」

〇田舎駅のホーム
  2つに分かれた線路があって
  一方の線路上には10人の人間が──
  もう一方には一人の人間が居たとする
六道 睦月(ろくどう むつき)「どちらの人間もそこから動けない」
六道 睦月(ろくどう むつき)「そこへ、猛スピードで列車がきた!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「お前なら、どちらに遮断器を動かす?」
白宵 覚(しらよい さとる)「それは・・・」
六道 睦月(ろくどう むつき)「迷うよな。でも──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「AIなら『一人を犠牲にする』と必ず答える」
六道 睦月(ろくどう むつき)「だがこの一人が自分や家族の場合──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「答えは真逆になるんだ」

〇一戸建て
六道 睦月(ろくどう むつき)「覚。俺は間違ってるか?」
白宵 覚(しらよい さとる)「・・・」

〇シックなリビング
ロンダリング金融 社員「家財道具一式と、子供一人」
ロンダリング金融 社員「これを差し出せば、借金をチャラに出来る」
ロンダリング金融 社員「うちはそういうルールがあんのよ」

〇一戸建て
白宵 覚(しらよい さとる)「誰かを犠牲に、か」
六道 睦月(ろくどう むつき)「誰だって自分や家族が一番大切。だろ?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「で、本題なんだけど」
六道 睦月(ろくどう むつき)「最近装置の調整が上手くいってて」
六道 睦月(ろくどう むつき)「覚の分も都合出来そうなんだ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「これでようやく、俺たちは同じ時間に──」
白宵 覚(しらよい さとる)「断る」
六道 睦月(ろくどう むつき)「えっ」
六道 睦月(ろくどう むつき)「冗談だろ、俺たちの夢だったじゃないか」
白宵 覚(しらよい さとる)「誰かを犠牲にして自分だけが眠る──」
白宵 覚(しらよい さとる)「そんな物、俺が受け入れるわけ無いだろ!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「そっか・・・」
六道 睦月(ろくどう むつき)「覚ならわかってくれるかと思ったのにな」
白宵 覚(しらよい さとる)「睦月。今からでも遅くない」
白宵 覚(しらよい さとる)「装置を止めて自首するんだ、そうすれば」
白宵 覚(しらよい さとる)「睦月?」
白宵 覚(しらよい さとる)(くっ。予知が・・・記憶を消す能力かっ!)
  覚。残念だよ
白宵 覚(しらよい さとる)「睦月、どこだ?」
  もうお前は俺を見ることはない
  永遠に──
白宵 覚(しらよい さとる)「待ってくれ! 俺は──」
  さ よ う な ら
白宵 覚(しらよい さとる)「うあああっ!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「忘れるんだ、覚。何もかも」

〇焼肉屋

〇立ち飲み屋

〇一戸建て
六道 睦月(ろくどう むつき)「なん・・・だよ、ちくしょう!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「消去するこいつとの思い出は──」
六道 睦月(ろくどう むつき)「どうしてこんなに・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「睦月ーーーーー!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「──!」
白宵 覚(しらよい さとる)「む・・・つき・・・」
六道 睦月(ろくどう むつき)「嘘だろ・・・どうして喋れる?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「記憶も認識も大量に消しているはずだ!」
白宵 覚(しらよい さとる)「よく・・・覚えとけ・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「お前が何者でも俺はお前と──」
白宵 覚(しらよい さとる)「友達をやめるつもりはないから・・・な」
六道 睦月(ろくどう むつき)「クソォオオオオ! 五月蝿いんだよ!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「消えろーーーー!」
六道 睦月(ろくどう むつき)「撃たれ・・・た?」
六道 睦月(ろくどう むつき)「何故だ・・・誰も俺を認識出来ないはず」
中堅の警官「けっ、警部補。いま何を撃ったのですか?」
小判 早馬(こばん そうま)「わからん!」
警察官「わっ──」
小判 早馬(こばん そうま)「それより、お互いを背に周囲を警戒しろ」
小判 早馬(こばん そうま)「無駄かもしれんがな」
警察官「警部補、さっきから一体何を?」
小判 早馬(こばん そうま)「これは俺の推測だが──」
小判 早馬(こばん そうま)「六道は──人間には見えない」
中堅の警官「透明人間ってことですか?」
小判 早馬(こばん そうま)「あくまでも俺達の認識上だ」
小判 早馬(こばん そうま)「奴は大学で、あの包囲網を抜けた」
小判 早馬(こばん そうま)「だが監視カメラを通せば見つけられる」
小判 早馬(こばん そうま)「つまり”見た”記憶を消せるってことだ」
警察官「そんな人間、どうやって捉えるのですか」
小判 早馬(こばん そうま)「だから、この機械なのさ」
中堅の警官「これは・・・?」
小判 早馬(こばん そうま)「眼鏡型ウェアラブルデバイスだ」
小判 早馬(こばん そうま)「六道を視界に認めたら文字を表示させる」
警察官「な、なんと表示させてるのですか?」
小判 早馬(こばん そうま)「それは──」
警察官「警部補!?」
小判 早馬(こばん そうま)「伏せろぉぉぉ!」
中堅の警官「地面に血液が!」
警察官「警部補、一般市民に発砲は──」
小判 早馬(こばん そうま)「そんなことを言っている場合か!」
小判 早馬(こばん そうま)「姿が見えないってことは」
小判 早馬(こばん そうま)「銃を向けられてもわからんのだぞ!」
  なるほど・・・機械認識か。厄介だね
小判 早馬(こばん そうま)「どこだ? どこにいる!?」
小判 早馬(こばん そうま)「うわぁっ!」

〇黒背景
小判 早馬(こばん そうま)「なっ、ここはどこだ!?」
小判 早馬(こばん そうま)「俺はいつここへ・・・?」
  ふふ・・・機械が認識するというなら
  その意識ごと消してやるよ
小判 早馬(こばん そうま)「駄目だ、意識が遠く──」
  ここは・・・どこだ?
  俺は──
???「小判くん! 小判くん!」

〇一戸建て
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「しっかりなさい!」
小判 早馬(こばん そうま)「グラサンのオネェ・・・」
小判 早馬(こばん そうま)「痛っ!」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「くっ・・・まだ意識がはっきりしないのね」
(果たしてそうだろうか・・・!?)
小判 早馬(こばん そうま)「俺は・・・確か、六道を追って」
小判 早馬(こばん そうま)「くそっ! また消されたのか」
小判 早馬(こばん そうま)「そういえば、警部。何故ここへ?」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「飛び出した部下から報告がないのよ?」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「心配で駆けつけたに決まってるじゃない」
小判 早馬(こばん そうま)「申し訳ありません」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「辺りに血痕があって、男も倒れてたわ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「意識も無かったし、救急車で搬送したわよ」
小判 早馬(こばん そうま)「まさか、六道ですか!?」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「ちがうわ。でもあたしが目を付けていた男」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「あとで事情を聞くつもりよ」
小判 早馬(こばん そうま)「銃が熱い・・・?」
小判 早馬(こばん そうま)「弾丸が無くなってる! 俺が撃ったのか?」
中堅の警官「撃ってましたよ。忘れたんですか」
小判 早馬(こばん そうま)「忘れたんじゃない。忘れさせられたんだ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「安心なさい。男に外傷はなかったわよ」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「でも、本当に一体何が起きたのかしら」
小判 早馬(こばん そうま)「記録を調べてみます」
小判 早馬(こばん そうま)「──なるほど」
小判 早馬(こばん そうま)「俺は六道を撃ったようです」
小判 早馬(こばん そうま)「正確には六道と機械が認識する"何か"を」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「六道は手負いのまま逃走してる、と?」
小判 早馬(こばん そうま)「恐らくは」
中堅の警官「病院に連絡しておきましょう」
中堅の警官「六道が来たら警察に連絡するようにと」
小判 早馬(こばん そうま)「引き続き路上カメラでも探すぞ」
小判 早馬(こばん そうま)「どこかで倒れられても寝覚め悪いからな」
救急隊員「ただいま到着しました」
救急隊員「けが人を搬送いたします」
小判 早馬(こばん そうま)「怪我人? 誰も怪我はしてないが」
小判 早馬(こばん そうま)「誰か呼んだのか?」
中堅の警官「いえ、私は一台しか」
女鮫 蜂利(めざめ はちとし)「えっ? じゃあ、さっきの救急車は?」

〇大きい交差点

〇救急車の中
アルテミス「覚! しっかりして、覚!」
白宵 覚(しらよい さとる)「む・・・ここは」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「ナイトが警察をモニタリングしていてな」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「救急車が呼ばれたことに気づいたんだ」
白宵 覚(しらよい さとる)「なぜ、それが俺のことだと?」
三井 陽和(みつい ひより)「ごめんなさい、白宵くん」
三井 陽和(みつい ひより)「私、ずっとあなたの心をずっと監視してた」
三井 陽和(みつい ひより)「敵があなたの親友だったから・・・」
白宵 覚(しらよい さとる)「謝ることはない。疑って当然だ」
白宵 覚(しらよい さとる)「九条の件もあるからな」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「しかし、よく無事だったなぁ。覚」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「てっきり廃人にされてるかと思ったぜ」
白宵 覚(しらよい さとる)「俺にもわからん。だが──」
白宵 覚(しらよい さとる)「多分あいつは本気で俺を消そうとしていた」
三井 陽和(みつい ひより)「白宵くんの能力のおかげかもね」

〇黒背景
  彼はあなたの記憶を消そうとしていたけど
  白宵くんの予知も目まぐるしく動いてたの

〇救急車の中
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「予知か。無限に分岐する未来の情報だ」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「記憶を消す負荷量が違ったのかもな」
三井 陽和(みつい ひより)「推測だけどね」
三井 陽和(みつい ひより)「な、何!?」
運転手「すみません! 人が急に飛び出してきて!」
運転手「おい、君! 何を! うわっ!」
???「ようやく予知を止めたんやな」
???「僕、3時間くらい探しとってんやで」
???「かくれんぼやったら友達帰っとるがな」
白宵 覚(しらよい さとる)「お前は・・・!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「覚、見ぃつけた」
九条 醒夜(くじょう せいや)「はははははっ!」

次のエピソード:第22話 装置

コメント

  • また今回も面白かったです!!✨
    さとるん…ショック凄かっただろうにずっと友達宣言に心動かされました…睦月…どうなってしまうのか…そして、醒夜はなにを仕掛けてくるのか…また次回も楽しみにしてます!✨

    線路の話がこの物語の根っこだったのですか…あれは究極の問題ですよね!!

    危うく3話くらいかかりそうなイベント!?なんでしょう!?気になります!

    お忙しいのに更新しっかりで毎回面白いの凄いです👏✨

  • 睦月、強敵すぎますが、やはり友の絆は強い……!
    線路の切り替え問題は、どんな結論を下すか自分でも想像がつきません。自己犠牲か、自己中かも、どちらが正しいかなんて簡単には断じることができないし。
    難しいテーマに挑まれてて、これは書ききるのに力がいりそう。頑張ってください!
    次回、九条がどう出るのか気になります。

  • まさかの伏兵・小判くんのヒーロー回かと思いきや、睦月がまだ上でしたね。ハラハラしました😆
    睦月、自分の人生だから自己中になるのもよく分かります。
    覚と友情の駆け引きもグッときました!コレコレ〜😍
    ラストの醒夜でターミネーターの効果音流したくなりました。
    ダダンダ・ダンダ・ダン!

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