事故物件サバイブ ~心霊現象総スルーな兄が最強すぎる、致死率150%呪いのロンダリング・バイト~

資源三世

ロンダリング #シナリオ(脚本)

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〇エレベーターの中
  あれからどれだけの月日が経ったのか
  暑さも寒さもない、微睡みに包まれたここからは、扉一枚先に広がる鮮烈な景色なんて分からなかった
  ただ今日はいつになく外が賑やかだった
  彼女は春の訪れを知って冬眠から覚める動物のように、ぼんやりとしたまま、外へと出た

〇マンションのエントランス
  眩い日の光。ハッキリとしてゆく沸き立つ人の声。光に目が慣れ、次第に人の姿が明らかになる
  マンションの住人や、学生達、大人に子供
  人だけではない。霊も混ざっている。古いもの、新しいもの、かつてマンションに囚われていたもの
  暗闇に慣れた彼女に、目の眩むほどたくさんの色彩がなだれこんだ
  彼らは一部は列を作っていた。先頭には、また懐かしい顔があった
  並んだ人々は、そこに立てかけた絵に一筆づつ塗っている。ただそれだけなのに、誰もがとても楽しそうだった
  人はこんなふうに笑い合うことを、彼女は初めて知った
「人の感情が霊に影響を与えるように、霊の影響で人も変わることはあるのだな」
  不意に声をかけられる。エレベーターの前で、彼女と同じように列を眺めていた編集長だった
女性「私が見えるの?」
編集長「まだあの部屋の住人だからね、ぼんやりとだが見えるよ」
女性「随分と存在が薄らいだのね。これはいいことなのかしら」
編集長「私はね、霊を追い払うことがロンダリングだと思っていたんだ。原因を無くすことが、最適解だとね」
編集長「今もその気持ちは変わらない。だがそれは、この結末を否定するわけでもない」
  編集長は肩をすくめて、自嘲の笑みを浮かべる

〇マンションの共用廊下
編集長「空想の屍体に名前と形を。その願いを叶えるため、あの子はマンションの霊に働きかけた」
編集長「兄が霊を説得して、妹の描いた絵に一筆、一筆、色を加えてもらった」
編集長「生きている人間に比べたら、霊の力など些細なものだ。残念だが、彼女の思いは届かないと疑わなかったよ」
編集長「だが、霊達が筆を入れるほど、住人たちの事故物件に対するイメージは和らいでいった。ついには筆を入れる住人も現れ始めた」

〇マンションのエントランス
編集長「霊を変化させたことが、住人たちの意識にも影響を及ぼした。私はそう考えている」
編集長「文字通り、あの兄妹は事故物件のイメージを塗り替えていったんだ」
編集長「そうして今、存在しない屍体の鎮魂のため、人々の想いを塗り重ねる祭りが開かれているに至った」
編集長「あの絵が見えるだろう?」
女性「あれは・・・私かしら?」
編集長「事故物件の案内人という舞台装置ではなく、彷徨う魂を導く案内人になって欲しい。あの絵からはそんな気持ちを感じるよ」
女性「とても・・・美しいわ」
女性「屍体なんてなくても、桜はこんなにも美しく咲くのね」
女性「惨劇なんてなくても、心の平衡は得られるのね」
女性「ああいつか、あの子と桜を見たいな」
  その言葉を最後に、彼女の気配は霧散した
編集長「霊を祓うことなく、認めて共存するか。時に素人のほうが、真理に近いのかも知れないな」
( ´∀`)「こんな所で何をしてるんですか?」
編集長「人混みに疲れてね」
  編集長は、他に人が見ていないことを確認して、自分のズボンのチャックを開く
編集長「元々は、私の人面瘡を治す方法を探すためにオカルトに関わったが」
編集長「こんな結末は初めてだよ」
編集長「なあ、人面瘡。いつか私とお前にも、そんな未来がくるのかね?」
玉「グゲゲゲ!」
編集長「この野郎、笑いやがったな!」
( ´∀`)「ははは! 編集長も肩なしですね」
玉「ぺっ!」
( ´∀`)「うわ、汚ぇ! こいつ唾吐きやがった!」
( ´∀`)「玉ごときが人間をなめんなよ!」
編集長「おい、やめろ! ズボンを下ろすな!」
女性「きゃー! 変態ー!」
編集長「ま、待て! 違う!」
編集長「違うんだー!」

〇中規模マンション
  致死率150%とされた事故物件の噂は、鎮魂の絵をきっかけに収束していった
  いずれこのマンションは、事故物件だったことさえ忘れられるだろう
  ただ一つ、忘れられないことがあるとするなら──
  鎮魂の祭りの日に、事故物件と呼ばれた部屋に住む変質者が捕まったことだけだ

次のエピソード:エピローグ 

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