事故物件サバイブ ~心霊現象総スルーな兄が最強すぎる、致死率150%呪いのロンダリング・バイト~

資源三世

6月7日 真実 #シナリオ(脚本)

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〇レトロ喫茶
編集長「私達は見たんだ。事故物件に囚われることで、奴の腹の中を知れたんだ」
  事故物件からの生還者は兄だけではありませんでした。なんと編集長も、事故物件に囚われていたというのです
  全く気づきませんでした
  しかし、これは幸いでした。あの感性と語彙力の死んだ兄だけでは、事故物件の真相を知ることなんて出来なかったでしょうから
編集長「結論から言おう。あの事故物件は人の悪意が生み出したものだ」
妹「生み出したって、それはつまり呪術的なものですか?」
  その部屋に住む住人を無差別に呪った誰かがいる・・・そんな恐ろしい姿が脳裏によぎり、思わず身震いしました
  しかし、編集長は小さく首を振ります
編集長「まずは私たちの見たものを話そう。あのおぞましい裏の世界を」

〇マンションの共用廊下
  その外観は私達の暮らすマンションと何ら変わらない。しかし、常に薄暗く、息苦しかった
  居場所のなさを感じるのは、壁に扉に窓に、目、耳、口がついているからだろうか
  聞こえるのは口達の噂話。感じるのは目の視線
  そして、辺りを歩くのはいずれもこの世ならざるものだった
  血を滴らせる者、青白い体が膨らんだ者、いくつもの手が重なった者。本当に色々いたよ
  だがまるで臭いはしなかった。この世界には必要ないからだろうか
  私は彼らに見つからないよう、口が何を話しているのかを探った。手がかりになりそうなものはそれくらいしかないからね
  口は自分の言いたいことを、好き勝手に喋っていた
口「なんであいつばかり得をするんだ」
口「こんなに頑張ってるのに、なんで誰も認めてくれないの」
  どれもこれも、不満や嫉妬の類を吐き捨てるだけ。最初は大した情報ではないと思ったよ。けれど、それは違った
  上階へ上がるほどにその不満は、より悪意あるものへと変わっていった
口「あいつのために、なんで俺が・・・」
口「金持ちなんて、どうせあくどいことをして稼いでるのよ」
口「奴らの幸せは、俺達を踏みにじって手に入れたものだ」
  くだらないルサンチマンだ。不平等、不公平を他人のせいにしているにすぎない
  だが、その悪意は最上階で歓喜に変わった。真っ黒な唇たちは言っていた
口「最上階を焼く、赤黒い不幸。他者の幸せを奪えば、倍返し。幸せを奪うほど、失う時は鮮烈に」
口「うるさいうるさい入居者は、すぐ不幸に襲われた。これで私達の幸せは取り戻せた」
口「悪い悪い入居者は、じわじわ不幸になぶられた。これで私達の幸せは取り返せた」
口「なかなか死なない入居者は、なんで? なんで? 怖い、怖い。不幸が私達にまで及んでしまう」
編集長(ルサンチマンの果てだ。幸福量一定の法則も混ざっているか)
  そこで色々と繋がったんだ
  同じマンションなのに、上と下で暮らしはまるで違う。比較したくなくても、常に比較してしまう
  だが、そんなものどこにでもあるだろう。なぜ、ここだけ、こんなにも死が溢れているのか?
  火事の後、半年後くらいか。ある週刊誌が幸福量一定の法則の記事の載せたことがあったんだ
  記憶に残る鮮烈な火事と、意識の奥で燻るルサンチマン、そして幸福量一定の法則という土壌が出来た

〇中規模マンション
  そして、そこへ一粒の種・・・いや、屍体が落ちた
  ただの噂、ただの妄想の屍体が──

〇レトロ喫茶
妹「お姉さん・・・」
編集長「存在しない屍体によって、存在しない事故物件が生まれた。あとはもう負の連鎖だ」
編集長「人が死ぬほどに事故物件は力を強め、無関係な霊をも集め、肥大化していった。あくまで仮説だがね」
  正直、突飛すぎて話についていけない・・・のに、私はそれが真実に思えて仕方ありませんでした
  きっと他の人達も同じでしょう。誰一人、何も言えません
  あまりに重苦しい空気でしたので、私は少し話題を変えてみました
妹「でも、そんなところからよく帰れましたね」
編集長「あぁ、それは・・・ 君の兄が全部、倒したから」
妹「は?」
編集長「目や耳、口・・・あれは生霊があの姿で噂を広めていたんだが」
( ´∀`)「なんかねちねちうるさいから、全部を論破してまわったら、静かになったぞ」
編集長「一つ一つ、身勝手な屁理屈を押し付けて、強制的に論破してまわったんだ」
妹「本当に何言ってるの、この人達?」
編集長「それと彷徨う霊が減ったのも良かった。君がこちらで除霊を頑張ったおかげで霊の力が弱まったんだ」
編集長「おかげで事故物件の力は弱まり、向こうから追い出される形で戻ってこれたんだ」
妹「・・・追い出されたんだ」
編集長「もっとも、人の意識なんてものはそうそう変わらないものだ。またすぐ生霊が溢れ、事故物件へ戻るだろう」
妹「それはつまり、エレベーターのお姉さんと、パッチワークの子は、これからもずっとさまよい続けるということでしょう」
編集長「安心したまえ。戻ると言っても一年はかかるだろうから、君達は安全だ」
妹「そう・・・ですね」
  私は歯切れ悪く答えるしかできませんでした
妹(あるべき場所にいけない魂は不幸だっていうのに)
  そんなことが頭から離れないのでした

次のエピソード:6月8日 空想の屍体 #シナリオ

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